〈この人に聞く〉法師温泉長寿館 代表取締役社長 岡村 建さん

2021年11月15日(月) 配信

岡村 建(おかむら・たけし)さん
 1971(昭和46)年、4人兄弟の長男として誕生。女男女男の順。幼少期から「湯の大切さ」を理解。大の昭和プロレスファン。

 2021年9月1日付で法師温泉長寿館の代表取締役社長に就任。満50歳で創業147年の法師温泉長寿館の7代目を継ぐことになった。

 岡村新社長は、登録有形文化財の温泉旅館の跡取り息子として生まれてきたので、そのプレッシャーも相当に感じていたのではないだろうかと想像していたが、「小学校高学年のころから既に意識していました。旅館にとって温泉の大切さというのも子供なりに理解していたと思います」と答えてくれた。

 「昔ながらの佇まいを大事にしながら、お客様には温泉に入って寛いでもらいたい。今後はロビー周りなどを少しリニューアルしていきたいと考えています。登録有形文化財の宿なので、雰囲気はそのままに、少しでも快適に滞在できるよう機能性は上げていきたい。売店の奥側にある客室は足の悪い人が宿泊に来ても使えるようにバリアフリーの客室にしてみたい。しかし、一番大切なのは、30年後も50年後も見た目を変えるつもりはありません」。

 先日、60年前に新婚旅行で泊まりに来たご夫婦が、その時以来久し振りに足を運んでくださり、宿泊された翌朝にごあいさつすると「まだあの時と同じように営業されているのだろうかと心配でしたが、まったく変わっていなかったので安心した」と話されて、「とても嬉しかった。自分の考えは間違っていなかったと確信しました」と笑顔で話す。

 「宿と同じぐらい従業員も大事ですね。彼らが居なければ旅館経営を今まで続けることはできなかった訳ですから、大切にしなければなりません。従業員を守ってあげられる経営者にならなければといつも考えています」と語る。

【古沢 克昌】

「提言!これからの日本観光」 “「クラスター」&「ネットワーク」”

2021年11月14日(日) 配信

 秋もたけなわとなった9月末日、長い間続いていたコロナ禍への緊急事態宣言がようやく解除された。しかし、専門家はコロナ完全収束ではなく、一時的な小康状態にすぎず、次の波を極力低くする努力が必要であり、段階的に規制、自粛の緩和を行うことが望ましいとする。そして、今後も長期に渡ってコロナ再蔓延の危険は残り、当分の間、蔓延防止対策を怠ってはならないともいわれている。いわばコロナとの戦いは長期戦に入ったといえよう。

 「観光」は人間の本能に根差すものだけに今後の長期警戒期間においても、「密」防止などに留意した「新しい観光」として速やかに再活性化させる必要がある。コロナ禍では各地で患者が集団感染する「クラスター」が発生し、流行の発火点となった。そして、人流を介して「クラスター」同士がつながり、相乗作用でさらに蔓延が面状に急拡大する現象が見られた。

 「観光」復活にあたっては、この現象を逆手にとって「観光クラスター」(勿論、仮称)設定と、その連携による「観光(資源)ネットワーク」を構築し、資源の相乗効果による充実した面状の「観光」に発展させたい。

 例えば、まず県内にあるさまざまな観光資源のまとまりのある箇所を選び、“こころのふるさと○○(仮称)”などと命名し、「観光クラスター」とする。「クラスター」は「自然景観」、「歴史文化」などの基礎観光資源がそろっていること、加えて産業観光、街道観光などテーマ別観光資源も整っているか、その可能性のある地点が望ましい。観光拠点として交通・観光施設を重点的に整備、県内(地域)の観光情報発信拠点ともする(観光客のためのサービス“窓口”付設も)。

 次に県域内の複数の“こころのふるさと”同士が相互に連携してほかの観光資源も含む観光資源の「ネットワーク」を構築、観光モデルコースの設定、相互送客、情報の交換、共同発信を行い、「全国ネットワーク」へも発展させる。即ち「観光」を全国万遍なく面状に幅広く展開することでより多くの資源の相乗効果に期待し、充実した「観光」の実現を目指す。

