旅行会社の生き残る道とは――「観光業の総合コーディネーター」、日本旅行・矢嶋氏が講演

 地域科学研究会高等教育情報センターは09年12月10日、東京都千代田区の私学会館アルカディア市ヶ谷で「観光・ツーリズム系の教育・人財ニーズ」をテーマとしてセミナーを開いた。セミナーには、旅行会社を代表して、日本旅行広報室マネージャーの矢嶋敏朗氏が「総合旅行会社『広報室』から~日々感じる地殻変動と総合旅行会社が生き残る道」と題して講演した。

 矢嶋氏は、インターネット予約サイトや航空会社の直販化などの動きを受けて、今後総合旅行会社が生き残る道の一つとして、「従来型の旅行会社から脱皮し、『観光業の総合コーディネーター』役を担うべきではないか」と述べた。

 矢嶋氏は価格競争が激化している現状を紹介し、これまで日本旅行が取り組んだツアーの成功例を幾つかあげた。1人100万円の「日本1周バスの旅」では、マスコミを効果的に利用した話題づくりの手法や、旅行会社が地域とお客との「橋渡し役」となりうる可能性などを語った。また、09年10月、同社は新潟県の魚沼市観光協会と連携し、新日本プロレスの興業を行い、「地域との間で独自の地域振興モデルを築くきかっけとなった」などの成果を報告した。

 そのほか、同社の社員で、年間取扱高が8億円、ファンクラブ会員が2万人にのぼる〝カリスマ添乗員〟平田進也氏の知名度を生かし、広告代理店やPR会社の役割を果たす部署「おもしろ旅企画ヒラタ屋」を新設し、ビール会社や化粧品会社などを巻き込んだツアーやイベントを企画しながら、新たな事業分野を開拓していく姿勢などを説明した。

 矢嶋氏は産と学のさらなる連携の必要性を訴え、「観光学部にはマネジメント系、ホスピタリティ系、地域系などあるが各分野が横断的に産業と連携していただきたい」と産業側からの視点で要望。旅行関連産業を目指す学生には、「さまざまな人たちとの調整が必要な職種であるため、コミュニケーション能力と粘り強さが必要」と語った。

観光庁長官表彰を創設、13人が受賞、特別功労に須田氏ら(観光庁)

 観光庁は、国際競争力のある観光地づくりや、外国人に対する日本の魅力発信など観光振興や発展に貢献した個人や団体に対し、「観光庁長官表彰」を新設し、第1回の表彰者として13人を選出した。今回は1回目として、「特別功労」を設け、女優で観光大使の木村佳乃さんと東海旅客鉄道相談役の須田寬氏の2人を特別表彰した。

 昨年12月14日に同庁内で表彰式を開き、本保芳明長官から出席者に表彰状の授与が行われた。本保長官は「審査委員会で激論を交わし、選んでいただいた。各分野で賞を設けた」とし、「これまでの功績を称えるとともに、観光の世界を引き続き引張っていただきたい」と今後の期待を込めて受賞者を称えた。また、「おもてなし・人材育成」部門で受賞した和倉温泉・加賀屋客室係教育リーダーの岩間慶子氏は「日本一の加賀屋で働かせていただき、お客様に支えられ、社員に支えられて受賞できた。これからもこの賞に恥じることのないように、努めていきたい」と喜びを語った。

 審査委員会委員長の青山学院大学特任教授・青木保氏が発表した選考の観点は、(1)新たな分野を開拓した(2)今までと異なる視点から日本の新たな価値を示した(3)海外において、日本の魅力を観光地に限定せず、文化・芸術などについて広く発信した――の3点。当初推薦があった117件のうち、17件を審議の対象にしたという。

 受賞者は次の各氏。

【国内観光振興】
川島聖史(岡山県美咲町産業観光課課長補佐)▽小菅正夫(旭川市旭山動物園名誉園長)▽中谷健太郎(亀の井別荘社長)▽福澤武(三菱地所相談役、大手町・丸の内・有楽町地区再開発計画推進協議会会長)

【国際観光振興】
李硯鎬(ビコ社長)・李美順(ビコTS社長)▽カトリーヌ・オーデン(フランス観光開発機構在日代表)▽Supernet Tour and Travel(台湾系米国旅行会社)▽ハローキティ(中国・香港観光親善大使)

