【特集No.334】越後湯澤 HATAGO井仙 “ブラックボックス”を作らない

2013年3月11日(月) 配信

 高品質のおもてなしサービスを提供することで、お客様の強い支持を得て集客している旅館がある。なぜ支持されるのか、その理由を探っていく「いい旅館にしよう!」プロジェクトのシリーズ第10弾は、新潟県の「越後湯澤 HATAGO井仙」の井口智裕社長が登場。産業技術総合研究所の工学博士・内藤耕氏との対談で、旅館経営者として「ブラックボックス」を作らず、「見える化」によって社員と信頼関係を築いた経験や、生産性向上への取り組みなどを語った。

【増田 剛】

 内藤:井口社長は、私と考え方がすごく近く、マルチタスクやアイドルタイムの有効活用など旅館の生産性向上に早くから取り組まれている経営者。どのような経緯でそのような考えに至ったのか、じっくりとお話を聞かせてください。

 井口:越後湯沢温泉の歴史はとても古く、鎌倉時代に遡る温泉地ですが、今の越後湯沢温泉のかたちをつくったのは昭和になるころです。湯沢は陸の孤島でしたが、新潟と群馬を結ぶ清水トンネルの工事が行われ上越線が開通するというので駅前に「苗場館井仙」という宿を作りました。
 1982(昭和57)年に新幹線が開通してから越後湯沢はバブルになるわけです。スキーブームもあって、「東京都湯沢町」と言われるくらい、さまざまな資本も入り、スキー場開発も行われました。3代目の父がビルのような建物にして「湯沢ビューホテルいせん」という名前でスキー客を中心とした営業スタイルで経営していました。
 91―92年をピークにご多分に漏れず右肩下がりになってきました。私が大学を出て戻ってきた95年ごろに家業を継ぐのですが、スキー場特化型の駅前温泉ビジネス旅館でしたので、どんどん売上げが落ちていくなかで「どうしたらいいか」を考え、営業に行ったり、キャラバン隊のようなこともいろいろやりました。しかし、結局お客さんは来ない。10畳の和室が20室あるだけで付帯施設がまったくなく、お土産屋さんとレンタルスキーをやっているコンビニエンスな駅前旅館というだけで、特徴が何もない宿でしたから。
 私が最初に手掛けたのは、「同級会プラン」というものでした。ウインドウズ95が出るころで、まだパソコンで案内状を器用に作れる人があまりいない時代でした。もともと湯沢には宿泊の同級会のニーズがありました。新潟では次男坊以下が東京に就職する人が多く、若いころは実家に帰ってくるが、定年近くになると、親もいないので実家に帰りづらく、「どこかに宿泊して同級会を開く」には湯沢がちょうどいい場所にあったのです。そこで同級会プランに特化していこうと、駅前ビジネス温泉旅館から小規模団体旅館にシフトしました。そこでやったことは案内状をすべて無料で代行発送し、宴会場を夜中の12時までフリーにして飲み放題にしました。同級会の翌日の周辺観光バスの案内もオプションにセットして行い、平日は1万5千円、土曜日は1万8千円。さらに同級会の幹事さんにはマニュアルを作りました。
 同級会は幹事のリスクが大きいのです。初めて幹事を任されても、旅館の料金も分からないし、人数が集まらなかったら大赤字になる。そのリスクもすべて宿が持ちました。幹事さんから名簿を預かり、私は「同級会プランナー」として10年で延べ800件ほど受け入れました。同級会プランをスタートしてからHATAGO井仙をやるまで売上げはずっと右肩上がりになりました。でも、このプランはいずれどこかの旅館に真似されるだろうと思っていました。
 HATAGO井仙を作る一番のきっかけとなったのは、自分が大学を卒業して旅館に帰ったときにものすごく大きなミスマッチを感じたことです。おもてなしといってもベルトコンベアのようにお客様を送り出すだけで、お客様の方はまったくおもてなしを感じていない。そして、旅館の料金体系も納得できませんでした。なぜ子供は30%引きで、夕食無しが20%引きなのか。どういう原価計算が算出根拠となっているのか、はっきりしません。雑誌を見ると1万2千円と書いてあるのに、インターネットで検索すると9800円になっていたり。きっちりと旅館の料金の根拠を言えるところは少ないと思います。このように、ずっと旅館業界の矛盾が心の中にひっかかっていました。
