北海道大学とJAL、持続可能な社会創りで連携結ぶ

2022年6月8日(水)配信

 北海道大学(寳金清博総長、北海道札幌市)と日本航空(JAL、赤坂祐二社長)は6月7日(火)、サステナブルな社会創りをテーマに連携協定を結んだ。両者で連携し、北海道を舞台に各種社会課題の解決に取り組む。

 温暖化対策に向けて、航空機で収集した海洋や森林のデータを生かした共同研究を進める。地域活性化として、北海道大学が生産した農産品で商品開発やブランド化、販路の拡大や、北海道ワインの振興を目的とした各種取り組みを実施。北海道地域での新しい観光資源の開発や観光に携わる人財育成などに努める。

 このほか、JAL海外支店での短期海外実習や、JAL社員を北海道大学に出向する人事交流なども取り組む。

【北海道】7月から二風谷コタン-ウポポイ間に直通バス 札幌・新千歳空港発着

2022年6月7日(火)配信

上:原田祥吾氏デザイン、下:尾崎友香氏デザイン

 札幌観光バス(福村泰司社長、札幌市清田区)は、2022年7月2日(土)から札幌駅・新千歳空港発着で、平取(びらとり)町の二風谷(にぶたに)コタンと白老町の民族共生象徴空間「ウポポイ」とを結ぶ周遊バス、「セタプクサ号」を運行する。旅行代金は大人3000円(札幌駅・新千歳空港発着、区間運賃あり)。

 平取町からの委託を受け実施する事業で、今回で3年目。7月2日(土)~9月9月25日(日)までの間、土・日・祝日に加え、夏休み期間(8月2日(火)-21日(日))は月曜を除く毎日運行する。二風谷コタンでは「町歩きガイド」の案内(約30分)も体験できる。

 車両デザインは平取町の若手クリエーター原田祥吾、尾崎友香の両氏に依頼。アイヌの人々が大切にしている「森との共生」からの着想で、緑を背景色に採用した。

 バスの愛称「セタプクサ」は、アイヌ語で「すずらん」の意味。平取町内に、北海道原種すずらんの日本一の群生地があることにちなんでいる。

 運行詳細や予約はコチラ(札幌観光バスツーリズム営業部HPへのリンクです)から

琵琶湖汽船 開業135周年記念乗船券を発売中

2022年6月7日(火) 配信

明治から 現在まで の 船 が 券面にデザイン された乗船券

 琵琶湖汽船(滋賀県大津市)はこのほど、開業135周年の記念乗船券を売り出した。

 券面にびわ湖の歴史を彩った明治から現在までの船がデザインされた乗船券2枚とオリジナルグッズ引換券をセットにし、100セット限定、1セット6000円で販売している。乗船券は、ミシガンクルーズか竹生島クルーズで使用できる。 

カルチャークルーズ「白洲正子と巡る琵琶湖」 参加者募集中

 また同社は、カルチャークルーズ「白洲正子と巡る琵琶湖」の参加者を募集している。

 6月19日(日)と7月24日(日)の計2 回運航するクルーズで、1回目は湖南・湖東、2回目は湖北・湖西を中心とした切り口で随筆家の白洲正子の作品を通して近江の文化・琵琶湖の魅力を体感するツアー。

 2022 年が白洲正子が「近江山河抄」の連載を始めて50 周年という節目の年であることから、企画された。

 「白洲正子と歩く琵琶湖」シリーズの著者、大沼芳幸氏が同行し、白洲正子の作品に登場する近江の歴史文化遺産や琵琶湖とのかかわりをユーモアを交えながら楽しく解説する。

多景島

 1回目のツアーは、沖島と多景島を散策するコース。「自動車が一台もない漁村は、ヴェニスの裏街を思わせ、公害や騒音と縁のない島の一日は、私にとって忘れがたい思い出である」と「近江山河抄」で沖島が見える風景を絶賛している白洲正子。現在の沖島も昔ながらの雰囲気が残っていて、のどかな島時間が流れているのを感じられるという。

 料金は、大人(中学生以上)9000 円、小学生 6500 円(乗船料、昼食代込)。

竹生島

 2回目は、長浜港から琵琶湖を南へ縦断しながら、白洲正子が魅了された湖北・湖西の歴史文化遺産を観望する。途中、白洲正子が「何とも可愛らしい小さな島」と称した竹生島にも上陸。

