訪日促進効果が期待できる、10件の事業化を決定(観光庁)

14年度官民連携VJ事業

 観光庁はこのほど、14年度のビジット・ジャパン「官民連携事業」について、公募事業アイデア181件のうち、10件の具体的な事業化を決めた。

 観光庁では訪日外国人旅行者数2千万人の高みを目指すため、自治体や経済界、在外公館や海外進出企業などとの連携を強化し、オールジャパン体制でインバウンド(外国人観光客誘致)施策を推進している。今回初めて「官民連携事業」の事業アイデアを民間企業から広く公募したところ、合計118件のアイデアが集まった。そのうち、より海外ネットワークやブランド力・ノウハウなどを活用し訪日促進効果を期待できる10件の事業アイデアを14年度ビジット・ジャパン「官民連携事業」として事業化することを決めた。

 事業化が決定したアイデアは次の通り。

・多業種の日系企業が連携し、各企業のブランド力を結集して集中的に行う訪日旅行促進イベント・キャンペーン

・多言語の世界的な旅行サイトと連携し、各国向けWebページ上に、各国で人気のあるコンテンツを制作して魅力を発信。さらに、旅行サイトのユーザーデータ活用によりマーケティング分析を実施

・多数の国において放映されている国際的なチャンネルを活用するとともに、世界的に有名な日本食の料理人と連携し、無形文化遺産「和食」を中心に映像を活用して日本の魅力を発信

・訪日外国人向け免税制度改正を契機に、多業種の日系企業の海外ネットワークを活用した免税PRと、キャンペーンなどによるショッピングツーリズムの促進

・各国で広く利用される旅行商品予約サイトと、海外アニメファンなど向けのサイトが連携し、オタクカルチャーの魅力発信から訪日旅行商品購入までを一元化することによる訪日促進

・海外の放送局とネットワークを有する企業と連携し、中東など潜在的な需要が見込める市場での日本旅行番組制作と、映像やWeb活用による日本の魅力発信

・イスラム圏へ向けた、日本のハラル対応施設(ホテル・レストラン・観光地など)の紹介番組制作と当該映像の自由な使用を認める多面的な情報発信

・海外の大手トラベルガイドと連携し、多言語で日本の魅力を多数国に発信

・国内のユニークベニューで、外国人向けに開く伝統文化などのクールジャパンイベントを、日系企業の海外ネットワークを活用して海外へ情報発信

・14年FIFAワールドカップブラジル大会で、世界中から集まるサッカーファンとブラジル人向けに日本の魅力を発信

No.370 蛍雪の宿 尚文 - 「尺度のない接客」に努める宿

蛍雪の宿 尚文
「尺度のない接客」に努める宿

〈「21世紀の宿を考える」シリーズ(4)〉 蛍雪の宿 尚文

 旅館経営者へのインタビューシリーズ「21世紀の宿を考える」の第4弾は、群馬県・水上温泉の「蛍雪の宿 尚文」代表取締役の阿部尚樹氏が登場。宿の裏の畑でスタッフが育てた新鮮野菜や地元のお米などを提供する地産地消にこだわる。また、料理人で猟師の次男坊・達也氏が山で獲ってきた鹿肉や猪肉、熊肉などジビエ料理を振る舞う。「付かず離れず」の尺度のない接客に努め、居心地の良さを追求する宿でもある。現在、新たなコンセプトの宿を計画している阿部社長に話を聞いた。

【増田 剛】

地元の新鮮食材にこだわる

≪スタッフが裏の畑で野菜を育て、猟師兼料理人がジビエを提供≫

 1972年に定年を迎えた祖父が、うちの近くのスキー場「奥利根スキーパーク」が開業したのを機に民宿業を始めたのです。宿名の「尚文」は祖父の名前です。周辺も一斉にスキー民宿を始め、現在は12―13軒まで減りましたが、最盛期には30軒ほどスキー民宿がありました。