 一方で、旅館は世界に類のない宿泊業態で、本来ならもっと海外のお客様に支持されていいのに、外国人の旅行者は残念ながらホテルに宿泊している。旅好きの人の旅のスタイルはビジネスホテルに泊まって、美味しいレストランや居酒屋をネットで調べて、温泉も日帰り入浴ができる施設を利用する。旅館離れが進んでおり、旅好きの人ほど旅館に泊まらない。これでは旅館の後継者が減り、旅館軒数が減少するのは当たり前です。それだったら、旅館の原点となる「旅籠」といわれる時代まで遡って、もう一度「旅籠」が旅館でも、ホテルでもない独自の進化をしたらこういうスタイルではないかと思い描き、かたちにしたのが「HATAGO井仙」です。
 HATAGOとローマ字で書いてあるのは世界のスタンダードとなるよう、日本の宿文化を示したかったからです。ホテルしか泊まらない外国人のお客様もHATAGOに泊まることで地方の旅館にもっと目を向けるきっかけとなり、地域が元気になるのではないかという考えもありました。
 旅館業という仕事はずっと誇りに思っていました。しかし、現状を変え、メッセージを発信しなければいつか旅館は廃れてしまうという考えがありました。
 8―10年間ずっと悩み続けたのは駅前温泉旅館のスタイルで同級会プランが好調だったこともあり、とても楽だったのです。あえてリスクを冒してまで、目の前に需要がある市場を手放すのがもったいないという葛藤がありました。
 私が4代目の社長になった32歳のとき、この営業スタイルは5年間は通用しても15年は続かないだろうと思いました。15年後には私は40代半ばになっており、次の手を打つ体力や気力があるという保証はない。自分の中に熱い気持ちがあるうちに多少のリスクを背負っても思い切って新しいスタイルに乗り換えておかなければ、同級会プランがどこかの旅館に真似されたときに、文句ばかりを言う将来の自分が怖かったのです。そして父に、HATAGO井仙と、同級会プランを続ける2つの事業計画書を出し、HATAGO井仙をやる場合には一切口を出さないでくれと約束をしたのです。
 「湯沢ビューホテルいせん」は金融機関と20年で2億円の返済計画を立てていましたが、ちょうど返済の節目になっており、同じ返済計画の範囲で2億円投資しました。金融機関にとっては元本の金額は変わりません。HATAGO井仙に過大投資したわけでもなく、基本的にはローコスト経営で、単価は1・3倍―1・4倍まで上がっていますが、湯沢ビューホテルいせんと同じ稼働率設定なのです。2005年のことで、大きなターニングポイントでした。
 それからは、すごく苦労しました。私は大学でマーケティングを学んではいましたが、実質“名ばかり専務”で、昔からいる従業員9人ほどの家族経営の域を出ていませんでした。それがHATAGO井仙になると、古い社員がいなくなり新しい20―30代の社員を急に入れたのです。コンセプトが面白かったのか、テレビや雑誌の取材も多く、メディアに多く取り上げられ、お客様も入りました。しかし、裏側では、まったくの未経験のスタッフと「てんてこ舞い」の状態で2年間ぐらいは本当に苦労しました。
 そのころの私は本当に甘かったのですが、マネジメントは必要ないと考えていました。「旅館なんてお客様が入って、売上げが立てばあとは何とかなる」と考えていました。そんな考えしか持っていないものですから会社の組織はぐちゃぐちゃ、就業規則も、タイムカードもない。このような状態ではスタッフとのコミュニケーションも取れず、2年以上悩み抜いた結果、経営者の仕事とは「社員のベクトルをそろえること」だという結論に達しました。
 Aという社員とBという社員が目的は同じでもベクトルが違うと、コミュニケーションディスオーダーが生じてしまい、諍いが絶えませんでした。「社員のベクトルをできるだけパラレルに近づけることが一番効率の良い経営なのだ」と苦悩の中で思い至りました。
