生き物たちの「死」と「その先」 サンシャイン水族館で「終わりは始まり展~生き物たちの終焉~」開催中

2022年10月17日(月) 配信♯旬刊旅行新聞 ♯サンシャイン水族館 ♯特別展

同館で飼育していたロシアラッコの剥製

 サンシャイン水族館(東京・池袋、館長:丸山 克志)は12月18日(日)まで、「終わりは始まり展~生き物たちの終焉~」を展開している。

 生き物たちの「死」と「その先」をコンセプトとする、通常営業終了後の夜間に行われる特別展。

 1階では生き物としての「死」、2階では種としての死(絶滅)、屋外エリアのマリンガーデンでは人が関わることによって起こる死について館内に暮らす17種の生き物を例に説明。詳細な解説は、パネルのQRコードを読み取ることで読むことができる。

 解説パネルに加え館内には、同館で飼育していたロシアラッコの剥製や絶滅危惧種に指定されているチュウゴクオオサンショウウオ、海の環境問題について考えるオリジナル模型も展示する。

 また、生き物たちが過酷な自然界を生き抜く術をクイズ形式で学べるコンテンツ「命を繋げ!運命の選択~自然の中を生き延びろ!~」も飼育スタッフが制作した。

同イベントをイメージした照明の大水槽「サンシャインラグーン」

JTB、SDGsを旅で応援 プラごみ削減宿泊プラン売り出す

2022年10月17日(月)配信

マイボトルサービス(イメージ)

 JTB(山北栄二郎社長)は10月13日(木)、フィルズ(飯田百合子CEO、神奈川県横浜市)と連携し、長野県・志賀高原エリアで宿泊施設のプラスチックごみ削減を目的とした宿泊プランを売り出した。ドリンクやフードの中身だけを売買できるプラットフォームを運用するフィルズのサービスと連携し、商品化した。

 今回のプラン化は、JTBにおける社員参加型の新規サービス開発プロジェクトである「JTB Tourism Lab」で、脱炭素やサステナビリティに問題意識を持つ社員を中心に商品化をはかった。

 プラン名は、「マイボトルから始める脱プラスチック! ボトルへの1ドリンク付き&ホテルアメニティ無し」。志賀高原エリアの宿泊事業者と連携し、「アメニティ無し」と「宿泊施設でドリンクをリフィル(補給)するサービス」を組み合わせることで、「プラスチックごみ削減宿泊プラン」として、SDGsを旅で応援する。

 宿泊先は志賀パークホテル、硯川ホテル、木戸池温泉ホテルから選べ、設定期間は11月6日(日)当日宿泊まで。

 JTBとフィルズは今回の連携を通じて、宿泊(旅行)をするときはマイボトルの持参を推進し、使い捨てプラスチックを削減し、新しい旅のカタチを提案する。今後は利用者のニーズを分析し、設定エリアと参画施設を拡大する見込み。自治体と連携して地域全体の脱プラスチック推進に寄与、さらにはフードロス解決にもつなげていきたい考えだ。

10月14日、鉄道開業150周年を祝う 「出発進行」のあいさつで新たな時代へ

2022年10月17日(月) 配信

真貝康一副会長(中央)が出発進行のあいさつで開業150年を祝った

 1872(明治5)年に日本で最初に新橋―横浜間で鉄道が開業してから、10月14日(金)に150年を迎えた。同日には、「鉄道の日」実行委員会(森地茂会長)が東京都内で祝賀会を開き、150年の歴史を振り返りながら、「出発進行」のあいさつで新たな時代に向けて走り始めた。

森地茂会長が主催者あいさつ

 主催者を代表して冒頭、森地会長は「新幹線開通や、民営化など数々の先進事例、鉄道人のモラルの高さなど、日本の鉄道が世界に誇るものがたくさんある」とあいさつ。「コロナ禍と人口減少で地方鉄道はシステムの変革を迫られている」と課題をあげる一方で、「鉄道会社は沿線の生活や産業活性化に直結し、大きな期待をされている。150年の歴史を支えてこられた先人に思いを馳せたい」と語った。

斉藤鉄夫国土交通大臣

 来賓の斉藤鉄夫国土交通大臣は、「鉄道開業150周年を記念したイベントにいくつか参加してきたが、鉄道が多くの人々に愛され、社会生活にとって重要であることを改めて実感した。日本の鉄道の発展に尽力されてこられた方々に、敬意と感謝を申し上げたい」と祝辞を述べた。そのうえで、「地域の足を守る公共交通機関として、持続可能な輸送サービスを提供する大きな使命と責任を果たしていくことが求められている」と強調し、今後のさらなる発展に期待を寄せた。