 担当者は「近年は、パワースポットとしても人気の竹生島は、国宝や重要文化財など見どころがいっぱいです。また、船からでしか体験することができない、白鬚神社の湖中大鳥居側からの湖上参拝もおススメです」と魅力を語る。

 料金は大人(中学生以上)1万円、小学生 7000 円 (乗船料、昼食代込)。

訪日客受入ガイドライン策定 モニターツアーの知見も

2022年6月7日(火) 配信

観光庁はこのほど、外国人観光客の受入れ対応に関するガイドラインを発表した

 観光庁は6月7日(火)、訪日観光実証事業を受けて策定した「外国人観光客の受入れ対応に関するガイドライン」を公開した。6月10日(金)からの添乗員付きパッケージツアーの受入開始に向け、実証事業で得られた知見を含めて、旅行業者や宿泊事業者などが留意すべき点を盛り込んだ。

 同ガイドラインは、添乗員付きパッケージツアーの実施に当たり、商品造成からツアー終了後まで各場面で留意する点や、新型コロナ感染症陽性者が出た場合の緊急時の対応などをまとめた。

 とくに、ツアー参加者のマスクの着用をはじめとした感染防止対策の徹底や、民間の医療保険に加入してもらう旨の同意を得ることなどを留意点に含めた。

 ツアー実施中においては、「添乗員は、最新のマスク着用の考え方について十分理解すること」と示し、訪日観光実証事業で見受けられたマスク着用が不要と考えられる場面の具体例や、とくに留意するべき場面と対応の例を挙げている。

 このほか実証事業を踏まえて、飲食店や交通機関などにおける座席配置を固定化することや、グループごとにテーブルを分ける、できる限りマスクを着用する──など、効果的であると考えられる対策も掲載した。

 緊急時の対応として、旅行会社に対し、陽性者が出た場合はあらかじめ自治体の相談窓口などを確認したうえで、医療機関への受信対応や、濃厚接触者の範囲を特定することなどを求めた。

 また、政府は3月1日(火)から、外国人の新規入国について受入責任者の管理のもと新規入国を認めた。6月10日(金)からの観光目的の入国についても、日本の旅行業者が受入責任者となり、厚生労働省の入国者健康確認システム(ERFS)へ事前申請することを求める。

ANTA、国内観光活性化フォーラム開く 3年ぶり900人集い、10万人送客CPも決定

2022年6月7日(水) 配信

約900人が集まった会場のようす

 全国旅行業協会(ANTA、二階俊博会長)は5月31日(火)、山梨県甲府市で第16回国内観光活性化フォーラムを開いた。全国47都道府県から約900人が集合。コロナ禍からの国内観光の復活や地域観光の活性化に向けて、10万人規模の送客キャンペーンの実施を決定し、会員の結束を強めた。コロナ禍で、同フォーラムは2度延期し、3年ぶりに開催となり、二階会長は「(観光業は)ほかの業界より、とりわけ厳しいが、我われが元気を出さないと人が集まらない」と会員を鼓舞した。

二階俊博会長

 同フォーラムは感染防止対策のため、開催2日前と当日の体温を記入した健康チェックシートの提出を求め、座席は1席ずつ間隔を空けた。

 二階会長は冒頭、コロナ禍について「旅行業界が乗り越えていくために全力で取り組んでいきたい」と決意を表した。

 全国で観光による地域振興が盛んになっていることにも触れ、「ANTA会員が地域と連携することで、あらゆる産品や資源の魅力が2~3倍になる」と語った。

 開催地である山梨県については、「長崎知事を中心に観光振興に熱心に取り組んでいる。一緒に観光を通じて頑張っていこう」と一層の送客を呼び掛けた。世界情勢が不安定化しているため、「観光は平和に通じる産業だ。さらなる、平和のためにも全力を尽くしたい」と抱負を述べた。

 観光庁の高橋泰史参事官は基調講演「これからの政策について」に登壇。2016~19年の外国人観光客による観光消費額が輸出区分で、自動車に次ぐ2位だったことを振り返った。

高橋泰史参事官

 現在の状況については「日本は複数のアンケートで次に観光したい国として選ばれている」と話した。これらを踏まえ、アフターコロナで日本を支える産業への支援として、「県民割や宿泊事業者へ廃屋撤去に対する補助金などを創設した」と語った。