 では、パラレルにするためにどうするか。つまり、社長と社員はほとんどが利害が同じなのです。売上げが上がった方がいいし、お客様に喜んでいただいた方がいい。利益も多い方がいい。しかし、唯一利害が反するのは給料を払う側と、もらう側という立場なのです。多くの経営者はこの部分を曖昧にして、夢だ、希望だ、という話をする。それでは本当の意味での信頼関係は築けません。
 そこで私はまず、就業規則や評価制度などをきっちりと作り、給与体系も明示して社員と契約しました。時間管理も曖昧な部分をなくしました。当たり前の話なのですが、これらを細かく作るのに1年半ほどかかりました。
 しかし、ここまでは手法論で、もっと人間が信頼し合う一番根っこの部分、それが理念やビジョンです。そこで「自分は何のために生きるのか」の根底の部分で皆が共有できる「人に尽くし、己を磨き、共に伸びる」を理念とする「旅籠三輪書(はたごさんりんのしょ)」を決めました。「お客様満足」「社員の生きがい」「地域社会の貢献」という3つの輪が常にトライアングルのバランスを保ちながら発展していくということを、すべての考え方の基準にしました。
 HATAGO井仙という存在は、利益を上げるために存在するのではなく、「三方良し」の考え方でないと新しい事業もやらない。経営者にとって儲かる事業であっても、地域の貢献や社員の生きがいにならなければ「NO」です。
 総務や人事管理といった今まで苦手だった部分を地道にやっていったら今はそれが強みになって「旅籠三輪書」をプロジェクトにしました。
 社員が地域に貢献しているところを見えるように、スタッフがブログを書いたり、地元の意識の高い企業と連携して商品づくりするというのもプロジェクトの一環です。お客様が喜ぶだけでなく、社員も楽しく経営に参加でき、それが地域に貢献できる。取引先や農家の方々も喜び、お客様も笑顔になれば社員も生きがいを感じることができます。このような構造を作ることが経営者である自分の仕事だと思っています。今までバックヤードにあった企業理念を前面に出し、営業方針にしてしまいました。お客様に向かう顔と社員に向かう顔が同じになったことですごく楽になりました。「後ろ」も「裏」もなくなり、顔は一つでいいわけですからすごく楽なのです。すべての問題基準を社員に話します。労務管理や人事管理は経営者のブラックボックスの中に入れて色々とやるから苦労するわけです。ブラックボックスを作らずに「ありのまま」の経営状況と、経営の意思決定のプロセスを社員に見せ、なぜこのような経営判断をして、このように取り組んでいるのかを分かりやすく説明しています。新たな事業も社員が理解せずに進めていくと、やがてコミュニケーションがズレてきて、AとBの社員のベクトルがズレていく。これが問題なので、できるだけプロセスを全社員がわかるように心がけています。
 一番わかりやすく数字を「見える化」する手段は、人時売上高です。社員に給料の根拠を示すことができます。お客様20人に対して4人のシフトが厳しいのは、単価が低すぎるのか、生産性が悪すぎるのか、どこか間違ったところがあるのです。これをきちっと議論する共通の言語がなければ生産性の改善にもなりません。その意味で社員と一番コミュニケーションしやすい共通の言語は人時売上高だと思います。旅館よりも、マクドナルドなどファーストフード店の方が人時売上高の社員教育が徹底されていると思います。一方的に経営者がコストカットするのではなく、人時売上高を上げるには単価を上げるのか、オペレーションを効率的にして生産性を上げるのか、「みんなで知恵を出し合って考えなさい」としか言っていません。全社員が経営参加し、意思決定したことで理に適うことであれば応援すると言っています。それまでは経営者の私がシフト管理をしていましたが、今は社員が行っています。社員に任せた方が効率がいいし、工夫もします。生産性も上がっています。

