子ども旅行専門の「引率舎」

引率舎社長 岸 幸成氏
引率舎社長 岸 幸成氏

 「子ども専門旅行会社」「子ども旅行制作会社」を謳う「引率舎」(岸幸成社長、東京都葛飾区)は2010年4月に設立された旅行会社。行政機関や学校機関、民間企業、NPO法人などが主催する小・中学生の子供に特化した旅行の企画や制作、運営、引率、観光施設・宿泊施設・観光バスの手配などを行っている。エリアは国内で、得意とするのは体験活動がメインの教育旅行だ。代表の岸幸成氏に事業内容を聞いた。

【飯塚 小牧】

≪“運営力”で大手と勝負、安全第一で価格競争せず≫

 会社の設立から日は浅いが、岸氏の子供旅行の引率経験は15年を超える。中学時代に区主催のリーダー講習会を受講し、高校生で行政主催のキャンプの引率を開始。これらの活動から高校時代には、年に1人しか選ばれないという東京都の「模範青少年」の表彰を受けた経歴も持つ。

 卒業後はフリーのディレクターとして、大手企業、スポーツクラブ主催のキャンプやスキー教室などに携わり、旅行会社勤務の経験も経て、会社を立ち上げた。昨年の実績は、スポーツチームの夏合宿手配が50チームと地区の子供会が20件、スポーツクラブなどが主催する教育旅行の運営委託が7件など。

 岸氏は、現在の教育旅行が抱える問題点として旅行会社間の価格競争をあげる。「安全と価格の両面は追えない。価格競争は高速ツアーバスの事故のような惨劇を招く恐れがある」と危機感を示す。

 また、教職員が実務のほかに、教育旅行に関する業務をこなす点も、実施面で問題がないとはいえない。

 「引率人数について各教育委員会の定めはあるが、充分ではない。我われが運営すれば、そういう部分も解消される。さらに、旅行先で先生たちが夜、飲酒する行為も問題がある。24時間体制でサポートするため、当社はツアー中の飲酒を禁止している」と語る。

 こういった問題点に対し、同社がアプローチするのが、運営委託事業だ。強みは大手旅行会社には真似できない「運営力」。「安全を第一に考え、価格競争ではなく運営力で付加価値を付けて大手と勝負する」と強調する。また、手配などは取引のある旅行会社に依頼し、運営面のみ同社に委託することも可能だ。

 同社のいう「運営力」は、詳細なプログラムなどに現れる。数時間で何項目にも及ぶ緻密な行程表は同社ならではのもので、それは2回の視察やスタッフとの打ち合わせのなかで何度も見直される。「第1回目の視察前に、これまでの経験からイメージトレーニングで叩き台のプログラムを作成する。イメージというのは、例えば家を建てるのと同じで、玄関をどうするか、リビングは……と想像を膨らませて作っていく。そして現地へ行って、それが可能かどうかを確認し、女性スタッフの同行のもと、隅々まで下見する。現地で関わる人にも会って話を聞くことで、細かい時間の調整ができる」と語る。その緻密さは事前資料や保護者への事前説明会にも反映される。「場面ごとに必要な衣類や、脱いだ衣類をどうするかも考える」というように、事前資料には荷物用のシールを添付して細かく分ける指示をだすなど、忘れ物の防止や現地で子供たちが分かりやすいような工夫を施す。

 これらのことから、昨年実施された行政主催のスキー教室の運営は、参加した子供の88%、保護者の97%が実施後のアンケートで「満足」と回答。とくに、保護者からは「学校でも採用してほしい」「よく考えられた指導で感銘を受けた」など高評価を博した。「運営委託は安全性が高まり、先生の負担は軽減するメリットがある。一方、デメリットは費用が上がってしまうことだが、保護者アンケートから、いいものにはお金を出してくれることが分かった」と自信を見せる。

