津田令子の「味のある街」「博多通りもん」――明月堂(福岡県福岡市)

2023年11月12日(日) 配信

明月堂の「博多通りもん」(1個120円)▽福岡県福岡市博多区東那珂2-11-23 ▽☎092(411)7777。

 先日、福岡旅行から帰った知り合いから博多名物、「博多通りもん」をいただいた。博多の和菓子の伝統に西洋和菓子の素材を取り入れた「博多通りもん」は、まさに博多っ子が愛する遊び心や洒落っ気たっぷりの博多生まれ博多育ちの一品だ。

 個包装の封を切ると途端にバターの甘い香りが過る。口に入れると柔らかい白あんが舌の上でとろけてゆく。1個115㌍なので、あまり気にせず続けざまに2個いただいてみた。いつ食べても変わらぬ味。1929年の創業の明月堂人気ナンバーワンのお菓子と言える。

 最高の材料に徹底的にこだわり、皮と餡にバターやミルク、卵を合わせてレシピを練ったという。開発スタッフがこだわったのが材料の選定だ。バターは、国産の脂肪分の高い特別なバターを使うこだわりようで、生クリームも上質なものを使い、卵は健康的に育った鶏の卵の中から、とくに新鮮で黄色が鮮やかなものだけを選んだという。白餡の原料となる手亡豆(白いんげん豆)は、大切に育てられた豆の中から、さらに色、艶、かたち、そして粒の大きさがそろったものを選りすぐって使用。開発スタッフは、味のためには材料の選別に時間を惜しまなかったという。

 モンドセレクションに23年連続受賞と、世界に誇る福岡・博多の名菓に登りつめた。

 名前の由来は毎年5月3、4日に行われる福岡・博多名物のお祭り「博多どんたく」だ。明治時代の流行語でもあったオランダ語の休日「ゾンターク(Zondag)」がなまって「どんたく」という博多弁になり、どんたくは“西洋の休日”として親しまれたという。

 どんたく衣装に身を包み、三味線を弾き、笛や太鼓を鳴らして練り歩く姿・形を博多弁で「通りもん(とおりもん)」といい、ミルクの香りのするハイカラな衣装で身を包み餡がしっとり練りあげられ、まさに「博多通りもん」の名にふさわしい“博多名物”と言えるのではないだろうか。

 毎年5月3、4日に行われる「博多どんたく」に行ったら買って来なくては。

(トラベルキャスター)

 

津田 令子 氏

 社団法人日本観光協会旅番組室長を経てフリーの旅行ジャーナリストに。全国約3000カ所を旅する経験から、旅の楽しさを伝えるトラベルキャスターとしてテレビ・ラジオなどに出演する。観光大使や市町村などのアドバイザー、カルチャースクールの講師も務める。NPO法人ふるさとオンリーワンのまち理事長。著書多数。

【精神性の高い旅~巡礼・あなただけの心の旅〈道〉100選】-その31-媽祖神信仰の崇福寺巡礼(長崎県長崎市) 中国人が崇拝する媽祖神信仰 海の安全を祈願する“赤色の聖地”

2023年11月11日(土) 配信

 長崎県には“長崎三福寺”と呼ばれる、興福寺、福済寺、崇福寺という唐寺があり、すべて黄檗宗の寺院です。今回、ご紹介します崇福寺は、2つの国宝建造物があることでも知られています。

 

 長崎で貿易を行っていた福建省出身の華僑の人々が、福州から超然という僧を招聘して、1629年に創建したお寺です。興福寺は、中国の揚子江(江蘇・浙江・江西)出身の人々が造ったので、南京寺と呼ばれるのに対し、崇福寺は、中国の福建省・福州の人々が造ったので、福州寺とも呼ばれています。崇福寺は、日本最古の中国様式の寺院でもあります。

 

