〈観光最前線〉 呼ばれるように 奈良へ

2022年11月23日(水)配信

 10月、2度目の奈良に。出掛けると決め、どこに行くかを考えていると、延期となっていた興福寺の五重塔の特別公開や、薬師寺の天武忌・万燈会、春日大社の摂社・若宮神社の造替、信貴山朝護孫子寺の毘沙門天王(奥秘仏)の御開帳と重なっていることが判明。昨年も、偶然丑歳御縁年にあたることに気が付いて出羽三山を旅先にしたことを思い出した。まるで、呼ばれているかのように。

 なかでも薬師寺の天武忌は、日中の十二神将練り供養から始まり夜の法要まで、寺内一帯が一日中厳かな空気に包まれるなかでの拝観ということもあり、いつも以上に強く心に残った。

 奈良は中心地から少し外れると人も少なく、多くの寺院で仏様を間近で拝観できる。だからなのか、京都より奈良が好きだ。

「ZOOM JAPON(ズーム・ジャポン)(11月号)」

2022年11月23日(水)配信

https://zoomjapon.info

特集&主な内容

 日本を代表する食材でありながらも、日本での消費量が減る一方、フランスを初めとする海外で身近になっている食材は多々あります。米や日本酒はその代表的な例です。日本でマスタードが普通のスーパーで売られているように、フランスのスーパーで醤油を見掛けるようになって久しいです。最近では、フランス料理やお菓子づくりでも、ワサビやユズは、「和風」の素材ではなく、新しい調味料として定着し始めています。本誌11月号では、今後さらにフランス人が関心を深めるであろう味噌と醤油を取り上げました。その起源から最新の輸出状況、最大手工場の紹介や老舗工場のリポート、醤油ソムリエのインタビューなど、日本の醤油と味噌の今を取り上げています。旅行ページでも、醤油とオリーブで知られる小豆島を取材しました。

〈フランスの様子〉フランスの設定温度は19度

「19度の仕事場でいかに暖をとるか」。11月7日付Le-Parisien紙のウェブサイトより

 9月に新年度が始まったころ、日本よりも冬の訪れが早いフランス、さらに今年はウクライナ情勢の影響などによる光熱費をはじめとする物価高の状況で、仏政府は、仕事場でもタートルネックやダウンジャケットを着ましょうとか、暖房の設定温度は19度にしましょう、などの広報キャンペーンをしていた。◆そして10月、異常なほどの暖かさだったこともあるが、それを差し引いても昨年よりも電気の使用量が少なかったという。◆ただし、これは政府の提言に国民が従ったというよりも、生活費全体の値上がりに対する一つの策として、国民が自発的に光熱費を節約しているが実情のようだ。◆そこで11月に入って売れているのが、セーターやマフラー、ダウンジャケットなど、光熱費をかけずに寒さを防ぐグッズだという。◆コロナ禍で売上が激減していた衣料品店舗は少し助かっているようで、メディアやSNS上でも電力を使わず暖まる創意工夫や電力消費を抑えるアイデアが溢れる。◆クリスマスのイルミネーションも、多くの都市部でかなりシンプルなものになるようで、質素な冬になりそうだ。

ズーム・ジャポン日本窓口 
樫尾 岳-氏

フランスの日本専門情報誌「ZOOM JAPON」への問い合わせ=電話:03(3834)2718〈旬刊旅行新聞 編集部〉

梵まる、千葉に一棟貸し宿 非日常空間で特別な日常を提供 「地域とニーズ応え共に成長」

2022年11月23日(水) 配信

BONーMAL ZENの外観

 梵まる(大串哲史社長、千葉県鴨川市)は2022年5月、鴨川市内に一棟貸しの宿泊施設「BON―MAL ZEN」と「BON―MAL TREE」オープンした。両施設のコンセプトは「非日常的な空間で特別な日常を提供する」。地域への貢献も目標に掲げるため、宿に必要なものはすべて地元企業を優先して取り入れた。用意できない場合は一流の品を備えたという。同市での経営は初となる大串社長は「宿泊客のあらゆるニーズに応えるため、地域の力も借りながら、共に成長したい」と語る。

【木下 裕斗】

大串哲史社長

 BON―MAL ZENは、別荘として利用されていた一軒家を宿泊施設に改修した。テーマは「原風景を見渡せる高台で」。高台に建ち、山や畑などからなる原風景に加え、海も眺めることができる。定員は5人。建物面積は75平方㍍。