 今後の課題は、認知度を上げていくことだ。「運営を委託できるということ自体、知らない学校が多い。私や会社の名前は二の次で、“外注できる”という事実を発信したい」と意気込む。認知度向上をはかるため、同社は9月30日まで「詳細プログラムの無料制作」(http://itaku.insotsu.com/ima-una/cp.pdf )を実施中だ。前年度の実績資料などを用意すれば、同社が詳細なプログラムを作成する。制作数は20事業。

 将来的には人材の確保も必要になる。「現在、主業務は1人で行っているので、運営委託は年間24本に限定している。1本3カ月ほど時間がかかるので、質を重視するとこれが限界だ」。しかし、当面は事業拡大よりも「一歩一歩着実に、受託した事業の満足度を上げることが目標」と堅実に語る。

 「なぜ子供に特化するのか聞かれることもある。子供を相手にする方が手間はかかるが、利益が同じならやりがいのある方を選びたい。自分が生き生きとしていなければ、お客様も楽しくないと思う。ただ、1人ではできない。支えてくれるスタッフが多いからできること」と笑顔を見せた。

豪華寝台列車「ななつ星」、博多駅から九州巡る

「ななつ星」外観(イメージ)
「ななつ星」外観(イメージ)

≪来年10月、運行開始、国内、アジアの富裕層狙う≫

 JR九州は5月28日、九州の観光地を豪華寝台列車で巡るクルーズトレイン「ななつ星in九州」を、来年の10月から運行すると発表した。博多駅を起点に由布院、宮崎、霧島、鹿児島、阿蘇を周遊する3泊4日と、長崎、阿蘇・由布院を巡る1泊2日の2コースを設定。1人当たり15万―55万円で、国内やアジアの富裕層の獲得を狙う。

 列車名の由来は九州7つの県と、九州の自然、温泉、食、歴史など7つの観光素材の魅力を表現。列車も7両編成、7人の乗務員などこだわる。

 JR九州の唐池恒二社長は会見で「世界に誇れる新しい鉄道の旅を作り、アジアに架ける橋のような7色の虹にしたい」と抱負を語った。

 列車は「和」のクルーズをコンセプトに、日本の美しさや伝統文化、地域や人との交流、和みの創造を目指す。デザインは、JR九州の数々の列車を手がけた水戸岡鋭治氏が担当する。

1号車のラウンジカー(イメージ)
1号車のラウンジカー(イメージ)

 機関車と客車7両で編成。外観は赤い古代漆色に金色を配して高級感を出す。1号車がバーやピアノなどを配したラウンジカー。2号車がダイニングカー。3―6号車がスイートの客車で、各車両3室で構成。7号車がデラックススイート2室。全部で14室28人の定員。各室は壁やソファの色も異なり、DXスイートにはホームシアターも設置。床はい草で、素足で寛げるという。

 唐池社長は「今まで日本に無いものへの挑戦。世界一だと思う」と緊張感を表現。水戸岡氏も「旅館やホテルを走らせる感覚。心豊かなオンリーワンの夢のある車両をつくりたい」と意気込みを語った。

 クルーズは週1回ずつ運行。基本は車中泊だが、霧島では高級旅館で1泊する。阿蘇から由布院など一部コースでは豪華バスで結ぶ。1人料金は3泊4日コースが38万―55万円。1泊2日は15万―22万円。アジア、国内それぞれ5割の利用客を見込み、90%の乗車率を目指す。

宿泊販売3500億円目指す、JTB旅ホ連 理事・監事数を削減

福田朋英会長
福田朋英会長

 JTB協定旅館ホテル連盟(福田朋英会長、4093会員)は6月6日、ホテルイースト21東京(江東区東陽)で2012年度通常総会を開き、規約・規定の改定で理事・監事の人数を減らし、常務理事を廃止することなどを決めた。12年度の宿泊販売は3500億円を目指す。

 今年度は「活発な支部活動、元気な地域づくり」をテーマに掲げ、(1)宿泊増売(2)人財育成(3)組織の安定・強化に尽力する。福田会長は「予約の早期化と、地域の魅力づくり、新たなライフスタイルの提案の3方針へ取り組み、宿泊販売目標3500億円へ向け、JTBとともに歩んでいく」と力を込めた。

