〈観光最前線〉連載50周年記念「ブラック・ジャック展」

2024年1月2日(火) 配信

連載50周年記念「手塚治虫-ブラック・ジャック展」会場風景①

 2023年は、名作マンガ「ブラック・ジャック」の連載50周年を記念して、さまざまなイベントが企画された。

 東京シティビュー(六本木ヒルズ森タワー52階)で開催された「手塚治虫 ブラック・ジャック展」には、自分も足を運んだ。平日の昼間だったにも関わらず、大勢のBJファンで会場はごった返しており、長い行列には驚いた。

 代表作「ブラック・ジャック」は、1973年11月から83年10月まで「週刊少年チャンピオン」(秋田書店)に掲載された。当初は「マンガ家生活30周年記念・手塚治虫ワンマン劇場」として全4回ぐらいの短期連載で打ち切られる可能性があるものだった。

連載50周年記念「手塚治虫-ブラック・ジャック展」会場風景②

 今でこそ信じられないが、巨匠・手塚治虫にとっても、マンガ家人生を賭けた最後の大勝負がこの作品だったのかもしれない。

【古沢 克昌】

〈旬刊旅行新聞1月1日号コラム〉――2024年の観光業界 イン・アウトバウンドの活性化に期待

2024年1月1日(月) 配信

 JTBが発表した2024年の旅行動向見通しによると、国内旅行は前年比2・8%減の2億7300万人と、ほぼ前年と同水準で推移するとみている。一方、海外旅行者数は同52・6%増の1450万人と大幅な増加を予想するものの、初めて2000万人を突破した19年比では、まだ7割程度の回復状況だ。

 

 急激に回復しているのは、訪日外国人旅行で、24年は3310万人と、19年の3188万人を超えて、過去最高を記録する見通しである。

 

 24年のカレンダーを見ると、3連休以上が11回と、23年の7回を大きく上回る。「3連休イコール旅行」という発想が定着しており、観光業界にとっては大きな追い風になるだろう。

 

 ゴールデンウイーク(GW)は前半(4月27~29日)と、後半(5月3~6日)に分かれているが、4月30~5月2日に有給休暇などを活用すれば、10連休になる。夏休みも、お盆時期(8月13~16日)を休めば、10~18日の9連休となり、回復が遅れる海外旅行の復活に向けて勢いづきそうだ。

 

 

 7月下旬から8月にかけてはパリ五輪が開催される。前回の東京開催はコロナ禍の真只中だったため、抑制された大会となったが、パリ大会では盛大な演出も計画されており、再び海外に目が向くきっかけになりそうだ。また、海外旅行自由化から60周年を迎え、旅行各社も記念商品の造成などによって、インバウンドとの格差が広がりつつあるアウトバウンドの活発化にも期待したい。

 

 アジア諸国の駅構内などは、英語、中国語、韓国語などと合わせて日本語での表示やアナウンスもされているが、訪れる日本人が少なくなれば、日本語でのサービスも、日本語を学ぶ現地の人もいなくなる。海外における「日本円」の最強時代を知る世代としては、最近の弱体化ぶりには寂しさを覚えてしまうが、せめて人的な国際交流で影が薄くならないように、旅行業界には「本業」で力を発揮してほしいと願っている。

 

 

 国内は、3月16日に北陸新幹線の金沢―敦賀間が開業する。東京駅から福井駅まで最短2時間51分と3時間を切り、新しい人の流れが期待できる。

 

 福井県・あわら温泉など魅力溢れる地域であるが、首都圏からは「遠い」印象が強かった北陸エリア。新幹線開業により、物理的にも、心理的にも「近い」イメージに変わるのではないだろうか。

 

 

 一方で、観光業界にはさまざまな課題が山積している。バスやタクシーの運転手、旅館の調理場や清掃スタッフなどの人手不足が深刻化している。2次交通が機能しない地方では、「ライドシェア」解禁も取り沙汰されている。

 

