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JNTOインバウンド旅行振興フォーラム 海外市場の最新動向とマーケ戦略学ぶ

2023年9月22日
編集部:馬場遥

2023年9月22日(金) 配信

会場のようす

 日本政府観光局(JNTO、蒲生篤実理事長)は9月6(水)~7日(木)の2日間、東京都内で、訪日客誘致に取り組む自治体や民間事業者、会員などを対象に「第26回JNTOインバウンド旅行振興フォーラム」を開いた。コロナ禍以降初めて、全プログラムを会場で行った。海外26カ所の海外事務所長・海外事務所設置準備室長が参集し、各市場の最新動向や新たな訪日マーケティング戦略に基づく今後の取り組みを講演した。おもにJNTOが独自にペルソナ化した各市場のターゲットを紹介した。

【台湾市場】特別感や限定性を 「グルメ重視」など

柏木彩氏

 台湾市場は、水際制限が撤廃された2022年10月以降、海外渡航者数が急増している。海外旅行意欲は高い傾向にあり、行き先として日本が圧倒的に人気を集めている。

 海外旅行が活発化する一方で、航空券代や宿泊費用などの値上がりに伴い、海外旅行費用は軒並みコロナ前の約3割高騰している。

 日本台湾交流協会台北事務所経済部主任観光組長の柏木彩氏は、「少なくとも24年1―3月期、長ければ今後2―3年は旅費などの高騰傾向が続く可能性がある」と分析している。

 旅行会社は、コロナ前の6割程度まで業績が回復した。FITは好調な一方で、団体旅行は回復途上にあるものの、高所得者向け商品の需要は高い。

 また、台湾の航空会社は長距離路線や、日本路線が牽引し好調を維持している。しかし、需要が供給を上回っている状態で、航空券料金は高騰しており、座席も不足している。

 JNTOは、さらなる増便・復便には、日本側の空港の受け入れ態勢整備が必要不可欠だと指摘した。

 一般消費者の旅行キーワードは、「グルメ重視」「非日常」「体験・テーマ性重視」「コスパ意識」など。特別感や限定性のあるコンテンツPRが効果的として、新しい情報と定番コンテンツを組み合わせるほか、アクセスなどの具体的な情報も合わせて発信していく必要がある。

 ターゲットとしては、リゾートやテーマパーク、伝統文化・芸能を中心としたコンテンツを、30―40代家族・親族層にPRする。また、即売会としての性質を持つ旅行博において参加型イベントを行うことや、お土産配布などを交えつつ情報発信していく。

 20―40代の夫婦・パートナー・友人層に対しては、豊かな自然、街並み・有名な建築、伝統文化・芸能を中心としたコンテンツを訴求する。さらには、WebやSNSを活用した継続的な情報発信や、参加型イベントの実施などを通じて魅力を伝える。

 50代以上の世帯可処分所得上位40%の夫婦・パートナー・家族・親族層に対しては、食やお酒、ショッピング、暮らし体験、交流コンテンツ、上質な宿泊・飲食施設や、SDGsを意識した文化体験などについて広く周知していく。このほかにも、芸能人など著名人を活用した広告を通じて宣伝し、ターゲットにPRする。

 JNTOは、「台湾はリピーター中心の成熟市場であるため、まだ知らない日本の魅力を発信し、地方分散の促進と、一人ひとりの訪日旅行回数の増加によるリピーターのさらなる訪日を目指す」方針だ。

【香港】座席供給回復の年に 訪日旅行正常化は来年か

小沼英悟氏

 香港人の海外旅行者は19年の6割程度まで回復しており、訪日旅行者は19年と同レベルまで回復済み。香港と日本双方の空港や宿泊施設などで、人手不足による復便・増便や宿泊客受け入れの抑制、航空券の料金高止まり、日本国内の宿泊料金の値上がりなどが訪日旅行における不安要素と言われている。

 香港事務所長の小沼英悟氏は、「昨年22年は日本と香港両政府が規制緩和をした年。今年は航空座席供給数回復が本格化する年だ」と話した。なお、香港の訪日旅行が正常化(19年並みの回復)するのは24年の見込み。

 香港市場のターゲットは、「A30―50代前半の夫婦・パートナー旅行」「B訪日経験者①30―40代前半、友人・1人旅行②30―40代、家族・親族旅行」「C訪日経験者①40代後半以上、友人・1人旅行②60代以上、夫婦・パートナー」「D訪日経験者(過去5年間で訪日経験5回以上)20代、夫婦・パートナー・友人・1人旅行」──の4つに区分した。

 A―Cに当たる30―50代の香港人は、海外旅行において、食事・お酒・ショッピングなどへの興味関心が高いことが共通している。

 また、香港にはファーストフード店が1510店舗あるのに対し、日本料理のレストランは1400店舗も存在している。中国・韓国・フランス・イタリア料理などのレストランの店舗数と比べても、1ケタ多い数字となっており、日本料理への人気と関心の高さが伺える。