 日本は全土が風光に恵まれ、永い歴史と伝統に育まれた国であるだけに、未開発の観光資源が潜在している。「クラスター」と「ネットワーク」の体制で新資源の開発と磨き上げもできる。またテーマ別観光資源は各地のあるものづくりやみちなどを「観光」の視点から新しいストーリーを立てて観光資源化するもので、テーマ別観光資源を「クラスター」で整えようとする場合、ほとんどの国内観光地がその候補となり得る。

 交通・宿泊などのインフラ整備と地域の観光推進への熱意によって、既存の観光地以外にも「観光クラスター“こころのふるさと”」を近代観光の視点からつくりあげ、観光の幅も広げられる。このような観光資源の魅力を再発見する「クラスター」と「ネットワーク」方式による「新しい観光」に期待したい。

須田 寛

 

日本商工会議所 観光専門委員会 委員

 
須田 寬 氏
 
 
 
 

「津田令子のにっぽん風土記(79)」「鉄道で地域振興を」~ 鉄道編 ~

2021年11月13日(土) 配信

「只見線第1橋梁」福島県・三島町
松蔭大学観光メディア文化学部教授 古賀学さん

 古賀学さんは、かつて日本観光協会(現・日本観光振興協会)総合研究所で初代所長を務めるなど数々の地域振興に携わってきた観光業界のスペシャリストだ。

 
 1872(明治5)年10月14日の新橋横浜間に鉄道が開業して、来年150周年を迎えるにあたり、さまざまなプレイベントや記念ツアーなどが予想されるなか、古賀さんは、日本鉄道保存協会のメンバーと来年に向けてのイベントの企画を検討している。観光業界全体を巻き込み、「鉄道開業150周年」という節目の年を盛り上げることで「全国の鉄道ファンのみならず、旅が好きな人たちも鉄道旅を見直すきっかけになる年になるのでは」と話す。

 
 自らを“郷鉄(さとてつ:鉄道と郷の関係を楽しむという古賀さんの造語)”と公言する古賀さん。「鉄道は、車窓風景、駅弁、行動者や乗り合わせた人との会話などの楽しみ満載ですが、その基本は鉄道と郷とのより良き関係の中にあると思います。それをつなぐのが駅だともいえます」と語る。

 
 JRが実施している駅からハイクや、SLを使ってのイベントなど駅を基点にした活動も大きな魅力になっているという。「例えば、地域の農家の方とタッグを組んだ大井川鉄道のツアーでは、SLに乗ってもらい駅を降りて地元の食材を使った食事を提供し地元の方と語り合う。またSLに乗り次の駅を目指すなど参加者から大変好評だった」そうだ。

 

 鉄道に乗ることで地域のことをより深く知ることができる。古賀さんは「こういった試みは間違いなく観光による地域振興になっている。また、このような視点が重要になる」と断言する。「イベントとの相乗効果が鉄道利用を促進させ、鉄道の重要性を再認識させることにつながっていく」。

 
 紅葉シーズン真っ盛りの今、おすすめの路線は「地元の方に連れて行ってもらった只見線の会津桧原駅周辺です。ちょうど只見川の淵から鉄橋を軽く見上げるような感じの地点なのですが、地元の人にしかわからない隠れたスポットで、風もなく美しい風景でしたね。とくに只見川に映る只見線は美しかった」と笑顔になる。

 
 来年は、只見線が全線開通になり、関連地域活性化の新たな起点となることを期待し待ち望んでいるという。

 
 全国には、数知れない鉄道の絶景ポイントがある。それらを乗りつぶし絶景ポイントを探しているという古賀さん。この冬は、どの路線のどの駅を目指すのだろうか。

 

津田 令子 氏

 社団法人日本観光協会旅番組室長を経てフリーの旅行ジャーナリストに。全国約3000カ所を旅する経験から、旅の楽しさを伝えるトラベルキャスターとしてテレビ・ラジオなどに出演する。観光大使や市町村などのアドバイザー、カルチャースクールの講師も務める。NPO法人ふるさとオンリーワンのまち理事長。著書多数。

