読売旅行、ガイドラインを策定 感染症対策を講じた旅を

2021年1月7日(木)配信

写真はイメージ

 読売旅行(坂元隆社長、東京都中央区)は昨年12月25日(金)、「感染防止ガイドライン」と「新しい旅のかたち」をまとめた。感染症の専門家の意見を取り入れたガイドラインを踏まえて、安心・安全を基本に、バラエティに富んだ旅の楽しみ方を提案していく狙い。

 いずれも、昨年11月に設置した「新しい旅のあり方検討委員会」で協議を重ね、取りまとめたもの。とくにガイドラインは、旅行でのさまざまな場面を想定し、専門家から具体的にリスク軽減策のアドバイスを受けて作成したと説明している。

 ガイドラインは、検温や健康状態の確認などの従来の対策を継続したうえで、感染リスクを最小限に抑える対策を取り入れた。ツアー全体に「ゆとり」を持たせるほか、食事もできるだけ「密」を避けるよう、施設側と協力して対策を取るよう呼び掛けている。

 具体的には、行程や観光時間に余裕を持たせるほか、バスの場合、乗車人員は定員の7割まで、90分に1回休憩し、休憩中に強制換気するなど。マスクは感染防止効果の高い不織布マスクを推奨し、添乗員も不織布マスクを着用する。このほか緊急時の医療相談や、新型コロナ感染症を対象とする保険「コロナお守りパック」の付帯などを盛り込んだ。

 一方の「新しい旅のかたち」は、読売旅行の商品コンセプトを一新するもの。従来の「盛りだくさん」から変わり、「ゆとり」のツアーを用意。「ワンランク上」と「プレミアム」では、お客のさまざまなこだわりに応える。観光地を巡るツアーだけでなく、テーマ性の高いプランや個人型商品にも力を入れる。

 同社は「ツアー参加者から感染者が出てしまったことを反省し、専門家から具体的なリスク軽減策を指導いただいた。あわせて、お客様の多様な要望に応えられるよう、商品コンセプトを一新。当社の再出発だという強い思いとともに、安心・安全な旅を提供していく」とコメントした。

【開催中止】1月15日(金)旅館100選表彰式について

2021年1月7日(木)配信

拝啓 初春の候、ますます御健勝のこととお慶び申し上げます。
平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。

さて、2021年1月15日(金)新宿の京王プラザホテルで開催を予定しておりました
 ・プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選
 ・プロが選ぶ観光・食事、土産物施設100選
 ・プロが選ぶ優良観光バス30選
 ・プロが選ぶ水上観光船30選
 ・選考審査委員特別賞 日本の小宿
 ・もてなしの達人・優秀バスガイド・優秀バスドライバー
の表彰式ですが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う政府の緊急事態宣言発令などを鑑み、開催を中止することといたしました。これに伴い、同日午後の旅館経営教室セミナーも延期させていただきます。

ご出席でお返事をいただいた皆様には個別に連絡させていただきますが、ここに改めてお知らせさせていただきます。

観光業にとって厳しい状況が続きますが、弊社では紙面や各種事業を通じて、業界発展に寄与すべく取り組んでまいります。引き続きよろしくお願いいたします。

敬具

 

2021年1月7日
株式会社旅行新聞新社
代表取締役 石井 貞德

 

津田令子の「味のある街」「信州安曇野りんごジャム&りんごジュースの詰め合わせ」――安曇野市観光情報センター(長野県安曇野市)

2021年1月6日(水) 配信

 

安曇野市観光情報センター 「信州安曇野りんごジャム&りんごジュースの詰め合わせ」3150円(送料、梱包代込み)▽☎0263(82)9363。

 「北アルプスに雪もかぶり、白鳥も飛来し、安曇野にも冬が来たんだなと実感しています」と、安曇野市観光情報センターの新谷真佑さんは話す。

 
 同センターはJR大糸線穂高駅正面を出た左側にあり、駅を出てすぐ路面と看板に案内表示があるので分かりやすい。扉を開けるとパンフレットやマップなどがずらりと並ぶ。地酒やソバ、道祖神グッズ、安曇野の作家たちの作品など思わず手に取りたくなる地元のお土産がそろって迎えてくれる。さらに詳しい観光情報や案内は、新谷さんをはじめスタッフに直接尋ねれば親身になって教えてくれる。