 内藤:産業別の平均給与をみると、サービス産業は全体的に低く、地方にある旅館はとりわけ低い。生産性を上げて給料を上げていかなければ、優秀な人が集まらない状態が続きます。生産性を上げる具体的な取り組みは他にもありますか。

 井口:社員の所得を上げるということは生きがいを持って働くうえで大事なことだと考えています。一つの鍵となるのは、旅館以外にも販売先を持つということだと思います。旅館業のビジネスモデルは非常に「ハイリスク・ハイリターン」で不安定。現在、旅館以外に4店舗の飲食店と、物販店、製菓業もやっています。旅館の売上げは全体の3割程度で他部門の売上げが多くなっています。
 旅館や飲食業だけでは平均給与で年収300万円を超えることは難しいと思います。社員の所得を上げるにはそれ以外にどのように仕事を追加し、拡張するかです。そのために色々な業種を手がけています。旅館業はアイドルタイムが多く、当然オンとオフの差が大きい。オフの時間に地元向けの飲食店や製造業をやることで人の融通ができ、それぞれの生産性を上げていくことができるようになりました。

 内藤:IT化も一生懸命取り組んでいますよね。料理の進捗状況をフロントとフロアで共有するというシステムはとても感銘を受けました。これもアイドルタイムを有効活用していくことだと思うのですが。

 井口:HATAGO井仙を作ったときから、すべてコンセプトの異なる客室だったので、基本的にはインターネット販売で、客室の在庫と予約管理は完全連動しています。そのほかITで進んでいるのは、売上げをPOSで管理しています。日々の売上げはすべてデータ管理されており、日報単位で売上げの金額が分かっていますので、これに材料原価とシフト数だけを入れると、簡単なFL比率は毎日出せる状況にあります。
 厨房の進捗管理システムは大したものではないのですが、エクセルの画面2つでシステム化しています。コース料理を管理しようと思ったときに、できるだけ飲食店の理想的なかたち、つまり注文を受けてからその場で作って提供する「屋台」に近いスピードでコース料理を出せるように、お客様が注文されてから料理を提供するまでの時間を圧縮するために、厨房とホールのスタッフがエクセルを使ってコミュニケーションをとっています。
 もう一つは全社員がインカムとネットワークカメラを使い、フロントが司令塔となってレストラン、売店、喫茶のスタッフが忙しいところをヘルプするシステムをとっています。全社員平等に全部門のサービス研修によってトレーニングをしています。マルチタスクをしていかないと、専門職だと旅館業界では給与が上がっていきません。
 仕入れの管理は、週に1回FLコストを出すために原価計算をしていますし、雪国食文化研究所という別会社の加工所があるのですが、直接野菜農家が井仙に納品するよりも加工所が一括で納入して、道の駅の飲食店2店舗などに加工して流したほうが安い場合もあります。料理のメニュー開発もオペレーション重視の考えで行っています。

 内藤:「オペレーション重視」というと、ファーストフード店をイメージしがちですが、私もオペレーション重視の考え方は好きです。その理由は、でき立てが出てくるからです。オペレーションが効率化すると、「作り置き」から「でき立て」に近づいていくのです。

 井口:同感です。オペレーションを重視するということは無駄が少なくなるということで、良いもの、新鮮なものを使えるのです。食材のロスや冷蔵庫に眠っている時間も少なくなる。結果的に、お客様に良いものを出せるのです。お刺身もプライオリティーが高いわけではないので、加工したものを必要な分だけ仕入れています。

 内藤:マグロは極端な言い方をすれば、冷凍でも問題ない。一番腐敗が進むのは内臓やエラの部分。中途半端に魚を丸ごと買うよりも、獲れた海に近いところから加工して運んできた方が圧倒的に美味しい。井仙のようにお刺身を加工品として必要な分だけ納入するという、全体のプロセスを工学的に作り込んだ方が味は美味しくなります。私もまったく同感です。
 HATAGO井仙は厨房のレイアウトを何度も変えています。