 その後、乾杯の代わりに、真貝康一副会長が壇上で「出発進行」のあいさつを行い、150周年を祝った。

「街のデッサン(258)」 文明が衰亡するとき、地球の未来を発明できるか

2022年10月16日(日) 配信

美しい家並が村の平和を語る(ルーマニア)

 人類は太陽系の他の惑星に人間を運び、また安全に帰還させられる高度な科学技術を発達させたが、いまだにその技術を使ってミサイルや戦車で殺しあう戦争が絶えないのを見ると、構築してきた文明の構造に致命的な欠陥が存在しているのではないか、と疑念を持ってしまう。この世に生まれた文明は、局所的に盛衰を繰り返してきたが、地球規模の戦争やウイルスの感染は一挙に人類を滅ぼしてしまうだろう。ウクライナとロシアの戦争は、EUやユーラシア大陸の問題に留まらず、世界の存亡に深く関わっているのである。

 電子工学者で未来学者のデニス・ゲイバー(ガボール)は1963年に書いた本で、既に人類の3つの危機を挙げている。それが「核戦争」「人口問題」「余暇の時代」の3つである。書棚から引っ張り出した彼の著作を開いてその慧眼に驚嘆した。まさにプーチンが仄めかした「核兵器」の使用可能性への言動は、その危機の1つが現実化することを示唆していた。そして、世界の穀物庫であるウクライナの農産物の輸出阻止による食糧危機は、「人口(増大)問題」を浮き彫りにしている。

 3つ目の「余暇(レジャー)」の問題は、観光業界全体にもかかわる課題を提供している。すなわち私の理解では、ゲイバーは人類を「平凡人の楽園」と「非凡人の将来」に分けて、レジャーが例え愉楽であっても、それらを自分自身の経験的叡智としてチャージできるか、あるいはその機会をディスチャージ(浪費)のみで過ごしてしまうか、2つの隘路をイメージしているようだ。本来、レジャーとは人間を「自由にさせる時間」のことであるが、その時間を強靭な思考の基盤にするのが「非凡人」であり、平凡人は享楽だけで終わらせてしまう。核戦争を破棄させ永続する幸せ社会を創造するのが非凡人の未来的役割であり、平凡人は悦楽に身を委ね戦争を阻止できず食糧危機を回避させることはできない。ゲイバーが書いた本のタイトルは「INVENTING THE FUTURE(未来を発明する)」。このコンセプトは「未来は予測できないが、それを発明することはできる」という有名なキーワードとなって語り継がれてきた。

 日本の政治学者・高坂正尭が81年に書いた本「文明が衰亡するとき」で、ローマ帝国の崩壊とヴェネツィアの挫折、現代アメリカの凋落を分析し、それぞれの「社会的叡智の衰退」を指摘している。日本の観光業界が今後「観光大国」を目指すとき、この社会的叡智の涵養基盤をどう考えるべきか問われている。

コラムニスト紹介

望月 照彦 氏

エッセイスト 望月 照彦 氏

若き時代、童話創作とコピーライターで糊口を凌ぎ、ベンチャー企業を複数起業した。その数奇な経験を評価され、先達・中村秀一郎先生に多摩大学教授に推薦される。現在、鎌倉極楽寺に、人類の未来を俯瞰する『構想博物館』を創設し運営する。人間と社会を見据える旅を重ね『旅と構想』など複数著す。

 

全国運輸環境協会、コロナ感染者搬送 拡大防止の経験で安全確保

2022年10月15日(土) 配信

旅行会社や貸切バス事業者などで構成する

 旅行会社や貸切バス事業者などで構成する全国運輸環境協会(竹島美香子会長、東京都新宿区)は、自治体向けに新型コロナウイルスに感染した軽症者をホテルなどの療養施設に搬送する事業を展開している。

 コロナ禍で団体旅行の需要が減少するなか、会員各社の新たな収入源を提供。さらに、万が一ツアーで感染者が乗車した際も、ほかの利用者への感染を防ぐ経験を得ることで、貸切バスの安心・安全を確保する。