 その当時は、4部屋に分けられる40畳ほどの大広間と、2部屋の計6部屋だったと思いますが、畑仕事の傍ら、冬にはスキー客を受け入れるスタイルでした。

 その後祖父が亡くなり、さまざまな家庭的な事情も重なって、22歳だった私が突然宿の経営を一身に背負わざるを得なくなりました。子供のころから宿の手伝いをしていましたが、料理を本格的に習ったわけでもなく、1人で宿を取り仕切るのは本当に大変でした。

 冬はスキー合宿、春休みや夏休みにはバレーボールなどの合宿、お盆の時期には実業団などが来ていました。

 

※ 詳細は本紙1543号または5月8日以降日経テレコン21でお読みいただけます。

旅客船事故 ― 安全性は長い歴史の中で一歩ずつ

 韓国で痛ましい旅客船事故が発生してしまった。

 離れ小島のひっそりとした宿を探し求める旅をしている私は近年、大小の旅客船に乗る機会が増えていたこともあり、事故の衝撃は大きかった。

 生まれた場所が港町だったので、「さんふらわあ号」をはじめ、「ペガサス号」など大型フェリーを間近に見ながら育った。学校のスケッチ大会では皆で港に行って、配られた画用紙いっぱいに「さんふらわあ号」を描いた記憶がある。大きな船が大好きだったし、誇りに感じた。夜、フェリーが出港するとき、船の汽笛が潮風に乗って聞こえたのは懐かしい。

 大人になってからも船好きは変わらず、あちこちの船に乗りまくっている。昨夏には、博多港から釜山港まで高速船で旅行をしたばかりでもあった。

 だが、振り返ってみると、これまでさまざまな船に乗ってきたが、救命胴衣が船のどこに格納されているのか確認したことはなかった。

 この春に離れ小島の宿に向かう送迎船に乗った。これは韓国の旅客船事故の直前のことだった。100人も乗れないような小さな送迎ボートであったが、下船するときに、ふと目に止まった貼り紙があった。

 正確な文言は覚えていないが、そこには「当船はお客様の生命を守りますので、非常時の際には必ず船長の指示に従ってください」と、決意表明のような力強い文字に出会った。私はこの文字に感動したのだ。おそらく会社の上層部が考案し、船に貼り紙をしたのだろう。しかし、何と自分たちの社員である船長を信頼した文面であろうか。

 今の時代、さまざまな訴訟が増えたこともあり、世の中のあらゆる文面はどこか逃げ道を作った物言いが多く、奥歯に物が挟まった表現が溢れるなか、「お客様の生命を守る」と言い切る潔さと、その貼り紙の文字の堂々たる大きさに私の足が止まったのだった。

 それから1カ月も経たずに、隣国で大惨事が起こってしまった。韓国ではフェリー事故を受け、修学旅行の全面禁止などの動きもある。また、船を利用した旅行のキャンセルも多く出ているようだ。

 日本では近年、クルーズ旅行に注目が集まっており、フェリーを利用した旅も見直されてきている。今回の事故を他国の出来事とは捉えずに、運航会社、そして私のような乗客も安全性に対して謙虚に再確認しなければならない。そうでなければ、修学旅行生をはじめ、多くの貴重な命が失われた犠牲者は報われない。そして、長い歴史のなかで、多くの犠牲のうえに一歩一歩、安全性が向上してきたことも忘れてはならない。

 一方、時を同じくして、日本のLCC(ロー・コスト・キャリア)で機長が集まらず、運航計画を大幅に見直さざるを得ないというニュースが流れた。

 前号でも働く者の「誇り」について記したが、社員に誇りを与えられない会社、それも人命を預かる会社に、私は目に見えぬ恐ろしさを感じてしまう。韓国の旅客船事故の船長が契約社員だったという報道もある。

 ちょうど2年前に、関越自動車道高速バス事故が発生し、安全な運行に向けて制度が変わった。今年もゴールデンウイークに突入するが、もう一度、乗客の安全性について再確認してほしい。

(編集長・増田 剛)