 井口:厨房のレイアウトを変えるのは大変です。しかし、お客様が最も多くお金を払うのは料理です。料理はトレンドによって変わります。料理を美味しく提供するにはサービスのオペレーションの仕組みがすごく大切だと思います。7年間に4回もレイアウトを変えました。今はオープンキッチンのスタイルです。私は利益の源泉は厨房だと思っているので、とても重視しています。

 内藤:オープンキッチンは「エンターテイメントとしてキッチンが見えますよ」と考える経営者も多いですが、井口社長の場合は逆で、「厨房からお客が見える」という発想ですね。お客の食べるスピードで料理を提供できるようになると、でき立て感を届けることができるし、無駄もなくなっていくというメリットがあり、現場のオペレーションの最適性が高まっていきます。

 井口:おっしゃるようにエンターテイメント性というよりも、効率よく料理を出すことを優先して考えています。

 内藤:厨房のレイアウトが悪ければ満館の日もお客が少ない日も人数が変わらない。レイアウトを工夫すればお客の人数に応じてシフトを変動することが可能になるほか、利益の出ない日を減らすことができるようになり、利益額を増やすことが可能になります。多くの旅館はオンで稼いだ利益をオフで使い切る。もったいないと思います。オンの日も儲かり、オフの日も儲かるという仕組みが必要です。

 井口:製菓業は作りだめができるので、時間の余裕のある平日に、土・日に販売するお菓子を内製化しています。いい人材を集めるには仕事の場を年間保証しなければなりません。

 内藤:製菓業の面白いのは、焼き菓子は品質の劣化がゆっくりなので、飲食業、宿泊業と組み合わせるとアイドルタイムを埋められるようになります。さらに、物販から通販にも展開できるようになり、生産性を高めていける構造です。組合せの相性としてはとてもいいと思いますね。サービスを上手く組み合わせています。
 それと、日本の旅館の建物は意匠デザイナー主導の「カッコよさ」で設計されているので出っ張りや引っ込みがたくさんあって、清掃もしづらく、生産効率がものすごく低いですよね。

 井口:建物を先に作ってメニューをどうするかを考えていますからね。本来なら、お客様がお金を払う料理から考えて、お皿や、それに合うサービスを考え、それを提供する厨房を考えるというのが、たとえばクルマの生産ラインでいえば当たり前の話なのですが、実際は逆になっています。旅館は変動にも対応できる、幅を持った厨房設計が必要だと思います。

 内藤:厨房に限らずリネンの倉庫などもお客の変動に応じた生産体制の変動制をどれだけ作れるかがポイントです。サービス業は日々お客が変動するからこちらの柔軟性を高めていかなければならない。在庫可能な製品を生産している製造業にない難しさもありますが、一方で差別化も可能なのでチャレンジをしたほうがいいと思います。

 井口:旅館の経営者はタオルなどの単価の1円、2円には細かくこだわりますが、でも、そのタオルが2千本なくなっても全然気づかない。単価を見るが、数を見ていない傾向が強いですね。

 内藤:1円、10円をケチるけど、現場を管理できていないので10万円、100万円をドブに捨てている状態がよく見られます。

 井口:料理を考えるとき、私はゴミの量を少なくする方が大事ではないかと思いました。お客様が食べない廃棄物をたくさん出すというのはロスですから、できるだけ廃棄物の量が少なくなる料理を出そうと心掛けました。厨房も原価を計算していますが、お客様が欲しいものを欲しい状態で提供できれば、これまで捨てていた分をコストに変えられるのです。