 
 今回紹介するのは、新谷さん一押しの、自宅(東京)に居ながらにして安曇野の味を楽しむことのできる「信州安曇野りんごジャム&りんごジュースの詰め合わせ」だ。安曇野の特産品といえば「リンゴ」。豊かな自然と寒暖の差が甘くておいしいリンゴを育てるというわけだ。

 
 とにかく甘い「サンふじ」、ほどよい酸味と甘みが特徴の「シナノゴールド」、昔ながらの定番・酸味が人気の「紅玉」とそれぞれのリンゴの甘酸っぱさが、ギューッとつまったジャム3瓶と、サンふじ(季節によって種類は変わる)ストレート果汁100%のリンゴジュース「すりおろし林檎」という強力なラインナップだ。ジャムは、毎朝クロワッサンに、その日の気分で銘柄を選び、たっぷりつけてパンのアクセントにしている。

 
 原稿を書きながら、シャンパングラスに氷を3かけら入れ、すりおろし林檎ジュースを注ぐ。そして、3度ほどグラスをゆっくり回す。ためらわずに一気に口へ運び、リンゴのざらざら感を舌で味わいながら喉へ落とす。「なんというさわやかな風味なのだろう」。口の中を安曇野の風と香りが占領する。観光情報センターに問い合わせれば希望に応じて熨斗掛けなども行ってくれるという。新年のごあいさつに、大切な方への贈り物に最適なこの詰め合わせ。今なら、買った方にもれなく安曇野グッズ(クリアファイル&ポストカード)が付いてくる。

 
 さぁ、「あのひと」に贈ろうっと。

(トラベルキャスター)

 

津田 令子 氏

 社団法人日本観光協会旅番組室長を経てフリーの旅行ジャーナリストに。全国約3000カ所を旅する経験から、旅の楽しさを伝えるトラベルキャスターとしてテレビ・ラジオなどに出演する。観光大使や市町村などのアドバイザー、カルチャースクールの講師も務める。NPO法人ふるさとオンリーワンのまち理事長。著書多数。

 

「街のデッサン(237)」「ちくわちゃん、ありがとう」 慈愛の社会を描く地域童話

2021年1月5日(火) 配信

慈愛の社会を描く「ちくわちゃん」の絵本

 エポックメーキングという言葉があるが、時代を画するという意味を持つ。昨年は、まさに社会を変えるコロナウイルスの蔓延というとんでもない事態が年初から勃発した。これを危機の時代が始まったとするか、旧弊を覆して新しいチャンスの時代の到来とするかによって捉え方が両極に分かれる。私は、次代をより良き方向に変えていくチャンスとして考えなければ、と思っている。

 旅好きな私は海外旅行に年2、3回は出ていたが、それが不可になったことは至極残念なことだった。外国の違った文化に触れる体験は、生きるための知的エネルギーを補充することで元気の源となった。旅は新しい発想をひらめくための涵養の場でもある。

 春にはコロナの感染を抑えるために、「ステイホーム」が強要されて国内旅行もままならなかった。いきなり「Go Toトラベル」と言われても、2次、3次の蔓延によってなかなか気持ちの禁足が解かれない。海外も国内の旅も不可な時にできるのは近所への散歩である。故に海外や国内の旅に代替する散歩(プチ旅行)をよくしている。

 旅に出ると歩いて見学やフィールド・サーヴェイが必至であるから、日ごろから足腰を鍛えておかなければならない。脚力増進に、散歩や遊歩が一番だ。住まいの近くに「代々木公園」があるから、近所をしばらく歩いて公園を何周かするのが、ニューノーマルな私の日課となった。

 漱石であれば「坂道を登りながらこう考えた」となろうが、私は「公園を巡りながらこう考えた」となる。それはコロナによる地域籠りの時間を、若い人であればWeb会議やデジタルラーニングで個人力を増強するであろうが、私のような年配は近所力(コミュニティ力)を伸ばすことで持続可能な社会をサポートできないかと考えるのだ。