 11年度の宿泊販売実績は、前年度比1・7%減の3206億円と4年連続目標未達に終わった。旅ホ連名誉会長のJTB田川博己社長は「4―6月累計で前年度比16%のマイナスと第1四半期の落ち込みが非常に大きく、7月以降7カ月連続で前年度実績を上回るも、挽回できなかった。4年連続で目標未達となったのは大変残念」と話した。

JTBの田川博己社長
JTBの田川博己社長

 今年度の目標は同9・0%増の3500億円。14年度の4千億円を目指し、尽力する。また、中期課題検討推進プロジェクトの報告により、規約・規定の改定が議題に上がり、連盟の理事を92人以内から71人以内に、監事を3人から2人に、理事のうち35人を選考していた常務理事を廃止することが決まった。

 田川社長は先日発表したジェットスターを利用した初となるLCC商品の造成について触れ「航空運賃が安くなる分、地域でお金を使ってほしい。地域経済の活性化、地域とともに発展する会社を目指す」と力を込めた。

 そのほか役員改選では、髙橋広行副会長がJTB西日本社長への就任にともない連盟副会長を退任。新たに、JTBグループ本社執行役員で旅行事業本部長の大谷恭久氏が連盟副会長に就任した。

 来年の総会は6月5日に京王プラザホテル(東京都新宿区)で開かれる。

新会長に菊間氏(ワールド航空サービス社長)、“旅行会社の存在意義を”

JATAの新執行部。(左から)田川副会長、菊間新会長、吉川副会長
JATAの新執行部。
(左から)田川副会長、菊間新会長、吉川副会長

 日本旅行業協会(JATA、金井耿会長、1127会員)は6月14日、東京都千代田区の経団連会館で2012年度通常総会を開き、任期満了にともなう役員改選で、ワールド航空サービス社長の菊間潤吾氏を会長に選任した。菊間新会長は就任のあいさつで「消費者やサプライヤーから旅行会社離れの声も聞こえてくるが、今こそ旅行会社の存在意義の確立が必要だ」と意気込みを語った。副会長にはJTB社長の田川博己氏(新任)と近畿日本ツーリスト社長の吉川勝久氏が就任した。

 菊間新会長は「業界一筋のプロパーでこの業界を愛し、健全な発展を願う者として、この大役を引き受けるかとても悩んだ」と本音を吐露。一方、「引き受けるからには覚悟を決め、業界のために尽力したい。JATAの弱点も今後の課題も充分承知しているつもりだ。無我夢中で精神誠意努めていく」と会長としての意気込みを語った。

 また、4年間会長を務めた金井会長は「最近、好調な動きもあるが、本質的に我われが直面している厳しい状況や問題はまったく変わっていないと考えている。新しい体制で一丸となって厳しい課題を克服し、本当の意味でのリーディング産業になることを願っている」と述べた。

 今年度の事業は従来の基本方針のもと、新たな旅行需要創出やビジネス環境の変化への対応などの重点課題に取り組んでいく。国内旅行推進については、宿泊旅行拡大に向けたムーブメントづくりや、震災復興への継続的な取り組みとして住宅エコポイントなどをあげる。また、法制関係業務は、標準旅行業約款の改正実現への働きかけに力を入れていく。

全旅連全国大会 岡山で開く、860人が集結、次回は山梨へ

岡山の地で90回目を迎えた全旅連全国大会
岡山の地で90回目を迎えた全旅連全国大会

 全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会(佐藤信幸会長、1万6093会員)は6月14日、岡山県岡山市のおかやまコンベンションセンターで第90回全旅連全国大会を開き、約860人が一堂に集結した。大会テーマは「海に山にあっ晴れおかやまへ」。