  記念講演に登壇した山梨県の長崎幸太郎知事は、感染者数が今年のゴールデンウイーク以降、減少傾向にあることから、「(コロナ禍は)終わりつつある。このため、秋には世界最大の武者行列『信玄公祭り』を過去最大規模で3年ぶりに行いたい」と観光振興により注力する姿勢を示した。

長崎幸太郎知事

 さらに、新たな魅力として、富士山や南アルプスなど地域で異なる水質を生かした日本酒などをアピールしていく。

 長崎知事は富士山やモモなどの観光資源も有していることを話し、「自分なりの楽しみや感動に出会える多様性を実現していく」と力を込めた。

 樋口雄一甲府市長は「昇仙峡が20年、日本遺産に認定されたほか、武田信玄公が昨年、生誕500年を迎えるなど好機を迎えた」とアピール。景勝地や産品も堪能したうえで、「魅力を伝えてほしい」と求めた。

樋口雄一甲府市長

 会場では同県内の自治体がブースを出展した。

地元自治体展示ブース

 熊本県送客キャンペーンはコロナ禍で、延べ3万6921人と10万人の目標は未達となった。最優秀会員は南国交通観光(鹿児島県鹿児島市)。優秀会員は極東航空開発(福岡県福岡市)で、準優秀会員は長崎県営バス観光(長崎県長崎市)だった。

 今年度は6月1日から23年1月末まで、山梨県への送客CPを展開。目標は10万人とした。

次回は23年3月 山形県山形市で

 次の国内観光活性化フォーラムの開催地は、23年3月に、山形県山形市を予定している。

 引き継ぎ式では関東地方支部長連絡会の村山吉三郎議長から、東北地方支部連絡会の大久光昭議長に大会旗が渡された。

大会旗が村山吉三郎議長(左)から大久光昭議長に手渡された

JALなど、観光列車「あめつち」貸切 倉敷・出雲を巡る旅へ

2022年6月6日(月)配信

観光列車「あめつち」走行シーン(イメージ)

 日本航空(JAL、赤坂祐二社長)と西日本旅客鉄道(JR西日本、長谷川一明会長)、ジャルパック(平井登社長)はこのほど、新型コロナウイルス感染症拡大により減少した移動需要の回復を目的に、「山陰色豊かな観光列車『あめつち』貸切乗車と倉敷・出雲を巡る2・3日間」を売り出した。

 JR西日本の観光列車「あめつち」を丸ごと貸切し、7月の連休に山陰・山陽エリアを巡る 2・3日間のツアーを用意した。応募期間は6月12日(日)まで。申し込みはジャルパックホームページ内の詳細ページから。

 初日は、羽田空港から岡山へ飛び、倉敷美観地区を観光。宿泊は世界的にもトップクラスのラドン含有量を誇る三朝温泉とする。翌日は「あめつち」に乗車し、車窓からの大山や雄大な日本海など、山陰ならではの美しい景色を堪能できる。また、「あめつち」にはJALふるさと応援隊として活躍する客室乗務員も同乗し、旅を盛り上げる。出雲大社観光の案内役も務め、JALならではの旅を楽しめる。

 3日間コースではさらに、美しい庭園を持つ足立美術館への案内や、美肌の湯として名高い玉造温泉の老舗温泉旅館での宿泊も用意している。

 出発日は7月17日(日)。羽田空港発の2日間と3日間コースのほか、現地発着プランも用意する。料金は1室2人利用の場合1人につき、2日間コース11万8000円、3日間コース13万1000円。

KNT-CTパートナーズ会、堀氏が会長を続投 旅を通して地域活性化へ

2022年6月6日(月)配信

KNT-CTパートナーズ会の堀泰則会長

 KNT-CTパートナーズ会(堀泰則会長、3547会員)は6月2日(木)、東京都港区のシェラトン都ホテル東京で通常総会を開いた。2024年度までの続投が決定した堀会長は「ウィズコロナ・アフターコロナのなかで、我われは新しい旅を模索しながら、旅の新しいニュースタイルを築いていかなければならない。『共生・共創』をテーマに掲げ、KNT-CTホールディングスとともに事業を通して共生していく。そして旅を通して地域を創生し、共創していく」と力を込めた。