 さて、江戸幕府が鎖国政策をとるようになってから、日本の貿易相手国は、オランダと中国のみとなり、外国船が入国できるのは、長崎だけでした。1689年、現在の長崎市館内町に約9400坪の唐人居留地が完成されました。長崎に入港した船の中国人乗組員は、すべてこの居留地で生活することを強制されたのでした。これが長崎奉行所の支配下に置かれていた「唐人屋敷」です。

 

 

 この唐人屋敷跡の近くにあるのは、長崎のチャイナタウンとして有名な「新地中華街」。この新地中華街、神戸の南京中華街や横浜中華街、今回の崇福寺などは、「赤」という色が最大のテーマカラーで、赤は中国の人々にとって縁起の良い開運色であり、お祝いの色という大変幸運に満ちた意味が込められています。

 

 赤は日本では魔よけの色であり、神社の鳥居の朱色は防腐効果もあるのですが、「悪いものはここから入ってはいけない」という強いメッセージもあるのです。中華街などを散策すればよく見る光景ですが、赤は商売繁盛の色でもあり、金と組み合わせてお店の壁などに使用されていることが多いでしょう。ちなみに、中国では結婚式は招待状も、ご祝儀袋も赤を使用しています。

 

 当時、日本は中国との貿易が盛んであり、中国との貿易利益金は長崎の地元の人々にも分配されていたため、中国船の入港を歓迎し、親しみを込めて中国の人々を「阿茶さん」と呼んでいました。阿茶さんとは、「あちらのひと」という意味のようです。

 

崇福寺 第一峰門

 

 さて、今回の崇福寺へのお参りは、ふだん唐人屋敷から出ることを禁じられていた中国の人々にとって、外出できる貴重な機会であり、その道中が「阿茶さんの寺参り」とも呼ばれ、賑やかであったそうです。崇福寺の第一峰門は国宝の赤い丹塗りの扉であり、鮮やかな存在感に圧倒されます。この扉の四隅は、コウモリが飾られていて、中国ではコウモリは開運バードであり、慶事や幸運のシンボルとのこと。

 

 崇福寺の大雄宝殿は1646年に創建され、第一峰門と同様に国宝です。赤や緑、青や金色で彩られていて、道教の影響を受けているように感じられます。中に入ると、正面には釈迦如来像が安置され、左右には十八羅漢像が並び、釈迦如来を護っています。

 

 大雄宝殿の背後にあるお堂が「媽祖堂」です。媽祖神という神様を祀っています。媽祖神は女性のお姿であり神様かもしれません。

 

崇福寺 媽祖門

 

 媽祖神というのは、航海の安全を祈る中国の民間信仰の神様です。福建省の船の仕事に従事する人々は、この媽祖神を熱烈に信仰していました。人々の航海の安全を祈る、切実な想いが媽祖堂で感じられました。彼らは、まず媽祖堂を建てて、その後で大雄宝殿を創建して、崇福寺を次第に仏教寺院として造り上げていったそうです。

 

 長崎の街には、異国の面影が色濃く残っています。多数の教会や中国様式の寺院があり、日本にいるようで日本ではないような一面もあり、旅心をかき立てる魅力的な場所といえるでしょう。

 

旅人・執筆 石井 亜由美
カラーセラピスト&心の旅研究家。和歌山大学、東洋大学国際観光学部講師を歴任。グリーフセラピー(悲しみのケア)や巡礼、色彩心理学などを研究。

23年度補正予算で観光関係に700億円計上 混雑対策など「持続可能な観光の推進」に注力

2023年11月10日(金) 配信 

国交省は23年度補正予算案で、観光関係に700億円を計上した

 国土交通省は11月10日(金)、閣議決定した2023年度補正予算案の概要を発表した。国交省関係の総額2兆555億円のうち、観光関係では「持続可能な観光の推進」に700億円を計上した。

 10月に観光立国推進閣僚会議で対策パッケージを決定した「オーバーツーリズムの未然防止・抑制による持続可能な観光推進事業」に50億円を充当した。

 「観光需要が急速に回復するなか、過度の混雑やマナー違反で地域住民の生活への影響や、旅行者の満足度低下につながる可能性がある。持続可能な観光地域づくりを実現するため、地域の実情に応じた具体策を講じ、総合的な支援を行う」(観光庁)考えだ。

