97・4%増の454億円を要求 「観光立国復活」に向けた基盤強化へ(23年度観光庁予算概算要求)

2022年8月26日(金) 配信

概算要求総括表(観光庁資料より編集部が作成)

 観光庁は2023年度予算の概算要求で、前年度予算比97・4%増となる454億5800万円を求めた。このうち、一般会計は同25・0%増の176億8800万円、東北復興枠は前年度と同額の7億7000万円を求めた。国際観光旅客税(出国税)を充当する項目には同234・0%増の270億円。観光立国復活への基盤強化のため、観光産業の高付加価値化や、インバウンド回復に向けた事業へ取り組む。

 

 23年度予算は前年度と同様に、コロナへの対応や緊要な経費は上限額なしの「事項要求」として、別途所要の要望を行うことができる。

 今回は、宿泊施設のリニューアルや廃屋撤去などによる「観光地再生・高付加価値化事業」と、旅行者の継続的な獲得や、地域社会・経済・環境に好循環をもたらすコンテンツの造成を支援する「地域のブランド化に繋がるような観光資源の磨き上げ」などの事業を検討している。

 ポストコロナを見据え、地方経済や雇用を支える観光立国の復活をはかり、地方創生を進める目的。

 観光地再生・高付加価値化事業は、複数年度での支援の要望が寄せられていたことから、基金化などを含めた計画的・継続的な支援策ができるよう制度を拡充する。

 観光資源の磨き上げ事業は、「地域独自の観光資源を活用した地域の稼げる看板商品の創出事業」をさらに進化させたものとして、旅行者の再訪意欲を掻き立て、地域のブランド化につながり、地域に収益をもたらすような観光コンテンツの造成を支援していく。

 このほど、新たに取り組む4事業では、新たな交流市場の創出事業に6億5000万円、地域の資源を生かした宿泊業等の食の価値向上事業に5700万円、DXや事業者間連携等を通じた観光地や観光産業の付加価値向上支援に15億円、地方における高付加価値なインバウンド観光地づくり支援事業に4億円を計上。

 このうち、新たな交流市場の創出と、観光地や観光産業の付加価値向上支援は、関連する今年度事業の進化版として予算を要求した。

 

旅行者のニーズ満たす 価値を高める新規事業

 食の価値向上事業では、地域の食材の積極活用などで食の価値を高め、旅行客への訴求力を高めて宿泊業の付加価値向上・地域経済への裨益効果を高める目的で事業を行う。食をウリとして滞在価値を高めるために、一流シェフのマッチング支援などを行い、地域食材を有効活用する。

 既に同様の事業に取り組み、付加価値向上を実現しているトップランナーの宿泊施設の事例収集・周知を行う。

 地方におけるインバウンド観光地づくり支援事業は、地方創生や訪日外国人旅行者の観光消費額拡大を目指し、22年5月に策定した「地方における高付加価値なインバウンド観光地域づくりに向けたアクションプラン」に基づいて行われる。

 22年度中にモデル観光地を10カ所ほど選定し、これらの地域に対して総合的な施策を集中的に講じる。

 高付加価値旅行者のニーズを満たす滞在価値を「ウリ」、上質な滞在・宿泊施設の整備を「ヤド」、ガイドやホスピタリティ人材を「ヒト」、海外の高付加価値総とのネットワーク・情報発信力強化を「コネ」、シームレスな移動環境の整備を「アシ」──など、5つの観点でアクションプランをまとめた。

 同事業では、専門人材派遣による戦略・計画の策定や、市場調査、マーケティング戦略の策定の面から支援をしていく。

 

出国税は270億円 回復見込み234%増

 出国税の規模は、前年度比234・0%増の270億円を要求した。コロナ前では前年度4~3月の出国者実績で出国税を算出していたが、渡航制限・入国制限が掛けられている状況を鑑みて、国際民間航空機関(ICAO)による23年度の航空需要の回復推計値や回復シナリオをもとに算出した。

 出国税を充当する予算に関しては、既存政策の財源の単なる穴埋めをするのではなく、①受益と負担の関係から負担者の納得が得られる②先進性が高く費用対効果が高い取り組み③地方創生を始めとする日本が直面する重要な政策課題に合致する――の3点を基本的な考え方としている。

 前年度の事業例として、ストレスフリーで快適に旅行ができる環境の整備や、地域固有の文化、自然などを活用した観光資源の整備などによる地域での体験滞在の満足度向上──などを実施した。

 具体的な施策・事業については、硬直的な予算配分とならず、毎年度洗い替えが行えるように、観光戦略実行推進会議において、民間の有識者の意見を踏まえつつ検討を行い、予算を編成する。