 その背景には2つの理由があって、その一つは仕事中心社会が家庭中心社会に、DX時代は必ずシフトしていくという予測。もう一つは、散歩の途中で1匹の茶縞の猫に出会って、この野良的な生き方にすっかり共感してしまったからである。人間を怖がらず、あらゆる人々にオープンで親和性を持った猫の存在は、実は互いに慈愛と寛容性に満ちた地域社会の人々が支えていた事実が分かったからである。

 「ちくわちゃん」と呼んでいた猫が病で亡くなった日、一緒によく遊んでいた広場に誰とも知れずたくさんの花束で飾った献花台が自然に生まれていた。私が書いた童話の最後に、その写真を載せておいた。

コラムニスト紹介

望月 照彦 氏

エッセイスト 望月 照彦 氏

若き時代、童話創作とコピーライターで糊口を凌ぎ、ベンチャー企業を複数起業した。その数奇な経験を評価され、先達・中村秀一郎先生に多摩大学教授に推薦される。現在、鎌倉極楽寺に、人類の未来を俯瞰する『構想博物館』を創設し運営する。人間と社会を見据える旅を重ね『旅と構想』など複数著す。

 

「もてなし上手」~ホスピタリティによる創客~(120) 経験豊富なお客様が感動して本物のおもてなし 「流石」のサービスを

2021年1月4日(月) 配信

 

 私たちが追い求めるのは、お客様が満足する接客だけではダメです。満足したお客様の「また来ます」という嬉しい言葉は、選択肢の1つとして残っただけです。また利用してもらうのがビジネスであり、その確率を高めるのが仕事です。

 リピートをより確かにするのは、満足を越えた感動です。どんなに優れた接客者が多くのお客様を満足させても、「必ずまたここを利用したい」という感動を創り出すのは難しいことです。多くの感動を体験した人の心には、残念ながら響かないかもしれません。満足したお客様が増えれば、間違いなく企業はブランディングされていきます。

 しかし、その評判で一見さんを多く集客できても、未来への不安は消えません。経験豊富なお客様に「ここは流石だ」と感動を与えるおもてなしで、リピーターを創造し続けることが大切です。

 先日、久しぶりに金沢・和倉温泉へ旅行しました。今回はどこを周ろうかと悩みましたが、金沢で人気の「寿司タクシー」を思い出し空き状況など問い合わせると、「大丈夫です。ぜひお越しください」と嬉しい返事が来ました。

 タクシー会社の感動を創造する仕事が始まったのはここからです。予約に必要な事柄だけでなく、利用者が楽しめる質問や提案がたくさんありました。

 その1つが、金沢市内のタクシーが、和倉温泉まで迎えに来てくれるという提案でした。観光と時間の効率を考えていただいての提案でしたが、地理的に疎い県外の私には想像もできないコースもあり、利用日から初めて一般公開される、気多大社の「入らずの森」の特別参拝も提案してくれました。

 道中で立ち寄った道の駅では、ドライバーが共に店内に入り、商品を詳しく説明してくれました。その話を聞いて、道の駅に立ち寄った理由を強く感じました。家内も両手いっぱいに買い物をすることができました。

 観光地では私の携帯で何枚も写真を撮ってくれました。その時にも「もう少しこちらに」と、写真の立ち位置にも、より良い構図になるように気を配ってくれたのです。

 最後は、タクシー会社のスタッフが最終目的地の寿司屋まで訪ねて来て、ドライバーが携帯で撮った写真をメッセージ付きの手紙と共に用紙に貼って届けてくれました。「ここまでされたら、びっくりだね」と家内が感動していたのはもちろんですが、私にとっては今回の旅の最大の目的である家内の喜ぶ姿が、一番嬉しいおもてなしとなったのです。

 多くの感動サービスを探し続けている私にとっても、どうすれば喜んでもらえるかという目的を探り、手間のかかる「考動」の実行に、心から感動する旅となったのです。

 

コラムニスト紹介

西川丈次氏

西川丈次(にしかわ・じょうじ)=8年間の旅行会社での勤務後、船井総合研究所に入社。観光ビジネスチームのリーダー・チーフ観光コンサルタントとして活躍。ホスピタリティをテーマとした講演、執筆、ブログ、メルマガは好評で多くのファンを持つ。20年間の観光コンサルタント業で養われた専門性と異業種の成功事例を融合させ、観光業界の新しい在り方とネットワークづくりを追求し、株式会社観光ビジネスコンサルタンツを起業。同社、代表取締役社長。