 内装は土間ダイニングと和室、寝室、バスルームで構成する。土間ダイニングの冷蔵庫には、ビールを用意。依頼があれば唎酒師が選んだ地酒も提供する。大串社長は「お酒を楽しみながら、語らう大人の時間を楽しんでほしい」と語る。

 また、寝室にはベッドを2台設置した。和室では布団を3枚まで敷くことができる。

 風呂は縦と横それぞれ約2㍍のガラス窓で囲い、窓とカーテンを開ければ、半露天風呂として楽しめる。このことから、同社の並木優子執行役員は「鳥の声に耳を傾けながら、都会暮らしで疲れた五感を整えてほしい」とアピールする。

半露天風呂から原風景を望める

 客室内にはIHキッチンのほか、鍋やフライパンなどの調理道具、食器、冷凍冷蔵庫、ビールサーバー、薪ストーブなどを備えた。アメニティはボディソープやシャンプーなどに加え、歯ブラシセットや使い捨てスリッパ、ナイトガウンを用意。「品質は東京のシティホテルと同等」(並木執行役員)という。

並木優子執行役員

 夕食はすべて地域の事業者が提供する金目鯛の塩焼きや、かずさ和牛の陶板焼き、お刺身盛り合わせなどのデリバリーセットをそろえる。

 利用者はさまざまだが、以前別荘を持っていたという人が毎月予約し、別荘の代わりに利用しているという。

 宿泊料は月~木曜日と日曜は7万7000円。金~土曜日と祝前日は8万8000円。いずれも税込。

 BON―MAL TREEは住宅を宿に改修。ドッグランを併設した。テーマは「緑の風の交わる場所で」。犬が歩きやすいよう、動物病院の看護師が監修し、滑りにくいペット専用フローリングを採用したほか、客室面積の半分以上を占める洋室と寝室は段差をなくした。ペット用の餌台、トイレのほか、除菌シートと消臭剤も置いている。

BON―MAL TREEの外観

 「夜は満天の星を楽しめる」(並木執行役員)ことから、望遠鏡も設置した。

段差をなくした洋室

 また、ウッドデッキには、グリルや屋外用のテーブルやイスなどのバーベキュー設備も備える。このため、食事はバーベキュー用に地元のジビエを含めたBBQセットを用意。イノシシの肉や地元の野菜が味わえる鍋のセットも提供する。

 建物の面積は約42平方㍍。定員は4人。料金は月~木と日曜日が6万6000円、金―土曜と祝前日は7万7000円。すべて税込となる。

 施設へのチェックインは、車で約15分の場所にある同社の飲食店 BON―MAL PUDDING内の宿泊者専用ルームで行う。利用客は地元の牛乳や卵で作られた保存料と防腐剤を使用しないプリンを食べながら、氏名や住所などを宿泊者名簿に記入後、宿泊場所を記した地図をもらい、自ら移動する。

チェックインを行う専用ルーム

 ZENの道中には鴨川の地形を生かした棚田を抜けていくことから、「美しい景色が見える」(並木執行役員)という。チェックアウトはPUDDINGへの電話で退室することを伝え、完了する。

提供されるプリン

極力NO言わない 宿泊前の期待超える

 施設の予約は直販のほかに、じゃらんやReluxなどのOTA(オンライン旅行会社)で受ける。一人ひとりのニーズに沿うサービスを提供しようと、事前にメールや電話などで滞在中に加え、宿泊前後に行いたいことを聞き、応えている。

 お客からのメールの内容から宿とのコミュニケーションを求めず、静かに過ごしたい希望にも配慮する。そのうえで、大串社長は「今は顧客のニーズを知りたいので、要望には極力NOと言わないようにしている」と話す。

 具体的にはチェックイン後にサーフィン体験を望んだお客に、チェックアウト日に初心者向け教室の予約を行った。さらに、「犬の写真を海で撮りたい声が多い」(並木執行役員)ことを受け、SNS映えする海岸や、近隣の観光地にある複数の駐車場から比較的空いている場所など、地域に住むスタッフだからこそ知っている情報を紹介することができる。

 これらは地域に住むスタッフの知人が経営する会社を紹介したり、地域の行事に参加したりして、梵まると地元企業の関係を構築してきたことを生かしている。

 大串社長は「自社でお客様の要望をすべて満たすサービスを用意するのは、時間も費用も掛かるが、一部を自社で提供しないことで、地元企業に送客でき、活性化に貢献することができる」と語る。

