No.465 米山知事×野澤女将、「うまさぎっしり」新潟の魅力語る

米山知事×野澤女将
「うまさぎっしり」新潟の魅力語る

 7月5日、新潟県新潟市のホテル日航新潟で「全国旅館おかみの集い―第28回全国女将サミット2017 新潟」が開かれる。新潟県では初開催となる今回のテーマは「うまさぎっしり新潟」でおもてなし。開催を前に、新潟県の米山隆一知事、今大会運営委員長の野澤邦子女将(湯田上温泉 ホテル小柳)の対談が実現。「うまさぎっしり」の新潟県の魅力や、本大会にかける想い、初の試みとなる市内視察研修などについて語り合った。

【司会=石井 貞德社長、構成=松本 彩】

 
 
 ――新潟県の観光誘客に向けた取り組みについて。

米山:観光にはかなり力を入れて取り組んでいます。新潟は昔から観光が盛んなところだと思います。温泉の数も多く、とくに「うまさぎっしり新潟」のキャッチコピーに代表されるように、ご飯やお酒などもとても美味しいです。この魅力いっぱいの観光素材を生かして、訪日外国人観光客の誘客にも積極的に取り組んでいきたいと思っています。

 訪日外国人観光客の誘客に向けては、満足度の高い旅行体験を提供するため、旅行者のニーズに応じたコンテンツの磨き上げや観光案内の多言語化など、受入体制の整備に取り組んでいます。

 近年はSNS(交流サイト)の発展に伴い、旅行者が観光で訪れた場所や食べたものなどを、すぐにSNS上に投稿し、多くの人に共有できるようになりました。SNSがきっかけでリピーター増加にもつながるため、「案内表記がなかったため分かりにくかった」や「道に迷ってしまった」などのネガティブな要素を少しでも減らしていくことが、重要になってきます。

 県内各地では、地域に根差したお祭り、地域産業を生かしたイベント・産業観光などのさまざまな取り組みが行われています。こうした観光の魅力をより高めていくためには、その取り組みの由来、背景などを含め、ストーリー性を高めて発信していくことが大切だと考えています。

 また、観光に即したまちづくりも非常に重要になってきます。SNS上では、旅先の町並みや景観などの写真投稿をきっかけに、その地域への関心が高まり、写真映えのする撮影スポットには多くの観光客が訪れています。

 このようなニーズに対応するためにも、それぞれの地域で良い町並みを積極的に作っていく必要があります。地元の人しか知らない場所などを発信していき、より多くの人たちに訪れてもらえるよう、魅力的なまちづくりを進めていきます。

 ――7月5日に、ホテル日航新潟で「第28回全国旅館おかみの集い」が行われます。本大会に向けた意気込みを教えてください。

野澤:とにかく新潟は「うまさぎっしり」なので、全国各地からいらっしゃる女将さんたちには、食をはじめとした多くの〝うまさぎっしり〟のおもてなしを感じてほしいと思います。

 また、新潟を知っていただくため、今回は分科会ではなく、新潟市内視察研修として信濃川ウォーターシャトルに乗って新潟ふるさと村を訪れます。時間は限られていますが、お米やお味噌といった新潟県の食文化や風土、伝統を知っていただくことができるのではないかと思っています。

 市内視察研修後の懇親パーティーでは新潟県産の食材をふんだんに取り入れた料理で、訪れた皆さんをおもてなしします。

 そのなかでも、新潟はお米がとても美味しいので、そのものの味をしっかりと感じていただくために、塩のみでシンプルに味付けしたおにぎりを用意します。新潟県産のお米で作った塩にぎりは絶品なのでぜひとも味わってもらいたいです。…

 

※ 詳細は本紙1676号または7月6日以降日経テレコン21でお読みいただけます。

会員らと考えを共有、民泊新法に陳情を継続(日本旅館協会)