 

あなたが好きな露天風呂のある宿 加賀屋(石川県・和倉温泉)

2021年1月4日(月) 配信

 旅行新聞新社ではホームページ上で「あなたが好きな露天風呂のある宿」のアンケート調査を実施しました。人気を集めた宿のなかからおすすめの施設を紹介します。

加賀屋 石川県・和倉温泉

婦人大浴場「辨天(べんてん)の湯」

 加賀屋は創業1906(明治39)年の老舗旅館。七尾湾の波打ち際に「雪月花」「能登渚亭」「能登客殿」「能登本陣」の4棟が建ち並び、細やかな気配り、心配りのもてなしで高い評価を得ている。

 純和風の客室は気品ある落ち着いた風情で、特に「雪月花」の18階から20階は「浜離宮」として、調度など贅を凝らしたしつらえとなっている。

 男女大浴場は海に面しており、ロケーションも申し分なし。男性大浴場「恵比寿の湯」は3層に広がるもので、浴場内にエレベーターが付くというユニークな造り。湯船に浸かると、まるで七尾湾に浮かんでいるような感覚を味わうことができるだろう。女性用は広々と開放的な「辨天の湯」と鮮やかなモザイクタイルを使用した「花神の湯」がある。

 食膳は、山海の幸を盛り込んだ会席。プロの技ともてなしの心が郷土の味を引き立てる。

 館内には郷土の著名作家による工芸品が数多く展示され、さながら美術館の趣だ。また、エステティックサロンは宿泊だけでなく、日帰りでも利用可能。温泉旅館の中にありながら、静かな空間でゆったりと施術を受けることができる。東西が融合したマッサージと独自のトリートメントは、温泉との相乗効果で、より深いリラクゼーションが味わえること間違いなしだ。

宿データ

「加賀屋」全景
ロビーラウンジ「飛天」

住所:〒926-0192 石川県七尾市和倉町ヨ部80番地

TEL:0767(62)1111 FAX:0767(62)1121

チェックイン:午後3:00 チェックアウト:午前10:00

風呂:男女別大浴場各1(空中露天風呂、野天風呂、サウナ付)、女性用浴室1

泉質:強食塩泉

客室:全232室

料金:3万3000~7万6000円

「観光革命」地球規模の構造的変化(230)  コロナ禍克服の可能性

2021年1月3日(日) 配信

 昨年の流行語大賞は「3密」だった。昨年日本を含めた全世界を苦境に落とし込んだ新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ)対策として避けるべき行動(密閉、密集、密接)を表す言葉であった。旅行・観光産業は「3密回避」の影響を大きく受けた産業分野だ。政府は「感染防止と経済再生の両立」をはかりながら諸施策を講じたが、感染拡大が続くなかで観光支援事業「Go Toトラベル」への批判が高まった。それに対して菅首相はGo Toトラベルは地方経済再生に貢献しており、旅行が感染拡大に影響するエビデンスが無いために事業継続にこだわった。

 ところが12月9日(水)に英スコットランド自治政府のスタージョン首相は科学者による詳細な調査結果に基づいて「コロナの感染拡大は旅行が原因であった」ことを公表。東大などの調査でも「Go Toトラベルの利用者は利用しなかった人よりも感染リスクが2倍高い」ことが判明した。政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会も「感染拡大地域でのGo To トラベルの一時停止」を提言。さらに世論調査で菅政権への不支持率が一挙に高まったために、政府は「Go Toトラベル事業を12月28日(月)から1月11日(月)まで全国で一時停止」を表明した。

 一方、昨年12月に世界各国でコロナワクチン接種が開始された。世界で最初に国産コロナワクチンを承認したロシアでは12月5日(土)から接種を開始。英国でも米国製薬大手ファイザー社などが開発したワクチンを政府が承認し、8日(火)から接種開始。米国でも連邦食品医薬品局がファイザー社のワクチンに対する緊急使用許可を出し、接種を始めた。中国の製薬大手シノファーム社のワクチンもインドネシアなどで接種が開始される予定だ。