厚生労働大臣賞の咲花温泉旅館協同組合
厚生労働大臣賞の
咲花温泉旅館協同組合

 佐藤会長は「昨年の東日本大震災によって被災者の受入れや風評被害、東京電力管内の値上げなど危急存亡の危機の対応に終始した1年だった。原発事故、放射能汚染など未曽有の事態に対し、全旅連として何ができるのかを考え、まず取り組んだのが被災者の受入れで、皆さんのご協力に感謝したい。また、義援金も旅館3団体計で約4550万円の支援があり、速やかに被災県にお届けした」と語った。さらに、「固定資産税の評価見直しが決まったが、15年度からどのように見直されるか今年度の実態調査を踏まえ来年度検討される。見直し方によって減額に大きな違いが出てくるので、全旅連として一生懸命対応していきたい。また、消費税の増税が国会で議論されているが、現状の総額表示では我われ中小企業は増税分を料金に含めなければならない。外税表示を求めていくので協力をお願いしたい」と強調した。

全旅連会長賞の上山市観光物産協会
全旅連会長賞の
上山市観光物産協会

 第15回「人に優しい地域の宿づくり賞」では、厚生労働大臣賞に咲花温泉旅館協同組合(新潟県)の「水害からの復興『咲花温泉かわまちづくり』―咲花きなせ包み河床―」が受賞。全旅連会長賞には上山市観光物産協会(山形県)の「かみのやま温泉クアオルト・EVエコタウンプロジェクト事業」が受賞した。

 次期開催地は山梨県に決まった。

 当日は協賛業者展示会や岡山県物産コーナー、岡山後楽園へのエクスカーションも行われた。

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佐藤信幸会長
佐藤信幸会長

 全国大会の前日には、倉敷市の鷲羽ハイランドホテルで2012年度通常総会が開かれた。今年度は地熱発電検討委員会を設置し、勉強会を開くことで情報収集や啓蒙活動にも取り組む。温泉保護の立場と、「補助金が付くため過疎化対策に有効」などという多様な立場もあり、委員会での意見交換が必要になる。

 また、全国旅館会館建て替えについては、専門家による調査によって税務問題は解決したことを報告。今後は単独の建て替えか、耐震工事かの選択肢に絞られた。

 
 
 

No.313 地銀、観光振興に動く―後編― 顧客とともに利益追求

地銀、観光振興に動く―後編―
顧客とともに利益追求

 地元に多くの取引先を持ち、それぞれの細かなニーズを把握する地方銀行は、地域産業間のコーディネーターとして新たなビジネス創出の担い手となることが期待されている。先行きが不透明な時代、中長期的な視点から成長分野への投資が不可欠だ。なかでも観光業は成長分野の1つと位置づけられ、専門の行員や、部署を置く地方銀行が増えてきている。地銀の観光振興の取り組みにスポットを当てた。

【沖永 篤郎】

 

≪東北銀行 アグリビジネス推進部 ― 6次産業化で地産“外”消≫

 岩手県の東北銀行は、2005年から地域密着金融の柱に「アグリビジネス」支援を位置づけ、取り組みを進めている。同県は農業のほか、林業、水産業、畜産業を含む1次産業の就業人口比率が1割以上と全国平均に比して高い。かつ素材としては一級品の生産物が豊富にある。その付加価値を高めるために2次産業(加工業、製造業)、3次産業(流通業、サービス業)が連携し、6次産業化による地産“外”消を目指す。…

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≪地銀の観光振興策 アンケート ― 融資制度拡充、産学官連携など≫

 本紙は、全国の地方銀行の観光振興への取り組みについてアンケート調査を行った。

 

※ 詳細は本紙1466号または日経テレコン21でお読みいただけます。

観光地にベンチを ― 「消費」する空間づくり(6/21付)

 西洋の都市や観光地と比べると、日本には広場が少ない。街道沿いの宿場町の名残もあってか、道の両側に宿が軒を連ねている町並みが多いのが特徴だ。

 このため、滞在する宿泊客たちは、宿に到着し荷物を置いたあと外に出ても、観光地を一直線に貫く道路の端から端を歩き、目ぼしい土産屋で一つ、二つおみやげを買って、そして宿の中に吸い込まれるように帰っていくしかない。美味しそうな焼き鳥などを売っていても、食べるところもなく通り過ぎる。