14年度観光功労者大臣表彰、旅館経営者ら25人受賞

大臣表彰のようす
大臣表彰のようす

 国土交通省はこのほど、14年度観光関係功労者国土交通大臣表彰受賞者を発表。旅館業経営者6人、旅館業女将2人、ホテル業従事者6人、旅行業添乗員1人、観光レストラン業経営者1人が受賞した。

 表彰式は4月22日に同省内で行われ、太田昭宏国土交通大臣は「受賞者の皆様は観光振興を通じて地域の活性化や国際観光の振興に顕著な功績をあげられた。ご功績に対し深く敬意を表すとともに、感謝とお祝いを申し上げる」と受賞者を祝福。「観光分野は民間サイドの方が主動的役割を果たすことが重要。知恵は民間や現場にある。今後も観光立国の実現へご支援を賜りたい」と語りかけた。

 受賞者は次の各氏。

 【旅館業経営者】
古川善雄(74)ぬくもりの宿ふる川代表取締役〈北海道〉
宍戸康裕(71)東屋旅館代表取締役〈山形県〉
澤田克司(69)元国際観光旅館連盟東北支部常務理事、宮古ホテル沢田屋代表取締役社長〈岩手県〉
成世邦俊(67)日本旅館協会関西支部連合会理事、銀波荘代表取締役〈兵庫県〉
藤本正孝(60)城西館代表取締役社長〈高知県〉
大庭萬里子(71)ホテル静流荘代表取締役社長〈鹿児島県〉

 【旅館業女将】
峯平滋子(71)湯郷グランドホテル女将〈岡山県〉
有村政代(63)鮎里ホテル取締役副社長兼女将〈熊本県〉

 【ホテル業従事者】
室谷廣二郎(67)帝国ホテル宿泊部専門職部長〈東京都〉
山﨑欣一(60)京王プラザホテル調理部〈埼玉県〉
佐藤重則(59)富士屋ホテル富士屋ホテル宿泊課課長〈神奈川県〉
佐伯勉(66)静岡中島屋ホテルチェーン静岡グランドホテル中島屋施設管理マネージャー〈静岡県〉
檢學俊二(66)京都ホテル京都ホテルオークラ販売促進部〈京都府〉
三原正男(59)リーガロイヤルホテル広島宿泊部付ゲストリレーションズナイトマネージャー兼客室担当支配人〈広島県〉

 【旅行業添乗員】
原好正(66)ジャッツ添乗員〈千葉県〉

 【観光レストラン業経営者】
洲岬孝雄(64)国際観光日本レストラン協会常務理事、洲さき代表取締役〈岐阜県〉

世界遺産からヒントを

 昨年の富士山に続き、今年は6月に富岡製糸場と絹産業遺産群が世界文化遺産に登録される見通しとなった。群馬県出身者としては、故郷に世界遺産ができるのはとても誇らしい。

 群馬というと「かかあ天下」で女性の気が強いと思われがちだが、由来の一つに、養蚕などが盛んで、忙しく働いている妻に代わり子供の世話をしていた夫を見た旅人が、女性の尻にしかれていると思ったというものがある。つまり、昔から女性の社会進出や“イクメン”が当たり前に受け入れられていたのかもしれない。

 富岡製糸場では当時多くの女性が活躍していた。女工さんは全国から集まっていたが、「かかあ天下」の群馬の気質も影響していたのかもしれない。女工さんの労働環境も“スーパーホワイト”と注目されており、現代社会のさまざまな課題解決のヒントがある気がする。

【飯塚 小牧】

設立10周年式典開く、全旅連女性経営者の会

北川雅代会長があいさつ
北川雅代会長があいさつ

 全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会女性経営者の会(JKK、北川雅代会長、51会員)は4月22日、東京都千代田区のホテルルポール麹町で設立10周年記念式典を開いた。

 北川会長は冒頭、「小原健史顧問のお声掛けにより当初8人からスタートしたが、現在会員は51人まで拡大した。社会貢献など会の目的を忘れず全会員が心を一つにして、勉強していきたい」と次の20年に向けた決意を語った。