針谷了会長

 日本旅館協会(針谷了会長、2698会員)は6月13日に、ホテルインターコンチネンタル東京で2017年度通常総会を開いた。針谷会長は住宅宿泊事業(民泊)法の成立に触れ「今後は第2幕として政省令・ガイドライン、第3幕として条例の課題が続く。陳情などの活動を継続する必要がある」と会員らと考えを共有した。

 17年度事業計画は引き続き「経営を科学する」との考えのもと(1)生産性向上(2)財務改革(3)販売・収益支援(4)継続事業――の4点を柱に業界全体の底上げをはかる。

 生産性向上は全国10カ所で「生産性向上セミナー(改善活動)」を開催する。改善活動普及の第1人者でもある日本HR協会の東澤文二氏を講師に招く。

 財務の改革は全国支部連合会単位10カ所で「生産性向上セミナー(統一会計基準)」を開催。旅館ホテルの勘定科目の統一や、発生主義に基づく月次決算の啓発、普及をはかる。

 販売・収益支援ではインバウンドや外国人雇用などのテーマも含んだ「経営改善セミナー」を実施。継続事業で民泊問題や耐震問題の解決、調査事業などを行う。

 「会員目線でスピード感をもって取り組む」(針谷氏)と活発的な事業方針の姿勢を鮮明にした。会後はDMO推進機構代表理事の大社充氏を招き「観光による地方創生―DMOによる観光地経営と観光マーケティング―」の講演を行った。

 懇親会では自民党観光産業振興議員連盟会長の細田博之氏を始め多数の政治家らが参加。昨年より参加者が増え、約350人が集まった。

女将サミットのつながり

 「あっ、今大切な時間のなかにいる」。そう感じることが時々ある。

 5月、吉本加代子さんをはじめとする全国女将サミット石川大会(15年)の運営委員が軽井沢に集まった。その夕食の席がそうだった。久しぶりの再会に、近況を報告し合う場面。誰かが伝えた言葉を大事に包んで持ち帰る。そんな比喩がピッタリな、仲間だからこそ共有できる優しい時間がそこにあった。

 一方、さすがは女将さんと感心する場面も。来年開催の日取りと、会の名前「ルビー会」まで決めてしまうとは。恐れ入りました。

 来る5日、28回目の大会が新潟市内で開かれる。今年はどんな出会いが待っているのだろう。かかわりや参加をきっかけに、新しい交流が芽生えたなら。こんなにうれしいことはない。

【鈴木 克範】

楽天、民泊に参入へ、施行に合わせサービス開始(楽天×LIFULL)

(左から)山田氏、太田氏、井上氏

 楽天(三木谷浩史社長)は6月22日、民泊事業への参入を発表した。民泊仲介を目的としたWebサイト「Vacation Stay(仮称)」を立ち上げ、住宅宿泊事業法(民泊新法)施行に合わせてサービスを開始する。新会社「楽天 LIFULL STAY」は、LIFULL(井上高志社長)との共同出資。社長は、楽天で新規サービス立ち上げに従事した太田宗克氏。「自治体への説明責任を果たし、民泊導入のメリットを丁寧に伝える。ゲストとホスト、双方の安全安心を守る保険システムも導入したい」と強調した。

 掲載物件数が約800万の不動産情報サイト(ホームズ)を運営するLIFULL。空き家対策や投資促進のため、できる限り多くの物件を民泊用に提案していく構え。サービス開始時には、数万の物件を用意できるよう準備を進めている最中。体験型旅行商品の販売についても、需要を見定め取り組んでいきたいとのこと。旅行業の登録も行う。

 なお現在、楽天でホテルや航空券の予約サービスを担う楽天トラベル(髙野芳行事業長)とは並行して事業を展開する。楽天ポイントの利用なども可能にし、楽天経済圏を構成する一員となる。

