「行きやすい街」、首都圏で魅力PR(名古屋市)

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 名古屋市東京事務所は10月17日、本紙を訪れ名古屋市の魅力をPRした。来社したのは名古屋市東京事務所主事で企業誘致・調整・ナゴヤ魅力向上を担当する近藤真由美氏と同主事の小林勇太氏、名鉄東京センター所長の町田正和氏。

 名古屋市は名古屋市観光文化交流局が7月に行った「都市ブランド・イメージ調査」で、8都市中(札幌市と東京都区、横浜市、名古屋市、京都市、大阪市、神戸市、福岡市)「最も魅力に乏しい都市」という結果が出た。これに対し近藤氏は、「私たちは名古屋市に対して、誇りを持つべき。薦められる見どころは沢山あるので、今後のPRを頑張っていく」と力強く回答。また小林氏は、「名古屋は行きやすい街なので、気軽に来てほしい。実際リピーターになってくれる人は多いので」と、魅力をアピールした。

 名古屋市内の観光では、味噌カツやひつまぶしなどの「名古屋めし」と呼ばれる食べ物に関係する問い合わせが多いという。また、訪日外国人観光客の「熱田神宮」と「名古屋城」を訪れる人数も多い。一方で、「方向性がバラバラで、核が欠けているのでは」という課題も聞かれるという。また市内には外に発信しきれていない魅力的な観光資源が沢山あることに触れ、「外に発信するのが苦手な市民性もあるかもしれない」と、今回の結果を振り返った。

 名古屋市内では10月29日から、「やっとかめ文化祭」が始まった。期間は11月20日までで、「時をめぐり、文化を旅する、まちの祭典。」をテーマに市内各地でミニツアーや辻狂言などのイベントを行う。詳しくはやっとかめ文化祭実行委員会ホームページ(http://yattokame.jp)まで。

(左から)近藤真由美氏、町田正和氏、小林勇太氏
(左から)近藤真由美氏、町田正和氏、小林勇太氏

【10月30日】鴨川の食の祭典、「鴨川食フェスタ」を開催(千葉県)

鴨川市食フェスタ

 千葉県鴨川市の市民会館前で10月30日、鴨川の食をテーマにしたイベント「鴨川食フェスタ」が開かれる。鴨川の秋の訪れを告げる食の祭典で、時間は午前10時―午後3時まで。雨天決行。

 会場では、外房沖の金目鯛を使った数量限定のキンメ料理、地元商店自慢の料理や地酒、特産品などを販売するほか、海鮮磯浜焼きBBQコーナーが用意される。さらに会場本部にて、ハロウィンの仮装をした先着50人に限り、会場内で利用できるクーポン券をプレゼントする。

 そのほか、鴨川市では10月から「鴨川キンメ祭り」を開催。市内飲食店や宿泊施設36店舗で、煮付けや刺身などのキンメ料理を堪能できる。期間は11月30日まで。

 問い合わせ=鴨川食の祭典実行委員会 鴨川市観光課 電話:04(7093)7837。

【イベント概要】
■期 間 : 10月30日(日)
■時 間 : 午前10時~午後3時
■会 場 : 「千葉県鴨川市市民会館(千葉県鴨川市横渚808-33)」前
■交 通 : 外房線・安房鴨川駅から徒歩約3分
       ※車の場合は、「フィッシャリーナ鴨川 臨時駐車場」を利用できる。
■内 容 
 ◎早いもの勝ち!絶品キンメ料理を数量限定販売!
  外房沖で釣り上げた金目鯛を使った絶品キンメ料理を数量限定販売!
 ◎ご当地“店自慢”グルメコーナー
  地元商店自慢の絶品料理や地酒など、鴨川のウマいもんが大集合!
 ◎鴨川こだわり物産市場
  鴨川の美味しい鮮魚、長狭米の新米や旬の野菜など農水産物、特産品を販売!
 ◎海鮮磯浜焼きBBQコーナー