 日本では昨年12月に国会で「改正予防接種法」が全会一致で可決・成立し、コロナワクチンを国の費用負担で無料提供し、円滑に接種を進めることが可能になった。日本政府とファイザー社は来年6月末までに6000万人分のワクチン供給で基本合意済みだが、接種時期はまだ未定。

 コロナ克服のためにはワクチンが不可欠であるが、完璧なワクチンの開発は容易ではない。今年もまたコロナとの苦しい闘いが継続されるので、旅行・観光産業の苦境も継続される可能性が高い。

石森秀三氏

北海道博物館長 石森 秀三 氏

1945年生まれ。北海道大学観光学高等研究センター特別招聘教授、北海道博物館長、北洋銀行地域産業支援部顧問。観光文明学、文化人類学専攻。政府の観光立国懇談会委員、アイヌ政策推進会議委員などを歴任。編著書に『観光の二〇世紀』『エコツーリズムを学ぶ人のために』『観光創造学へのチャレンジ』など。

 

 

「トラベルスクエア」ナイトタイムエコノミーの終焉

2021年1月2日(土) 配信

 

 尾道から老夫婦が上京する。娘や息子たち、それに孫に会いに来るのが目的だが、歓迎されると思いきや戦後景気でみんな忙しく、邪険に扱われる。「お金出してあげるから、熱海にでも静養に行ったら」などと放り出される。仕方なく出掛けてはみたものの、宿の隣の部屋では社員旅行か、夜通しの乱痴気騒ぎ。

 夜も眠れず、朝まだき、港の突堤で笠智衆と東山千栄子の夫婦が人生を語り合うシーンは、日本映画の中でも屈指の名場面と言われる。名作「東京物語」からの引用だ。

 何を言いたいかというと、この映画公開の1953(昭和28)年から、旅館では大宴会の喧噪と個人保養客の葛藤があったということだ。

 ありがちだった温泉地での大団体旅行。飲めや歌えの一気爆発型の消費は、普段の働きが大変でそのストレス発散の意味もあったのだと思う。

 このころから、1990年代半ば、バブル崩壊、官官接待自粛まで、旅館業も含めアルコールを扱う業態は、ことごとくナイトタイムエコノミーの恩恵に浴してきたのは間違いない。

 しかし、このコロナ禍がそれを破壊してしまった。既に大都市ではアルコール提供を伴う業態の営業時間制限が始まっているが、それでなくとも、年末の書入れ、忘・新年会はほぼ壊滅状態だ。居酒屋業態に詳しいベテラン外食ジャーナリストは、これで居酒屋全体の4割近くが消滅するのでないかと予測する。もちろん、我われリゾート旅館にとっても、由々しい事態だ。

 それでは、ワクチンが配布され、コロナ騒ぎが一段落したら、前と同じく「どんちゃん騒ぎ型」の需要は出るかというとそうはならない。

 これは単なる「風俗」の問題ではなく、夜にお金を使う習慣が消えていくということだと思う。もっとも、もしかしたら回復が早いかもしれないインバウンドのナイトタイム消費促進はあるかもしれないが、僕は社会全体が、もう「夜は地元やお家で過ごそうよ」となるのではないか。

 あれだけ「24時間戦えますか?」で頑張った世代も、今や「24時間立っていられますか?」だものね。働き方改革も一方にあるし、基本、夜、稼ごうというのは難しくなる一方だろう。

 コンビニも居酒屋もカラオケも同様だが、夜の享楽、便利さの価値の代わりにどの業態がどんな提案をしてくるのか、それが僕のこれからの研究テーマだ。ナイトタイムエコノミーからデイタイムエコノミーへのシフト。

 我われ業界は、他の産業では持ちえない「美しく、快適な夜」という価値を創造できると、僕は信じている。「東京物語」の老夫妻の悲劇はもう2度と繰り返されることはないだろう。

 

コラムニスト紹介

松阪健氏

 

オフィス アト・ランダム 代表 松坂 健 氏=1949年東京・浅草生まれ。1971年、74年にそれぞれ慶應義塾大学の法学部・文学部を卒業。柴田書店入社、月刊食堂副編集長を経て、84年から93年まで月刊ホテル旅館編集長。01年~03年長崎国際大学、03年~15年西武文理大学教授。16年~19年3月まで跡見学園女子大学教授。著書に『ホスピタリティ進化論』など。ミステリ評論も継続中。