【文化・芸能・伝統工芸による観光振興】
馮小剛(映画監督)

【観光関係事業の経営者】
大西雅之(阿寒グランドホテル社長)

【おもてなし・人材育成】
岩間慶子(加賀屋客室係教育リーダー)

【特別功労】
木村佳乃(女優、観光広報大使)▽須田寬(東海旅客鉄道相談役)

第35回「100選」決まる、1月11日号で紙上発表

「新たに11施設が入選、表彰式は来年1月22日」

 旅行新聞新社・100選選考審査委員会は12月1日、東京都港区の浜松町東京會舘で「第35回プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」の選考委員会を開き、総合100選と審査委員特別賞・小規模和風の宿10施設を決定した。「第30回プロが選ぶ観光・食事、土産物施設100選」「第19回プロが選ぶ優良観光バス30選」などを加えた主なランキングは本紙2010年1月11日号の紙面で発表する。

 今回の総合100選では、新たに11施設が入選。また、初めてベスト10入りした施設もある。表彰・発表式は1月22日、東京都新宿区の京王プラザホテルで開かれる。

 「第35回プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」は、全国1万2882の旅行会社(支店や営業所含む)を対象に専用ハガキによる投票を募り、集計した投票結果を後援団体の日本旅行業協会(JATA)、全国旅行会社(ANTA)の関係者、旅行作家、旅行雑誌編集者で構成される選考審査委員会で審査し、決定する。旅行新聞新社が主催し、毎年実施している。今年も10月1―31日まで投票を受付けた。

 ※なお、今回は投票ハガキの中から、自転車やデジタルカメラ、洋酒など豪華賞品が当たる抽選会も実施。当選者の発表につきましては、賞品の発送(12月中)を持ってかえさせていただきます。  たくさんのご投票ありがとうございました。

国内旅行は36%冬のボーナスの使い道(カカクコム)

 ボーナスの使い道で国内旅行は36%――。カカクコムが運営する「価格.com」が実施した「冬のボーナス2009」調査によると、冬のボーナス推定支給額は前年比1割減の52万2千円と大幅に減少。08年は58万円で、年代別では全世代で減額となる見通し。また、支給予定ボーナスのうち、税金やローン返済など必要経費を除いた、実際に自由に使える金額の平均は15万1677円となった。同サイトでのウェブアンケートで回答数は7897人。

 冬のボーナスの使い道では、「商品購入」が最も多く、78・0%を占めた。その平均金額は7万3812円。「貯金」も73・7%と多数を占めた。また、「国内旅行・外出」は36・4%で平均消費額は5万543円、「海外旅行・外出」は7・0%で平均消費額は11万7722円。旅行での消費は、国内・海外を合わせて4割強という結果となった。

 日本旅行業協会(JATA)がまとめた8、9月の苦情件数報告によると、8月の消費者からの受付件数は前年同月比57・5%増の274件(相談215件、あっ旋59件)、9月は同22・8%減の277件(相談210件、あっ旋67件)。

 8月は前年に比べると100件増と大幅に増加したが、一昨年は275件だったことから、昨年は燃油サーチャージの高騰などで買い控えがあり、相談の絶対数も減少したと推測する。相談内容の区分で最も多かったのは「取消料」の51件、次いで「一般的な相談」の25件、「申し込み・契約」の23件だった。

 一方、9月は、前年度に会員会社の倒産があったた反動で減少した。昨年の「倒産と弁済業務」件数を除くと30・8%増と増加傾向。多かった相談は「取消料」の35件、「申し込み・契約」の33件、「手配内容」の29件の順。

 最近の傾向として、消費者以外の照会で消費者センターからの相談が増えており、消費者相談室の小林二郎副室長は「今後も国民の窓口として増えてくるだろう。内容は、旅行業法の説明を行うことが多い」と報告した。また、新型インフルエンザに関する相談は減少し、10月に入るとほぼなくなったという。

「訪日3000万人」予算半減、事業仕分けで大幅削減

 11月27日に行われた行政刷新会議の事業仕分けで、観光庁が2010年度予算の概算要求として約189億円を要求していた「訪日外客3000万人プログラム第1期」事業が、「予算半減」と判断されたほか、約32億円を要求していた「観光を核とした地域の再生・活性化」事業は「8割減」を求められた。