 全旅連の佐藤信幸会長は「20周年に向けては、東京オリンピックも控えており、和食や日本文化をそれぞれの旅館・ホテルでPRし、国際化に取り組んでもらいたい」と祝辞を述べた。

 JKK顧問の小原健史氏は「全旅連には青年部はあったが、女性の会がなく、女性が経営を勉強できる会をつくりたいと思った。発足のお手伝いをした者として10周年を迎えたことは感慨無量。当初はインターネットで勉強する会を考えていたが、現在は年に4、5回の定例会を開くまでに成長した。ますますの発展を願っている」と語った。

 式典では歴代会長5人が過去を振り返りながらそれぞれの期に取り組んだ活動報告を行った。基調講演では、日本ほめる達人協会理事長の西村貴好氏が「『ほめ達!』が人と組織を活性化」をテーマに登壇した。

 10周年記念式典に先立ち開かれた2014年度総会では、北川会長が掲げる活動テーマ「しなやかにしたたかに女性の力」に沿って、社会貢献委員会ではピンクリボン運動や、前期有志で訪問した岩手県大船渡仮設住宅の方々が制作した「ちりめんストラップ」の販売支援などを今年度も継続して行う。広報IT委員会は会員拡大に向けた活動などに取り組む。そのほか、事業・研修系委員会が企画するさまざまな勉強会に参加する計画だ。

“テンノウジ”の成長に期待

 大阪・天王寺にそびえる日本一高い複合高層ビル「あべのハルカス」。3月に展望室などを含め全面オープンしたばかり。先日は、安倍首相も視察したことで話題になった。

 開業1カ月の来館者数は、東京のスカイツリーには及ばないものの、目標値を上回り好調な滑り出しという。周辺の商業施設も〝化粧直し〟し、目に見えて活気づいている。大阪といえば梅田の都市開発が進み、〝キタ(北)〟が注目されがち。「キタ」、難波などを指す「ミナミ」が大阪の繁華街のツートップだが、「テンノウジ」の今後の成長も楽しみ。

 あべのハルカスの今後の課題は、首都圏、海外からの集客という。流行を一過性のものにしないよう、攻めの一手を期待したい。

【市沢 美智子】

大市場求めて首都圏進出、ツーリストトップワールド・安吉 亮(やすよし・りょう)社長に聞く

安吉  亮社長
安吉 亮社長

 ツーリストトップワールド(安吉亮社長、愛知県名古屋市)は4月7日、神奈川県横浜市に関東営業所を開設した。本拠地の中京圏で老人会旅行を得意とする同社が、さらなる大市場を求めて首都圏に進出をはかる。「人と人とのコミュニケーションを大切にする」スタイルを貫いてきた安吉社長は、「旅行業界を疲弊させてきた価格競争には参入しない」と語る。ネット予約が旅行市場にも浸透するなか、あえてアナログ的な部分で勝負を仕掛ける安吉社長に話を聞いた。
【増田 剛】

価格競争には参入しない、利益が出る良い連鎖生みたい

 ――4月に関東営業所を開設されました。

 新たな市場の可能性に賭けての事業として捉えています。本拠地・愛知県での経営が安定している今こそ次の手を打っていかなければ、現状のままの市場で勝負していても、5年後、10年後に現在の社員を養っていける保証はありません。

 首都圏でも当社の得意分野である老人会の団体旅行を中心に営業して行く予定で、新規に開設した横浜の営業所は4人体制でスタートしました。

 ――首都圏では既存の旅行会社が市場を握っているのではないでしょうか。

 当然そうだと思います。しかし、既存の旅行会社がたくさん集まっているということは、そこに市場が存在するということです。市場があるのなら我われは競争をしていくだけです。旅行会社がどんどん廃業や撤退していくようなエリアにはそもそも需要がないと判断できますので、強い旅行会社がひしめいている市場の方が営業展開するにはいいと思っています。

 一方、お客様にとっても1社より2社、3社と競い合った方が、旅行会社が良いプランを持ってくるようになります。1社独占状態の方が楽かもしれませんが、それではいずれ市場は先細りすると思います。

