就業体験で国の奨励賞、南三陸ホテル観洋が受賞

松島高校の就業体験
松島高校の就業体験

 宮城県・南三陸温泉の南三陸ホテル観洋は、文部科学省主催の2015年度「青少年の体験活動推進企業表彰」で審査委員会奨励賞を受賞した。表彰各賞で33社が選ばれたが、宿泊業での受賞は同館が唯一。

 企業が社会貢献活動の一環で実施した、青少年の体験活動のなかから優れた取り組みを表彰するもの。震災後に取り組む中・高・大学生を対象にしたホテル就業体験が評価された。とくに昨年7月は、宮城県松島高校の生徒8人が、1カ月間に渡る長期実習に臨んだ。実際の勤務時間に則り、清掃、給仕、接客業務を行ったほか、震災を風化させないために運行を続ける「語り部バス」への乗車や、地元に点在する商店を紹介する「南三陸てん店マップ」の取材活動なども経験した。

 同館はこれまで、地元中・高校の短期研修から県外大学のインターンシップなど、400人以上の実習を受け入れている。

岩手県北自動車、2つの定観バス運行

ボンネットバス運行日も
ボンネットバス運行日も

 岩手県北自動車(岩手県盛岡市)は今春から盛岡や周辺観光地を巡る定期観光バスの運行を2コースで開始、懐かしいボンネットバスでの運行日もある。

 「懐かし通り 城下もりおか号」(大人2千円、子供1千円)は盛岡駅を午前9時に出発。南部古代型染の「小野染彩所」、石川啄木が新婚時代過ごした「啄木新婚の家」、国指定重要美術品の上の橋に施された擬宝珠、古い商家などの風景が残る紺屋通りを見学、午後12時20分に盛岡駅に戻る。紺屋通りでの2時間はフリータイム。運行日は4月29日―9月30日の土曜・日曜・祝日(5月5日までと6月23日―7月5日、10月2―10日は毎日運行)。また、ボンネットバスの運行日は4月29日、5月1、3、5、7、15、21、29日、6月11、19、25日、7月2、10、17、18、24、30日、8月13、20、21、28日、9月3、10、11、25日。

 「もりおか酒蔵・鉄器・町屋と小岩井号」(大人3千円、子供1500円)は午後1時40分に盛岡駅を出発。盛岡の酒蔵「あさ開」で専門ガイドによる案内付きで工場見学の後、大慈寺界隈を散策。その後南部鉄器工房でショッピングを楽しみ、小岩井農場に向かう。ここで約45分見学し、午後5時35分に盛岡駅に戻る。

 運行日及びボンネットバス運行日は「懐かし通り 城下もりおか号」と同じ。

 2コースは午前、午後に分かれているので、1日かけて盛岡観光を楽しむこともできる。

 大阪府泉佐野市の「関西エアポートワシントンホテル」(東京都文京区)が3月14日に東京地裁に申請していた特別清算が、17日に決定した。東京商工リサーチによると、負債は約28億8700万円で、親会社からの借入金が大半を占める。

 同社は、東証1部上場のホテル・レジャー施設経営大手「藤田観光」(東京都文京区)の100%子会社として設立され、2000年4月に開業した「関西エアポートワシントンホテル」の運営を手掛けていた。関西国際空港の入口にあたる「りんくうタウン」の立地や、「ワシントンホテル」の知名度も生かし、14年12月期には売上高約18億7500万円を計上していた。

 しかし、「りんくうタウン」自体の集客力が低迷するなか、同社の業績も想定を下回り、同期には33億9200万円の債務超過に陥っていた。こうしたなか、藤田観光グループ組織の再編が行われ、16年1月1日付で関連会社の藤田ホテルマネジメント(現:WHG関西、京都府京都市)に全事業を譲渡し、同社は1月28日付で株主総会の決議によって解散していた。