 会見には、太田新社長のほか、山田善久楽天副社長と井上高志LIFULL社長が出席した。

【エレファントツアー社長・五十川 昌博氏に聞く】日本のツーリズムに貢献したい、映像制作は〝私の使命〟

五十川昌博氏

 1988年に米国・ロサンゼルスでインバウンド専門のエレファントツアーを設立した五十川昌博社長。その後、映画の本場ハリウッドで映像を学び、4年ほど前から、ドローンを活用した旅館・ホテルなどのPR動画を作成している。ダイナミックな映像表現で、異なる視点から日本の魅力を発信する五十川氏は「日本のツーリズムに貢献する映像製作は、私の使命」と語る。ドローンを用いた観光PR映像製作のコツを伺った。

【聞き手=増田 剛、構成=松本 彩】

 ――エレファントツアーの成り立ちについて教えてください。

 来年で創業30年になります。1988年に渡米し、ロサンゼルスでインバウンド専門のエレファントツアーを立ち上げました。

 日本にいたころは、私は大学で芸術学部に在籍していたので、78年に友人3人と、音楽専門書の出版社を立ち上げ、編集者として働いていました。しかし、その当時のクラシック人口は日本全国で100万人程度と、とても小さなマーケットだったので、もっと大きなマーケットで勝負したいと考えていました。

 当時、主に五線紙を扱っていましたが、海外旅行がブームになってきた時代でもあったので、しばしば旅行ガイドブックの編集依頼も受けていました。ガイドブックの素材集めのために海外を飛び歩いている間に旅行業界に興味を持ち、〝ツーリズムに生涯をかける〟と一大決心しました。

 ――創業当初から経営は軌道に乗っていましたか。

 当時、現地のオプショナルツアーには、主催旅行会社のパッケージ旅行利用客でない限り、参加することができなかったので、現地に住む友人などを訪ね、個人旅行で来た日本人の多くが「せっかくロサンゼルスを訪れたのに、つまらなかった」という印象を持って帰国していきました。

 私は、ロサンゼルスには多くの魅力あふれるアクティビティがあるのに知ってもらえないのはもったいないと感じていました。そこで受入環境がないのならば、その環境を作ればいいと考え、現地で、誰でも参加できる日本語オプショナルツアーを始めました。

 創業当初は、このようなビジネスモデルは存在していなかったため、好調でしたが、徐々に既存の旅行会社との摩擦が出てきました。それならば違うマーケットを狙おうと、現地に駐在しているファミリー層をターゲットにすることにしました。バブルの絶頂期でもあり駐在ファミリーが日本からどんどん訪れていた時代でした。

 もともと私自身が旅行業界の出身ではないため、大口クライアントを掴むことができず、FIT(海外個人旅行)客を中心にファンを増やしていきました。 

 例えば、駐在員の奥様や子供たちは、日本人同士の交流が中心で、子供たちも日本語学校に通っています。日本語でのツアーは、彼らに大変好評を博しました。最初は好意的ではなかった日系旅行会社も、新しいマーケットを発掘した私たちの仕事を認めてくれ、今では日本で最大級の旅行会社から定期的に仕事をいただくまでの関係になりました。

 ――2001年9月11日の同時多発テロ時の影響について。

 日系の旅行会社の約9割が縮小や倒産に追い込まれました。エレファントツアーはもともとFITを主な顧客層として事業展開をしていたため、団体旅行による大きなキャンセルがなかったのは幸運でした。

 ――ツーリズムのPR動画などを手掛けるようになったのはいつごろからですか。

 学生時代に作曲を専攻していたことや、当地は映画の都であることから映像に携わる仲間がたくさんいたことが理由で、渡米後すぐ映像制作に興味を持ちました。

 当時はアナログの時代でしたが、ハリウッド映画業界で活躍する人たちのおかげで上手にデジタルの波に乗れたのも幸いでした。カリフォルニア州はもちろん、近隣の州政府観光局からも撮影依頼が入るようになり、広大なアメリカでは3―4年ほど前からドローンが活躍するシーンも多かったと記憶しています。

