JALが3年連続「WORLD CLASS」受賞 世界最高水準の航空会社に認定

2023年9月25日(月) 配信

「WORLD CLASS」認定は国内航空会社で唯一

 日本航空(JAL)はこのほど、北米を拠点にする世界最大のエアライン業界団体の1つ、APEXが主催する「2023 APEX EXPO」で日本国内の航空会社として唯一の「WORLD CLASS」に認定された。3年連続の受賞となる。また、安全・安心とウェルビーイング(身体的・精神的・社会的に健康な状態にあること)への取り組みが最も優れているエアラインとして、「Best-in-Class in Safety and Well-Being」も同時に受賞した。

 「WORLD CLASS」はポストコロナ時代のエアラインの評価指標として2021年に新設された賞で、専門家による搭乗監査と顧客の評価をもとに世界最高水準のエアラインが認定される。「サステナビリティ」「安全・安心とウェルビーイング」「サービス品質」の3つの評価軸で審査される点が特徴で、航空利用体験が単なる移動ではなく、価値あるものであるかが大きな評価ポイントという。

 JALが評価された持続可能な経営目標は、ESG戦略を軸とした経営戦略と2050年までのCO2排出量実質ゼロと2025年度のCO2排出量909万トン未満達成に向けた取り組み。具体的には、燃料効率の高い航空機材の導入や機内の使い捨てプラスティックの削減と軽量化によるCO2削減の取り組み、国内線一部路線での紙コップリサイクルの開始、フードロス削減に向け機内食の事前予約やキャンセルの導入など。

 このほか、世界トップレベルの衛生対策や機内の快適性、高いサービス品質なども評価されている。

「ZOOM JAPON(ズーム・ジャポン)(9月号)」

2023年9月24日(日) 配信

https://zoomjapon.info

特集&主な内容

 今号では、発生から100年経った関東大震災を取り上げました。フランスでも、とくに2011年の東日本大震災以降、日本は地震の国だと認識されていますが、100年前にも日本が未曾有の大震災を体験したこと、しかも、それが東京で起こったことはあまり知られていません。関東大震災についてはもちろん、その後、東京が現在の姿になるにいたった都市計画なども紹介しました。研究書“関東大震災の想像力:災害と復興の視覚文化論”を邦訳されている米デューク大学教授、ジェニファー・ワイゼンフェルドさんからもお話を伺いました。そして、関東大震災直後の中国人や朝鮮人の虐殺の問題も取り上げました。旅行ページでは、東京を訪れるフランス人読者のために、現在の東京がどのように地震に備えているかを紹介しました。

〈フランスの様子〉時代に対応するパリの交通

「パリではキックボートシェアサービスが終了:オペレーターDott社は51名の社員を解雇」9月4日付、Le Parisien紙のウェブサイトより

 日本の大都市では海外に遅れること数年で、電動キックボードのシェアスポットが増えてきているが、パリでは今月から電動キックボードのシェアサービスが禁止になった。◆パリ市の交通インフラ全体の現状と将来を考慮し、パリ市が住民の意見も聞いたうえで決定していたものだ。◆また、パリの地下鉄やバスでは9月末から、10枚綴りの紙の回数券の販売が終了する。1枚ずつの紙切符の販売は続けられるが、来年のパリ五輪のあと、来年末までには終了する予定だという。◆そして、コロナ禍以前からパリ郊外で試験的に導入されていた、バス停以外の場所で降車できるシステムも今月から導入が始まった。段階的に進んでおり、最終的にはパリ全体が対象になる。◆22時以降、運行路線上で、交差点などの危険でない場所であれば、家の近くなどで下車できる。◆ちなみに、電動キックボードはあくまでシェアサービスがなくなっただけで、今のところ、使用自体は禁止されておらず、スポーツ店などでは個人用の電動キックボードのセールが始まっている。

ズーム・ジャポン日本窓口 
樫尾 岳-氏

フランスの日本専門情報誌「ZOOM JAPON」への問い合わせ=電話:03(3834)2718〈旬刊旅行新聞 編集部〉

川崎市 益田で教育旅行PR 企業訪問などルート提案

2023年9月23日(土) 配信

河上副市長(写真左端から5人目)への表敬のようす

 神奈川県川崎市の行政やホテル関係者など官民で作る教育旅行誘致プロジェクトチームは8月23、24日の2日間、島根県益田市を訪れ、旅行会社などに教育旅行をアピールした。