旅のUDアドバイザー開講1周年記念 「当社の旅のユニバーサルデザイン」④ 共通の理解と理念でUD促進へ――デスティネーションアジアジャパン 渋谷 武明氏

2021年11月13日(土) 配信

デスティネーションアジアジャパン Product部 CSR & Experience コーディネーター・グリーンチーム サステナビリティリーダー 渋谷 武明氏

 「世の中のほとんどのバリアは、実は人間の力で超えられる」――。車イスで世界一周を達成した三代達也さんの言葉です。

 
 今春、業界誌でケアフィット推進機構主催の旅のユニバーサルデザインアドバイザーについて知りました。これは重要な取り組みだと思い、コロナ禍の人数制限のなか、追加設定にて研修を実施していただきました。

 
 事前に配布されたテキストの質が非常に高く、各項目の要点が適切な分量でまとめられており、それまでの漠然とした知識を整理することができました。

 
 また当日の研修にて理解を深め実技も通して、接遇される側の気持ちについても実感することができました。三代達也さんとも研修会場でお会いでき、三代さんの著書「No Rain, No Rainbow 一度死んだ僕の、車いす世界一周」を読み、感銘を受けた言葉が冒頭に紹介した引用です。

 
 当社は、欧米圏からの旅行者を主に取り扱うインバウンド事業に特化したDMC(デスティネーションマネジメントカンパニー)で、本部はバンコクにあり、アジア11カ国でオフィス展開しています。

 
 CSRの取り組みとして、早くから動物保護や児童労働の撲滅、地域コミュニティへの貢献事業などをはじめ、持続可能な観光運営に取り組んで参りました。

 
 昨年末に日本オフィスは、観光業における持続可能な取り組みを実現するための認証団体 “Travelife” のパートナーレベルを取得しました。旅のユニバーサルデザインについても責任ある観光を実現する企業活動として目指す方向はまったく同じであります。

 
 現在、イギリスで先進的にインクルーシブツーリズムに取り組む「Inclu」社とパートナーシップを結び、当社がアジア旅行業界におけるユニバーサルツーリズムのパイオニアになるという目標をもって取り組んでいます。

 
 「Inclu」社は「インクルージョンとは、Independence(独立)・Equity(公平・公正) ・Dignity(尊厳)」と言っています。

 
 これは、障害の有無に関係なく、人としての基本的な態度です。つまり、根本的な理解の欠如が、誤解や偏見を生み、異なる態度を引き起こしてしまっているのです。

 
 これまで障害のあるお客様の旅行のお申し込みはありましたが、対応するスタッフ個人の能力に依存することが多く、お客様の要望をきちんと理解し、十分な対応やサービスが提供できていたかは自信をもって回答することはできません。

 
 コロナ禍によって、世界中の人々はこれまで後回しにされてきた問題に向かい合う機会となり、SDGsへの取り組みも高まっています。

 
 当社は、今後スタッフ全員へのトレーニング実施やケアフィット推進機構様との協働などを通じて、全社員が共通の理解と理念をもって持続可能な観光運営のもと、ユニバーサルツーリズムの促進に取り組んで参ります。

JATA前会長・坂巻伸昭氏「お別れの会」開く 観光業界から多数参列 故人を偲ぶ

2021年11月12日(金) 配信

献花台にはたくさんの花が捧げられた

 東武トップツアーズ前社長、日本旅行業協会(JATA)前会長を務めた、坂巻伸昭氏の「お別れの会」が11月12日(金)、東武ホテルレバント東京(東京都墨田区)で開かれた。

 坂巻氏は今年7月13日に病気療養中のところ死去し、葬儀は近親者のみで行われていた。

 親しみやすい人柄で、観光業界、旅行業界から生前多くの信頼を集めていたこともあり、献花台にはたくさんの花が捧げられた。会場には坂巻氏の思い出の写真も多数掲示され、参列者は懐かしみながら、故人を偲んだ。

坂巻さんの思い出の写真が多数掲示されていた

 お別れの会実行委員会の百木田康二委員長(東武トップツアーズ社長)と菊間潤吾副委員長(JATA会長)は連名で、「『旅行業には素晴らしい価値がある。旅には人を笑顔にするチカラがある。協調と共創を実現する社会を築きたい』という故人の遺志を受け継ぎ、その実現を目指していく」と参列者への礼状でつづった。

五島の食材で料理教室 オンライン・リアルで参加可能(阪急交通社)