 

復興枠は同5億円求める 本省・運輸局へ増員要求

 東日本大震災からの復興(復興枠)としては、福島県における観光関連復興支援事業に5億円を要求した。このほか、ブルーツーリズム推進支援事業として3億円を要求。ALPS処理水の海洋放出による風評被害の対策として、ブルーフラッグ認証取得への支援などを通じ、海の魅力を発信するブルーツーリズムの推進をはかる。

 なお、復興枠は前年度同額を計上した。

 また、IRに関する税制について、22年度与党税制改正大綱を踏まえて具体化する。

 定員要求では、観光地の再生・高付加価値化に関する体制構築などを念頭にして、本省3人、地方運輸局2人の増員を要求している。組織要求はなし。

元磐梯グループ社長の小黒太平氏が死去

2022年8月26日(金) 配信

小黒太平氏

 元磐梯グループ代表取締役社長の小黒太平(おぐろ・たへい)氏が8月12日午後3時34分に病気療養のところ死去した。96歳。

 通夜は19日(金)、葬儀は20日(土)に栃木県小山市の小山聖苑で行われた。

 喪主は長男で、小山整形外科内科理事長の小黒賢二氏。

 小黒氏はJR6社指定協定連盟初代会長、ビッグホリデー協力会会長、JTB旅行スタンプ連盟東北支部長などを歴任した。

いろは堂「OYAKI FARM」 おやきの発信拠点に

2022年8月26日(金) 配信

OYAKI FARM外観

 おやきの製造・販売の「いろは堂」(長野県長野市、伊藤宗正社長)は、長野名物おやきの新たな発信拠点「OYAKI FARM(おやきファーム)」を7月31日にグランドオープンした。

 OYAKI FARMは、長野市の長野インターチェンジ近くの好立地に新たに建てられ、おやきの製造・販売以外にもカフェ&ショップ、おやきの製造工程の見学、おやき作り体験(今秋開始予定)などさまざまなコンテンツを用意した複合施設。長野の雄大な自然を一望できるスカイデッキも完成した。

 同施設の稼働により、いろは堂のおやきの生産能力は従来の1・5倍になり、2022年3月期の売上高が約6・2億円、直近3年で売上高が1・3倍(EC売上は2・4倍)と事業規模が拡大していくなかで、課題となっていたおやきの安定供給の実現を目指すという。

 営業時間は午前9時30分―午後6時。不定休。駐車場は40台。

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いろは堂のおやきは、独特な揚げ焼き製法を採用

 いろは堂は1925(大正14)年に創業し、鬼無里村(現在の長野市鬼無里)で永らくおやきを作り続けてきた。当初は家庭料理だったおやきも、現在では長野を代表する名物となり、いろは堂は長野県内を中心に7店舗を展開する。

 今回オープンしたOYAKI FARM以外にも近年、善光寺仲見世店、小布施店を出店。創業から100年近くが経つ今なお、いろは堂はより多くの皆様に美味しいおやきを届けるために、挑戦を続けている。

 いろは堂のおやきは、油で揚げたのち高温の窯で焼き上げる製法を採用。「こんがり・ふっくら」とした独特な生地の食感を引き出し、そこへ素材の味を生かした具材をたっぷり詰め込む。

 7種類からなる定番の具材のほか、季節ごとに合わせた限定メニューも用意。何度食べても飽きないのが最大の魅力だ。

 問い合わせ=☎026(214)2800。

黒川温泉 手形と浴衣セットに 着用写真コンテストも

2022年8月26日(金) 配信

浴衣で黒川温泉を散策

 熊本県・南小国町の黒川温泉観光旅館協同組合(音成貴道代表理事)は、黒川温泉観光協会(北里有紀代表)と共同で来年1月31日まで、露天風呂巡りの入湯手形と浴衣のレンタルをセット販売する企画「黒川ユカタキド」を実施している。

 料金は1人2300円。黒川温泉べっちん館で午前10時から午後4時まで販売する。通常価格は2800円で500円お得になる。

 入湯手形は6月に機能とデザインをリニューアルした。これまで入湯手形1枚に付き、3カ所の露天風呂入浴に限定していたが、3カ所のうち1カ所は飲食や土産物店でも利用できるようにした。