 受入環境の整備・増強や、需要の分散・平準化、マナー違反行為に対する防止・抑制、地域住民と協働した観光振興の先駆モデルとなる全国約20地域などを支援する。

 22年度に引き続き、コロナ禍からの需要回復と地域活性化を目指す「地域一体となった観光地・観光産業の再生・高付加価値化」事業を組み込み、200億円を充当した。なお、22年度第2次補正予算における国庫債務負担行為の歳出化予算となる。

 特別な体験の提供などによって、インバウンド消費の拡大や質の向上を目指す「地方誘客促進によるインバウンド拡大」事業へ、184億400万円を充てた。

 訪日外国人旅行者の受入環境の整備には、266億200万円を計上した。訪日客の災害時の観光施設の対応や、医療機関の対応の強化などをはかる。

ランニングで新たな人流創出を JALが「RUNNET」とCP

2023年11月10日(金) 配信

旅して走って日本を巡ろう

 日本航空(JAL)はこのほど、ランニングポータルサイト「RUNNET」を運営するアールビーズと共同で、「Run&Fly Wチャンスキャンペーン~旅して走って日本を巡ろう~」を開始した。マラソン・ランニングを活用した新たな人流創出や地域誘客、ランナーのウェルビーイングの実現などが目的。CPは2024年4月30日(火)まで。

 CPは「RUNNET」を通して所定のマラソン大会にエントリーし、応募した人のなかから抽選で海外マラソン大会の出走権や国内マラソン大会開催地の名産品などの賞品が当たる。また、WチャンスとしてJALに搭乗して所定のマラソン大会に参加した人のなかから抽選でマイルや無料航空券、国内ダイナミックパッケージの割引券などが当たる。

 参加方法は対象の大会にエントリーし、「RUNNET」のキャンペーンに参加する。WチャンスはJALの航空券を購入し、同CPへの応募が必要。対象搭乗期間は12月1日(金)~4月30日(火)まで。

小松市でGEMBAモノヅクリエキスポ開催 産業観光として通年販売や訪日ツアーも

2023年11月10日(金) 配信

IRON WORKS KORUの鉄職人・酢馬慶太氏の指導で鉄フライパンづくり

 石川県小松市は伝統的な九谷焼から織物、鉄、石材、酒など多様な産業が集積する。ものづくりの「現場をひらく」プロジェクトとして、2年前から「GEMBAモノヅクリエキスポ」を開き、産業観光として広く一般に工場・工房を開放してきた。3回目となる今年は11月2~5日に「GEMBAモノヅクリエキスポ2023」を開催し、38社が47プログラムを展開した。来年3月の北陸新幹線延伸を控え、今後はプログラムの通年販売や、訪日観光客対応ガイドによるツアー販売などに力を入れる。エキスポの前日から1泊2日で行われた旅行会社やマスコミを対象にしたモニターツアーに参加した。

“ホンモノ”分かる観光客に 産業観光の産業化を

 北陸新幹線が敦賀まで延伸すると、小松は首都圏から新幹線一本でつながることになる。また、市内には市街地から非常に近い小松空港もあり、アクセスは抜群だ。

 一方で、小松市交流推進部の山本ゆかり部長は「小松市は大量の観光客を望んではいない。『ホンモノ』が分かるお客様に来ていただきたい」と量より質の観光施策だと断言する。

 こだわりぬいた本物のものづくりが集まる所以でもあるが、それを堪能できるのが「GEMBAモノヅクリエキスポ」だ。

 プロジェクトを主催するのは、GEMBAこまつものづくり未来塾(事務局=こまつ観光物産ネットワーク)。こまつ観光物産ネットワーク観光振興マネージャーの岡谷昭宏氏は狙いを「産業観光の産業化」と示す。観光客にとって産業観光は魅力的なコンテンツだが、事業者にとってはボランティアに留まっているのも実情だ。「課題への挑戦として、GEMBAでどう解決するか。先駆者の新潟県・燕三条の工場の祭典や福井のRENEW(レニュー)などに追いつけ追い越せで、プラットフォームになっていきたい」と力を込めた。