 古くからの湯治場などには、共同浴場や外湯などの周りにわずかな空間があり、多少なりとも滞在客を意識した造りとなっている。しかし、そぞろ歩きをするにも、そう間が持たない。

 その最大の原因は、観光地や温泉地にベンチが少ないことだ。たとえば、城崎温泉や下呂温泉などは、適度に足を休めて温泉情緒を楽しめる場所が用意されている。このため、土産物屋で買ったお団子やソフトクリームなどを食べたり、デジカメで撮った写真をベンチに座って確認し合ったり、観光地マップを広げることだってできる。

 どこかの商店街が、シャッターが閉まったままの空き店舗を買い物客が自由に使える空間にしたところ、そこで買ったものを食べるようになり、商店街が活性化した例をテレビが紹介していた。つまり、一方的に「売る」だけでは売れないものだ。そこで「消費」する空間を作ってあげることが大切である。

 最近は減ったが、街の煙草屋さんの前には、灰皿とちょっとしたベンチがあったものだ。酒屋さんもビール箱をイス代わりにして、酒屋のつまみで飲む、北九州風にいえば「角打ち」があり、憩いの場になっている。観光地には空き店舗が多い。そこを開放して洒落たベンチを置き、大きな観光案内図を掲出していれば、くつろぎの空間に早変わりだ。「あそこに座って食べよう」と、その土地の名産物や珍味、B級グルメなどとともに、地ビールや地酒、ご当地ジュースなども売れるだろう。

 東京もベンチが少ない。都会のオアシスである公園にも意外にベンチが少ない。ニューヨークなどはそこかしこにベンチがあり、老人が眼を細めて摩天楼を眺めている。ゆっくりとベンチにくつろげる街こそ、文化の成熟を感じる。「ビジネス街に、観光地に、温泉地にベンチを!」

(編集長・増田 剛) 

5泊以上長期滞在モニター募集

  北海道観光振興機構は6月1日から、北海道以外に住む人を対象に「北海道長期滞在モニター」1000人の募集を始めた。長期滞在型観光地としての体制づくりを進めるため、長期宿泊客をモニターとして呼び込み、受入地での課題やニーズを分析・検証する。

 7―9月の期間、北海道観光を目的に対象の宿泊施設に5日以上連泊し、アンケートに答えると、大人1人3万円、3歳以上小学生以下は1万5000円を旅行実施後にキャッシュバックする。旅先は、道内32地域から選べる。

 詳細情報については、特設WEBサイト(http://longstay.visit-hokkaido.jp/)へ。

国交相に羽田雄一郎氏、「観光に積極的に取り組む」

羽田雄一郎氏
羽田雄一郎氏

 野田佳彦内閣総理大臣は6月4日、内閣改造人事を発表した。参議院で問責決議を受けた前田武志国土交通大臣に変わり、後任には羽田孜元内閣総理大臣を父に持つ羽田雄一郎参議院国対委員長が就任した。

 羽田 雄一郎氏(はた・ゆういちろう) 1967年生まれ(44歳)。92年玉川大学文学部芸術学科卒業後、伊藤忠記念財団勤務。97年4月羽田孜衆議院議員秘書、99年10月参議院議員当選、05年9月参議院国土交通委員長、07年7月参議院議員3期目当選、10年7月民主党参議院国会対策委員長。

 羽田大臣は就任会見で「被災地の観光、振興を含めて全国的な観光に積極的に取り組んでいかなければならない」と語っている。

 

<安全安心な国作りへ責任果たせる体制を ― 前田前国交相>

前田武志前国交相
前田武志前国交相

 辞職する前田武志国土交通大臣は6月4日、臨時閣議後に退任の会見を開き、「東北の復興なくして、日本の再生はない」と語り、「国土交通省の仕事である安全安心な国作りと緊急時の危機対応に、しっかりと責任を果たしていく体制を作り上げることが重要だと身にしみて感じていた」と話した。また国土交通省の仕事について「観光を含め国交省の仕事は、短期的に成果が上がるものではなく、先行きを把握し時間をかけて行う長期的な仕事」と語った。