 ドリンクやソフトクリーム、生ビール、タオルなど21店舗28商品のなかから交換できる。従来通り3カ所入浴も可能となっている。

 期間中、インスタグラムフォトコンテストを実施する。温泉街や旅館で浴衣着用シーンを撮影して応募すると、受賞者に南小国町物産館「きよらカァサ」の特産品を贈呈する。

大阪市商店会とエアビー 「新しい観光」共創 万博へ特設サイトも開設

2022年8月26日(金) 配信

千田忠司理事長(左)とAirbnbのスティーブン・リュウアジア太平洋統括

 大阪府大阪市内の商店街約480が加盟する全国有数の商店会組織の大阪市商店会総連盟(千田忠司理事長)とAirbnb Japan(田邉泰之代表)は7月18日、2025年の大阪・関西万博に向け、「新しい観光」を共創することを目的に連携協定を締結した。

 協定では、大阪の古き良き伝統や文化に、VR(仮想現実)やヴィーガン(完全菜食主義者)、LGBTQ(性的マイノリティ)などの新しい社会の潮流を掛け合わせて生まれるものを「新しい観光」と定義した。

 具体的には、開設したAirbnb特設ウェブサイト「New Tourism―大阪・なんば―」で情報発信を行う。「新しい観光」に取り組む民泊ホストへのインタビューなどを順次公開する予定だ。

 また、それぞれの商店街の楽しみ方などをホストの目線で編集したルートマップも制作していく。

 千田理事長は「民泊と商店街は非常に親和性が高い。万博まであと1千日となるなか、多様性に富んだ新たな観光を世界に発信していきたい」と話した。

【土橋 孝秀】

県民割9月30日まで延長 全国旅行支援の実施判断見送る(観光庁)

2022年8月25日(木) 配信

観光庁は9月30日(金)まで県民割の延長を決めた

 観光庁は8月25日(木)、8月31日(水)宿泊分(9月1日チェックアウト分)までとしていた地域観光事業支援(県民割支援)の期間を、9月30日宿泊分(10月1日チェックアウト分)まで延長することを決めた。

 2021年4月1日(木)から始まった地域観光事業支援は、全国・地域の感染状況などを勘案し、ワクチン接種証明書・陰性証明の提示や、隣県への適用、ブロック割への拡大など、その都度運用方法を調整してきた。

 また、全国旅行支援の実施については、「新規感染者数や病床使用率、療養者数、死亡者数など感染状況を見極め、改善が確認できれば、速やかに行う」(観光庁)予定だ。

 7月20日(水)の観光庁長官会見で和田浩一長官は、「今年の3月にまん延防止等重点措置が終了して以来、国としては移動や旅行の自粛を求めていない。観光庁としては、地域の状況に応じた観光支援を行っていく」と説明した。

 観光庁は、「旅行に出掛ける際は基本的な感染対策をしっかりととったうえで、お出掛けいただきたい」と呼び掛けている。

観光立国復活に向け基盤維持・強化を 概算要求前にして方針語る(観光庁長官会見)

2022年8月25日(木) 配信

観光庁の和田浩一長官は8月19日(金)、会見を開いた。

 観光庁の和田浩一長官は8月19日(金)に開いた会見で、2023年度予算概算要求の考え方について、観光は成長戦略の柱であり、地域活性化の切り札であるという基本的な考えは変わらないとしたうえで、観光関連事業者へ多面的な支援を行う。「観光地の面的な再生・高付加価値化事業や、観光資源の磨き上げ、デジタル化、人材育成など、観光立国復活と基盤維持強化に向け、さまざまな施策を盛り込んでいく」と語った。

 

 和田長官は、「コロナ禍で日本の魅力が失われたわけではなく、また、ポストコロナにおいても観光の重要性は変わらない」としたうえで、コロナ禍で打撃を受けた観光関連事業者へ引き続き多面的な支援を行う方針だ。

 観光地の面的な再生・高付加価値化事業について、「地域の皆様から好評をいただいている事業。今後は、複数年度での事業実施が可能となるように要望をいただいている。基金化も含めて計画的・継続的な支援が可能となる方策を検討している」と考えを示した。

 また、6月10日(金)から条件付きで受入再開した訪日外国人旅行者数について、7月の観光目的の入国者数は7903人となった。8月の観光目的での新規入国希望者数は1万2354人。

 現在は添乗員付きパッケージツアーのみでの入国を許可している状況だが、「受入地域の皆様の安心・安全を確保しながら進めていく」。「ポイントは感染症対策が徹底できるか、陽性者が発生したなどの緊急時の対応ができるかという点。このポイントを担保できる方策であることが必要。地域の信頼をしっかり得て初めて水際対策緩和の議論が進められる」。