 そのために「GEMBA」は3つのメリットを意識。まず参加者事業者にとっての利益を創出したうえで、魅力を生かせるプログラムを展開する。また、地域にとってもメリットがなければならない。地域住民にも取り組みを知ってもらい、シビックプライドの醸成につなげていく。さらに来場者にとっては魅力的なプログラムを用意し、モノづくりへの理解を深めてもらう。

 10月からは14社が参画し、通年プログラムの提供を開始した。現在は英語ガイドの育成も進めており、インバウンド向けツアーも11月下旬から販売予定だ。

 モニターツアーでは実際のプログラムから数カ所を巡り、体験や見学を行った。

魅力的な産業観光コンテンツ

 このうち、鉄工所・IRON WORKS KORU(アイアンワークス)では、鉄板から世界に1つだけのフライパンづくりが体験できる。鉄職人・酢馬慶太氏の丁寧な手ほどきで、未経験でも鉄を熱して叩いてを何度か繰り返し、1時間半ほどで完成に漕ぎつけられる。「鉄マニア」を豪語する酢馬氏が熱心に鉄の扱い方や使い方を説明してくれるため、一見ハードルが高い鉄フライパンのメンテナンスも安心だ。アイアンワークスは通年プログラムの参画事業者。

小倉織物ではベテランの職人が丁寧に解説

 創業100年を超える小倉織物は、後染洋装専門のシルクジャガード職人工房としては日本で唯一。最終商品を生産していないため、小倉織物の名前は世には出ないが、世界有数のハイブランドから指名が入り、さまざまなブランドとコラボレーションしてきた。同工房では熟練の職人の技や工場内見学、手掛けた商品の秘話などが聞ける。こちらも通年でリクエストを受け付けている。

お正月の縁起菓子「辻占」包みを体験

 県内の南加賀エリアで新年に縁起菓子として食べられているという「辻占(つじうら)」。菓子のなかに、占いが入っている地域独自の“フォーチュンクッキー”だ。材料は餅粉と砂糖とシンプルだが、見た目は正月菓子らしく華やかで可愛らしい。製造を行っている長池彩華堂では、占いの紙を餅粉で包むマイ「辻占」作りが楽しめる。こちらは11、12月の季節限定プログラムだ。

 このほか、モニターツアーでは九谷焼の原料となる粘土を100年以上作り続けている二股製土所や、祖父の酒蔵を引き継ぐ若い蔵元杜氏がこだわりの木桶で酒造りを行う西出酒造などを訪れ、小松の幅広い産業観光の魅力に触れた。

日本酒の仕込み水で淹れる西出酒造のコーヒー

 なお、西出酒造では土曜日に「蔵CAFEぐるり」をオープンしており、日本酒の仕込み水で淹れるコーヒーを求めるファンも多いという。

12月、京都府版全国旅行支援が再開 11月13日(月)から予約開始(きょうと魅力再発見旅PJ)

2023年11月10日(金) 配信

京都府版の全国旅行支援が12月に再開する。予約開始は11月13日(月)から。

 京都府版の全国旅行支援「きょうと魅力再発見旅プロジェクト」は12月1(金)~27日(水)まで、宿泊補助と団体旅行補助に限定して再開する。予約開始日の11月13日(月)以降の新規予約が対象となる。予算の上限に達し次第、終了する場合がある。

 日本在住者が対象。利用には、本人確認書類の提示が必要となる。

 宿泊補助は、京都府内の対象宿泊施設へ直接予約することで対応する。割引率は20%上限。割引上限額は、1人泊当たり3000円。

 11月10日(金)時点の参画宿泊施設は、約950軒。

 団体旅行商品は、京都府内の旅行会社が売り出している貸切バス利用の旅行商品が対象となる。割引率は20%上限。宿泊・交通付の旅行は1人泊当たり5000円まで、宿泊付きは1人泊当たり3000円まで。日帰り旅行は1人当たり3000円までの割引。