 会員には、全国旅行業協会(ANTA)の会員も所属する。

 同協会は2014年に、女性バス運転士の労働環境向上のために設立。コロナ禍では、運転士や添乗員向けの感染対策の講習会を開いている。

 コロナ感染者の搬送は会員各社の運転士に加え、社員が添乗員として乗車し、感染者の自宅などを1軒ずつ訪れ、療養施設まで運んでいる。

 20年に集団感染が起きたダイヤモンドプリンセス号からの搬送した民間救急の会員がいる。

 竹島会長は「(民間救急の会員が)感染対策に関する情報共有と研修を行い、安全を確保している」とアピールする。

「もてなし上手」~ホスピタリティによる創客~(141)感謝の想いがおもてなし行動を生み出す 細やかな気付きを生む

2022年10月15日(土) 配信

 

 クライアント企業から、地元のプロジェクトに料理人を紹介してほしいと依頼され、山形のアル・ケッチァーノのオーナー奥田政行シェフに連絡をしました。とても忙しいシェフなのですが、連絡するとすぐに快諾いただき、現地にお迎えすることができました。

 さらに「皆さんがお集まりになる機会に、少しお話もしましょう」と、講演もしていただきました。その講演のあとにシェフから「この機会をつくってもらった西川さんへ、お礼を述べることができなかったのが失敗でした。ごめんなさい」との一言が、とてもうれしく記憶に残るものとなりました。

 シェフに依頼するために山形まで伺い、何度も日程調整のための連絡をして、ようやく決まったプロジェクトでした。その言葉で、すべてが報われた想いでした。

 そうした細やかな気遣いができるシェフだからこそ、常にお客様方に喜ばれる料理を提供することができるのだと思います。

 シェフの料理を食べ始めたころ、あるパーティーに参加されることを知り、申し込みました。テレビや雑誌などでも紹介されている有名シェフが何人も参加され、1皿ずつ腕を振るうというとても魅力的なパーティーでした。

 ただ料理が作られるだけでなく、その渾身のお皿が提供される度に、その料理を作ったシェフが、料理について解説をしてくれるのも楽しみの1つでした。食事だけでも特別感があるのに、それを作ったシェフが直接話をしてくれることは、料理の味をさらに高め楽しいものでした。

 いくつかの料理を食べたあとに、奥田シェフの順番が来ました。他のシェフは自作の料理を得意げに話すなかで、奥田シェフだけは、「前後の料理がこうだから、それをつなぐためにこういった料理を作りました」と、そのパーティーの料理全体を見た1皿を作られていたのです。

 提供されたすべての料理は、間違いなく美味しいものでしたが、コース料理となるとそれぞれが主張し合っているようにも感じていたのです。シェフのそのコメントを聞いたときの感動は、忘れることができません。それがきっかけで、その後も奥田シェフのレストランに機会がある度に伺うようになったのです。

 講演のあとに私に掛けていただいた言葉からは、同時に感謝の想いを持つことの大切さを改めて感じた瞬間でもありました。

 気付かないなかで、たくさんの方々の力を借りて私たちは仕事をしています。今の結果は、そのすべての人たちの力があったからです。

 感謝する想いが、シェフのように細やかな気付きを生み、お客様に喜ばれる仕事につながるのです。

HIS、オンラインツアー25万人突破 土産販売サイトは特別価格に

2022年10月14日(金) 配信

増加の推移

 エイチ・アイ・エス(HIS)は10月11日(火)、オンラインツアーの体験者数が25万人を突破したことを発表した。これを記念し、世界のお土産通販サイト「stoory」で特別価格の商品を販売している。

 同社は2020年4月から、オンラインツアーを開始。サービスの認知が広まった21年以降の毎月利用者数は、約1万人で推移している。ウィズコロナ時代の現在は、従来の旅行の代替のほか、オンライン体験ツアーだからこそ実現可能なコースや旅先の下見などとしても利用されているという。

 今年7月には、35カ国を巡る特別企画「24時間ライブ中継」を開催し、421人が参加した。「世界とつながる、平和への旅」をテーマにウユニ塩湖のサンセットやスイスの雪原、モンゴルの大草原、青と白の絶景サントリーニ島などを24時間でつないだ。

 stooryではイタリア「ローカー」のウェハース、ハワイ「マウナロア」のマカデミアナッツなど25種30点以上3万円相当の商品が詰まった「世界の輸入菓子セット」を2万5000円(送料込)で発売する。さらに、アメリカ・ハワイのお土産「ミニバイツクッキーセット」は2500円(手数料、送料別)で用意した。