 このほかにも同社では食事や、客室内の備品、庭の手入れなどは地元を優先して、依頼している。地域で用意できない場合は、「一流のものを提供し、地域に理解してほしい」との考えから、ZENでは、九州を拠点にする職人が手作りした高級なテーブルを採用した。ベッドは宮大工が製作。さらに、理美容業界でも高級品というドライヤーを備えた。

九州の職人が手作りしたテーブル(手前)と和室(奥)

 2023年の夏にはBON―MAL HOLIDAYをオープンする予定だ。ZENとTREEが山や緑をコンセプトにしたため、今後は親子3世代の需要の取り込みを視野に、海へ歩いて行ける物件を新築し、最大収容人数を7人に設定する。

 また、今後2~3年間は、お客のニーズを把握し、不要な提供サービスを削り、経費を下げることで、利益を増やしていく方針だ。

 大串社長は「(お客に)地域の魅力を紹介しながら、いつか梵まるに泊まってみたいと思われる宿に成長させたい」と語る。

NAAとナリコー、CO2吸収量杉の5倍の桐植樹 成木の販売収益で持続目指す

2022年11月22日(火) 配信

早生桐

 成田国際空港(NAA、田村明比古社長)と、空港の土木や建築などを担うナリコー(加瀨敏雄社長、千葉県成田市)はこのほど、同空港周辺に二酸化炭素の吸収量が一般的な杉に比べて約5倍となる早生桐を植える実証事業をスタートした。

 NAAが2050年度までの目標とするCO2排出量ゼロを実現する一環。さらに、成長した木を建築用などとして販売し、収益を得ることで、持続可能な施策にすることも目指す。国内空港では初の取り組みになるという。

 早生桐は、成長が早い樹木の一種。成木になるまでの期間は、一般的な桐が20~30年に対し、5~6年となる。1本当たりのCO2吸収量は年間42・5㌔㌘。同事業では、成田空港周辺の約1700平方㍍の傾斜地に80本程度植樹する。

ラビスタ東京ベイ 12月1日からクリスマスディナー付きの宿泊プランを展開

2022年11月22日(火)配信

クリスマスディナー

 共立メンテナンスは12月1(木)~25日(日)まで、ラビスタ東京ベイ(東京都・豊洲)でクリスマスディナー付きの宿泊プランを展開する。ディナーは食前酒から始まり、オードブルやパスタ、肉料理など7品で構成。

 またフロントフロアの運河側には赤色を基調とした装飾のクリスマスツリーを設置。11月18日には、地元の子供たちによる点灯式も行われた。

 山本忠義支配人は、4月のプレオープンから半年で、10万人以上の方にご宿泊いただいた。特に東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県のお客様は全体の約6割を占める。今後も当ホテルは、非日常を提供する近場のリゾートとして、また(四季折々の)イベントを通じた話題作りを行い、近郊の方に何度も利用していただける施設を目指す」と力を込めた。

「日本の食のルーツ・DNAは奈良にあり」 奈良新しい学び旅推進協議会「日本の食の聖地巡礼・Nara推進」プロジェクト活動開始

2022年11月22日(火)配信

プロジェクト発足メンバーが11月16日、奈良まほろば館(東京都港区)で会見

 奈良新しい学び旅推進協議会「日本の食の聖地巡礼・Nara推進」プロジェクトはこのほど、「日本の食のルーツ・DNAは奈良にあり」をコンセプトに、奈良の新しいブランドイメージの構築に向けた活動を開始した。

 12月13(火)~15日(木)に開かれる第7回UNWTOガストロノミーツーリズム世界フォーラムに連動して発足したプロジェクト。日本の食文化の起源の多くが今も息づく奈良県を“食の聖地”と位置付け、奈良のガストロノミーにおける新たなブランドイメージの構築と、持続可能な観光産業の活性化につながるコンテンツとファンづくりを目指す。

 初年度は「清酒発祥の地奈良」をメインテーマに掲げ、室町時代に奈良で生み出されたとされる伝統的な酒母(酛)造りの手法である菩提酛を紹介し、世界に誇る清酒のルーツを訪ねてもらえるような体験を企画。

 「日本清酒発祥の地・正暦寺でその起源に触れる~菩提酛清酒祭の特別体験」や「美食発祥の地で健やかに食す~日本酒と奈良の食のマリアージュとトークショーの特別体験」、「オリジナルスパイスカレー粉づくり~創業1184年の漢方薬局24代目店主と作るマイカレー粉の特別体験」を組み合わせた宿泊型高付加価値旅行商品の開発と実証を行う。