 6年ほど前からは、日系のテレビ局で日本語視聴者向けの旅行番組「GO WEST」を製作しています。観光局の協力を得ながら、実用的な観光情報を提供しているのが特徴です。取材の際に心掛けていることは、地元の人たちにも積極的に声を掛けることです。これによって、テンポ感やストーリー性を感じられる番組づくりができています。せっかくなら雄大な景色はより感動的に、美味しいものはより美味しそうに撮りたいではありませんか。

 このような経験のなかで、エレファントツアーも人材が育ってきました。本格的に音楽や映像をツーリズムの集客に活かしたいと思うようになり、旅行の現場は創設当初からいるマネージャーに任せ、映像の世界に全力投球できるようシフトしていきました。

 ――アメリカではいつごろからドローン映像を撮影していたのですか。

 3―4年前から、ロッキーマウンテンに咲くワイルドフラワー、バリ島の世界遺産、瀬戸内海の島々を空撮してほしいと、観光局や大手旅行会社から依頼を受けるようになりました。

 アメリカでドローンを使うようになったのはここ4年くらいです。そしてこの2年くらいで技術的な革新を遂げ、ドローン撮影の幅は格段に広がりました。

五十川氏自らドローンを操縦し、
魅力あふれる映像表現を追求している

 ――日本でもドローンを使った映像を作成していきますか。

 生意気な言い方かもしれませんが、日本の旅館やホテル、そして観光地のプロモーション映像を見ていると、その土地の魅力が半分も表現できていなく残念に思うことがあります。

 30年前に渡米したときに、「ロサンゼルスにはこんなに魅力的なアクティビティがあるのに日本マーケットに上手く宣伝できていなくてもったいない」と感じたのとまったく同じで、人生の半分をアメリカで過ごした自分には、日本の良さが日本に住んでいる日本人以上に魅力的に映っています。そしてそれをどうにかして海外に伝えたいと強く思うのです。旅館・ホテルでの体験をストーリー化したり、女将1人にスポットを当て、その人物を追う新しいかたちの映像表現があるような気がします。

 私は長年日本を離れているからこそ、四季折々の美しい景色があることや、旅行者のお腹と心を満たす食事がその土地によって大きな特徴があるということなど、異なる視点から日本の魅力に気づくのだと思います。

 私よりカメラの上手い人はたくさんいます。私より編集技術を持つ人もたくさんいます。しかし、学生時代から歩んできた道、アメリカでインバウンド業界に身を置いた半生、業界の人脈、そしてドローンを使った豊富な空撮経験。これだけの条件がそろっている人間はそれほどいないだろうと思うと、日本のツーリズムインバウンドに貢献する映像制作は、私の使命だと感じているのです。

 ――ありがとうございました。

新会長に三澤氏(神奈川中央交通)、安全安心の決意示す(日本バス協会)

三澤憲一新会長

 日本バス協会(島倉秀市会長代行、2445会員)は6月23日に、東京・経団連会館で第90回定時会員総会を開いた。任期満了に伴う役員改選で、三澤憲一氏(神奈川中央交通会長)が新会長となった。総会では安全輸送決議も承認。「まずはバス事業の根幹である安全・安心の確保に取り組む」(三澤氏)と決意を示した。

 安全輸送決議は軽井沢スキーバス事故後の各種対策や、日常的飲酒の指導、運転手の健康管理体制強化などを徹底していく。三澤氏は「この決議に沿って交通事故防止はもちろん、安全運行と関連法令の遵守をはかる」と強調。「日本バス協会会長として改めてバス事業の健全な発展のために、職責をまっとうすることを誓う」(同)と今後の指針を述べた。

 2017年度事業計画で国の監査を補完する「貸切バス適正化機関」を円滑に実施する。今夏にも開始される見通しで「国土交通省や地方運輸局、地方バス協会らと連携協力していく」とし、同会では所要資金など必要な支援を行う考えだ。