 なお、「関西エアポートワシントンホテル」はWHG関西が継続して運営している。

No.427 ANTA国内観光活性化フォーラム、地域と連携し強い絆を

ANTA国内観光活性化フォーラム
地域と連携し強い絆を

 全国旅行業協会(ANTA、二階俊博会長)は3月17日、鹿児島県鹿児島市の鹿児島アリーナで「第11回国内観光活性化フォーラムinかごしま」を開いた。地域と旅行会社が現地で直接交流し強い絆を結ぶことにより、地域に根差した着地型旅行商品”地旅”を創出する機会を作りやすくするという交流型イベントだ。18日には㈱全旅主催の「第2回地旅博覧会inかごしま」も開かれ、両日で記念講演や表彰式、ブース出展などさまざまな催しが行われた。

【丁田 徹也】

 
 
 
 主催者あいさつで二階会長は地旅(着地型旅行)の取り組みについて「心と心が通う旅行商品」を創り出すことの重要性を訴えた。「魅力ある旅行商品を販売していくためには、ますます各地域の皆さんとの交流が必要だと考えている。地元の行政や観光関係者と連携を取り、地域の歴史・文化・資源・食材などの特色を活かした新たな旅行商品を作り、ANTAのネットワークを活かして送客する着地型旅行――“地旅”を創り出すために、常に知恵を絞っていかなければならない」と力説した。

 ANTAは2003年から「国内旅行活性化フォーラム」を全国で展開し、着地型旅行をPRしてきた。二階会長は「フォーラムを通じて地元の観光関係者とANTA会員、海外からの旅行関係者が強い絆で結ばれてほしい。皆様と絆を結び、国内観光の活性化や地域振興に努め、旅行業界の発展に寄与していきたい」と意気込んだ。

 鹿児島県知事の伊藤祐一郎氏は鹿児島来県を歓迎し、「日本初の世界自然遺産の屋久島や活火山の桜島、良質な温泉、豊かな食材など多彩な魅力にあふれ、お越しいただいた方に最高の思い出を提供できる」と県の魅力をPRした。

 18年に明治維新から150年の節目を迎えるに当たり、同県は大規模イベントを控えるほか、奄美・琉球の世界遺産登録に向けた活動を進めるなど、観光への取り組みが一段と進んでいる。伊藤知事は「多様化する観光客のニーズに対応した着地型観光を進め、鹿児島の魅力を国内外に広く発信する。鹿児島県は第1次産業と観光業を明確に産業の柱としている。観光業の進歩は鹿児島県の発展そのものでもあるので県としても精いっぱい力を入れていく」と地旅への期待を語った。…

 

※ 詳細は本紙1624号または4月7日以降日経テレコン21でお読みいただけます。

旅のプロ ― 意識的に「リスク」を回避している

 旅慣れた人――と言えば、故・森本剛史氏を思い浮かべる。

 森本氏とは、マレーシア・ボルネオ島のキナバル山(4095メートル)に登ったときに出会った。「ちょっとコンビニに行ってくる」ような格好の私とは違い、森本氏はすでにキナバル山への登山の経験もあり、登山靴を履き、メンバーが疲労したときに配る甘いお菓子やレインコート、登山酸素吸入器も準備していた。ずぶの素人である私は無事登頂できたものの、「登山自体をナメていた」ので、相当に危険な目にも遭った。   

 登山前夜、松明の焚かれたリゾートホテルで登山隊のメンバーである旅行会社の社員や、カメラマン、私のような旅行関連メディアらが夕食を囲み、明日登るキナバル山の話に花が咲いた。スタンド・マイクで女性ボーカリストがカーペンターズの「マスカレード」を気怠るく歌い、夜は更けていった。自然なかたちで話の輪の中心には、誰よりも旅慣れた森本氏がいた。

 キナバル山の登山から2週間ほど経ってから、再びそのメンバーが東京・新橋の酒場に集まった。声を掛けたのは、やはり森本氏だった。多くの写真を見せ合い、思い出話で盛り上がった。旅の楽しみの一つに、酒を飲みながら思い出を共有することもあるのだなと、感じた。

 その酒場で、森本氏がこれまで巡った世界各地の写真を見せてくれた。陰鬱な感じの街並み、青い海、祭りなどさまざまな写真があった。そして、メンバーの女性の1人が森本氏に「世界中でどこの海が一番綺麗でしたか?」と聞いた。