 推進する「日本の食の聖地巡礼・Nara推進」プロジェクトは、奈良商工会議所や奈良県旅館・ホテル生活衛生同業組合、 奈良県ビジターズビューロー、奈良県らが連携する産・学・官・民の協働体「奈良新しい学び旅推進協議会」を中心に、 奈良県旅館・ホテル生活衛生同業組合・女将の会(あゆみ会)、 菩提酛による清酒製造研究会、海豪うるる氏(コミュニケーション&ブランディング ディレクター)らで構成する組織。 今後より多くの県内参画者を募りながら活動を進めていく。活動期間は大阪で万国博覧会が開催されることを踏まえ、22年から26年とする。

オリオンツアー、バス会社に安全協議会実施 法令以上の同社基準確認

2022年11月22日(火) 配信

61社70人が集まった
 HISグループの旅行会社オリオンツアー(浅見和晶社長、東京都中央区)は11月15日(火)、東京都内で契約バス事業者61社70人を集め、「オリオンツアーバス安全運行協議会」を開いた。コロナ禍で3年ぶりの開催となった。同社が法令以上に厳しく定めた「ツアーバス 安全&品質管理基準」を確認し、安全運行と法令遵守、サービス向上への認識を深めた。
 
 オリオンツアーは1976年に創業して以来、スキーバスを専門とした旅行サービスを提供してきた。また、ダイビングやゴルフなどのスポーツプランのほか、自然や文化、歴史などを巡るツアーも催行する。同協議会は2006年から、ツアーバス事業における安全運行のさらなる強化や、有事の際に迅速な対応ができる組織体制の構築を目的に実施している。
 
 当日は「ツアーバス 安全&品質管理基準」に明記した夜間での運行には、距離や時間などに関わらず運転手2人を乗務させることや、サービスエリアでの休憩時にタイヤなどの車両を点検すること、出発時の人数確認を2回実施することなどを確認した。到着が30分以上遅れる際は、オリオンツアーに理由と到着見込み時間を報告することも求めた。
 
 また、国土交通省関東運輸局からゲストに招き、2016年の軽井沢スキーバス事故で設けられた再発防止のための施策を再確認したほか、バス事業者向けの新たな法令についても説明を受けた。

四国ツーリズム創造機構 四国4県観光PR 大阪市で説明会開く

2022年11月22日(火)配信

四国4県の最新情報を紹介

 四国ツーリズム創造機構(代表理事=半井真司・四国旅客鉄道会長)は10月20日、大阪市内で関西圏の旅行会社や報道機関を招き、観光商談会を開いた。

 来年の観光トピックスについて、徳島と香川、愛媛、高知の4県の担当者がプレゼンテーションした。高知県の観光特使を務める同県出身のタレント・島崎和歌子さんも登壇し、四国をアピールした。

 徳島県は、「四国の右下」と称する県南部を紹介した。同エリアでは昨年12月、線路と道路の両方を走る乗り物「デュアル・モード・ビークル(DMV)」の世界初本格営業運行が始まった。県ではDMVの乗車に加え、マリンスポーツや自然体験などのアクティビティも楽しむ周遊観光をPR。

 香川県は来年6月15日の弘法大師空海御誕生1250年に合わせ、空海の生まれた地という総本山善通寺(善通寺市)で来年4月23日から6月15日まで、1250年記念「大法会」を行う。秘仏「瞬目大師御開帳」などを予定する。

 高松市の屋島には昨年8月、屋島山上交流拠点施設「やしまーる」がオープン。瀬戸内海を一望する施設で、源平合戦をテーマとした幅40㍍・高さ5㍍の巨大アートを展示している。

 愛媛県は道後温泉のアートイベント「オンセナート2022」やしまなみ海道でのサイクリングをアピールした。国のナショナルサイクルルートに指定されるしまなみ海道は、海峡を横断する70㌔のルートで、多島美の絶景が楽しめるとあり国内外から注目される。

 高知県は、県出身で日本植物学の父と呼ばれる牧野富太郎氏をモデルとしたNHK連続テレビ小説「らんまん」の来春放送開始に合わせた取り組みを紹介した。来年3月25日から2024年3月31日まで、県立牧野植物園や牧野氏のふるさとである佐川町、越知町を中心に県全域で博覧会「牧野博士の新休日」を開催する。

島根県観光連盟 島根の旬の話題紹介 旅行会社などに説明会

2022年11月22日(火)配信

旬な観光素材の活用を呼び掛けた

 島根県観光連盟は10月24日、大阪市内で旅行会社や報道機関を集め、観光情報・素材説明会を開いた。

 同連盟の松本修吉専務理事は「全国旅行支援の開始やインバウンド再開でにぎわいが戻りつつあるなか、島根では全国の八百万の神々が出雲の地に集う神在月のシーズンを迎える。各地の旬のネタを商品造成の素材として活用してほしい」とあいさつした。