 このほか乗合バス事業者の路線維持が厳しい状況を踏まえ、補助制度や補助金確保、税制支援策の確保・充実をはかる。

 総会後には懇親会が開かれ、会員や政治家らが多く参加した。

 会長、副会長は次の各氏。

 【会長】三澤憲一(神奈川中央交通会長)
 【副会長】北海道・平尾一彌(北海道バス協会会長)▽東北・松本順(福島県バス協会会長)▽関東・山口哲生(東京バス協会会長)▽北陸信越・辻川徹(富山県バス協会)▽中部・加藤信貴(愛知県バス協会会長)▽近畿・井波洋(大阪バス協会会長)▽中国・椋田昌夫(広島県バス協会会長)▽四国・清水一朗(愛媛県バス協会会長)▽九州・倉冨純男(福岡県バス協会会長)▽東京・富田浩安(日の丸自動車興業社長)▽JRバス・万代典彦(ジェイアールバス関東会長)▽公営、川崎市・平野誠(川崎市交通局長)

「入湯税を温泉地整備に」、青森県で初の総会開く(日本温泉協会)

大山正雄会長があいさつ

 日本温泉協会(大山正雄会長、1282会員)は6月20日、青森県青森市の八甲田ホテルで2017年度会員総会を開いた。スローガンとして掲げる「無秩序な地熱開発反対」「入湯税は温泉保護のために」などを喫緊の課題として取り組んでいくことを確認した。

 88年の歴史を持つ同協会は、戦時中の中止を挟み、会員総会は82回目を数えるが、青森県での開催は初めて。大山会長は、「日本の観光の要は温泉文化。昨年5月にG7の財務相会議が宮城県の秋保温泉で開かれ、12月には山口県の長門湯本温泉で日ロ首脳会談が行われた。温泉は重要な政策の場にもなってきた」とあいさつした。さらに「2年後に90周年を迎えるが、会員の増強をはかっていきたい」と述べ、組織の充実と社会的な認知度向上にも取り組んでいく姿勢を示した。

 地熱開発については、「現在、国立・国定公園の自然環境保護の規制を緩和してまで、地熱発電を2―4倍にしようという作業が進められているが、温泉資源を脅かすもの。地熱発電を4倍にしても総電力量の1%にも満たない」と強調した。また、昨年、鹿児島県・指宿温泉で地熱発電の計画が出され、下竹原和尚理事をはじめ、指宿温泉の関係者、日本温泉協会が抗議して中止となった経緯を説明。温泉保護に寄与したと報告した。

 入湯税は「1年間に日本国内で約220億円に達するが、本来の目的である温泉保護ではなく、一般財源に組み込まれているところが多い」と大山会長は指摘。このうえで、「温泉が無ければ入湯税は存在しないもの。温泉地の魅力ある地域の整備などに充てるべき。温泉地が魅力を増せば、リピーターや長期滞在が増え、富を生み出す」との考えを示した。群馬県・みなかみ町では、入湯税の8割に値する1億700万円をみなかみ町観光協会への補助金に充てることが決まったと紹介し、「このような事例が全国に広まってほしい」と語った。

 総会後の懇親会は、酸ヶ湯温泉旅館(青森市)で開いた。

 来年の総会は鳥取県米子市の皆生温泉で開く。

酸ヶ湯温泉旅館の前で

〝瑞風〟の運行開始、各地で温かいおもてなし(JR西日本)

大阪駅での出発式

 西日本旅客鉄道(JR西日本)は6月17日、豪華寝台列車「トワイライトエクスプレス瑞風(みずかぜ)」の運行を開始した。2013年10月に登場した九州鉄道旅客(JR九州)の「ななつ星in九州」、今年5月から運行を開始した東日本旅客鉄道(JR東日本)の「トランスイート四季島」に次ぐ、新世代の豪華寝台列車となる。