 参加したのは川崎市観光・地域活力推進部と川崎市観光協会、ホテルメトロポリタン川崎、川崎キングスカイフロント東急REIホテルの職員ら計6人。初日に益田市内の石王観光と石見観光、農協観光を回り、翌日は益田市空港対策室と観光交流課との意見交換会、河上信男副市長への表敬を行った。

 川崎市側は市内で見学可能な企業訪問や食事・宿泊をセットにしたモデルコースを提案した。

 益田市には萩・石見空港があり、全日本空輸(ANA)が東京羽田便を1日2往復運航している。昨年は益田市と隣接する浜田市から2校の実績があり、今年は益田市から既に1校の実績がある。さらに年内には浜田市から3校が川崎市を訪れる予定だ。

 川崎市側の関係者は、「混雑具合や距離感覚など首都圏の環境をあまり知らない先生も少なくなく、知ってもらえれば川崎市を含む関東方面への教育旅行の件数が増加する可能性がある」と話す。

宇部市、訪日宿泊客にデジタルクーポン配布 地域経済活性目指す

2023年9月22日(金) 配信

宇部市インバウンドデジタルクーポン

 山口県宇部市は9月15日(金)から、「宇部市インバウンドデジタルクーポン」の発行を開始した。市内の特定宿泊施設に宿泊した外国人旅行者を対象に、加盟小売店などで利用できる電子クーポンを付与するキャンペーン。コロナ禍で疲弊した地域経済の活性化を目的に、急速な回復を見せるインバウンドの消費拡大に期待する。

 クーポンは、対象宿泊施設に宿泊した外国人旅行者のうち、キャンペーン参加希望者に1泊1人当たり3000円分発行する。フロントでパスポートを提示し、申請書に記入すると、引換券が受け取れる。スマートフォンで二次元コードを読み取ることで簡単に利用できる。

 発行は2024年2月29日(木)までだが、予定枚数に達し次第終了となる。9月15日時点で、対象宿泊施設は3施設、クーポンを利用できる小売店・飲食店などは96店舗。キャンペーンへの加盟は随時行っているという。

 同事業の電子クーポン発行には、ギフティ(太田睦・鈴木達哉社長、東京都品川区)のデジタルプラットフォーム「e街プラットフォーム®」を採用している。なお、インバウンド観光促進事業では初の採用。ギフティは、宇部市から同事業の委託を受けたJTB山口支店からの委託で実施している。

地域伝統芸能活用センターが全国大会フィナーレと感謝の会

2023年9月22日(金) 配信

名誉総裁の高円宮妃久子殿下

 地域伝統芸能活用センター(中村徹会長)は9月9日、東京プリンスホテルで、地域伝統芸能全国大会のフィナーレと感謝の会を高円宮妃久子殿下ご臨席のもとで開催した。

 同センターは、地域伝統芸能を活用した観光および地域商工業の振興をはかる目的で、30年にわたり「地域伝統芸能全国大会」と「顕彰事業」を実施してきたが、今年度で終了する。中村会長は、「全国大会が地域の発展に貢献したと自負している」とし、両事業への理解と協力に感謝を表した。

 名誉総裁でもある高円宮妃殿下は「1993年に石川大会が開催されて以来、途中コロナ感染症などで中止が余儀なくされましたが、毎回参加し各地域の芸能を楽しく拝見し、幸せを感じました。これからも、多くの人々に伝文化が受け継がれていくことを願っております」と語った。

 来賓として、高橋一郎観光庁長官と森田健太郎経済産業省商務サービス政策統括調整官が出席し、祝辞を述べた。

 これまでの功績に対し三隅治雄氏(元日本伝統工芸センター顕彰事業選考委員長)と星野紘氏(同)に中村徹会長から感謝状が、高円宮妃殿下より記念メダルが授与された。また、中村会長と棚橋祐治副会長に高円宮妃殿下から記念メダルが授与された。

 式典に先立ち、過去に受章した「銚子はね太鼓」(銚子はね太鼓保存会)「鶴見の田祭り」(鶴見田祭り保存会)鷺流狂言清水(山口鷺流狂言保存会)「香川良子の篠笛演奏と寿獅子舞・香川社中」(香川良子と香川社中)「奄美の島唄」(川畑さおり)「阿波おどり」(東京高円寺阿波おどり振興協会)が記念公演を行い、フィナーレに彩りを添えた。 