 

【特集No.572】2021年 新春鼎談 次世代のキーマンが観光を語る

2021年1月1日(金) 配信

  新型コロナウイルス感染拡大で観光業は壊滅的なダメージを受けた。感染予防を大前提とした「新しい旅のカタチ」に官民が協力して力を注いでいる。本紙の新春鼎談には観光業界を積極的に応援している衆議院議員の武井俊輔氏と、全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会青年部部長の鈴木治彦氏、次期部長の星永重氏の3氏が登場。観光業の次世代を担うキーマンがウィズコロナ・アフターコロナを見据えて「観光活性化」への思いや、2021年以降のビジョンを語り合った。

【聞き手=石井 貞德社長、構成=馬場 遥】

今の時代に即した環境整備 ―― 武井氏
観光をリーディング業界に ―― 鈴木氏
回復に向け戦う準備始める ――― 星氏

 

 ――2020年、世界中で猛威を奮った新型コロナウイルス感染症は、日本の観光業界にも大きな打撃を与えました。改めてその所感をお願いします。

 鈴木:観光業界が脚光を浴びるはずの東京オリンピック・パラリンピックが延期となり、新型コロナウイルス感染拡大という、予想し得なかった事態に陥りました。とくに観光業は大打撃を受けました。
 「苦しい」とばかり言っていられませんので、新たな時代に向けて「人類にとってちょうどいい転換期」と、前向きに捉えていきたいと思います。

 星:「新しいものが生まれるまで」に携わらせてもらった1年だったと思います。20年は、既存のものから強制的に新しいものへ切り替わり、さらにその中で一番いい方法を皆で模索しているイメージがありました。

 現状を打破するために、平常時ではなかなか生まれない爆発的なエネルギーが溜まっていると思います。このエネルギーを使い、衛生管理に始まり、やがては観光業界から経済状況を好転させていけることを望みます。

 ――武井先生は観光業界を応援していただいている立場にいますが、「新政権が発足した2020年」を振り返ってみてどうでしたか。

 武井:観光に非常にポジティブな思いを持っていただいている菅義偉首相が政権に就かれたことが、業界にとってはプラスになっていくのではないかと思っています。

 観光政策については、「Go Toトラベル事業」において、本来の趣旨にできるだけ沿うように、なおかつ「偏りがない状態で中小の旅行業、団体まで行き届けられるか」ということをこれから観光政策のなかで考えていかなくてはならないと思っています。

 もしもGo Toで届かないのであれば、別の方法も併せて考えていかなければならないと考えております。

 ――ワーケーションなど新たなスタイルが生まれています。

 武井:宿泊施設で非常にブームになっているようですが、だからこそ政治側のアプローチとして、さまざまなルールや課題を整理していかなければなりません。

 例えば、ワーケーション中にケガをしてしまったときの労災はどうするのかなど、法律的に追いついていない部分があるのが事実です。こうした事態に対応できるよう、早急に基準を定めていかなければならないと思っております。

 また、菅政権が「デジタル改革」を推進しているので、旅館や観光施設がこれに対応できるような、時代に即した環境を整備する必要があります。

 鈴木:武井先生がおっしゃられた通り、ワーケーションの取り扱いは企業によってそれぞれで、統一された基準がないのが現状です。我われ宿泊施設にとっても受け方はさまざまで、模索している状態です。

 まずは政府側からワーケーションの基準をしっかり定めていただき、どういうカタチなのかを整理するところから始め、企業が推奨しやすい土壌づくりをしてほしいです。

 枠組みができたうえで、我われが受け皿として機能すれば、地方創生の一つとなる大きなコンテンツになり得るのではないでしょうか。もちろん、これからしっかり勉強して、最大限の協力をしていきます。

 ――旅館業法については。

 星:こういった危機的状況に対応できないのは、今の旅館業法の課題だと感じます。旅行業法についても同様で、今の時代から商習慣を作っていけるよう、ユーザーの声を聞きながらやっていければと思います。そのためには、自民党の若手の先生方と意見交換や提言をしていきたいと考えています。…