 10年度の観光庁予算の概算要求では、09年度予算62億5700万円の約4倍に当たる251億円を要求したが、事業仕分けの判断を受けて、約130億円(前年度予算の2倍)程度となる見通しだ。

近場で短い旅行が主体、JTB年末年始の旅行動向

 JTBが発表した年末年始の旅行動向(09年12月23日―10年1月3日)によると、今年はカレンダーの曜日配列が良くないため、近場で短い旅行が主体となる傾向が強いという。海外旅行人数は前年同期比4.1%減の56万5000人、国内旅行人数も同2.5%減の2850万人とともに減少する見通し。

 海外旅行の出発のピークは12月29、30日。円高ウォン安が続く韓国の人気が高まっている。また、旅行代金が高い時期を避け、年始の3連休(1月9―11日)を利用するケースも目立つ。

 国内旅行はETC割引の定着で乗用車の利用が増加。高速道路からアクセスの良い観光地が客足を伸ばす傾向が強まっている。

観光立国推進本部を設置、国交省、関係省庁との連携強化

 国土交通省はこのほど、総務省や法務省など関係省庁の副大臣をメンバーにした「観光立国推進本部」を立ち上げ、12月9日に第1回の会合を開いた。本部長は前原誠司国土交通大臣が務める。

 観光立国の実現には政府として一体的、総合的な取り組みを推進し、さらなる省庁間の連携が不可欠との考えから設置。今後は、(1)外客誘致ワーキングチーム(2)観光連携コンソーシアム(3)休暇分散化ワーキングチームの3つに分かれ、それぞれの事業の検討や調整を行う。参加省庁は上記以外に外務省と財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、環境省、防衛省など。

ドアノブでCО2オフセットPR、伊香保の旅館全52軒、12月10日に一斉導入

 泊まって地球温暖化防止に協力――。群馬県・伊香保温泉旅館協同組合(福田朋英理事長)加盟の全52旅館は12月10日から、ドアノブでCO2オフセットをPRする「マメオフ ドアノブカード」を導入する。環境省の2009年度カーボンオフセットモデル事業で、JTB関東(坪井泰博社長)がPRなどで協力、ビリングシステム(江田敏彦社長)はエネルギー使用量の集計や温室ガス排出量の算定などを行う。

 「マメオフ ドアノブカード」は宿泊客にチェックイン時に渡す。滞在中に、カードのチェック項目にある省エネ活動に賛同し実践している宿泊客は、廊下側の客室のドアノブにカードを掲示する。チェックアウト時にカードをフロントに返却すると、5キログラム分の国連認証の排出権が日本政府に移転される。

 同カードは先着1万室に配布され、排出権移転目標は50トンに設定している。

合格者は25・5%に、09年度総合取扱管理者(JATA)

 日本旅行業協会(JATA)がこのほど発表した、2009年度総合旅行業務取扱管理者試験の結果によると、総受験者1万2664人のうち、合格者は3229人で合格率は前年度比8・8%減の25・5%だった。受験者は同88人減、合格者は同1080人減。

 合格者の内訳は旅行業従事者が38・9%を占めトップ。次いで大学生が21・7%、その他が15・0%の順。年齢別で合格者が最も多かったのは30―39歳の32・2%、次に19―23歳が29・6%、24―29歳が29・7%。

 受験区分別にみると、「全科目受験者」は前年度から723人増えたものの、合格率は5・3%低下し、15・1%となった。最も合格率が高かったのは、「国内旅行業務取扱管理者有資格者で総合旅行業務取扱管理者研修修了者」で93・9%だった。

 なお、「国内旅行実務」と「海外旅行実務」の2科目は、今回の試験で合格基準に達していれば、来年度に限り当該科目の試験が免除される。

TIJ、日観協との統合検討へ

 ツーリズムサミットであいさつに立ったTIJの舩山龍二会長は「本日開いた理事会で、日本観光協会との統合を視野に入れた組織の見直しを検討することを決定した」と発表した。観光立国推進に向け、民間がより主体的に考え方を示す必要性を語り、「観光庁が関係省庁と横断的な活動をしているなかで、民側のパートナーとしてさらに強い力を発揮すべきだと考えた。統合は簡単ではないが、速やかに検討していきたい」と述べた。