 21年度のKNT-CTホールディングスは、構造改革により21年10月に新生「近畿日本ツーリスト株式会社」を発足。クラブツーリズムが月額定額制サービスのクラブツーリズムパスを含め、新しい事業展開を進めた。堀会長は「一緒に旅の安心安全をしっかりと担保し、地域共創をテーマに旅を通して地域を活性化させていくことが肝心」と考えを述べた。

KNT-CTホールディングスの米田昭正社長

 KNT-CTホールディングスの米田昭正社長は「新時代の旅行業が、地方創生になることはまず間違いない」と強調した。地域共創事業を拡大していくと伝え、クラブツーリズムでは、クラブツーリズムパス「地域大好きクラブ」などを展開。KNT-CTホールディングスでは、独自の地域に根付いた着型旅行の拡充を目指し、ナイトタイムエコノミーの活性化を進めると明かした。

近畿日本ツーリストの髙浦雅彦社長

 近畿日本ツーリストの髙浦雅彦社長は「一年を通じて、本業で十分な送客ができなったことを、今年度の目標に変えてスタートさせた」と会員に向けて報告。「22年度は本業で送客を全うするとともに、公務系の受託事業や地域開催のスポーツ事業にも経営資源を集中し、継続黒字化をはかる」と方針を伝えた。

近畿日本ツーリストコーポレートビジネスの髙川雄二社長

 近畿日本ツーリストコーポレートビジネスの髙川雄二社長は、22年度について「企業や団体へのMICE事業、中央省庁のBPO事業、スポーツ事業に力を入れていきたい」と話す。同時に、再開に向けて準備を進めている訪日事業も力を入れていく考えを示した。

クラブツーリズムの酒井博社長

 クラブツーリズムの酒井博社長は、22年度の国内旅行の売上高を「コロナ禍前の18年度の実績に戻すことが最大の目標。質もさることながら、徹底的な量の追求でパートナーズ会の役に立てれば」と考えを述べた。さらに「22年をSDGs元年と位置付け、具体的な取り組む内容とKPI(重要業績評価指標)を策定し、社会課題への解決に貢献していく」と宣言した。

 なお、23年度の通常総会は、来年5月30日(火)に東京都港区のシェラトン都ホテル東京での開催を予定していると発表した。

白糸の滝など2社が特別清算(山形県鶴岡市) 負債は2社合計で約7億7700万円(帝国データバンク調べ)

2022年6月6日(月) 配信

 ドライブインや飲食店を経営する「白糸の滝」(山形県鶴岡市)と、関係会社の「丸甚商事」(同所)は5月18日(水)、山形地裁鶴岡支部から特別清算開始命令を受けた。帝国データバンクによると、負債は2社合計で約7億7700万円。

 白糸の滝は1977(昭和52)年10月に創業、80(昭和55)年12月に法人改組。鶴岡市(旧・朝日村)の国道112号沿いでドライブインを経営するほか、山形市内で中華レストラン、地元ゴルフ場、観光施設内でレストランや土産物店の経営も行い、99年2月期には年間売上高約10億2000万円を計上していた。

 しかし、山形自動車道の整備により、国道112号の交通量が減少し、主力のドライブインの集客が低迷。2017年12月期(02年決算期変更)の年間売上高は約2億7500万円に落ち込み、赤字経営を余儀なくされていた。このため、事業再生スキームが策定され、18年10月に新会社「白糸の滝」(山形市)を設立。19年2月1日に会社分割により新会社へ事業を譲渡し、旧会社は21年12月31日に開いた株主総会の決議により解散していた。

 丸甚商事は1966(昭和41)年創業、翌67年5月法人改組。ドライブインと食堂を経営し、01円3月期には年間売上高約8億5800万円を計上していたが、東日本大震災などの影響で17年12月期の年間売上高は約3億2000万円に減少。白糸の滝と同様の措置となった。

 負債は17年12月期末時点で白糸の滝が約4億2800万円、丸甚商事が約3億4900万円、2社合計で約7億7700万円だが、「その後変動している可能性がある」(帝国データバンク)という。

 なお、2社が経営していたドライブイン、飲食店などは新会社のもと、通常通り営業している。

「花と秋田犬と歴史」に触れる約4㌔のウォーキング 6月18日 大館市でONSEN・ガストロノミーウォーキング

2022年6月6日(月)配信

ローズガーデン(外観)