 11月10日(金)時点で予約を受け付けている旅行会社は、約63件。

 京都府内の土産物店や飲食店などで使える「京都応援クーポン」(原則電子クーポン)は、平日が2000円分、休日が1000円分付与される。

東京観光財団とJTB総研が共同研究 旅行・観光業の「脱炭素ロードマップ」

2023年11月10日(金) 配信

翻訳版「A NET ZERO ROADMAP FOR TRAVEL & TOURISM」

 東京観光財団(金子眞吾理事長、東京都新宿区)とJTB総合研究所(風間欣人代表、東京都品川区)はこのほど、旅行・観光業における「脱炭素ロードマップ」をテーマに共同研究を行った。

 World Travel & Tourism Council(WTTC)が2021年11月に発表した調査レポート「A NET ZERO ROADMAP FOR TRAVEL&TOURISM」は、エネルギーや製造・輸送産業などを中心に、気候変動対策が加速しているなか、旅行・観光業においての取り組みについて考察している。

 同レポートでは、世界の旅行・観光業によりCO2排出量の現状とその割合や、航空、宿泊、ツアーオペレーターなどの業種のための脱炭素ロードマップや、必要な具体的アクションを示した。

 2者はこのほど、この調査レポートを国内で初めて翻訳した。

 共同研究報告書「A NET ZERO ROADMAP FOR TRAVEL & TOURISMから読み解く脱炭素に向けた具体的アクションの考察」では、とくにCO2排出量算定が難しいといわれている「旅行会社」にフォーカスし、脱炭素への取り組みへの課題やステップを考え、国内外の最新事例などを踏まえて必要な取り組みをまとめた。

「なんば広場」11月23日オープン 大阪の新たなシンボル空間に

2023年11月10日(金) 配信

広場のイメージ図

 大阪市(横山英幸市長)は11月23日(木・祝)、同市中央区の南海電鉄・南海なんば駅周辺で進めている空間再編事業で、駅前約6000平方㍍のエリアの工事を終え、「なんば広場」(仮称)として先行オープンする。

 大部分をタクシープールが占め、一般車両も行き交っていた駅前を、歩行者天国の空間とし、ベンチの設置やサクラ・ケヤキの植樹などで憩いの空間づくりを行う。舗装は御堂筋と連続性を持った擬石平板とするほか、夜間は照明で広場を彩るなど、ミナミの玄関口としてブランド価値向上をはかる。

 同日からは戎橋筋商店街振興組合となんさん通り商店会、南海電鉄、髙島屋、丸井で構成する「なんば広場マネジメント法人設立準備委員会」が、市と連携しながらイベント開催などの社会実験を始める。

 11月25日(土)、26日(日)に開く「道頓堀リバーフェスティバル」(大阪活性化事業実行委員会主催)を皮切りに、12月には光のイベントを開催。広場の利活用法や、清掃・警備の管理面の課題などを抽出・検討する。

 広場とつながる駅東側の「なんさん通り」の工事は続き、大阪・関西万博開幕前の2025年3月に整備完了予定だ。無電柱化と歩道拡幅により歩行環境の改善をはかる一方、時間帯や区間に応じて貨物車両の通行は可能とする。

〈観光最前線〉小さくて大きい藍の美術館

2023年11月10日(金) 配信

本来茶色の染液だが、空気に触れた上部は深い藍色に

 京都府南丹市美山町の「ちいさな藍美術館」は、染色作家・新道弘之さんの自宅兼工房を開放した施設。名前とは裏腹に、かやぶきの里として知られる北集落でも、1番大きな家だ。それもそのはず、江戸期の庄屋をリノベーションしたそうだ。