 説明会では松江と出雲、安来、奥出雲、石見銀山、石見、隠岐の各エリアの最新情報を紹介した。

 松江市は、国宝・松江城のお堀をめぐる遊覧船「ぐるっと松江堀川めぐり」の「弁当船」をアピールした。竹かご弁当を船内で食べながら、風流な船旅が楽しめるプランで、料金は1人2800円。

 出雲市は、出雲周遊観光タクシーうさぎ号や今年度から冬季にも拡大実施している出雲神楽定期公演を紹介した。日御碕には11月16日、星野グループの「界 出雲」が開業する。全39室で日本海を望む客室や大浴場が備わる。

 安来市は、戦国時代の大名・尼子氏の居城だった月山富田城跡や日本遺産に認定されている日本古来の製鉄法「たたら」を総合的に紹介する「和鋼博物館」などの文化的魅力を紹介した。

 奥出雲町も「たたら」に関する観光資源をアピール。「奥出雲たたらと刀剣館」では、刀匠による日本刀鍛錬実演を見学することができる(有料)。

緑霞山宿 藤井荘 露天風呂付き客室2室 10月8日にオープン

2022年11月22日(火)配信

「藤」露天風呂付き客室(御影石の浴槽)

 長野県・信州高山村温泉郷の老舗旅館「緑霞山宿 藤井荘」(藤沢晃子社長)は、森鷗外や与謝野鉄幹・晶子、菊地寛、会津八一といった文人墨客がこよなく愛した伝統の宿だ。

 藤井荘では今年6月から休館や一部客室を閉鎖しながら、露天風呂付き客室の新設工事を進めてきて、10月8日に露天風呂付き客室2室が完成した。

「山桜」露天風呂付き客室(檜の浴槽)

今回、本館1階に新しく誕生した露天風呂付き客室の概要は以下の通り。【山桜】は広さ110平方㍍、ツインベッドルーム(セミダブルベッド2台)・居間・月見縁台に、檜の露天風呂付き客室で、【藤】は広さ158平方㍍、ツインベッドルーム(ダブルベッド+セミダブルベッド)・居間・月見縁台に、プライベート庭園を見渡せる御影石風呂付きの客室だ。どちらの露天風呂からも壮大な渓谷美が一望できる。宿泊は大人のみ限定で中学生から利用可能。

露天風呂付き客室「藤」図面
露天風呂付き客室「山桜」図面

 宿泊料金(参考)は1泊2食付で「山桜」が大人1人当たり8万2500円―20万2400円、「藤」が9万9千円―26万4千円(サービス料・消費税込み)。

 問い合わせ=☎026(242)2711。

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 念願だった露天風呂付き客室が無事オープンした後、同館社長である藤沢晃子女将に、完成に至るまでの経緯を聞いてみた。

 「先代社長(亡夫)がずっと『露天風呂付き客室ができたら』と申していたことが、なんとか実現できました。きっかけは主人がヒントをくれたと思っております。それまでは露天風呂付きの部屋は離れの鳳山亭で、と誰しもが考えていました。ただ離れは散策路があるため、散策に出ているお客様との目隠しやプライバシーの関係を散々苦慮いたしました。本館は上階のフロントロビーから見えるため考えることすらなかったです」。

 「本館1階の客室前の庭園を主人が亡くなるとき、手入れをしていました。そこの手入れをしていたときに渓谷の木が気になったのでしょう。木を2本伐採し、足を滑らせて滑落してしまいました。亡くなってからは事あるごとに私もその場所に行き、『主人はどうしたかったのだろうか』と物思いに耽っておりました。そんなことを繰り返しているうちに『この場所が良いかも』と感じるようになったのです。本館1階は渓谷の下になるので人気がなく、正直なところ売れない客室でした。でもその1階という立地が露天風呂を作る際に最も作りやすくプライベート感も出せる。そして何より静かな場所でした」。

 「そこからはこの建物を40年前に建てた設計士の山本先生に思いの丈を伝え『渓谷の借景を一番のごちそうとした日本文化の香る宿をテーマに、ここに来る理由・醍醐味を訴求した客室を作りたい』とお願いしました。国内はもちろん、海外からのお客様にも日本の地方の魅力を存分に伝えていきたい」と、今後の目標を伝えてくれた。

【古沢 克昌】