 

優良事例や連携のコツを紹介 「観光現場におけるICTサービス等利活用促進セミナー」(観光庁)

2023年9月22日(金) 配信 

観光庁は10月3日・10月5日に「観光現場におけるICTサービス等利活用促進セミナー」を開く

 観光庁は10月3日(火)と10月5日(木)に、「観光現場におけるICTサービス等利活用促進セミナー」をオンラインで開く。

 セミナーでは、地域の観光関係者やインバウンドベンチャーを対象とし、地域とインバウンドベンチャーの連携促進に資するもの。地域の課題解決の優良事例や、連携のコツ、当事者による体験談を紹介する。

 また、今後「観光現場におけるICTサービス等利活用促進事業(実証事業)公募」と地域とインバウンドベンチャーとのマッチングイベントも実施する予定。

 開催日は、10月3日(火)午前10時半~正午。10月5日(木)午後2時~午後3時半。両日ともZoomにてオンラインで配信する。各回先着400人まで。

WILLER、新座席「DOME」 東京―名古屋の夜行便で運行

2023年9月22日(金) 配信

「DOME」2列席

 WILLER EXPRESS(平山幸司社長、東京都江東区)は10月6日(金)、新型3列シート「DOME(ドーム)」を搭載した高速バスの運行を始める。1両につき26席、東京~名古屋線の夜行便を上下1本ずつの1日2本で運行する。

 「DOME」は、シェル型のパーテーションを採用し、シェルの中でリクライニングが完結するため、座席背後の空間を気にせずに背もたれを倒せる。あわせて、前方の座席背面にあるフットレストと、レバー操作で引き上げるレッグレストを備え、足を伸ばしてゆっくりとくつろげる。

「DOME」独立席

 シェル外側の色は光沢のあるシャンパンゴールド、シートがベージュの革張り生地を採用し、車内の落ち着いた雰囲気とともに高級感を演出。また、同社初の可動式の腰当てクッションも備え、大型ヘッドレストと併せて使用することで身体の負担を軽減し、心地よい姿勢をサポートする。

カノピーを下ろすと上半身の大半が隠れることが予想できる

 さらに、今年4月に登場した新型4列シート「Prime(プライム)」と同様の大型カノピーを採用。頭上から肩にかけて覆い隠すフードを備え、視線やノイズを遮り、個室感や安心感が向上されている。このため、夜行バスならではの悩みである「すっぴんや寝顔を見られたくない」といったお客を中心に評判が良いという。

 カノピー内側に、「Prime」より上部に取り付け位置を改良したスマホホルダーを設置。夜間も周りの目を気にせずスマートフォンを利用でき、移動時間を快適に過ごすことができる。

カノピー内側にスマホが取り付けられる

 このほか、スマホの充電に欠かせないコンセント、ドリンクホルダー、ちょっとした収納に便利な網ポケット、手荷物などを掛けられる物掛けフックを完備。ブランケット(毛布)の車内貸出サービスもある。

 運賃は片道で2列席6900円から、独立席7400円から。運行開始を記念して、席数限定で11月30日出発分まで2列席4500円、独立席5000円のお試しプランも実施する。予約サイト「WILLER TRAVEL」で販売する。

 なお、同社は年内に「DOME」を搭載した車両2台を追加し、東京~大阪線で運行を開始する予定と説明している。

遮光カーテンを開けた車内のようす

10月から京阪神と山陽・九州間に高速乗合バス運行 大新東

2023年9月22日(金) 配信

使用する高速乗合バス車両例(画像はいすゞガーラ)

 シダックスグループで、貸切バスなどの車両運行事業を行っている、大新東(東京都江東区)は10月5日(木)から、京阪神と山陽・九州を結ぶ高速乗合バス「サン・アンド・ムーン」の運行を開始する。両方面から1日1便で運行する。

 同社は2019年12月、関西を起点に高速乗合バス事業に参入。冬季限定で兵庫・城崎温泉や長野・白馬方面へ運行を行ってきた。また、21年11月には千葉・房総方面、23年7月には東京駅経由の千葉・津田沼方面ルートの運行を開始。今回は5路線目の新規ルートを開拓する。