心のバリアフリー、研修・紹介動画を公開 新たに40観光施設を認定(観光庁)

2022年10月14日(金) 配信

観光庁は「観光施設における心のバリアフリー認定制度」で新たに40施設を認定した

 観光庁は10月14日(金)、「観光施設における心のバリアフリー認定制度」において、新たに40施設を認定し、計375施設となった。これに加え、宿泊施設や飲食店、観光案内所の各認定施設の取り組み事例を紹介する動画や、聴覚障害のある人に対する心のバリアフリー研修動画をユーチューブで公開した。

 同制度は、ハード面の整備に加え、筆談対応などソフト面のバリアフリー対応や情報発信に積極的に取り組む姿勢のある観光施設を認定する。認定を受けた施設は観光庁の定める認定マークが交付される。

 このほど追加認定した40施設のうち、宿泊施設は、銘石の宿かげつ(山梨県)、ゼログラヴィティ清水ヴィラ(鹿児島県)、料理旅館 平成(福井県)、大観荘せなみの湯(新潟県)、竜王ラドン温泉ホテル 湯―とぴあ(山梨県)──の5施設。

 飲食店はパン・ダニエル(山梨県)の1施設。

 観光案内所は、道央・東北・北陸・関越・上信・常磐・館山・東関東──などの自動車道に置かれたパーキングエリアやサービスエリア内のインフォメーションセンターから34施設となった。

 心のバリアフリーへの理解を深めるため、飲食店向けに聴覚障害のある人へのこころのバリアフリーとして、新たに2本の研修動画や取り組みの紹介動画をユーチューブにアップした。

 研修動画は、グルメリポーターの彦摩呂氏を起用し、外食での「聴覚障害」の疑似体験を通してバリアフリー対応について学ぶ内容。

 取り組み紹介動画では、認定を受けた観光案内所・宿泊施設・飲食店それぞれの具体的なバリアフリー対応を紹介した。

「観光革命」地球規模の構造的変化(251) 人手不足と人財育成

2022年10月14日(金) 配信

 

 10月に入ってからコロナ禍が下火になると共に、国や自治体による旅行・観光支援策が本格化してきた。国は「Go Toトラベル」に代わる観光需要喚起策として「全国旅行支援」を10月11日からスタートさせた。国の補助を受ける都道府県は国の要綱に沿いながら地域の事情に応じて実施をはかる。

 また国は10月11日から、1日5万人とする入国制限を撤廃し、従来のツアー客に加えて、個人旅行の受け入れも解禁する。円安はインバウンドにプラスに働くので、外国人観光客の増加が期待されている。長引く苦境で喘いできた旅行・観光産業にとって、ようやく一条の光が射し込んできた。

 とはいえ、旅行・観光産業の人手不足は深刻な状況にある。とくに宿泊業は労働集約型の産業であり、人手不足は致命的結果をうみだしかねない。観光需要喚起策も大切であるが、人手不足支援策も不可欠である。

 北海道の宿泊業最大手・野口観光グループはコロナ禍前の2018年4月、職業訓練校として「野口観光ホテルプロフェッショナル学院」を開校した。

 当初はホテリエ養成の総合ホテル学科のみで発足し、19年に総合調理学科を追加設置。企業内職業訓練校なので、学院生は野口観光の正社員として採用され、高卒並みの給料をもらうと共に、入学金・授業料無償、寮完備(3食付)で働きながら学べ、各種資格を取得できる。学院は野口観光運営の「新苫小牧プリンスホテル和~なごみ~」に併設され、2年間の座学と実習を通じてホテルプロフェッショナルを養成する。

 すでに約120人が卒業しており、野口観光が各地で展開するホテルなどで仕事に従事している。学院長で野口観光会長の野口秀夫氏は「卒業生が他社に移っても宿泊業全体の底上げになる」と述べている。私も学院卒業生が働いているホテルに宿泊したことがあるが、若いスタッフが生き生きと真摯にさまざまな「おもてなし」に励んでいる初々しい姿に接して、心が洗われる思いを感じた。

 旅行・観光産業の根幹は「おもてなし」であり、従業者が心のこもったおもてなしを心掛けておれば、客は自ずとリピートしたくなる。おもてなしの心を大切にして「育てるホテル」をモットーに若手人財の育成に尽力している野口観光のチャレンジを応援したい。