 藍染めでは染液づくりを「建てる」という。土間に埋まった甕が並ぶ工房で、天然藍が発酵する、藍建てのようすが垣間見られた。光の加減で瑠璃色に輝く染液が、美しい。

 新道さんの藍染めコレクションも鑑賞した。その1つ、「青空」と題した母・雪子さんの作品が心に残った。藍染めの「はぎれ」で、多くのパッチワークを手掛けた雪子さん。最後の作品として、自身の棺を覆う布を縫ったという。

 小さな美術館で受けた感銘は、その建物以上に大きかった。

【鈴木 克範】

わかやま12湯サミット 南紀白浜温泉で開催 温泉の魅力発信へ 

2023年11月10日(金) 配信

南紀白浜温泉宣言をする沼田弘美さん

 和歌山県の温泉の魅力を発信する「わかやま12湯サミットin南紀白浜温泉」が10月4日、南紀白浜温泉の「SHIRAHAMA KEY TERRACE ホテルシーモア」で開かれた。

 同サミットは、和歌山県旅館ホテル生活衛生同業組合の「WOK委員会」と、協同組合和歌山県旅行業協会の「わかやま12湯運営委員会」が連携して組織する「わかやま12湯推進協議会」(会長=青木査稚子協同組合和歌山県旅行業協会理事長)が、和歌山県内に点在する温泉の魅力を国内外に発信することを目的に実施する。2021年の龍神温泉、22年の南紀勝浦温泉に続き、今年が3回目。

 今回のサミットテーマは「和歌山の温泉の魅力を大いに語る」。県内の自治体や観光団体、宿泊施設関係者など約70人が集まるなか、講演会やパネルディスカッションなどが行われた。

 青木会長は「今回、皆様のおかげで、無事3回目を迎えることができた。今後も、幅広い方々の協力を得ながら、地元ならではの観光素材や体験、食の創作などにも取り組み、1人でも多くの方に、和歌山県の温泉に足を運んでいただけるよう努めていきたい」とあいさつした。

 白浜町の井澗誠町長は「皆さんの力添えにより今回、白浜でサミットが開催されること、心から感謝と敬意を表します。サミットを通じて、多くのことを学び、和歌山県の温泉の魅力を国内外にアピールしていただきたい」と歓迎のあいさつを述べた。

 また、「残酷な天使のテーゼ」や「寂しい熱帯魚」など、数々のヒット作を手掛ける和歌山県出身の作詞家で、同サミットの特別顧問に就任した及川眠子さんも特別ゲストとして登場。及川さんは「約40年、音楽業界に身を置き、どうPRしていくかを常に考えてきた。それらの経験を、和歌山の温泉アピールに役立てたい」と抱負を語った。

 講演会では、白浜温泉観光協会の藤田正夫会長が「南紀白浜温泉の歴史と現状」と題し、日本書紀にも湯治場として記載がある白浜が、一大観光地へと発展してきた歴史を紹介した。

 徳島県の「大歩危・祖谷いってみる会」の植田佳宏会長(ホテル祖谷温泉・取締役会長)は「世界に通用する観光地域づくり―徳島県大歩危・祖谷温泉郷の挑戦」と題し、インバウンドや修学旅行を大幅に増やすことにもつながった大歩危・祖谷での地域連携の取り組みを報告した。

 パネルディスカッションには、熊野幸代さん(椿温泉しらさぎ)、川田純子さん(南紀白浜温泉ホテルシーモア)、小川さださん(龍神温泉季楽里龍神)の3人の“和歌女将”が登壇。和歌山県の温泉について「海、川、山といったロケーションも魅力だが、何より地元の人の温かみを感じるもてなしが1番の魅力」など、会場の参加者を交えながら、それぞれが思う魅力を語り合った。

 最後には、参加者を代表して紀州・白浜温泉むさしの女将沼田弘美さんが「和歌山県の温泉のゲートウェイとしての重責を担い、周辺観光地へ誘う温泉地となることを宣言します」と南紀白浜温泉宣言を行った。

 次回サミットは、来年に熊野本宮温泉郷での開催を予定する。