 ――ツーリストトップワールドの経営方針は。

 当社は料金や行程など旅行の商品では勝負しないというのが一つです。

 基本的には人と人の付き合いを大切にし、お客様が困っていることがあれば旅行以外のニーズであっても応えていきます。お客様が必要としているものをどれだけ手助けできるかという部分に大きな力を注いでいます。その結果、当社に旅行を任せていただけるなら幸せです。

 このため、価格競争には参入しません。他社が安売りに出たとしても、うちは価格を下げることはしません。愛知県でもずっとこの考え方を通してきました。たとえ安売りをして仕事が取れたとしても長続きはしません。利益がなければ会社は成り立たないし、もし安い料金で利益を出すのだったら、お客様に良い旅行を提供していないということになります。どちらの面から見ても長続きはしません。ですから、価格競争以外の部分で頑張るようにします。

 ――旅行業界をみると、年々ネット販売が大きなシェアを占めています。また、団体旅行にしても依然、大手旅行会社が力を持ち、中小旅行会社の厳しい状況は変わりません。老人会自体も減少するなど楽な時代ではありませんが、自らの営業スタイルを貫くうえで、将来をどのように展望していますか。

 これから先、老人会の旅行市場がいい状態になるとは思わないですが、無くなってしまうとも思っていません。旅行商品のインターネット販売も限りなく伸びていますが、お客様すべてがネットで旅行を申し込むわけではありません。

 旅行予約サイトと、当社のようなアナログ的な中小旅行会社のどこが違うかといえば、「お客様の目の前で直接言葉を発することができる」という部分だと思います。人は生身の人間が話す言葉に安心します。老人会の市場が残っている限り、どこかの旅行会社が必要とされます。現在10社あるところが5社に減るかもしれませんが、5社の中に入るにはどうすればいいかを私は考えていきます。

 インターネット販売では、単に「他より価格が安い」ことが大きなポイントを占めます。しかし、旅行は、そんな簡単なものではないと思います。旅行は現地の人たちとの触れ合い、ガイドさんや添乗員と同行する時間も含まれます。旅行の喜びを分かち合ったり、トラブルを回避したりするのも添乗員など人間が関与するケースが多いのも事実です。決して楽観的に捉えてはいませんが、マイナス面ばかりを見てもいません。

 10年前、15年前も旅行業界は厳しいと言われていましたが、自分たちの強みをどうやって伸ばしていくかを考え、人と人とのコミュニケーションで勝負し、やるべきことをしっかりとやっていくことが一番大事だと思っています。 

 価格競争で旅行業界が疲弊してしまったのは旅行会社自身の責任だと思います。安くする方が楽です。しかし、1千円の利益で1人の社員を雇うより、2千円の利益を出して社員を2人雇う方が社会のためにもなりますし、本来、企業は雇用を生んでいく役割を担っているのです。旅館やホテルにも利益が出るように良い連鎖を生んでいきたいと思います。

 ――今年7人の新入社員を迎え、若いスタッフが多いですが、会社の考え方をどのように伝えていますか。

 会社説明会から面接も4次、5次まで行い、私が説明します。入社後には5日程度の研修も実施します。現在当社が取り組んでいることや、これからの経営計画を率直に話すことで離職率も減り、会社のビジョンに魅力を感じてもらえる人を選ぶことができます。

 また、社員の添乗員には、バスガイドさんの手腕に頼り切らずに、「自分の話術も磨け」と話しています。理想としては、ガイドさんの代わりになれるくらいにスキルを上げていくことも大切だと思っています。私も入社当時は上手なバスガイドさんの真似をしました。ガイドさんの話し方でお客様が笑ったポイントやコースの説明ですごいと思った部分はメモして、次に自分がそのコースを通ったときに実際にやってみました。お客様の反応を見て、「こういう話し方がいいのか」と学んでいくことはそんなに難しいことではないと思います。