 日本の観光行政のトップ・髙橋一郎観光庁長官は昨年12月20日の会見で、「宿泊先の地域によって観光需要の回復は偏在傾向にある」と現実を直視しながら、「日本の地方部は限りない可能性も持っている」とポテンシャルの高さを認め、「インバウンドの地方誘客を力強く推進していく」と、日本の観光の進むべき方針を示した。    

 

 さまざまな調査を見ても、外国人の人気旅行先として日本は上位に位置している。これは、日本の文化力によるものだ。農業力、工業力など、地方のしっかりとした文化の土台の上に観光業があることを忘れてはならない。

(編集長・増田 剛)

 

【特集No.649】2024年新春インタビュー 内藤耕氏に聞く 「旅館経営の維持」へ生産性向上を

2024年1月1日(月) 配信

 コロナ禍の行動制限や、全国旅行支援キャンペーンなど需要が激変するなか、人手不足など宿泊業界の課題は山積している。長期的な視点でみると、客数が減少し、団体から個人化していく流れは変わっていない。またインバウンドの拡大により客室清掃の負担が大きくなるなか、旅館経営維持に向けても生産性向上は不可欠となっている。サービス産業革新推進機構代表理事、工学博士の内藤耕氏に2024年を迎えるにあたり、ロングインタビューを行った。

【本紙編集長・増田 剛】

 

食事会場「分散」か「集約」か 10年後の命運分ける判断に

 ――コロナ禍後の宿泊業界の動きをどのように見ていますか。

 旅館業界は、全国旅行支援キャンペーンなどによる追い風もあり、「値下げ競争から脱却しなければならない」という機運が高まり、“単価アップ”を熱く議論していました。
 しかしながら、CP終了後から状況は再び厳しくなり、値下げ競争に転じる動きも出てきました。
 宿泊業界を長期的に見ると、コロナ禍前後でも総体的に少子高齢化による客数の減少傾向にあり、また団体から個人化への流れも大きく変わっていません。世の中が激動しているなかで、その時々の状況の延長線上に将来を見てしまうと、小さな浮き沈みに対して一喜一憂して、結果として打つ手を間違えるという状況を繰り返してしまいます。「長期的な流れの中で改革をどうすべきか」と、現実的に見ていくことが重要です。
 今の大型旅館には2つの大きな流れがあるように見えます。1つは団体に期待をかけて宴会場を残そうとしている宿と、もう一つは、それとは別の新たな流れです。
 旅館業界では、一般に「団体」と一括りにしがちですが、もう少し細かく見ていく必要があるといつも感じています。
 「企業の会議+宴会」という形態もあれば、個人客の集合体であるツアー、老人会や大家族といった各種小グループなどを含めて、団体と捉えていますが、実はその中身はとても多様で、サービスの提供方法も異なるのです。生産性の観点からすれば、「宴会場で一斉に食事をするか」というところが大きなポイントだと感じています。

 ――個人客の増加と大宴会場の存在について。

 最近になって、宴会場での食事が減って、とくに個人客が多数を占める日に「食事処が足りない」という問題が顕著に見られるようになってきています。
 このとき、団体需要に期待をかけた宿では、宴会場を残しながら館内にレストランを作って宴会場を含めて複数の食事処で料理提供している宿もあります。一方、大きなレストランに改修して、団体客を含めて朝食だけでも1カ所に集める宿も出てきています。大きなレストランを作るには、現実的に大きな宴会場を1つ潰さなくてはなりません。この決断ができた宿と、できない宿との間に、今はっきりと明暗を分け始めているように感じます。
 細かなニーズに対応するために、食事処をいくつかに分散していくことは良いと思うのですが、……

【全文は、本紙1926号または1月10日(水)以降日経テレコン21でお読みいただけます。】

加賀屋 屋上庭園オープン 四季楽しむ植物12種配置

2023年12月31日(日) 配信

12種の植物を植栽

 石川県・和倉温泉の加賀屋は11月、新たに本館雪月花4階の屋上に、12種類の植物が四季折々の表情を織りなす鮮やかな屋上庭園をオープンした。館内にある4台のシースルーエレベーターから、季節ごとに趣を変える庭園風景を楽しむことができる。