 運行ルートは関西出発は京都駅を起点に、大阪・梅田、なんばと神戸・三宮を経由し、山口県へ。県内の宇部と小野田、下関の3カ所を経由し、終点の福岡・博多へ向かう。山陽・九州方面は逆ルートを辿る。途中3カ所の休憩を取り、片道11時間で運行する。運転士は2人。

 同ルートの301、302便はフリーWi-Fiや充電USBポートを完備。4列シートでフロントやサイドをカーテンで仕切ることができる。トイレは11月から完備する予定。最大乗車人数は42人。料金は片道1人4900~1万900円(税込)。予約は専用サイト「バスのる.jp」から。

ジャパンショッピングツーリズム協会が10周年 「これからも、熱く、厚く」

2023年9月22日(金) 配信

(左から)新津事務局長、田川会長、菅氏、シュシャン氏、樋渡氏

 ジャパンショッピングツーリズム協会(JSTO、田川博己会長)は9月13日(水)、東京都内で設立10周年記念イベントを開いた。「これからも、熱く、厚くPower of Shopping Tourism」をテーマに、訪日観光客の消費拡大に向け取り組んできた同協会のあゆみを振り返ったほか、研究発表やパネルディスカッションなどを行い、今後の展望を探った。

 あいさつに立った田川会長は「22社と開始したJSTOが108会員と10周年を迎えることができた」と喜びを語った。「訪日客が1000万人に満たない時代に設立したが、幅広い観光分野の皆様と成長してきた。設立時にモノを売るのではなく“日本を売っていこう”と話したが、改めて日本経済における訪日客とショッピングツーリズムの重要さを実感している」と感慨を深めた。

 コロナ後、急速に回復している訪日旅行だが、オーバーツーリズムなど課題も露見している。田川会長は「量から質への新しいフェーズに入った」とし、「JSTOも新たなステージに向け、高い志と厚みを持った強靭な訪日旅行を推進していく」と力を込めた。

 基調講演は「観光再始動 ショッピングツーリズムで日本を元気に」をテーマに、前内閣総理大臣・衆議院議員の菅義偉氏が登壇。菅氏は、「コロナを経ても日本への魅力は薄れていない」とし、「官民が連携し、まだ知られていない地方の伝統工芸品や農産品を紹介していきたい。インバウンドの拡大は地方創生や日本再生につながると信じている」と力強く語った。

 ショッピングツーリズム助成研究では東洋大学准教授の徳江順一郎氏が研究報告を行ったほか、パネルディスカッションは、ゴディバジャパン社長のジェローム・シュシャン氏と前佐賀県武雄市長で樋渡社中社長の樋渡啓祐氏という異色の2人を迎えた。田川会長とJSTOの新津研一事務局長も参加し、「“NEW”を作る交流と共創」をテーマにそれぞれの経験を踏まえて意見交換を行った。

 また、会では和洋折衷バンドの「暁 AKATSUKI」が祝いの演奏を披露して会場を盛り上げた。

JNTOインバウンド旅行振興フォーラム 海外市場の最新動向とマーケ戦略学ぶ

2023年9月22日(金) 配信

会場のようす

 日本政府観光局(JNTO、蒲生篤実理事長)は9月6(水)~7日(木)の2日間、東京都内で、訪日客誘致に取り組む自治体や民間事業者、会員などを対象に「第26回JNTOインバウンド旅行振興フォーラム」を開いた。コロナ禍以降初めて、全プログラムを会場で行った。海外26カ所の海外事務所長・海外事務所設置準備室長が参集し、各市場の最新動向や新たな訪日マーケティング戦略に基づく今後の取り組みを講演した。おもにJNTOが独自にペルソナ化した各市場のターゲットを紹介した。

【台湾市場】特別感や限定性を 「グルメ重視」など

柏木彩氏

 台湾市場は、水際制限が撤廃された2022年10月以降、海外渡航者数が急増している。海外旅行意欲は高い傾向にあり、行き先として日本が圧倒的に人気を集めている。

 海外旅行が活発化する一方で、航空券代や宿泊費用などの値上がりに伴い、海外旅行費用は軒並みコロナ前の約3割高騰している。

 日本台湾交流協会台北事務所経済部主任観光組長の柏木彩氏は、「少なくとも24年1―3月期、長ければ今後2―3年は旅費などの高騰傾向が続く可能性がある」と分析している。