 また、1980―90年代には、香港で日本のドラマや漫画、アニメなどが人気を集め、日系の百貨店が出店し、最盛期は合計8社が進出していた背景がある。このことから、小沼所長は「多感な青少年期に日本文化を大量に受容した30―50代が、訪日旅行の有力なターゲットになっている」と説明した。

 Dはその他のターゲットよりも年齢層が若いものの、可処分所得が高い特徴があり、旅行形態は個人手配が9割に達している。

 訪日促進に向け、地方便の運航再開などを支援する航空会社との共同広告を打ち出す方針だ。

【韓国】3分の1が日本へ 「カフェに行く感覚で」

清水雄一氏

 韓国人出国者数は、コロナ前の19年同期比66%まで回復している。このなかで、訪日旅行者は約3分の1を占めている。

 単月で見ると、23年7月の訪日外客数は62万6800人と、19年同月比119・6%増となった。なお、19年7月以降は日韓情勢によって訪日旅行を控える動きがあったことから、訪日韓国人旅行者数が減少傾向だったものの、23年通期は700万人に達する見込みだ。

 韓国人の訪日意欲の高さの理由として、芸能人が日本を旅行しているテレビ番組が放映されていることで、訪日旅行の訴求につながっていることが挙げられる。

 JNTOは、このほかにも、20―40代前半のZ世代・ミレニアム世代が、「プチ贅沢」の括りに日本旅行を入れていることから、人気の理由につながっているとみている。

 ソウル事務所の清水雄一所長は、韓国のトラベルトレンドが「MOMENT」と紹介。「アウトドアレジャー旅行や農村旅行など、ローカル観光が流行しているほか、環境に配慮した旅行、滞在型旅行、趣味旅行といった形態が人気を集めている」とし、「趣味に特化した旅行商品では、20―30%まで若者の利用が増えてきている」と現状を説明した。

 ターゲットはすべて訪日経験が2回以上ある人で、「A40代以上の夫婦・家族・パートナー」「B20―30代の夫婦・パートナー・家族・親族」「C20―30代女性の友人旅行」とした。

 ターゲットCについては、「いわゆる若者層の『女子旅』といわれる旅行。インスタグラムなどSNSの写真映えする場所へ行って写真を撮ることが、非常に重要で価値のあることとしている。日本の精神や伝統文化を学びに行くというような従来の旅行の姿勢ではなく、週末にカフェに行くようなカジュアルな感覚で、SNS映えを狙って日本に訪れている」と分析した。

 高い需要があるものの、日本27空港を就航していた便が、現在では15空港と縮小しており、おもに東日本の一部空港での受け入れが再開していない状況。

 JNTOでは、SNSを中心に地方に魅力を訴求し、地方誘客に力を入れる方針。このほか、テーマを深めるセミナーの開催などで、地方旅行商品の造成を促進する。また、共同広告による地方路線の購入促進に注力する。

【中山理映子理事】各国で「リベンジ旅行」旅行者のニーズを知ること

日々アップデート 日常を知り誘客へ

中山理映子理事

 水際対策が撤廃され、訪日観光が活発化してきたこともあり、今年のJNTOインバウンド旅行振興フォーラムは盛況でした。

 コロナで移動制限があったなか、今こそ海外へ行きたいというリベンジ旅行のようなマインドが働き、それぞれの国においての海外旅行が盛り上がっている印象を受けます。

 コロナ禍を経たうえで、各国の状況やその国の人たちの暮らしぶりを知ることはとても重要です。日々アップデートするその国の日常を知ることで、ライフスタイルを知ることができ、そこで初めて満足度や誘客につなげていけるのだと思います。

中国FITで単月30万人 地方周遊プロモに集中

 8月10日(木)に中国政府による訪日団体旅行・パッケージ商品販売が解禁となりましたが、24日(木)にALPS処理水が放出されたことにより、さまざまな報道が流れました。団体旅行解禁の直後でしたので、本来どのくらい訪日客数が伸びるはずだったのかを数値的に把握することは難しく、8月のデータを待っている状況です。

 一方で、個人旅行ベースでは、既に単月で30万人の中国人訪日客が日本に訪れています。

 現在は、3大都市圏のみに集中し、地方部への宿泊客数が伸び悩んでいます。コロナ前に地方宿泊数の多かった東アジア市場の回復が遅れていることが要因の1つですが、中国をはじめ、韓国・香港・台湾の旅行者に地方を周遊していただけるようなプロモーションを実施していきます。

ATへ大きな期待 各省庁もコンテンツ造成

 高付加価値旅行において、アドベンチャートラベルには大きな期待を寄せています。今回のアドベンチャートラベルワールドサミット2023は、9月11(月)~14日(木)に、北海道で実施します。日本は北と南、それぞれで違う風景が楽しめますし、豊かな自然の中に国立公園もあり、同じ国だと思えないような違った自然を体験できるところが魅力ですので、うまく活用していけたらと考えています。

 観光庁のほかにも、環境省や文化庁、農林水産省など、各省庁が積極的にコンテンツ作りに取り組んでおられるので、非常に心強く思っています。ぜひ省庁横断で取り組んでいただきたいですし、我われもお手伝いできればと思っております。

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