 屋上部分はこれまで、とくに装飾など行わず活用してこなかったが、今回「おもてなしの心」を表現する一環として、日本の四季を感じることができる庭園を設けることにした。

 屋上庭園の広さは250平方㍍。白い玉砂利を敷き詰め、フィリフェラオーレアやサルビア・イエローマジェスティ、オタフクナンテンなど、色とりどりの植物12種類の植栽ユニットを用いて配置した。夜間には、照明を灯してライトアップも行う。

 植栽ユニットは、設置が容易なうえ、吸水性や保水性が高く、雑草も生えにくいなど、メンテナンス性に優れているのが特徴という。

【精神性の高い旅~巡礼・あなただけの心の旅〈道〉100選】-その33-天草・崎津教会&崎津諏訪神社の祈りの旅(熊本県天草市) 潜伏キリシタンの想いに触れる ゴシック建築の海の天主堂

2023年12月31日(日) 配信

 今回の精神性の旅先である崎津教会は、2018年7月に世界遺産登録された「長崎と天草地方の潜伏キリシタンの関連遺産」である、構成遺産の1つ。崎津教会は、天草下島の小さな漁村の集落にあります。「海の天主堂」とも呼ばれ、日本家屋の中に凛とした、佇まいを持つゴシック様式の教会。1934年にハルブ神父と信者によって再建。施工は教会建築の棟梁・建築家として名声を残した長崎・五島出身の鉄川与助氏。かつて、「絵踏」が行われていた崎津庄屋役宅の跡地に建っています。

 

 

 そして、もう一つの旅先が、崎津教会のすぐ近くにある、崎津諏訪神社。神社の鳥居から崎津教会を見渡すことができ、美しい光景を目にすることができます。神社の鳥居から教会が覗けるというのは、これは潜伏キリシタンの歴史を象徴しているのです。集落山側にある崎津諏訪神社は禁教のなか、密かに信者が祈りをささげていた場所。仏教徒を装いつつも、参拝のときに「あんめんりうす(アーメン、デウス)」と唱えていたと記録が残っています。

 

崎津教会

 

 崎津諏訪神社の裏手の階段の頂上、「チャペルの鐘展望公園」も素敵な場所。「海の天主堂」と呼ばれる崎津教会や、日本の渚100選にも選出されている崎津集落が一望できます。

 

 私自身、世界遺産に登録される前に、長崎と天草の潜伏キリシタン関連遺産の情報戦略委員として、この地を訪れていますが、静謐で神聖な空気感と教会と神社と穏やかな海が融合して、居心地の良さを感じました。

 

 「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」は、キリスト教が禁じられているなかで、長崎と天草地方において、日本の伝統的宗教や一般社会と共生しながら、信仰を続けた潜伏キリシタンの信仰継続にかかわる伝統の証となる遺産群。それらは、大航海時代のアジアにおいて、キリスト教宣教地の東端にあたる日本列島の中で、最も集中的に宣教が行われた長崎と天草地方の半島や離島に点在しています。

 

 日本各地には、宣教師との接触が絶たれた後も、厳しい探索をかいくぐり、潜伏して信仰を続けることを選択した「潜伏キリシタン」が存在しました。

 

崎津諏訪神社

 

 しかし、17世紀後半に各地で「崩れ」と呼ばれる大規模な潜伏キリシタンの摘発事件が相次いで発生し、その結果、一部の例外を除き、潜伏キリシタンは途絶えました。その例外となった地域がかつての宣教拠点であり、他の地域に比べて長期にわたる宣教師の指導のもとに組織的な信仰の基盤が整っていた長崎と天草地方でした。そのため、この地方には潜伏キリシタンが自らの信仰を続けた伝統の証となる資産が存在します。

 