 当社の社員は営業だけでなく、添乗のスキルも上げなければならないので、きついかもしれませんが、だからこそ人間に価値が生まれ、その人に魅力が備わり、その人と旅行に行きたいと思っていただけるのではないかと考えています。そういう社員が何人いるかが会社の財産になるのだと思っています。

 当社では担当を2人体制にしており、どちらのスタッフが行ってもお客様にとって話しやすいように対応しています。地域に根付いていくことを当社の目標としており、お客様とのコミュニケーションの部分で深く根付いていきたいですね。

新社長に高橋広行氏、グローバル戦略強化へ(JTB)

高橋新社長(左)と田川社長
高橋新社長(左)と田川社長

 JTBは4月25日に開いた取締役会で3期6年務めた田川博己社長に代わり、常務でJTB西日本社長の高橋広行氏の社長就任を内定した。正式には6月30日開催予定の定時株主総会、取締役会後に就任する。田川社長は代表取締役会長に、佐々木隆代表取締役会長は相談役に就任する。

 同日、JTBは国土交通省で記者会見を開き、高橋新社長は「佐々木―田川社長の経営理念を踏襲しながら、アジアを主戦場としたグローバル戦略を強化していく」考えを示した。
【次号詳細】

 高橋 広行氏(たかはし・ひろゆき)1957年生まれ。57歳。79年関西学院大学法学部卒業後、日本交通公社入社。07年JTB中国四国常務広島支店長、10年4月JTB執行役員旅行マーケティング戦略部長、12年6月取締役(兼執行役員)旅行事業統括、CS推進担当。現在常務(兼執行役員)、JTB西日本代表取締役社長。6月にJTB代表取締役社長に。

22・6%増の105万人、単月でも過去最高に(3月の訪日客)

3月の訪日外客数総数

 日本政府観光局(JNTO、松山良一理事長)はこのほど、3月の訪日外客数推計値を発表した。3月の訪日外客数総数は前年同月比22・6%増の105万500人で、13年7月の100万3千人を上回り、年間を通じて単月としても過去最高を記録した。1―3月の累計では前年同期比27・5%増の287万4500人と過去最高のペースで推移している。

 春の桜シーズンに向けた訪日旅行プロモーションの効果に加え、東南アジアでのビザ緩和効果、中国などからのクルーズ船の寄港などが訪日外客数の増加につながった。

 市場別では、中国、台湾、香港、シンガポール、マレーシア、インドネシア、ベトナム、インド、フランス、ロシアが3月として過去最高を記録。タイは年間を通じ単月としても過去最高を更新した。

 重点市場をみると、韓国は、同7・2%減の19万2100人と、3月としては13年に次ぐ過去2番目の訪日客数となったが、2月に引き続きマイナスの伸び率となった。大手航空会社を中心とした座席供給量の減少が要因だ。

 春の桜鑑賞を目的とした訪日旅行が好調な台湾は、同41・4%増の20万8500人と、3月の過去最高を更新。年初からのLCC新規就航や増便、チャーター便の運航により座席供給量が増加し、東京、大阪などの都市部への訪日旅行需要が高まっている。4月も引き続き各旅行会社が造成する観桜ツアーが充実し、期待が持てる。

 中国も同80・1%増の18万4200人と3月の過去最高を更新。個人旅行、団体旅行ともに拡大傾向で、13年9月から7カ月連続で過去最高を記録している。

 香港も同8・4%増の6万4400人と3月の過去最高を更新した。例年3月前半は、旧正月休暇と桜シーズンの間の閑散期となるが、今年は都市部でのショッピング目的の個人旅行が人気だった。

 そのほか、東南アジア諸国も好調で、タイは同58・5%増の7万1100人と、これまで単月として過去最高だった13年10月を上回り、年間を通じ単月としても過去最高を記録した。桜の鑑賞目的の訪日ツアーと、ピーク期の4月の旧正月を外した個人旅行が好調で、企業インセンティブ旅行も引き続き好調だった。また、ベトナムは12年1月から27カ月連続で毎月の過去最高を更新中だ。

 なお、出国日本人数は同3・5%減の159万5千人となった。