 森本氏は間髪入れずに「沖縄」と答えた。

 私はそれ以来、世界一綺麗な海は沖縄だと信じている。未だ多くの美しい海を見ていない私にとって、世界中の海を見てきた、信頼できる旅人が、「沖縄!」と断言したからだ。私もそれから何度も沖縄を訪れたが、「世界一綺麗な」という目で沖縄の海を見ている。晩年代官山蔦屋書店で旅行書のコンシェルジュをされていた森本氏は14年9月22日に亡くなった。会いに行こうと思った矢先だった。

 航空機事故や、海外でトラブルに巻き込まれたというニュースを見ていると、「初めての海外旅行で……」「飛行機は滅多に乗らないのに……」など耳にすることがある。一方、毎日のように世界中を飛び回るビジネスマンなのに大きなトラブルとは縁がないように見える人もいる。運命の不公平を感じるが、これは実力の差である。旅慣れた人たちは、ちゃんと意識的にリスクを回避しているのだ。経験上「嫌な予感のする航空会社や航空便には乗らない」「今はこのエリアのホテルはやめよう」など磨かれた直観や情報管理によって行動する。私のように「ちょっとコンビニまで……」のような格好で4千メートル級の登山をする輩は、たまたま無事生還したものの、自らリスクを呼び寄せているようなものだ。

 JATAなどが主催した「テロ遭遇時の旅行会社の対応」セミナーで、越智良典理事・事務局長は、テロが発生して危険だからとツアーを避けていては、一般のお客様と同じ。「旅のプロ」である旅行会社は徹底した情報管理によってリスクを下げることが仕事だと言い切った。不安定な国際社会のなか、旅慣れた「旅のプロ」である旅行会社は今こそ「本来の力を発揮できる環境になった」と考えるべきだ。

(編集長・増田 剛)

ほのぼの民泊増加、規制強化策の新提案も

日仏代表者らが積極的に意見交換
日仏代表者らが積極的に意見交換

―民泊の真実―
今、観光立国フランスで起こっていること

 ほのぼの民泊増加――。全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会(北原茂樹会長)と日本旅館協会(針谷了会長)は3月17日、東京都内で「緊急フォーラム 民泊の真実~今、観光立国フランスで起こっていること~」を開いた。観光立国フランスでは、昨年11月のテロ事件の際、テロリストの主犯格が民泊を利用していたことが伝えられ、それにともないフランス政府が民泊に対する規制を強化し始めている。その一方で、日本では訪日客の急増により、宿泊施設の客室不足を民泊によって埋め合わせるべく、積極的な導入に向け審議がすすめられているが、フランスでのテロ事件など民泊の安全性が問われるなかで、早急なルール作りが「安心・安全」を左右するとみられる。
【松本 彩】

 同フォーラムは2部構成で行われ、第1部ではホテル職業産業連合(UMIH)ホテル部門会長のローレン・デュック氏、フランスのホテル・レストラン・カフェ・ケータリング全国協会(SYNHORCAT)エグゼクティブ・ディレクターのフランク・トゥルエ氏が「今、観光立国フランスで起こっていること」と題し講演を行った。フランスの民泊は〝コラボレーティブエコノミー=分かち合いの原理〟という相互補助の新しい経済モデルとして成長を遂げてきた。フランスでは、フランス人の10人中9人が民泊を利用したことがあると回答するほどだ。

 同原理はデジタルプラットフォームの発展により飛躍的進歩を遂げてきたが、規制の外に存在するもので、近年Airbnbによる同一アカウントによる複数の物件の確保など、ビジネス面で悪用され「まやかしのコラボレーティブエコノミー」へと転じてしまっている。

 デュック氏は、このような現象によって消費者がさまざまな危険にさらされている現状について「ホテルでは、24時間管理体制が敷かれているが、民泊物件には消費者保護が何もない」と訴え、UMIHのアクションとして、積極的に消費者への注意喚起イベントなどを行っていくと述べた。また、トゥルエ氏も現状の解決策として、ホストに対し、「各種義務を守り、確定申告をすること」、デジタルプラットフォームに対し「オーナーの許可」「ホストの所得を税務署に送る」などの提案を行う必要があると伝えた。