 天草の「崎津集落」は、生業に根ざした身近なものを信心具として代用して崇敬することにより、漁村特有の信仰を密かに続けた潜伏キリシタンの集落です。禁教期の崎津集落では、指導者を中心として、自分たち自身で信仰を続ける過程で、大黒天や恵比寿神をキリスト教の唯一の神であるデウスとして崇拝し、アワビの貝殻の内側の模様を聖母マリアに見立てるなど、漁村特有の信仰形態が育まれました。解禁後は、崎津集落の潜伏キリシタンはカトリックへと復帰し、禁教期に祈りをささげた神社の隣接地に教会を建て、その伝統を終えました。

 

 崎津教会から海側へ徒歩1分程度に、崎津資料館「みなと屋」があります。潜伏キリシタンの信心具や、交易による栄えた昭和の崎津集落が展示。2階から見る崎津教会の景色も、一見の価値があります。天草市に、潜伏キリシタンの遺物が展示されている「天草ロザリオ館」もありますので、ぜひ訪れてみてください。交通アクセスは、天草空港から、車で45分程度。

 

旅人・執筆 石井 亜由美
カラーセラピスト&心の旅研究家。和歌山大学、東洋大学国際観光学部講師を歴任。グリーフセラピー(悲しみのケア)や巡礼、色彩心理学などを研究。

日帰りバスツアー運行「陸中海岸うみねこ号」 みちのりトラベル

2023年12月30日(土) 配信

1、2月に運行する

 みちのりトラベル東北(岩手県盛岡市)は盛岡発着の日帰りバスツアー「陸中海岸うみねこ号」を1、2月に運行する。

 行程は盛岡駅西口発午前8時。道の駅やまびこ産直館で休憩し、宮古へ。宮古では10時10分に遊覧船「宮古ウミネコ号」に乗船、50分のクルーズを楽しんだあと、浄土ヶ浜パークホテルでランチビュッフェ。

 午後は浄土ヶ浜散策(10分程度)と宮古魚菜市場での買い物(約30分)をし、宮古駅から岩泉小本駅まで三陸鉄道に乗車する。バスに乗り換え龍泉洞(約60分)を見学して盛岡駅西口に6時30分に着く。

 バスの運行日は1月18~22、25~29日。2月3、4、22~25日。旅行代金は1人税込9800円(バス代金、遊覧船乗船代、ランチビュッフェ代、三陸鉄道乗車券、龍泉洞入洞料含む)。予約は5日前までに必要だが、当日空席があれば乗車できる。

その景色を収益化 AI搭載の観光望遠鏡(DXスコープ)

2023年12月29日(金) 配信

観光地の望遠鏡が大きく進化

 DXスコープ(今井丈雄社長、東京都品川区)は1月中旬、美しい風景をその場で保存・発信できるという「ありそうでなかった機能」を備えたスマート観光望遠鏡「dXscope」を発売する。収益向上や集客を期待できる新商品だ。

 展望台にあるコイン式望遠鏡の進化版が、年始に登場する。「絶景をスマホに保存」「風景解説も表示」「キャッシュレス決済を」――dXscopeは、そんな声に応える。

 望遠機能は、倍率40倍の光学ズームレンズと高精度のオートフォーカスを搭載。接眼レンズではなく、デジタルデータとして映し出されるモニターを見る設計だ。通信機能も備えているので、観た景色はその場でクラウド上に保存でき、モニターに表示されるQRコードからスマホに取り込める。

 利用者目線では、さながらdXscopeという高性能スマホカメラを手に、写真や動画撮影を楽しむイメージだろうか。自身のSNSで絶景をシェアするなど、楽しみも膨らみそうだ。

 設置場所から見られる建物や景色を事前に登録することで、リアルタイムでテキストによる風景解説を表示できるほか、デジタルサイネージ広告も表示できる(いずれもオプション)。利用料の支払いはQR決済やクレジット決済に対応する。