そのほか、会場本部でハロウィン仮装者先着50人に、会場内で利用できるクーポン券をプレゼントする。

イベント詳細は鴨川市ホームページ(http://www.city.kamogawa.lg.jp/)から。

【11月9日まで】愛知なごやめしフェア開催中、宿泊券プレゼントキャンペーンも

愛知なごやめしフェア

 和麺レストランなどを運営するサガミチェーン(愛知県名古屋市)は、関東地域の店舗で「愛知なごやめしフェア」(愛知県観光協会共催)を11月9日まで開催している。愛知を代表する「なごやめし」や名産品を販売するとともに、宿泊券や名産品が当たるプレゼントキャンペーンなども実施する。

 開催店舗は、中京圏を中心に展開する「和食麺処サガミ」の関東店舗と、関東を中心に展開する「味の民芸」の全店舗の計81店舗。期間中、味の民芸ではきしめんや味噌カツ、日本三大地鶏の名古屋コーチンを使用した親子丼などを提供する(一部店舗では内容が異なる)。

 プレゼントキャンペーンは、開催店頭設置の応募はがきにより、愛知県内にある宿泊施設のペア宿泊券、サガミグループで利用できる食事券(2千円分)などが抽選で当たる。

【イベント概要】
■期 間 : 10月6日(木)~11月9日(水)
■実施店舗: 「和食麺処 サガミ」 26店舗(東京・埼玉・神奈川の全店舗と静岡の一部店舗)
        「手延べうどんと和食 味の民芸」 全55店舗
        ※販売メニューや実施内容は一部店舗で異なる。
■内 容 
 ◎なごやめしフェア
  代表商品の紹介
  「和食麺処 サガミ」
    ・「みそ煮込」 910円(税別)
    ・「国産うなぎのひつまぶし」 2,900円(税別)
  「手延べうどんと和食 味の民芸」
    ・「なごやコーチン丼」 1,280円(税別)
    ・「なごやご膳」 1,560円(税別)
  など。
 ◎愛知県 名産品販売
  愛知県の名産品を期間限定で販売する。※一部店舗では販売商品が異なる。
 ◎プチ観光案内所
  愛知県内の名所をパンフレットやポスターで案内。
 ◎あいちプレゼントキャンペーン
  愛知県内宿泊施設の「宿泊券」や名産品、サガミグループ食事券などが当たるプレゼントキャンペーン。
  店頭設置のはがきにより、誰でも応募が可能。

研修義務化や試験見直し、「通訳案内士制度のあり方」中間とりまとめ

 観光庁は9月29日、東京都内で第18回「通訳案内士制度のあり方に関する検討会」を開いた。これまでの検討会を踏まえ中間とりまとめ(案)が提出された。名称を「(国家)認定通訳案内士(仮称)」へ、また研修受講の義務化や試験制度見直しなどが示された。

 今回の中間とりまとめで、「日本の歴史文化に正確な知識を有し、外客に満足度の高い案内を行う者」と、観光交流の重要な存在で憧れの職業になるように、新たな位置づけが明確化された。

 このため、具体的な見直しの方向性が多く提示された。

 試験制度は現場で求められる知識を問う試験に見直すため、法改正をまたず有識者らの検討会を立ち上げる。来年度の試験から検討結果を反映させていく。

 研修制度は登録を受けた案内士に対し3―5年ごとで、国の登録を受けた機関で定期的な研修を義務づける。研修受講がない者は登録抹消など措置を講じ、質の維持を担保していく。非有資格者も同様の研修を受講するなどをし、質の向上をはかるべきだとされた。

 また、美術館や博物館などの関係機関に対し、国、自治体から入場料の減免などの優遇的な対応を進めていく。案内士団体からは、日本の文化歴史などの質の高い紹介を実現する観点から必要と声が上がっていた。

 ツアー関わる手配などを行うランドオペレーターに対しては、適正な指導、監督ができる制度を導入する。合わせて、登録された案内士を可能な限り手配するように、ガイドラインなどで指導していく。

 地域ガイド制度は、現行の制度が業務独占を前提としていたため、これを見直す。法令で整備された特例制度を整理していく。なお、現行の地域ガイドは、改正後も地位を確保するように経過措置をとっていく。

 同制度は1948(昭和23)年に通訳案内士法として創設。およそ60年ぶりの大きな制度改正で、緩和後は原則だれでも有償で通訳案内が可能になる。これにともない、外客に対する安全の確保や、旅行の質の維持、向上が必要となってくる。