【全文は、本紙1822号または1月8日(金)以降日経テレコン21でお読みいただけます。】

【赤羽一嘉国土交通大臣に聞く】国土交通省交通運輸記者会 新春共同インタビュー

2021年1月1日(金) 配信

赤羽一嘉国土交通大臣

――新型コロナ下の航空・空港行政の取り組みは。

 世界規模での新型コロナウイルス感染症の拡大による移動抑制や水際対策などの影響を大きく受け、航空需要は過去に例を見ない規模で大幅な減少が続いており、航空業界は厳しい経営状況にあります。

 航空ネットワークは、公共交通として社会経済活動を支えるとともに、インバウンドなどポストコロナの成長戦略にも不可欠なインフラです。

 国土交通省では、そのネットワークの維持・確保に向けて、着陸料の引下げをはじめとしたさまざまな支援策を講じてきたところですが、需要回復後の成長投資の確保も見据え、2021年度予算などの成立を前提に、総額1200億円規模で空港使用料や航空機燃料税のさらなる軽減などを行う予定です。

 また、航空会社と同様、厳しい経営環境下にある空港会社等に対し、2021年度予算等の成立を前提に、財政投融資も活用しながら、空港整備に対する無利子貸付やコンセッション空港における運営権対価の支払猶予等により支援して参ります。

 加えて、空港のCIQ施設等については、新型コロナウイルス感染症の状況を踏まえ、感染リスク最小化のための受入環境整備を推進して参ります。

 こうした取り組みとともに、経済を回復軌道に乗せるため、感染再拡大の防止と両立するかたちで、国際的な人の往来の部分的・段階的再開を政府全体として進めているところですが、国土交通省としても、Go Toトラベル事業を通じて需要喚起をはかりつつ、できる限り早期にネットワークが回復されるよう、しっかり取り組んで参ります。

――ウィズ・ポストコロナ時代の観光立国推進に向けた基本方針について

 現下、コロナ禍の影響により、インバウンドは大変厳しい状況にありますが、一昨年まで、3200万人近くの外国人旅行者の皆様を惹きつけた、我が国の自然、食、伝統文化、芸術、風俗習慣、歴史など、各地の観光資源の魅力が失われたわけではないと私は考えております。

 また、シンクタンクなどによる調査では、海外旅行が再開した際に訪れたい国の最上位に「日本」が位置付けられております。これは、日本の公衆衛生レベルの高さなどが高く評価されての結果によるものです。

 こうしたなか、ウィズコロナの時代において、感染拡大防止をはかりつつ、観光振興を進めていくため、昨年12月に、政府の観光戦略実行推進会議において、「感染拡大防止と観光需要回復のための政策プラン」を決定いたしました。

 国土交通省では、昨年より、ウィズコロナの時代における「安全で安心な新しい旅のスタイル」の普及・定着に向けた重要なチャレンジとして、Go Toトラベル事業を実施しているところですが、引き続き、同プランを踏まえ、感染拡大防止策の徹底を大前提に、国内観光需要を喚起して参りたいと考えております。

 さらに、コロナ禍によって、人々の住まい方、働き方の変化が生じることが予測されるなか、ワーケーションの普及等を通じて、新たな旅行市場の創出・需要の平準化に取り組みます。

 他方、観光需要の喚起だけでなく、むしろこのコロナ禍のピンチをチャンスとし、我が国の観光の底力を高めるきっかけとすることも重要です。このため、老朽化した観光施設の再生や廃屋の撤去等を通じて、地域全体の魅力と収益力を高めるための支援を短期集中で行ってまいります。

 そのうえで、来る東京オリンピック・パラリンピック競技大会も見据え、インバウンドの本格的回復に向けた環境作りに取り組んでいくことが不可欠です。

魅力的な滞在コンテンツの造成や観光地等の受入環境を整備しつつ、感染状況が落ち着いている国・地域から、小規模かつ防疫措置を徹底した試行的な受け入れを実施します。

 関係省庁とも連携しながら、こうした取り組みを着実に進めることにより、ウィズコロナ、ポストコロナ時代の観光立国推進に向けて、しっかりと取り組んで参ります。