石森秀三氏

北海道博物館長 石森 秀三 氏

1945年生まれ。北海道大学観光学高等研究センター特別招聘教授、北海道博物館長、北洋銀行地域産業支援部顧問。観光文明学、文化人類学専攻。政府の観光立国懇談会委員、アイヌ政策推進会議委員などを歴任。編著書に『観光の二〇世紀』『エコツーリズムを学ぶ人のために』『観光創造学へのチャレンジ』など。

 

 

持続可能性という新しい価値を探る DMO雪国観光圏や帝国ホテルの先進事例

2022年10月13日(木) 配信

パネルディスカッションのようす。(左から)井口智裕氏、平石理奈氏、北村剛史氏

 日本能率協会はこのほど、宿泊業界向けオンラインセミナー「これからのホスピタリティとは『持続可能性』という新しい価値」を開いた。業界がサステナビリティに取り組む必要性などを探った。

 はじめに、いせんの社長とDMO雪国観光圏(新潟県・湯沢町)の代表理事を務める井口智裕氏が、経営するryugon(同南魚沼市)と同DMOのそれぞれが取り組む持続可能性について説明した。

井口智裕氏

 同DMOは湯沢町や長野県・栄村、群馬県・みなかみ町など3県の7市町村への誘客を行う組織。8000年前から続く雪国で育まれた知恵「雪国文化」を紹介している。町それぞれが町内の魅力をアピールするなか、広域で活動することでさまざまな人に関わってもらい、地域を活性化したい考えだ。

 具体的には、「ryugon」は雪国文化をテーマにリニューアルした。このほか、雪国観光圏では、地元の食材を使用している宿や料理店を雪国A級グルメとして紹介している。

 そうしたなか、「日本の温泉旅館の魅力が海外に伝わりづらいことが課題だった」(井口氏)ことから、欧米で広まっているというゴミや化石燃料の削減目標を数値化するなど、環境に配慮した高付加価値型の宿泊施設「エコロッジ」を推進していることを外国人にアピールしていると語った。

 続いて、帝国ホテルSDGs推進担当課長の平石理奈氏が「サステナビリティの推進活動」をテーマに登壇した。

平石理奈氏

 同ホテルでは2001年に、環境委員会を発足。20年にはサステナビリティ推進委員会を立ち上げた。

 01年には、乾燥機を設置。生ゴミから作った肥料で育てた野菜をレストランで利用している。こうした取り組みで、1年間における生ゴミの排出総量のうち、70%をリサイクルしている。

 また、20年には感染対策も兼ねてバイキングをオーダー方式に変更し、従業員食堂では食事会場で提供しない野菜の端材を使うことで、ゴミの量を前年から約8割減らすことができたという。

 脱プラについては、プラスチックの素材を竹や木製などに切り替え、約92%プラスチック量を減らした。

 省エネ対策として、上高地帝国ホテルでは、発電時に二酸化炭素を排出しない再生可能エネルギーに由来する電力「CO2フリー電気」を使用している。50年には二酸化炭素の排出を実質ゼロとすることを目指している。

 そのうえで、平石氏はこれからのホテルに求められることについて、「滞在が環境や社会課題の解決につながること」と語った。

 一方、ラグジュアリーとサステナビリティは相反するとして、お客の理解を得るためのSDGsセミナーを開催していることを紹介。「利用客の声を聞きながら、よりサステナビリティを推進していきたい」と話した。

 最後にパネルディスカッションを開き、井口氏と平石氏が登壇。モデレーターは宿の品質認証プログラム「サクラクオリティ」を運営する観光品質認証協会統括理事の北村剛史氏が務めた。

 SDGsに取り組んだ成果について問われた井口氏は「ごみの排出量の目標を数値化することで、スタッフの削減に対する意識が向上した」と述べた。

 また今後は、「小さい旅館単館でSDGsを推進しても、お客様には『経費削減のため』と思われることもある。地域という大きい単位で声を挙げ、お客に理解してもらいたい」と話した。

 平石氏は約1700人の従業員が一丸となってSDGsに取り組めている理由を訊ねられ、企業理念で公益性の追求を掲げていることを挙げた。

 社内で徹底するために、決裁書では「新しく実施する取り組みについて、SDGsの目標のうち、達成できる項目を記載する欄を設けた」と語った。