 観光庁は多くの制度を見直し提示したが、一方で制度改正後は、状況をよく把握し必要に応じて適正に対応を講じていく構え。観光地域振興部の加藤庸之部長は「なにか問題が出れば、その都度解決していく」と強調。 

 また、今回の検討会を踏まえ「法律の骨格をしっかりと作り、その後、政令や省令、ガイドラインも作成していく」と述べた。制度の細部にあたる建てつけの部分は、引き続き各委員らと相談し詰めていくと話した。

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人によるサービス ― 接し方の多様性こそがおもてなし

 日常生活において、仕事上の必要性や、家族との会話を除くと、知らない人とはほとんど会話をしていないことに気づく。東京近隣に住み、都心に向かう通勤電車や、ターミナル駅などで数千人とすれ違う毎日でありながら、誰とも会話を交わすことなく、視線すら合わせない。

 だから、都会の片隅で、たまたま知り合いに出会いでもしたなら、奇跡的な再会のように驚きの声を上げ、感激したりもする。それほどまでに、人は多くの人とすれ違いながら、誰とも知り合うことがない、孤独な存在なのである。そして、奇妙な話だが、見知らぬ人に囲まれて、とくに会話もせずに生きることに、どこか心地よさも感じているのだと思う。

 旅先での「人との交流」が、一つの旅のスタイルとして、なんとなく、もてはやされている。しかし、多くの旅人はそれほど旅先での交流を求めているわけではないのかもしれない。

 日々の生活で自らの孤独の存在に、若干の寂しさと、心地よさを感じている多くの現代人が、旅先だからという理由で、訪れた土地の見知らぬ人と積極的に交流を求めるかといえば、そう簡単なものではないように思える。

 実際1人で旅をするときに、私はほとんど旅の途中で会話を交わすことがない。余程困ったとき以外は、積極的に誰かと関わり合いたいとは思わないのである。

 例えば、今は体験型の旅行が人気である。この場合、体験することが旅の目的であるために、現地の人との交流がメインであるし、お互いのニーズが合致しているので幸せな出会いになる可能性は極めて高い。

 しかし、とくに目的もなく、旅先の温泉地をぶらぶらしたりする旅の場合、交わす会話は、何か小さなお土産か、酒のつまみのような買い物をする際に、せいぜい「これください」「はい、ありがとうございます」くらいなものだ。だけど、旅は、それでいいと思う。

 宿の客室係から「どこから来たのか」「どこを観光したか」など必要以上に話しかけられ、疲れてしまうことも多々ある。とくに旅館では、「少しでも多くお客様と会話をしなければ」という強迫観念や、宿の方針として決められているケースもあるのだろうが、もし旅人が少し話したそうであれば、話しかけてあげ、そうでなければ、そっとしておいてあげる方がいいのではないかと感じる。

 今は外国人観光客が日本旅館に宿泊するケースも増え、言葉によるコミュニケーションが取れないことも多い。その場合、外国人客が何を伝えようとしているのかを必死になって考えようとする。それが伝わったときには、お互いに感動するし、仮に伝わらなくても、旅人はそこまでガッカリもしないものだと思う。日本人客に対しては、言葉が通じる分、観察力も十分に発揮されず、対応も画一的なものになりがちである。

 人工知能(AI)が今後、さまざまな分野で活躍する時代が来るだろう。だが、お客に話しかけるか、それとも放っておいた方がいいか、の判断は人間には敵わないはずだ。人によるサービスの価値が見直されている一方で、融通のきかない、お仕着せの対応がストレスになる。それなら干渉されないホテルの方がいい。接し方の多様性こそが、おもてなしの真髄であると思う。

(編集長・増田 剛)

No.444 せとうちDMO、“稼ぐ力”地域とともに培う

せとうちDMO
“稼ぐ力”地域とともに培う

 訪日外国人観光客の増加や、着地型商品の普及に向けて、デスティネーション・マネジメント・オーガニゼーション(DMO)への期待は一層高まっている。先のツーリズムEXPOジャパン2016で示された“サステナビリティ”実現にも、地域力は必要不可欠。今回は、“せとうちDMO”で実務に携わるリチャード・トービン氏から、地域との関係構築や、事業の内実などを聞いた。同DMOが、どのようにして地域とともに歩んでいるのか。早くも、海外の旅行会社によるツアー造成を実現するなど、参考となる具体的な取り組みも多い。