 おおだて歩き実行委員会(秋田県大館市)は6月18日(土)、「ONSEN・ガストロノミーウォーキング in 秋田犬の里おおだて」を開催する。

 5回目となる今回は、人気の「廃線コース」と「峠道コース」から「市内散策コース」に一新。「花と秋田犬と歴史」に触れる約4㌔のウォーキングを企画した。

バラソフト

 1種1本を基本としたサンプルガーデンとして約500種類のさまざまなバラが植栽されている「石田ローズガーデン」や、ローズガーデン内にある旧住宅を改装し今年4月にオープンした「石田ローズカフェ」、国の登録有形文化財「桜櫓館」、「秋田犬会館」など、さまざまな見どころを結ぶ。

 各ガストロノミーポイントでは、地元名菓や地酒、カフェスイーツ、旬の食材を使った料理など、バラエティーに富んだ大館市ならではの食を用意。ゴール後には無料入浴券を使い「大館東台温泉 東の湯」で1日の疲れを癒せる。

大館東台温泉 東の湯

 参加料金は大人・小人(小学生以上)ともに3000円、定員は100人。

「街のデッサン(254)」 ボブ・ディランは旅を続け、歌う、不条理と混迷の時に想うことは

2022年6月5日(日) 配信

若かりしボブ・ディランが歌う(1963年)

 科学技術が発達し、ITが人間の知能を超える未踏社会が到来している。それでも、宇宙とは何かを明らかにしたのはアインシュタインという超天才の頭脳であるし、生命はどう育まれてきたのか、どうして人間という種が生まれてきたのか、これもまたダーウィンの「種の起源」を起点とした叡智が明らかにしてきた。人類が直立歩行を獲得し脳ミソを増やし、他の星に在るかもしれない文明を凌駕していると想起できるのに、いま地球上の現実社会を見てみると不合理で不条理な事態に満ちている。

 他国の領土に理不尽に踏み込んで、演習にやってきたと思っていた兵士たちが何の理由も罪もない市民を砲撃しているのだ。いわれなき、大儀なき戦争が、その国の独裁者によって何の呵責もなく遂行されている。高度に組み上げられた叡智の中身はまさにスッカラカンで、良心も正義も善も、哲学も虚空である。

 私はかつて口ずさんでいた歌をいま再び何気なく歌っている。私が若かった時代にも戦争が行われていた。地球上の多くの人類、民族が平和を心の真底から願っていた時代だ。

 その歌とは、ボブ・ディランの「風に吹かれて」である。ボブ・ディランは別にゴリゴリの反戦家ではなかった。その時代に生きる人間として息苦しかったのだろうと思う。フォーク歌手としてスタートし、カントリー・ソングやロックに影響されながら、ごく普通の人間としての信条を歌い続けてきた。だから流行歌手でもない。

 私には、ボブ・ディランが「吟遊歌人」に思える。そうでなければノーベル賞など貰えなかっただろう。無論、貰う必要もなかったはずだ。日常的に歌詞を発想し、曲を創り、何歳になっても歌い続けることができればよかったのだ。齢がいっても旅(コンサート)を止めずにネヴァー・エンディング・ツアーと呼んでいるのはそのためである。

 しかし、世の中には理解不能な輩がいる。自国の経済が破綻しようと、長い歴史の中で築かれてきた文学や音楽、バレーなどの貴重な文化芸術財を崩壊させようと、国民の矜持を何百年先まで回復させることができなくても、戦争を仕掛け終えることのない輩である。

 ボブ・ディランは今でも旅をしながら歌っている。「戦争が無くなるまで、どれほど砲弾が飛び交えばよいのだろうか、その答えは風に吹かれている」と。そして、全世界の人々がいまやボブ・ディランの想いに同じく、風になって戦争を止めにいかなければならないと念じているのではあるまいか。

コラムニスト紹介

望月 照彦 氏

エッセイスト 望月 照彦 氏

若き時代、童話創作とコピーライターで糊口を凌ぎ、ベンチャー企業を複数起業した。その数奇な経験を評価され、先達・中村秀一郎先生に多摩大学教授に推薦される。現在、鎌倉極楽寺に、人類の未来を俯瞰する『構想博物館』を創設し運営する。人間と社会を見据える旅を重ね『旅と構想』など複数著す。