2021年11月12日(金) 配信

料理イメージ

 阪急交通社(酒井淳社長)は12月5日(日)、食材の生産者と旅行に関心のある消費者をオンラインでつなぐ「Food Trip」イベントを開く。今回は長崎県五島市の食材を使った料理教室や、生産者とのオンライン交流を企画。オンライン参加に加えて、実際に東京都・日本橋のキッチンスタジオで調理を見学できるリアル参加プランも用意した。

 同イベントを通じ、体験型コミュニティを形成して地域の活性化を支援する目的。五島市の食材(魚、魚醤、野菜など)を参加者の自宅に届け、その食材を使って料理教室を行う。シェフは高田大雅氏。

 日時は12月5日(日)の午前11時半と、午後2時の各回90分を予定する。参加費は、オンライン参加が1セット5980円(50人限定)。リアル会場参加が1セット7980円(6人×2回の12人限定)。いずれも食材費と参加費込み。

 リアル会場参加は、会場で調理を学んだあと、自宅で食材調理となる。

愛犬家にアンケート実施 8割が「愛犬と旅行」(楽天LIFULL STAY調べ)

2021年11月12日(金) 配信

イメージ

 楽天グループの民泊事業会社、楽天LIFULL STAY(太田宗克社長)はこのほど、11月1日の「犬の日」にちなんで愛犬との旅行に関するアンケートを行った。調査によると、旅行に愛犬を連れていく飼い主は約8割にのぼり、ドッグランや庭など、愛犬と過ごせる宿を選ぶ傾向が高いことが分かった。

 調査は「楽天ペット割」メンバーを対象に、10月5(火)~19日(火)の期間中に集まった1530人の回答をもとに集計した。

 旅行に愛犬を連れていくかを聞いたところ、「必ず」(41・2%)と「連れていくときもある」(37・5%)と回答した人があわせて78・6%となり、8割近くの飼い主が「連れていく」と答えた。

 「宿泊先を選ぶときに重視していること」は、「愛犬を客室内で放せる」が75・7%と最多に。次いで、「ドッグランや庭など、愛犬が思い切り遊べるスペースがある」が56・2%、「愛犬と一緒に寝られる」が54・9%、「食事中も一緒に過ごせる」54・3%と続いた。

 一部ペット可の宿については、「人のための設備やアメニティが充実している」や、「幅広い選択肢から宿を選べる」のほか、「ほかのペットと接触する機会が少ない」の回答が多かった。

 このことから、ペット連れの旅行では、愛犬同士の接触にも配慮している飼い主が多い傾向にあることが分かった。

 同社では、ペットと泊まれる宿泊施設「Rakuten STAY」を全国7カ所に展開している。いずれも一部客室がペット可で、ゲージやトイレシートなどのペット用備品を備えている。

 現在、12月28日(火)までお得に泊まれるキャンペーンを実施中。

 宿泊・民泊予約サイト「Vacation STAY」の予約内容確認画面で特設ページに記載のクーポンコードを入力し適用すると、同施設での宿泊が10%オフになる。クーポンの利用期間は12月13日(月)まで。

旅先・施設のサステナビリティへの意識調査 旅行者の8割が意欲高(楽天トラベル)

2021年11月12日(金) 配信

旅行や観光をしていて問題だと感じること(楽天トラベル調べ)

 楽天トラベル(三木谷浩史社長)はこのほど、旅行先や宿泊施設のサステナビリティへの取り組みに関する意識調査を行った。旅行者を対象に、サステナビリティに向けた課題例を挙げて問題意識を聞いたところ、7割以上の人がいずれかの課題に対して問題意識を抱いていることが分かった。さらに、全体の約8割が課題に取り組みたいと回答した。

 調査は8月、直近2年以内に宿泊旅行経験があり、自分自身で宿泊の手配をした20~69歳の男女1081人を対象に行われた。

 旅行先や宿泊施設のサステナビリティ課題に対し、「気になることはない」と答えた人は25・4%に留まり、74・6%の人が問題意識を抱えていた。

 「ポイ捨てや適切に掃除されていないこと」が41・4%と最多に。次いで、「食品の廃棄、食べ切れない量の食事の提供」が35・2%、「不要なアメニティの提供や頻繁なタオル・シーツなどの交換」が24・3%と続いた(複数回答)。