 旅行会社は、コロナ前の6割程度まで業績が回復した。FITは好調な一方で、団体旅行は回復途上にあるものの、高所得者向け商品の需要は高い。

 また、台湾の航空会社は長距離路線や、日本路線が牽引し好調を維持している。しかし、需要が供給を上回っている状態で、航空券料金は高騰しており、座席も不足している。

 JNTOは、さらなる増便・復便には、日本側の空港の受け入れ態勢整備が必要不可欠だと指摘した。

 一般消費者の旅行キーワードは、「グルメ重視」「非日常」「体験・テーマ性重視」「コスパ意識」など。特別感や限定性のあるコンテンツPRが効果的として、新しい情報と定番コンテンツを組み合わせるほか、アクセスなどの具体的な情報も合わせて発信していく必要がある。

 ターゲットとしては、リゾートやテーマパーク、伝統文化・芸能を中心としたコンテンツを、30―40代家族・親族層にPRする。また、即売会としての性質を持つ旅行博において参加型イベントを行うことや、お土産配布などを交えつつ情報発信していく。

 20―40代の夫婦・パートナー・友人層に対しては、豊かな自然、街並み・有名な建築、伝統文化・芸能を中心としたコンテンツを訴求する。さらには、WebやSNSを活用した継続的な情報発信や、参加型イベントの実施などを通じて魅力を伝える。

 50代以上の世帯可処分所得上位40%の夫婦・パートナー・家族・親族層に対しては、食やお酒、ショッピング、暮らし体験、交流コンテンツ、上質な宿泊・飲食施設や、SDGsを意識した文化体験などについて広く周知していく。このほかにも、芸能人など著名人を活用した広告を通じて宣伝し、ターゲットにPRする。

 JNTOは、「台湾はリピーター中心の成熟市場であるため、まだ知らない日本の魅力を発信し、地方分散の促進と、一人ひとりの訪日旅行回数の増加によるリピーターのさらなる訪日を目指す」方針だ。

【香港】座席供給回復の年に 訪日旅行正常化は来年か

小沼英悟氏

 香港人の海外旅行者は19年の6割程度まで回復しており、訪日旅行者は19年と同レベルまで回復済み。香港と日本双方の空港や宿泊施設などで、人手不足による復便・増便や宿泊客受け入れの抑制、航空券の料金高止まり、日本国内の宿泊料金の値上がりなどが訪日旅行における不安要素と言われている。

 香港事務所長の小沼英悟氏は、「昨年22年は日本と香港両政府が規制緩和をした年。今年は航空座席供給数回復が本格化する年だ」と話した。なお、香港の訪日旅行が正常化(19年並みの回復)するのは24年の見込み。

 香港市場のターゲットは、「A30―50代前半の夫婦・パートナー旅行」「B訪日経験者①30―40代前半、友人・1人旅行②30―40代、家族・親族旅行」「C訪日経験者①40代後半以上、友人・1人旅行②60代以上、夫婦・パートナー」「D訪日経験者(過去5年間で訪日経験5回以上)20代、夫婦・パートナー・友人・1人旅行」──の4つに区分した。

 A―Cに当たる30―50代の香港人は、海外旅行において、食事・お酒・ショッピングなどへの興味関心が高いことが共通している。

 また、香港にはファーストフード店が1510店舗あるのに対し、日本料理のレストランは1400店舗も存在している。中国・韓国・フランス・イタリア料理などのレストランの店舗数と比べても、1ケタ多い数字となっており、日本料理への人気と関心の高さが伺える。

 また、1980―90年代には、香港で日本のドラマや漫画、アニメなどが人気を集め、日系の百貨店が出店し、最盛期は合計8社が進出していた背景がある。このことから、小沼所長は「多感な青少年期に日本文化を大量に受容した30―50代が、訪日旅行の有力なターゲットになっている」と説明した。

 Dはその他のターゲットよりも年齢層が若いものの、可処分所得が高い特徴があり、旅行形態は個人手配が9割に達している。

 訪日促進に向け、地方便の運航再開などを支援する航空会社との共同広告を打ち出す方針だ。

【韓国】3分の1が日本へ 「カフェに行く感覚で」

清水雄一氏

 韓国人出国者数は、コロナ前の19年同期比66%まで回復している。このなかで、訪日旅行者は約3分の1を占めている。

 単月で見ると、23年7月の訪日外客数は62万6800人と、19年同月比119・6%増となった。なお、19年7月以降は日韓情勢によって訪日旅行を控える動きがあったことから、訪日韓国人旅行者数が減少傾向だったものの、23年通期は700万人に達する見込みだ。