 6月17日午前に大阪駅を出発した一番列車(山陰下り1泊2日コース)は京都駅を経由して途中、城崎温泉駅で温泉街散策、萩駅・東萩駅で松下村塾見学などの立ち寄り観光を行い、18日午後、終着駅の下関に到着した。各立ち寄り駅や下関駅では、地元住民らによる温かいおもてなしや歓迎イベントなどが盛大に行われた。

 瑞風は、山陰・山陽を巡る1泊2日の片道4コースと、2泊3日の周遊1コースの全5コースを設定。列車は10両編成で運行。注目は1両すべてを使った「ザ・スイート」。1両1室の構成は世界的にも珍しく、バスタブ付きのバスルームも備える。

 料理は、フードコラムニストの門上武司氏プロデュースのもと、京都「菊乃井」3代目の村田吉弘氏ら7人の食の匠監修による沿線の食材を盛り込んだメニューを提供する。

 料金は、6―8月出発の1泊2日(4コース共通)がロイヤルツイン(2人利用)1人27万円、ロイヤルシングル(1人利用)同33万円、ザ・スイート(2人利用)同75万円。9―11月出発分はいずれも3万円増。

 2泊3日コースは、6―8月出発がツイン同50万円、シングル同62万円、スイート同120万円。9―11月出発分は5万円増。ロイヤルシングルは2人、ザ・スイートは4人まで利用できる。

城崎温泉では地元園児らがお出迎え

【温故知新・松山社長インタビュー】「目的となる宿」の創出を、今後は〝事業継承〟主軸に

松山知樹社長

 富裕層向けの宿泊施設の運営や、旅館のコンサルティングなどを手掛ける「温故知新」(松山知樹社長、東京都港区)は、旅の目的地となる宿づくりを目指している。松山社長に設立の経緯や今後の展開などを聞いた。
【飯塚 小牧】

 ――これまでの経歴を含め、会社設立の経緯や事業内容を教えて下さい。

 私は大阪出身で両親は福井の出です。今は東京ベースで仕事をしているものの、もともと地域への意識がありました。大学進学で上京し、都市計画を専攻しました。その時代、すでに東京一極集中といわれていましたが、都市計画を通じ、都市の目線で地域の在り方を考えていたのです。

 卒業後は外資系のコンサルティング会社に勤めましたが、もう少し実務を経験したいと思い、ベンチャー支援企業の創業に参加しました。20代のころです。

 その後、ご縁があって2005年から星野リゾートにお世話になりました。その年は旅館再生事業が始まった年で、会社全体が転換期のタイミングでした。ゴールドマンサックスとの旅館再生事業の星野リゾート側の責任者として4年ほど携わりました。09年には役員にも就きましたが、以前から実業・ベンチャー指向だったので、自分で会社を立ち上げようと考えました。

 いろいろな選択肢がありましたが、検討すればするほど、旅館やリゾート事業が魅力的に感じられるようになりました。お客様に喜んで頂くことが、すなわち自分たちの利益になる。シンプルで、騙すということがない「いい仕事」です。

 11年2月に旅館を運営するための会社としてたった1人で起業しました。しかし、その1カ月後に東日本大震災が発生し、計画していたプロジェクトがすべて頓挫しました。路頭に迷いそうでしたが、タイミング的に東北の旅館の復興支援のニーズがあり、再生のための計画づくりや改装のサポートを20軒ほど手掛けました。

 今も東北に限りませんが、再生の計画づくりや、売上アップのためのコンサルティング、オペレーションへのアドバイスなどの業務を行っています。

 一方、投資家やオーナー様と組んで、我われが運営するというスキームを組めないかとずっとチャンスをうかがっていました。それが当初の目的でしたので。そんななか、ご縁があり、四国の愛媛県松山市でスモールラグジュアリーホテル「瀬戸内リトリート青凪」を直営することになりました。