 第2部では「民泊のあり方について」パネルディスカッションを行った。パネリストとして引き続きデュック氏とトゥルエ氏が登壇したほか、全国独立企業団体(GNI)のディディエ・シュネ会長、衆議院議員で自由民主党観光立国調査会観光基盤強化に関する小委員会事務局長の上野賢一郎氏と全旅連の北原会長も登壇。コーディネーターを東洋大学国際地域学部国際観光学科准教授の徳江順一郎氏が務めた。

 はじめにコーディネーターの徳江氏から「民泊の安心・安全性」に関する議題が与えられ、シュネ会長はゲストが危険にさらされる原因の1つとして、“匿名性”が大きく影響していると主張。「匿名性ゆえゲストが暴行など危険な場面にさらされたとしても、警察はその事実が明確にならない限り、追及することができない」と現況を明らかにした。

 上野氏はシュネ会長の報告を踏まえたうえで、民泊を進めていくうえでの重要性について(1)匿名性の問題(2)近隣住民との合意(3)行政機関とのシステムづくり――の3つを指摘。「日本では、『友人に貸しているだけ』などという理由で言い逃れる“ほのぼの民泊”が増加してきている。このような事態が今後起きないようにするためにも周辺住民との合意は不可欠である」と述べた。

 また、「民泊の不平等性とその解決策」について北原会長は、日本においてデジタルプラットフォーマーが事業を行う場合、日本の法律に基づき旅行業の登録を行うべきであると訴え、「このことは国内のOTAにも当てはまること。Airbnb以外にもデジタルプラットフォーマーが増えてきている今、規制を高め旅行業のくくりのなかに入れてしまうことが必要である」とし、今後政府に対しホスト側の対応を含め、新たな規制強化策を提案していくとまとめた。

新社長に日紫喜氏、神應氏は取締役相談役に(名鉄観光サービス)

 日紫喜俊久社長
日紫喜俊久社長

 名鉄観光サービスは3月22日に開いた定時株主総会と取締役会で、日紫喜俊久常務が新社長に昇格する人事を決めた。神應昭社長は、取締役相談役に退く。

 日紫喜 俊久氏(ひしき・としひさ) 三重県出身62歳。1976年3月立命館大学経済学部卒業後、名鉄観光サービス入社。10年3月取締役中四国営業本部長、11年3月取締役関西営業本部長、12年3月常務関西営業本部長、14年3月常務中部営業本部長兼商品事業本部長を経て、16年3月代表取締役社長に就任。
 
 
 
 

「テロ遭遇時の旅行会社の対応」など探る、常態化するテロのリスクを下げる(JATA)

(左から)中原氏、矢嶋氏、山下氏、大西氏
(左から)中原氏、矢嶋氏、山下氏、大西氏

 日本旅行業協会(JATA)は3月18日、東京都内で㈱ジャタ、日本アイラックと「重大事故支援システムセミナー」を開いた。「パリ同時多発テロ後の国際情勢とISの動向を踏まえ、旅行会社の緊急対応を考える」をテーマに、JATA団体保険の存在や、リスクマネジメント意識を高める必要性を求めた。22日にはベルギーで同時多発テロが発生、今後常態化するテロのリスクや脅威を知りながら、リスクを下げる情報管理と安全対策が信頼をかち得ることになるという。
【増田 剛】

菅原出氏
菅原出氏

 セミナーの冒頭、JATAの越智良典理事・事務局長は「フランスのテロなど世界各地でさまざまな事件が起きるたびに、逆に旅行会社の役割が求められる」とし、「インターネット時代には一般のお客様とは違う、プロの旅行会社として情報を管理し(1)企画力(2)斡旋力(3)安全対策――を磨いて高めていかなければ旅行会社は生き残れない。テロのリスクはどこでもあるが、より治安のよいホテルを選んだり、事前に危険な日や場所の情報を得ることによって、リスクを下げ、乗り越えていくことはできる」と語った。