 価格は1台54万5000円。場所により前後するが設置費込みで60万円程度と、既存製品との比較でも安価に抑えた。

 「日本全国の景色をその場で収益化する革新的なツールは、『感動できる』『記録できる』『共有できる』最強クラスの観光大使です」(同社)とPRする。

視察見学・体験ツアー集積 「もばら型オープンファクトリー」構築へ(茂原市)

2023年12月28日(木) 配信

天然ガス生産の過程を学ぶ

 千葉県茂原市は11月17日(金)、モニターツアーを行った。

  アジアを中心とした視察見学・体験ツアーを集積した「もばら型オープンファクトリー」の構築を目指す同市。

 加えて、2018年から取り組む「ロケツーリズム」の要素を加え、国内外のさまざまな層の誘客も目指している。

 国内外の旅行者を茂原に誘致するうえでのコンテンツの見せ方、組み合わせ方などを確認するために実施されたモニターツアーの内容をまとめる。

“産業観光”で国内外から誘客

 生産量、埋蔵量ともに日本の水溶性天然ガス田の中で最大規模を誇る南関東ガス田があり、全国2位のガス産出量を誇る千葉県。

 茂原市は、この天然ガスの恵みを活用した電気機械工業や化学工業に端を発し、現在では国内最大級のディスプレイ工場を始めとする先端技術産業の集積地域となっている。

 観光庁の各種補助事業を活用し20年から進める「産業観光」をテーマにした観光コンテンツの造成は、こうした地域資源を活用し、国内外の教育旅行や企業視察、個人旅行の誘致を目指す目的で進められてきた。

 今年度4回実施するモニターツアーは、コンテンツ造成の過程で天然ガス事業会社の「関東天然瓦斯開発」や、ラジコン機器メーカーの「双葉電子工業」など地元事業者との連携体制を構築できたことから、アジアを中心とした視察見学・体験ツアーを集積した「もばら型オープンファクトリー」を構築するために実施された。

 1回目のモニターツアーで訪れた「関東天然瓦斯開発」は、1931年5月に創業した、日本で最も歴史ある天然ガス事業会社で、水溶性天然ガスが溶け込むかん水を地中から汲み上げ、天然ガスを取り出し、商業施設や一般家庭などに供給している。

セパレーター(分離槽)

 南関東ガス田から産出される天然ガスは、メタンが約99%を占め、一酸化炭素や硫黄分などをほとんど含まないクリーンで、熱量が高い極めて効率的なエネルギー。他の化石燃料に比べ燃焼時の二酸化炭素排出量が少ないため、地球温暖化防止につながると期待されているという。

 また同社グループ会社のK&Oヨウ素では、汲み上げられたかん水に溶け込むヨウ素を分離させ、海外に輸出している。ヨウ素は医薬品やレントゲンの造影剤、スマートフォンやパソコンの液晶用偏光フィルムなどに使用されていて、日本は世界2位の生産量を誇っている。

 「ロケ地巡りを目的に訪れる人に地域を知ってもらいたい、好きになってもらいたいということは、どこの自治体も思うこと。ロケ地巡りを入口に、地域資源をPRするうえでのヒントが得られた」「天然ガスは、千葉県ならではの観光資源になる」(参加者)。

 このほかモニターツアーでは、HMC東京の2階建てオープンバスを活用した「ロケ地巡り」やジビエ御膳(日本料理 竹りん)の昼食も楽しめる。

 1回目のロケ地ツアーはあいにくの雨でオープンバスが運行できず予定を変更。映画「今はちょっと、ついてないだけ」のロケ地「旧本納公民館新治分館」の内部をツアー形式で特別に見学し、参加者は、撮影時のようすを聞きながら細かいところまで作りこまれたセットを隅々まで堪能するとともに、映画に登場した丸山珈琲のブレンドコーヒーを飲みながら作品の世界観に浸った。

作品の世界観に浸った

 同館は、映画のメイン舞台となる「シェアハウス」の設定でロケが行われた場所で、撮影に合わせ中を改装した。室内の机やいす、食器などは市民から寄付してもらったもので、実際の撮影でも使われた。