 ――瀬戸内リトリート青凪の客層や販売手法などを教えて下さい。

 安藤忠雄氏設計の元美術館をホテルにしました。「安藤忠雄建築」「四国で最高級」「世界初のフルフラット寝湯付き客室」など特徴的な要素もあり、宿自体がデスティネーションになっているという自負はあります。7室の客室はオールスイートで高単価なので、稼働率はまだ6割強ですが、地域に貢献できていると思います。首都圏からのお客様が多く、インバウンドは約1割。中国や台湾、香港だけではなく欧米系も多いです。

 販売についてはOTA(オンライン旅行会社)を積極的に活用しています。自社だけで売るのは容易ではなく、共存共栄だと考えています。

 ――今後も高級宿をメインに運営されますか。

 ラグジュアリー一本槍で考えているわけではなく、ユニークなシナリオを描けるかどうかが大切です。絶景や素晴らしい源泉があるなどです。我われは「その宿に行くこと自体が目的となる宿」の運営を目指しており、その対極はビジネスホテルです。

 ――民泊についてはどうお考えですか。

 一種の流行りのようなもので、メインストリームにはならないと思います。ただ、税金や規制面が公平ではないので、同じ土俵に立ってもらいたいとは思います。また、新法では地域ごとに民泊を受け入れるか決められるようですが、これは地域が何を大切にするのかを問われていると思います。自治体がしっかりすることが大切です。

 ――改めて今後の展望を教えて下さい。

 地域をどう盛り上げていくかという思いが根底にあります。私自身、東京は仮住まい感があり、利便上、やむを得ず住んでいる所があります。地域のためにも目的地となる宿を作り、新しい需要を創出したいと考えます。「ここに来たい」と思っていただける宿を、ほかにはない発想で作っていきたいですね。

 また、今後注目しているのは「事業継承」です。再生事業の需要は一巡したと思っていますが、後継者がいない宿は増加傾向にあります。「再生」ではなく、健全な経営をされている宿のオーナーの「想い」を継ぎながら、さらに発展させていく。一つひとつのユニークさを大切に、オーナーが大切にしていること、宿の中核になっているものを大切に引き継ぐことができるのではないかと思います。

 一方で、投資家に対するリターンがないと事業として成り立たないので、そこはしっかり利益を出していきます。最終的には「戦略の切れ味」が重要で、知恵の勝負だと思います。やり切る気合いを持って取り組んでいきます。

 ――ありがとうございました。

観光バス碧号、誕生、眺望にこだわった空間(クラブツーリズム)

「碧号」誕生

 クラブツーリズムから7月1日、ロイヤルクルーザー四季の華の新車両「碧号」がデビューした。クラブツーリズムが展開するツアー「ロイヤル・グランステージ」で使用する。窓の上についていた荷物棚を取り外し、座席の前にデスク型の木製の手荷物置きを設置。視界を遮らない空間設計を行うなど、〝眺望〟にこだわった快適な空間に仕上げた。

 ロイヤルクルーザー四季の華の10周年記念となる同車両。担当者は、「一度お乗りいただいたら、普通のバスツアーには戻れなくなる」と意気込む。今後は関西地区と東海地区でも同型のバスを導入する。

 座席数は添乗員席を含め19席のみ。座席には1人1台、NTTドコモ提供のタブレットを用意している。添乗員が撮影した旅行中の写真の共有と、車内プリントが可能。添乗員のタブレットと同期させることで、参加者全員に同じ案内もできる。また、音楽配信サイトを利用でき、移動中に好みの音楽が楽しめる。今後は、テーマ別ツアー時の専門家による講座開講などへの活用も検討している。

 トランクには、ツアー中に購入したお土産などを収納する個人用ロッカーと、大型冷蔵庫を設置。移動中も広々とした車内空間を維持できるよう、工夫を施した。

荷物棚を外し眺望にこだわった車内