 講演会には、国際政治アナリスト・危機管理コンサルタントの菅原出氏が登壇。ISの動向など歴史的な経緯から説明しながら、「無差別テロの実行犯は命がけ。命乞いをしても意味がなく、とにかく犯人から遠ざかるしかない」とアドバイス。さらに「米国主導の有志連合による対IS作戦により、シリア・イラクのIS支配地域は大幅に縮小しており、『本丸』は劣勢。一方で本丸に渡航した外国人戦闘員を出身国に帰還させてテロを起こさせる傾向が強まっており、『帰還兵』の脅威は『ホームグローン』よりもはるかに高い。先進国においてパリ同時多発テロのような大規模テロが起こる可能性は十分にあり、テロのリスクは今後常態化する」と語った。そのうえで「インパクトは大きいが、交通事故に比べてもテロに遭う比率は小さく過剰に恐がる必要はない。ただ、テロの脅威やリスクを認識しておくことが大事」と述べ、旅行会社には「『移民が多いエリアや治安の悪いホテルは選んでいません』『事前調査で安全な経路を選んでいます』などの対策やセキュリティ基準などを示すことが信頼につながる」と強調した。

 パネルディスカッションでは、日本アイラック部長の山下寿人氏、東京海上日動火災保険課長の中原隆氏、JATA広報室長の矢嶋敏朗氏が登壇。モデレーターは(株)ジャタ社長の大西誠氏が務めた。

 山下氏は緊急事故への社内の準備として「重大事故発生後、マスコミが勝手に事務所に入って来て書類を持ち出したり、海外からの電話に録音機を押し付けてきたりするのを防ぐために、オフィスに入って来ないよう徹底する必要がある」と指摘した。

 保険会社からのアドバイスとして中原氏は、海外旅行中の病気や怪我による病院搬送などで2千万円ほどかかった事例も発生しており、「ツアーを企画・手配した旅行会社で海外旅行保険に入ってもらうと、お客様だけでなく自社を守ることにもなる。仮に加入されなくても、少なくともお客様に保険を勧めたという履歴は残しておいた方がいい」と述べた。

 矢嶋氏は「JATA広報委員会で緊急時対応マニュアルを作成し、ホームページにも掲載しているが、7月ごろに同マニュアルの説明会を予定している」と報告した。

祝、北海道新幹線開業

 3月26日、北海道新幹線が開業した。東京―新函館北斗間の所要時間は最速4時間2分。飛行機より新幹線を選ぶ目安と言われる「4時間の壁」は破れなかったが、2年後を目途に、貨物列車を走らせない時間帯を設けることで、1往復だけ3時間40分台で運行する計画もある。

 航空会社側も、割引料金の拡充を迫れられた昨年の北陸新幹線開業時とはずいぶんようすが違う。まずは静観、ツアーなどではJR(新幹線)との提携も見られる。

 飛行機と違い、途中下車できるのは新幹線ならでは。津軽半島や松前、江差を楽しめる企画乗車券の発売も望みたい。青函圏にはたくさんの魅力があるが、主観で1つ選ぶなら松前の「のりだんだん」推しで。柔らかくて香りのいい白神産・寒海苔を使ったのり弁当です。

【鈴木 克範】

秋に試行試験実施を、インバウンドスタッフ検定(TCSA)

山田隆英会長(右)と三橋滋子専務理事
山田隆英会長(右)と三橋滋子専務理事

 日本添乗サービス協会(TCSA、山田隆英会長、47会員)は3月17日、東京都内で2016年度の通常総会を開いた。今年度はインバウンドスタッフの検定制度の構築を行い、秋ごろに試行試験の実施を目指す。

 総会後に開いた会見で山田会長は昨年度の事業について、国が基準を満たした派遣事業者を「優良事業者」として認定する「優良派遣事業者認定制度」の審査認定機関としてTCSAが審査業務を開始したことを報告。また、従来からの「旅程管理研修」は受講者が減少傾向にあったが、インバウンドを扱う旅行会社の受講者などが増え、前年を上回ったという。一方、外国人観光客数が増加するなかで「添乗業界には恩恵が行き渡っていない」と述べ、今年度から開始する検定制度などで訪日事業を強化していく方針を語った。

 同検定制度は厚生労働省から「業界検定スタートアップ支援事業」を受託し、昨年度から2年かけてインバウンドスタッフの育成と能力評価を行う仕組みの構築を目指すもの。昨年度は事業を進めるうえで専門委員会を立ち上げ、観光庁参与の本保芳明氏が委員長を務めている。同検定で育成する人材は通訳ガイドとは異なるもので、空港からホテルやタクシーまでの送迎などを行う業務を想定する。訪日外国人に対する観光おもてなしスキルをはかる唯一の検定制度となるため、宿泊機関や交通機関など広く活用してもらうことを目指す。検定は1―3級で、「語学能力」「旅程管理能力」「おもてなしスキル」を柱に据える。