 見学後バス車内では、「撮影から3年経っても残せていることがすごい」「(食器などを)市民から寄付してもらって集めたという部分が参考になった。自分の地域でも、ロケセットを残し、可能なら見てもらえるようにしたい」と、各地でロケ誘致に取り組む担当者が見学を終えて感じたことを語った。

 なお今回のモニターツアーは、観光庁の「インバウンドの地方誘客や消費拡大に向けた観光コンテンツ造成支援事業」の支援を受け、HMC東京が実施主体となり、ツアー企画と実施は名鉄観光サービスが、茂原市での事業全体の監修、プロデュースは、地域活性プランニングがそれぞれ担った。

 地域活性プランニングの古川武男ゼネラルマネージャーは、「これまで茂原市は、観光庁事業を活用し、もともとの地元産業で『ものづくりのまち・MOBARA』としてブランドイメージの構築を目指してきました。昨年度事業者の連携・体制を整え、今年度は広く一般向けにオープンファクトリーというカタチでモニターツアーを実施。世界に誇れるものづくりメーカーや天然ガスなどの資源を生かし、国内外向けに実証実験ができた。『国内でも類を見ない先進事例』と視察を希望する自治体も増えているので、今回の手応えをさらに発展させていきたい」とここまでを振り返った。

担当者インタビュー

 今回のモニターツアーでは「体験」を重視したほか、外国の方にも参加してもらえるよう、通訳や英語表記の案内などの環境整備も行いました。

 初回はあいにくの雨だったためオープンバスに乗車いただけず、企画していた体験コンテンツをすべて行うことができなかったのは残念でしたが、参加者からはポジティブな意見を多く聞けて良かったです。とくにロケセットの見学では、バス内で映像を見てもらったことや映画で使われたコーヒーの提供、BGMなどの小道具を使うことで、より映画の世界観を感じてもらえたのではないでしょうか。

 また、今回の参加者には本市のロケツーリズムの取り組みは既に認知していただいていましたが、初めてご紹介した市内産業やジビエへの取り組みについても興味をもってもらえたと思います。

 今回実施できなかったコンテンツについても、今後の参加者の声を聴かせていただきたいです。


 【茂原市役所 経済環境部 商工観光課 課長 渡部 智之】

家康を癒したまち 「歴史」切り口に観光誘客(藤枝市・メディア視察会)

2023年12月27日 (水)配信

北村市長が「ふりかえ」を体験

 静岡県藤枝市は、生涯鷹狩りを愛した徳川家康が大御所時代、しばしば鷹狩りを楽しみに訪れていた場所。

 江戸時代には東海道の宿場町として賑わった場所でもある同市。市は11月23日(木・祝)、メディア視察会を行い、観光コンテンツ化を目指す「鷹狩り」の実演や、市内の歴史スポットを巡るメディア視察会を開き、魅力発信をはかった。

 家康を癒したまちが「歴史」を切り口に進める取り組みをまとめる。

◇   ◇

 1607年駿府城を改築し大御所政治を開始した徳川家康は、田中城周辺や志太平野一帯でしばしば「田中御鷹野」と呼ばれる鷹狩を行ったといわれており、徳川家の正史「徳川実紀」によればその回数は、亡くなる16年までの9年間で15回に及んだという。

 田中城址がある藤枝市ではこの史実を生かし、「鷹狩」の実演イベントを定期的に開催する計画を進めている。

 視察ツアー当日には、蓮華寺池公園野外音楽堂、芝生広場でNHK大河ドラマ「どうする家康」の放送に合わせ実演イベントが行われ、市内外から、午前の部650人、午後の部550人、計1200人が来場。駿府鷹狩協会による疑似餌を用いた鷹狩の作法の実演などを通じ、まちの歴史に触れた。また午前の部には、北村正平市長も訪れ、徳川家康に扮し、鷹匠間を飛行させる「ふりかえ」を体験した。