【謝 谷楓】

リチャード・トービン氏
楽天 トラベル事業 地域振興事業部 地域振興企画グループ 兼 せとうちDMO チーフ
セント・ジョンズ大学アジア学科卒業。在学中、上智大学に2度留学。
1991年 米国・ワシントンDC生まれ。
2013年 楽天入社。トラベル事業配属。ITCとして活躍。
2016年 “せとうちDMO”へ出向。主に広報や海外向けプロモーションを担当。

 ――“せとうちDMO”の理念について教えてください。

 “せとうちDMO”の取り組みは、すべて地域振興につながっています。地域が潤い、住民の方々が輝きに満ちた未来を志向できる環境づくりが、“せとうちDMO”の理念だと思います。

 住んでいる方々にとって誇れる瀬戸内をつくらなければなりません。

 ほかの国や地域の方々から評価されることが、誇りにつながると考えています。そのため、観光客にとって、何度でも訪れたいデスティネーションとなれる環境づくりを、地域の事業者と協力して活動していくことが大切だと考えています。

 ――地域の方々と一緒に歩む姿勢はまさにDMOのあるべき姿だと思います。どのようにして実現していく心積もりでしょうか。

 現在、「メンバーシップ制度」の創設を検討しています。

 ――HPから閲覧できる会社案内パンフレットにも記載されています。詳しく教えてください。

 “せとうちDMO”の役割は、あくまで黒衣に徹することだと、我われは考えています。

 財源を地域の観光関連事業者が出し合うことがDMOの本来の形ですが、すぐに実行するのは難しいのが現実です。そのため、まずは活動やビジョンを知ってもらったうえで、我われの存在意義と価値を理解してほしいと考えています。

 「メンバーシップ制度」を設け、地域の事業者に会員になってもらう。そして、観光分野ごとの「部会」を設けることで、交流を深めながら、一緒に事業展開を行っていきたいと考えているのです。

 我われがプロモーションを行うことで、地域への観光客は増加し、生じる利益はすべて地域の事業者に行き届くことになります。会費の支払いもお願いしたいと考えています。

 ――「部会」とは何でしょうか。

 「部会」とは、テーマを絞り、アイデアの実現に向けて力を合わせていくための「場」だと考えています。

 例えば、宿泊施設をテーマとした「部会」は、「宿のプロモーションをいかに行うのか」や、「あるべき瀬戸内の宿とはどういうものか」といった、分野に特化した議題をめぐって対話をするための「場」となるのです。…

 

※ 詳細は本紙1647号または10月27日以降日経テレコン21でお読みいただけます。

着地型観光 喫緊の課題、ランドオペ、初の実態調査(観光庁)

検討会のようす
検討会のようす

 観光庁は10月6日、東京都内で第1回「新たな時代の旅行業法制に関する検討会」を開いた。旅行業法のなかで着地型観光とランドオペレーターが喫緊の課題とされた。合わせて前例がないランドオペレーター実態調査の報告書が発表された。

 報告書によると、把握された事業者は864社。従業員数と資本金ともに小規模事業者が多く、大都市部(東京・大阪・愛知・福岡)に集中している。問題となっている土産屋などへの案内は、7割の業者が行っていることが分かった。

 また、過去にあった主なトラブルについて、旅行業の約81%は「特になし」と答えた。一部の悪質なランドオペレーターの露出機会が多く、健全な業者が大層を占めていることがわかる。

 さらに、ランドオペレーターの約42%が「旅行業法や関連法令で登録制などの業務適正化」を、今後の対応としてすべきと回答した。

 ただ、今回の調査で回答があったのは全体の約34%。残りの約66%は無回答だった。委員からは「大変貴重な資料だ」との意見もあったが、一方で「実態把握は無回答側が重要では」、「より一層の実態把握を行ってほしい」などの要望もあった。

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 観光庁の田村明比古長官は、無回答の部分も並行して「精度を上げて調査する」とし、結果が分かり次第報告すると述べた。