 なお、実証事業時にガイドラインへ追加されたマスク着脱場面の明記以外では、現在大きな混乱や問題などは見られていない。

 観光庁では、「観光業の関連団体から寄せられている水際対策への課題点などの意見・要望を受け止め、水際省庁へ伝えながら政府全体で議論を重ねていく」考え。

 また、観光目的での新規入国者を国籍別で見てみると、日本から近距離で、訪日意欲の高い韓国や東南アジアなどから回復が進んでいる状況だ。

 

夏休みの航空鉄道利用 前年比の2倍に伸びる

 2022年の夏休みシーズンは緊急事態宣言などを始めとした行動制限が発令されていなかったことを理由として、航空・鉄道に関しては前年比でおよそ2倍の利用があったと報告。一方で、コロナ前と比較すると、6~7割程度の回復に留まっている。

 和田長官は、「やや明るい兆しが見えてきたが、夏の旅行シーズンに第7波が重なったことが原因で、足元の状況はまだ回復したとは言えないのではないか」との見方を示した。

 全国旅行支援に関しては、「引き続き全国の感染状況が今後改善し次第、速やかに実施したい。感染状況を注視し、時期を見極める」とした。

3年ぶりに「下呂温泉まつり」、花火ミュージカルで初めて桟敷席を設置

2022年8月25日(木)配信

今年初めて設置した桟敷席からの花火

 岐阜県の下呂温泉街で8月1日(月)~4日(木)まで、夏の祭典「下呂温泉まつり」が開かれた。市民や来場者の協力も得ながら感染防止策を徹底し、3年ぶりに「下呂温泉花火ミュージカル夏公演」などを開催。温泉街は熱気に包まれた。

 3日(水)の花火ミュージカルは、デジタル技術を駆使し、さまざまな音楽のテンポに合わせて1万3000発の花火を打ち上げる、音と光のライブショー。今年は特等席で観覧できる有料の「桟敷席」も設けられ、観客は約30分間の音楽と花火のシンクロを楽しんだ。

 期間中は、太鼓やダンスなどの路面パフォーマンス、湯の華みこしパレード、下呂おどりなどを日替わりで行い、来場の分散を促した。花火や炎に包まれて「椀みこし」と5頭の龍が乱舞する「龍神火まつり」は、演舞を行わず、今春オープンした下呂市観光交流センター「湯めぐり館」で龍頭の展示や過去映像を上映した。

東讃3市町が協定結ぶ 観光大使に平田進也氏

2022年8月25日(木) 配信

(左から)上村一郎市長、大山茂樹市長、平田進也代表、伊藤良春町長

 香川県東部の東讃(とうさん)エリアに位置するさぬき市と東かがわ市、三木町は8月1日、観光振興に関する連携協定を締結した。

 同日、さぬき市野外音楽広場テアトロンの特設ステージで締結式が行われ、さぬき市の大山茂樹市長と東かがわ市の上村一郎市長、三木町の伊藤良春町長がそれぞれ連携協定書に署名した。

 同エリアは関西圏から高速道路が直結し、車で約2時間30分とアクセスが良いが、県中央の高松市内エリアへの通過地になっているという共通の課題がある。それぞれ有する観光資源を生かし、相互連携で観光振興をはかる狙いだ。

 連携協定に基づく最初の取り組みとして、「東讃エリア観光アンバサダー」を設置し、「浪速のカリスマ添乗員」として知られる日本旅行の平田進也おもしろ旅企画ヒラタ屋代表に委嘱した。

 観光アンバサダー委嘱式も同日行われ、さぬき市の大山市長から委嘱状が、東かがわ市の上村市長からは観光アンバサダーの名刺がそれぞれ交付された。三木町の伊藤町長からは3市町の特産品をセットにした記念品が贈呈された。

東武トップ、西川町と協定結ぶ 修学旅行の取扱が契機に

2022年8月24日(水)配信

左から東武トップツアーズの百木田社長、山形県・西川町の菅野町長

 東武トップツアーズ(百木田康二社長)は8月22日(月)、山形県・西川町(菅野大志町長)と地域の活性化と町民サービス向上のため、包括連携協定を結んだ。

 同社は全国に事業所を有するネットワークを生かし、旅を通じて地域の活性化と課題解決に向けた提案と施策に取り組んでいる。西川町が地域資源を活用した観光振興によるまちづくりを検討していたなか、町立中学校の修学旅行の取り扱いなどを契機に協議を進め、合意に至った。

 今回の協定締結により、同町の自然を生かしたトレッキングや夏スキーなどのアクティビティや、月山志津温泉などの観光資源の付加価値向上に向けた協働事業の企画・実施に取り組む。あわせて、AIデジタル観光コンテンツを生かした旅行商品の造成支援、着地型・体験型旅行商品の共同開発、現地ガイドの養成などの事業も推進していく方針だ。