 鷹狩を愛した家康を癒したまち藤枝には、もう一つ、面白い逸話が残る。

 16年1月(諸説あり)、鷹狩のため田中城を訪れた家康は京の豪商茶屋四郎次郎の勧めで京で流行していた鯛の天ぷらを食し、あまりの美味しさに食べすぎ腹痛をおこしたと言われている。

家康御膳

 静鉄リテイリング(静岡県静岡市)は、こうした家康ゆかりの食材を使い、家康が食べていたと思われるメニューを現代風にアレンジし、歴史学者の小和田哲男静岡大学名誉教授の最終監修を受け商品化。「家康御膳」として、同社が運営する「玉露の里」で2024年3月まで提供している。

 「家康御膳」は、鯛の天ぷらや、家康が「折戸の茄子」を愛していたことをヒントにした「茄子の味噌田楽」、鷹狩りにちなんでの「鴨のロースト」などで構成。想定以上の売れ行きで、クラブツーリズムや名鉄観光は静岡市や浜松市の大河ドラマ館の見学と共に同御膳を楽しむツアーを催行しているという。

宿場町の歴史資産日本遺産として活用

 江戸時代、東海道の宿場町として栄えた藤枝。同街道は1601年、五街道のひとつとして、徳川家康の命で整備が開始された。

 2020年、静岡市と共同で申請した「日本初『旅ブーム』を起こした弥次さん喜多さん、駿州の旅~滑稽本と浮世絵が描く東海道旅のガイドブック(道中記)~」が日本遺産に認定され、共同で35の構成資産を生かしたコンテンツ造成を進めている。

 また藤枝市は、裏路地を高質化し、街道を巡れるようなハード整備を進め、周遊できる施策を展開していく考えも示している。

 視察ツアーでは、日本遺産構成文化財の「岡部宿大旅籠柏屋」と大慶寺の「久遠の松」を見学した。

久遠の松

 大慶寺は藤枝宿の本陣近く、宿場町の中心にあり、田中城の祈願寺として信仰を集めた名刹。鎌倉時代、京都、奈良での修行を終えた日蓮上人が旅の途中で立ち寄ったことが寺の起源と伝わる。

 日蓮上人お手植えの「久遠の松」は、樹齢770年と推定され、高い建物がなかった江戸時代には、藤枝宿の目印として、多くの旅人を導いたという。今後同寺では、境内に久遠の松を上から見ることもできる2階建ての1棟貸しの宿坊を開業させる予定。旅行者の受け入れと、県外に住む檀家と同寺をつなぐ施設とするという。

ビーウェーブ、飯山駅と竜王スキーパーク結ぶバス運行 電話受付のネット化で来場者増加目指す

2023年12月26日(火) 配信

新幹線のダイヤに合わせて1日7便を運行する

 国内旅行の企画と販売を行うビーウェーブ(笹井建次郎社長、大阪府大阪市)は12月16日(土)から、北陸新幹線の飯山(長野県飯山市)と竜王スキーパーク(長野県・山ノ内町)を結ぶ「飯山駅・竜王シャトルバス」を運行している。

 同スキー場へのアクセスは、長野駅で私鉄に乗り継ぎ湯田中駅からシャトルバスで約30分掛かることから、アクセスの時間や難しさが指摘されていたという。さらに、これまでのバスは、予約を電話で受け付け、当日現金で支払うなど予約管理に課題を残していた。これを踏まえ、インターネットを活用し竜王スキーパークの旅行販売も行ってきた同社が、ノウハウを活用することで来場者の増加を目指す。

 飯山駅・竜王シャトルバスは、新幹線が停車する飯山駅から竜王スキーパークまで35~40分で結ぶ。新幹線のダイヤに合わせて1日7便を運行。観光客をはじめ、地域住民やスキー場で働く人の交通手段としての活用も見込んでいる。料金は片道800円。同社のウェブサイトで申し込みと支払いが可能だ。