 三橋滋子専務理事は海外旅行の減少やFIT化などで、年間を通して安定した添乗の依頼が難しいことから「インバウンド事業を開始する会員が増えてきている」と紹介。新事業で協会が組織的に人材を育成し、最終的に「検定を国家資格まで高めたい」と意気込んだ。

 このほか今年度は、派遣法改正で派遣労働者に対してキャリアパスに応じた研修を実施することが義務化されたことから、スキルアップのためのE―ラーニング研修メニューを提供する。会員会社の添乗員が自ら選んで8時間相当の研修を受講できるよう整えていく。

移動と食が融合へ、レストランバスを開発 (ウィラー×umari)

古田社長(左)と村瀬社長
古田社長(左)と村瀬社長

 ウィラーグループの地域商社、ウィラーコーポレーション(村瀬茂高社長)はこのほど、コンサルティングや地域活性化事業などを手掛けるumari(古田秘馬社長、東京都港区)と協働で、景色を楽しみながら地方の旬の食材を味わう、移動と食が融合した「レストランバス」を開発した。4月30日から新潟で運行を開始する。

 同バスのコンセプトは「オープントップバスならではの絶景を楽しみながら、その土地の生産者や料理人と交流をして旬な食材を楽しむ」。生産者や地域の人々、初めて見る食材、料理との出会いを創造し、旅行者に新たな感動を提供するのが狙い。農園で新鮮な食材を採取するなど体験も盛り込む。食材や調理法、食の歴史や文化など、「食」に関わるものはumariが担当し、移動はウィラーが担う。

レストランバス
レストランバス

 内装は1階がキッチン、2階は25人が乗車できる座席とテーブルを配している。屋根は開閉式のポリカーボネートで日差しが強いときはロールスクリーンで遮ることができる。また、1階のキッチン部分は窓を大きく取り、外からも調理風景が見られるような演出を施した。

 また、ウィラートラベルとumariはウィラートラベルサイト内に、食と移動を融合させた新たな食の体験コンテンツを集めた「NIPPON Travel Restaurant」(NTR)を開設。地方の隠れた魅力を伝えることで、地方創生に貢献する。当初はレストランバスと京都丹後鉄道の食堂列車「丹後くろまつ号」を掲載し、今後、コンテンツを拡充していく。

 さらに、ウィラーコーポレーションと投資事業を展開するumari capitalは、日本初の鉄道ファンのアイディアを実現する投資型鉄道ファンド「丹鉄ファンド」を設立。全国からアイディアを募り、採用された案件に投資することで、ウィラートレインズが運行する京都丹後鉄道を核とした駅ナカや車内、沿線の価値向上を目指す。また、沿線の地方創生を進めるには人材の育成と確保が不可欠なことから、「鉄道ビジネススクール」を開講し、ここでもいいアイディアが挙がれば投資していく考えだ。ビジネススクールは5月下旬から沿線や首都圏で開講予定で、費用は3万円。

 3月15日に東京都内で開いた会見で村瀬社長は、旅行の目的は日本人も外国人観光客も「食」が大きな要素を持っていることから、食を楽しみながら観光地をめぐるレストランバスは需要が大きいことをアピール。NRTについても「地域の体験や食のコンテンツを増やし、各地方に行ったときに観光と食、ショッピングを楽しみながら同時に移動も便利になるようにしていきたい」と意気込みを語った。

 一方、古田社長はこれまでさまざまな地域活性化事業を手掛けている観点から「現在の日本における地方創生の必要性」を語った。そのなかで、重要なのは「これまでは過去を見せる観光だったが、今後の観光は未来の可能性に関わってもらうこと」と主張。地域ブランドは地域の取り組みや人々そのもので、長期的、継続的に顧客との関係を結ぶため双方向のストーリーを作り、顧客を巻き込んだ「関係地づくり」を促すことが大切だと強調した。