 また、旅行業の現状について説明がなされた。

 現行の旅行業の登録制度は、第1種以外は業務範囲が制限され、第3種は国内の募集型企画旅行に制限がかかっている。

 加えて、第1―3種の旅行業者と地域限定も、一律に旅行業務取扱管理者の選任が必要。

 旅行業務取扱管理者の試験は「総合」と「国内」の2つがあるが、2015年度で合格率はそれぞれ20―30%ほどと、難しい試験となっている。

 観光庁は、これらの制度が地域の事業者が参入する際の障壁になっていると報告。見直しの方向性について、16年6月2日に閣議決定した規制改革実施計画の抜粋を提示した。

 これによると、第3種旅行業者の範囲拡大と、地域限定旅行業などの登録の容易化、旅行業務取扱試験の見直しが挙げられている。とくに着地型旅行は、着地型を取り扱う営業所に選任する管理者試験を、現行より簡易な試験の新設を含め検討するとされている。

 今後は、ランドオペレーター団体や旅行業界、自治体など関係各団体にヒアリングを実施。11月2日の第1回ワーキンググループを行い、課題、論点の整理をする。11月17日の第2回のワーキンググループで、中間とりまとめ案の整理を行う。11月下旬に第2回の検討会で中間とりまとめが発表の予定。その後、第3回検討会以降でさらなる検討を行い、最終とりまとめを行う。

大阪城でライブショー

 ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)は今冬、大阪城・西の丸庭園でライブショーを開く。同社がパークを飛び出し、場外で展開する初めてのイベントだ。

 「戦国・ザ・リアルat大坂城」と題し、天守閣などをスクリーンに見立て大迫力のプロジェクション・マッピングを展開。音楽や数百発の演出用花火とともに、戦国武者の壮絶な合戦を表現するスペクタクルライブショー。戦国時代の雰囲気を再現する夜店も軒を連ねるという。

 期間は12月26日から来年3月12日まで週末を中心に実施する。ショーは約30分で、料金は最も安い席で大人2480円、子供1480円。強気の価格設定に感じるが、それだけ自信があるのだろう。同社は「世界最高のエンターテイメントを創出する」とPRしている。

【土橋 孝秀】

“攻撃に終わり無し”、業界全体での対策向上を(情報共有会議)

第3回情報共有会議
第3回情報共有会議

 観光庁は9月30日、第3回「情報共有会議」を開き、「旅行業界情報流失事案検討会 中間とりまとめ」で示された対策の進歩状況や、中長期のサイバーセキュリティ対策についての報告を行った。観光庁の蝦名邦晴次長は、クラウドシステムを利用した情報セキュリティの管理について「今回の事案では、旅行会社とクラウドサービスを提供している事業者との責任分担の曖昧さが、対応の遅れに影響した。個人情報の漏えいは、直接経営に直結する」と注意喚起し、終わりのないサイバー攻撃に対し、業界全体で取り組む必要性があると言及した。

 中間とりまとめで示された対策の進歩状況について、同庁は本年度中に旅行業者のシステムに対応したガイドラインの策定や、インシデント情報を共有するためのメーリングリストの整備、ポータルサイトの立ち上げを行うため、2017年度予算において要求を行っていることを明らかにした。また、業界全体でのサイバーセキュリティ向上のための取り組みとして、9月7日に日本旅行業協会と全国旅行業協会が共同で「ITセキュリティ特別委員会」を設立。同委員会は、今後の旅行業界のサイバーセキュリティ対策の中核を担うとして、同会議に出席した旅行会社に向けて、積極的な参加を促した。

 中長期のサイバーセキュリティ対策の重要点として、(1)体制の整備(2)情報収集(3)インシデント発生時の社内緊急対策手順の標準化(4)抑止策の実施(5)復旧策の準備(6)教育(7)PDCAサイクルの構築――の7点を明示。とくに抑止策の実施に関して、各旅行会社が保有するシステムは複雑な構造になっているものが多く存在するため、システムのどの部分に個人情報や、重要情報があるのかなどを総点検し、適宜リスク評価を行ってほしいと出席者に働きかけた。