 前の設問について、80・7%の人がいずれかの課題に対して改善に向けた取り組みを行いたいと答えた。前述の問題意識と同様に、「ゴミの処理」(47・8%)、「フードロス」(44・9%)、「過度なサービスの提供」(32・6%)などへの行動意欲も同じ順番でトップ3にランクインする結果となった(複数回答)。

 旅行先や宿泊施設のサステナビリティへの取り組みについて、「旅行前にどれほど情報を得られているか」を聞いたところ、「十分に得られている」、「ある程度得られている」と答えた人は全項目で3割以下に留まった。

 同社は、「旅行者のサステナビリティへの行動意欲が高い一方で、旅行先や宿泊施設の取り組みについて、事前に参考になる情報が不足している現状が明らかになった」と調査をまとめた。

「ウェルネス」テーマに愛知県・幸田町でモニターツアー 産業とロケツー軸に組み立て

2021年11月12日(金) 配信

ドラマにも登場したダーシェンカ

 愛知県・幸田町と幸田町観光協会は10月26~27日、「ウェルネス」をテーマにモニターツアーを行った。

 1日目は幸田の産業を、2日目は3年前から注力する「ロケツーリズム」を軸に行程を組み立て、同町に工場があるエアウィーヴによる快眠セミナーや特産の筆柿の収穫体験、ロケ地でのパン作り体験などで参加者を歓迎した。

 参加者からは「まちの魅力を知ることができた」、「まちの人の思いを感じられた」などさまざまな声が上がった同ツアー。今後は、商品化に向けての話し合いも進められるという。

 ツアー1日目は、幸田町の産業を学び、体験できるメニューを用意した。宿泊先のホテルでは、エアウィーヴによる快眠セミナーが開かれ、睡眠が心身のパフォーマンスに与える影響や、良質の睡眠に必要な6つのポイントなどを解説。三菱ケミカル・クリンスイではオレンジジュースのろ過実験を通じ、おいしい水を生み出す同社の技術力を体感した。

 幸田町の特産品「筆柿」については、収穫体験を通じ、理解を深めた。参加者は甘いカキと渋柿の見分け方を教わりながら収穫を体験し、その後、センサーを使い、自身が収穫した筆柿の選別を行った。甘い柿はゴマと呼ばれる黒い点々がたくさんあるため光を通さず、逆に渋柿にはゴマが少ないため光を通すので、同センサーを使い光を通すことで誰でも簡単に柿の選別が可能になる。

 今回のツアーに協力した生産者の平岩氏は「多いときには約160人いた生産者も、今では60人程度しか残っていない。多くの人が辞めていったが、筆柿はここにしかないモノ。ご先祖様から預かってきた畑が、柿を作れないからとただの山になることは忍び難い」と思いを語った。

ロケのまち 幸田

 幸田町は、2018年からロケツーリズムの取り組みを始めた。今年東海テレビが制作した連続ドラマ「最高のオバハン 中島ハルコ」では、愛知県・幸田町の「町おこし」をテーマにストーリーを展開する回が放送され、町名の使用に加え、筆柿などの特産物が多数映し出されるなど、ドラマを通じた地域PRにつながった。

幸田サーキットyrp桐山はドラマ登場時の名前の看板を設置

 2日目は、同ドラマのロケ地となった自然酵母パンの専門店「緑と風のダーシェンカ」と、「幸田サーキットyrp桐山」を訪問。ダーシェンカでは筆柿のジャムを使ったパン2種類と、ドラマにも登場した「塩ロールパン」作りを体験。幸田サーキットではゴーカート体験に加え、ロケが行われた場所を巡りながら、そのロケ当時の話を担当者が披露した。

 また1日目の昼食には、同ドラマのクランクアップの日に出演者に出され喜ばれたロケ弁を一部アレンジし提供。長命うどんが提供する同弁当は、夢やまびこ豚や幸田の野菜、筆柿を使用しており、幸田駅前で開催される「OMOTENASHIマルシェ」(今年12月末まで開催)などでは即完売してしまうほどの人気の一品。

華やかなロケ弁

 「開けた瞬間華やかでわくわくした」、「女優さんが実際に食べたと聞くと、より贅沢感が増す」、「こんなに華やかなお弁当を出してもらえたら、おもてなしをされているという思いも伝わる」など、さまざまな感想が挙がった。