 
 
 
 
 
 

“外出楽しむ”きっかけにも、化粧の力でサポート

肌の状態に合った美容ケアを アドバイスする
肌の状態に合った美容ケアを
アドバイスする

<資生堂 ライフクオリティービューティーセンター>

 「旅をすること」は、少なからず「人前に出ること」でもある。ときに疾患や薬の副作用による美容上の悩みは、外出の際の大きなハードルとして我われの前に立ちはだかる。化粧品の製造・販売を行う資生堂(本社・東京都中央区)は2006年、CSR活動の一環として「資生堂ライフクオリティービューティーセンター」を設立。医療機関と連携しながら専門技術を活かし、美容ケアの提供を行ってきた。〝一瞬も一生も美しく〟を掲げサポートを進める、同社の取り組みを取材した。

【森山 聡子】

 

<一人ひとりの肌に対応>

 あざや白斑、やけど、傷あとなど、一般的な化粧品ではカバーが難しい肌悩みは意外に多い。治療が長期に及んだり、完治に至らないケースも少なくない。このような声に応え「資生堂ライフクオリティービューティーセンター」(東京都品川区)では、専門の技術教育を受けたスタッフによるカバーメーキャップやアドバイスを無料で行っている(要事前予約制)。

 医療機関からの紹介や同社ウェブサイトの告知等により、子供から高齢者まで年間約500人が来所。センターでメーキャップを担当する資生堂CSR部の鈴木淑子さんは、「メーキャップで少しでも自分らしさを取り戻せるような提案を心掛けています」と話す。

 センター内にはプライバシーが保たれた個室を完備。カウンセリングに基づき、肌の状態や色見に適した化粧品によるメーキャップの施術やアドバイスを、「お客様1人に対し、基本的にスタッフ2人体制で対応しています」と鈴木さんは続ける。「1人はメーキャップを担当、1人はポイントを記したアドバイスプランの作成を行い、お客様が帰宅後もご自身でメーキャップを実践できるようサポートします」。

<化粧が持つ「心理的効果」>

 近年では治療のクオリティーをより高くするパートナーとして、カバーメーキャップを薦める医療機関も増えている。なかでも注目されるのが、美容ケアを通じた患者の「心理的効果」だ。同社では、がん治療中に化粧が及ぼす心理的効果を、医療機関とともに研究。通院で化学療法中の乳がん患者に対し実際に美容ケアアドバイスを行い、患者が自身で美容ケアを継続することで、抑うつや治療への取り組み意欲が改善されることのエビデンスを得ている。

 同社CSR部の提橋義則グループリーダーは「治療中はもちろん、治療後も薬の副作用等で肌悩みは残ってしまうこともある。本取り組みが少しでも、患者様のQOL(Quality of Life=生活の質)の向上につながれば」と力を込める。

効果的にカバーできる自社ファンデーションを用意
効果的にカバーできる自社ファンデーションを用意

<医療機関でも活動推進>

 同社では昨年10月から、抗がん剤治療の副作用に対応した無料メーキャップアドバイスの提供を医療機関でも開始。現在、東京近郊の計63のがん診療連携拠点病院を対象に病院からの依頼に基づき、院内で医療関係者の立ち会いのもと実施することとしている。

 化粧療法という言葉もあるが、鈴木さんは「直接的にメーキャップで疾患が治るわけではない」と冷静に分析する。「ただ患者様の治療に対するモチベーションが上がったり、何よりメーキャップ後『あきらめていたが、来てよかった』と晴れやかな表情で帰られる姿を見ると、化粧の持つ力を感じます」と語る。

 年齢や病に関係なく「美しくありたい」という思いは、多くの人の本心として存在する。資生堂では今後も、美容ケアアドバイスを行う地域や医療機関数を広げていく予定だ。

 問い合わせ=電話:03(3494)8090。※利用に際し治療中の方は、事前に主治医の許可が必要です。