ガストロノミーに焦点、食文化を通じた地域振興を

(左から)小川氏、久保氏、フェルドモ氏、篠田氏、浅田氏、飯盛氏
(左から)小川氏、久保氏、フェルドモ氏、篠田氏、浅田氏、飯盛氏

 ツーリズムEXPOジャパン2016の国内観光シンポジウムでは、「ガストロノミーツーリズムで地域を元気に」をテーマに、モデレーターを小川正人ANA総合研究所代表取締役副社長が務め、パネルディスカッションなどが行われた。参加者はヨランダ・フェルドモ国連世界観光機関(UNWTO)アフィリエイトプログラム部門長と久保征一郎ぐるなび社長、篠田昭新潟市市長、浅田久太浅田屋社長、飯盛直喜富久千代酒造社長。なお、ディスカッション前には、フェルドモ部門長から、基調講演が行われた。

 9月22日に開かれたツーリズムEXPOフォーラムで田川博己会長は、「観光大国となるためには、DMOの取り組みが重要となってくる。現段階では、従来の観光連盟の名前が変わっただけのものが多い。お祭など、地域の文化を発信していくためには、マーケティングとマネジメントに力を入れていかなくてはならない」と語り、地方創生の重要性を改めて指摘し、デスティネーション・マネジメント・オーガニゼーション(DMO)の推進加速の重要性を指摘した。DMOは資金の有効利用をはかり、地域の稼ぐ力を培うための組織。本来、地域に根付く各企業によって費用が捻出され、運営される民間主体での取り組みだが、日本版では、政府や自治体主導のものが多い。実際、従事者から「地域の事業者に対し、すぐに出資を求めることは難しく、まずは取り組みの意義を理解してもらう必要がある」という声も多く、DMOの意義が、地域に未だ深く浸透していないという意見もある。

 伝統や文化と同様、食もまた地域に根ざしたものである以上、地域が主体となった発信が必須となる。「ガストロノミーツーリズム」に参画すれば、地域は主体的に食と観光を結びつけた誘客活動を展開することが可能だ。そのため、日本版DMOと併せて、あるいはその一部として同ツーリズムを取り入れれば、地域はより短期間に、稼ぐ力の獲得を期待できる。

 フェルドモ部門長は基調講演で、「観光のこれからの方向性を考えたとき、旅行者が“体験志向型”で“質を重視”していることを念頭に置かなくてはならない。そして、この2つを満たすものとして、“ガストロノミーツーリズム”はあるのだということを強調したい」と語った。また、ガストロノミーが持つ、観光業を促進させる資源として(1)差別化(2)新たな旅行者の受け入れ可能性(3)秘境の地への需要供給(4)情報発信(5)信頼性――の5つを挙げた。とくに、差別化では各地域のユニークな部分を売り出す必要があり、「インフラの整備だけでは不十分で、受け継がれた有形無形の文化のなかで人間の心に訴えるものでなくてはならない」と述べ、ガストロノミーこそがそれを果たすものだという認識を示した。また、秘境の地への需要供給では、旅行者はあまり人が訪れないデスティネーションを好む傾向があり、主要都市ではない秘境の地を戦略的にアピールするためにも、ガストロノミーは有効なのだという。

 フェルドモ部門長は、食文化の持つ歴史性にも注目しており、食文化固有のストーリーを旅行者に提供できれば、情報発信という部分でも、同ツーリズムを用いることで、地域は大きなアドバンテージを得ることができると話した。

 続くディスカッションでは、久保ぐるなび社長が、「これからは、地域固有のオリジナリティが、旅行者の目的となっていくはず。食は必ずそのなかにあるため、大切なことは、関連するコンテンツを発掘し、市場を開拓すること。そして、地域から継続して情報発信していくことだ」と語り、ぐるなびが、同ツーリズム推進を全力でバックアップする姿勢を表した。

 数多くのVIPをもてなしてきた浅田屋の浅田社長は、自らが携わる料理人の研修を通じた海外との交流に触れ、「民間の取り組みに、国や自治体がより積極的にのっかってくれれば、もっともっとうまくいくはず」だと語り、官民一体となった取り組みに期待を示した。

 これを受け、篠田新潟市市長は、「浅田社長の取り組みは、本当に素晴らしい。県だけでなく、地域の各自治体も努力をしなくてはならない」と述べた。

 飯盛社長は、「私の地元にも、まだ知られていない場所が沢山ある。国内外国の方に対し、もっと興味を持ってもらえるパンフレットを作成し、住民の意識も高めていきたい」と語り、今後に向けた展望を語った。

【謝 谷楓】