 町内では、ロケ弁と並ぶ話題のグルメがもう一品ある。2日目の昼食として用意した「幸田消防カレー」は、もともと幸田町消防本部の消防士がまかないとして作っていたものを改良してイベントなどで地域の人にふるまうなかで人気となり、レトルトカレーとして4月から販売を始めた。

 当初用意していた5000食分はわずか2カ月で、その後の追加生産分もすぐに完売してしまったという同カレー。材料には夢やまびこ豚、筆柿のジャムを使用する。

 同ツアーは、観光庁の「地域の観光資源の磨き上げを通じた域内連携促進に向けた実証事業(第一次)」の支援を受け、地域活性プランニング(東京都)が企画プロデュース・運営役を担った。

ツアーをふりかえって

参加者の声

 特産品の筆柿の収穫体験やパン作りなど、味覚以外の楽しみ方も体験できた。
 愛知出身なので知り合いに愛知のおすすめの場所を聞かれるのですが、これまではうまく答えることができませんでした。今回のツアーに参加して、観光スポットだけではなく、その土地の農産物や製造される商品を通しても人を呼び込むことができると実感できたので、これからは自信をもって愛知の良さを伝えていきたい。

 柿生産者の方のお話が印象に残った。このまちには、自分の力で何かをおこす人が多いと感じました。

 生産者、製造メーカー関係者の方などのお話から、「自分の行動がまちのためになる」という思いがひしひしと伝わってきました。いい経験ができた2日間でした。

関係者の声

 幸田町は岡崎市や蒲郡市の通過点になってしまっているので、両市を訪れる観光客を取り込むうえでも良いツアーになった。今後このツアーがどういったカタチになるかはわかりませんが、起爆剤にはなる。今回皆さんがお泊りになられた「銀河伝説煌めく天空の宿 天の丸」は最高の景色を見られる場所です。今後はこういった場所も活用していきたい。(幸田町役場 環境経済部 鳥居 栄一 部長)

 こうしたツアーは幸田町としても初めての取り組みでしたが、産業を前面に出すことで、新しいきっかけになると感じました。今回のツアーを検証して、商品化に向け関係者との話し合いを進めていきます。(幸田町役場 環境経済部産業振興課 辻本 隆哉 主事)

 観光地として全国に名前が浸透していない幸田町で、ロケ誘致への取り組みを生かし、地域産業の連携する新たな観光ツアーが実現できました。生産者や飲食店関係者など地域の「ひと」の思いの掛け合わせが、力強いツアーコンテンツになることも確信でき、参加者からの手応えも得られた。今後もロケツーリズムを軸に、幸田町の誘客コンテンツやブランディングを考えていきたい。(地域活性プランニング 古川 武男 ゼネラルマネージャー)

 筆柿や幸田の産業、ロケ地などを知っていただくきっかけになったと思っています。(名鉄観光サービス岡崎支店 磯谷 寿明 支店長)

使い捨てバス座席カバー「まもるん」発売  バスくるグループ

2021年11月12日(金)配信

サッと被せるだけで装着完了

 貸切バスの一括見積や仕事のマッチングができるサイト「バスくる」を運営するバスくるグループ(浮舟崇弘社長、東京都葛飾区)は2021年11月11日(木)から、被せるだけで簡単に装着できる不織布のバス座席カバー「まもるん」の受注を開始した。汚れを防ぐ通常タイプのほか、抗菌加工を施したものなど3タイプを用意した。

 バス運行では、芋ほり遠足の汚れやペットの毛の付着、突然の雨によるシートの濡れなど、従来からの問題に加えて、帰国者輸送に伴う除菌・消毒作業も課題となっている。業界初のサービスとして、バスの座席に装着できる簡易不織布シートカバーを、1枚150円(税別)からという低価格で提供する。

 「まもるん」は使い捨てで、汚れたカバーだけを交換できるので、衛生的で経済性にも優れた商品だ。シートを汚れから守る不織布タイプ、水濡れを防ぐラミネート加工タイプ、東洋紡の抗ウイルス加工不織布「ナノバリアー」を使ったものなど、用途に合わせて選ぶことができる。

 価格は1枚(1シート分)にき、通常タイプ150円、ラミネート加工タイプ286円、抗ウイルスタイプ500円(各税別)。納期は1カ月程度。初回は受注生産(11月末日締切)とし、各種3000枚を限定販売する。