 韓国人の訪日意欲の高さの理由として、芸能人が日本を旅行しているテレビ番組が放映されていることで、訪日旅行の訴求につながっていることが挙げられる。

 JNTOは、このほかにも、20―40代前半のZ世代・ミレニアム世代が、「プチ贅沢」の括りに日本旅行を入れていることから、人気の理由につながっているとみている。

 ソウル事務所の清水雄一所長は、韓国のトラベルトレンドが「MOMENT」と紹介。「アウトドアレジャー旅行や農村旅行など、ローカル観光が流行しているほか、環境に配慮した旅行、滞在型旅行、趣味旅行といった形態が人気を集めている」とし、「趣味に特化した旅行商品では、20―30%まで若者の利用が増えてきている」と現状を説明した。

 ターゲットはすべて訪日経験が2回以上ある人で、「A40代以上の夫婦・家族・パートナー」「B20―30代の夫婦・パートナー・家族・親族」「C20―30代女性の友人旅行」とした。

 ターゲットCについては、「いわゆる若者層の『女子旅』といわれる旅行。インスタグラムなどSNSの写真映えする場所へ行って写真を撮ることが、非常に重要で価値のあることとしている。日本の精神や伝統文化を学びに行くというような従来の旅行の姿勢ではなく、週末にカフェに行くようなカジュアルな感覚で、SNS映えを狙って日本に訪れている」と分析した。

 高い需要があるものの、日本27空港を就航していた便が、現在では15空港と縮小しており、おもに東日本の一部空港での受け入れが再開していない状況。

 JNTOでは、SNSを中心に地方に魅力を訴求し、地方誘客に力を入れる方針。このほか、テーマを深めるセミナーの開催などで、地方旅行商品の造成を促進する。また、共同広告による地方路線の購入促進に注力する。

【中山理映子理事】各国で「リベンジ旅行」旅行者のニーズを知ること

日々アップデート 日常を知り誘客へ

中山理映子理事

 水際対策が撤廃され、訪日観光が活発化してきたこともあり、今年のJNTOインバウンド旅行振興フォーラムは盛況でした。

 コロナで移動制限があったなか、今こそ海外へ行きたいというリベンジ旅行のようなマインドが働き、それぞれの国においての海外旅行が盛り上がっている印象を受けます。

 コロナ禍を経たうえで、各国の状況やその国の人たちの暮らしぶりを知ることはとても重要です。日々アップデートするその国の日常を知ることで、ライフスタイルを知ることができ、そこで初めて満足度や誘客につなげていけるのだと思います。

中国FITで単月30万人 地方周遊プロモに集中

 8月10日(木)に中国政府による訪日団体旅行・パッケージ商品販売が解禁となりましたが、24日(木)にALPS処理水が放出されたことにより、さまざまな報道が流れました。団体旅行解禁の直後でしたので、本来どのくらい訪日客数が伸びるはずだったのかを数値的に把握することは難しく、8月のデータを待っている状況です。

 一方で、個人旅行ベースでは、既に単月で30万人の中国人訪日客が日本に訪れています。

 現在は、3大都市圏のみに集中し、地方部への宿泊客数が伸び悩んでいます。コロナ前に地方宿泊数の多かった東アジア市場の回復が遅れていることが要因の1つですが、中国をはじめ、韓国・香港・台湾の旅行者に地方を周遊していただけるようなプロモーションを実施していきます。

ATへ大きな期待 各省庁もコンテンツ造成

 高付加価値旅行において、アドベンチャートラベルには大きな期待を寄せています。今回のアドベンチャートラベルワールドサミット2023は、9月11(月)~14日(木)に、北海道で実施します。日本は北と南、それぞれで違う風景が楽しめますし、豊かな自然の中に国立公園もあり、同じ国だと思えないような違った自然を体験できるところが魅力ですので、うまく活用していけたらと考えています。

 観光庁のほかにも、環境省や文化庁、農林水産省など、各省庁が積極的にコンテンツ作りに取り組んでおられるので、非常に心強く思っています。ぜひ省庁横断で取り組んでいただきたいですし、我われもお手伝いできればと思っております。