 内藤:飲食店で廃棄率を一つの指標としているところはありますね。廃棄率が下がっていくということはお客様が求めているものを出せているということになります。また、あるメーカーは作った量で生産性を計ると高いが、売れた量で生産性を計算すると赤字が増えてくるという。在庫がロスになり、利益が大きく出たときに特別損失で償却しているだけです。お客様が求めているものに合わせていくことが最大の生産性向上で、アイドルタイムやロスがなくなっていく。現場の管理マネジメント力を付けて品質水準を上げていくことが旅館にとって緊急性の高い課題だと思います。

アベノミクス ― 「先陣を切る!」姿勢で

 安倍政権の経済政策「アベノミクス」に対する期待が大きい。長期にわたるデフレに疲れ果てた国民には、一筋の希望の光に見えるのだろう。

 「アベノミクス」は賭けである。大型の財政出動と、金融緩和、そして成長戦略が噛み合い、軌道に乗れば、好景気になるかもしれない。しかし、経済や金融が上手く回らなければ財政破綻の危機が一層強まる。脱デフレへの本気度は伝わってくる。政権はリスクを負った。

 では、民間企業はどうだろうか。流通業界では、ローソンやセブン&アイ・ホールディングスはいち早く社員の給与の大幅アップを決めた。

 観光業界も他業界のアクションを受け身で待つのではなく、先駆けて社員の給与を大幅にアップし、消費の追い風を起こして、観光業界を自発的に活性化させることが必要だ。大手旅行会社や、旅館・ホテル、テーマパークなどが給与アップの経営姿勢をアピールすれば、業界全体、社会全体に明るさを呼ぶ。「社員を大切にする」「景気回復に貢献している」「豊かな企業」というイメージも得られる。自然と優秀な人材が集まり、業績も上がり、景気好転への良い循環を創り出すことが可能だ。志のある経営者は観光業界にもたくさんいるはずだ。

 先陣を切って実施していくのと、後追いでは、影響力や、さまざまな効果に雲泥の差がある。東日本大震災のときも、支援や義援金を真っ先に名乗り出た企業の名前は誰もが記憶している。「善は急げ!」の経営判断の速さは、称賛に値する。時代の流れを正確に読み、素早く反応し、決断し、行動できる先取の気質(DNA)が受け継がれている企業や店舗が、時代を重ねるうちに、「老舗」と呼ばれるようになるのだろう。

 観光業界は、残念ながら後追いの性格が強い業界である。そしてもう一つ、世の中の好景気や、○○ブーム、補助金などをひたすら待つ「他力本願」の体質も少なからずある。

 「アベノミクスが上手く軌道に乗って、景気が上向いてから社員の給与を上げよう」と考える経営者も多いのではないか。そのような「待ち」の姿勢では、たとえ好景気になり、売上げが増えたとしても、自らの決断や行動によるものではなく、結局、時代に流される。「後追い」ではなく、「先陣を切ろう!」。

(編集長・増田 剛) 

観光産業を議論、若手経営者16人が集結(観光庁)

 観光庁は3月13日に、山形県・天童温泉「ほほえみの宿滝の湯」で次世代を担う旅館・ホテルの若手経営者を集めて、観光産業の未来について議論する「旅館から地域を変える!日本を変える!旅館と地域の明日を創るフリートーキング」を開く。

 地域の旅館・ホテルや旅行会社、交通事業者、飲食店、観光協会など多様な分野から参加者を募り、複数のグループに分かれて若手経営者と議論する。そのほか、若手経営者による変革への取り組み発表や、初代観光庁長官の本保芳明氏の特別講演なども予定。参加申し込みは3月5日までに観光庁HPから。

 出席する若手経営者は次の各氏。

 荒川信康(蟹御殿)▽井上裕士(ホテル八千代)▽岩田一紀(有馬ロイヤルホテル)▽菅野豊臣(ホテル華の湯)▽佐藤太一(日本の宿古窯)▽庄司丈彦(つかさや旅館)▽須藤宏介(いきかえりの宿瀧波)▽関谷寿宣(寿宝園)▽鴇田英将(亀山温泉ホテル)▽富井智子(松泉閣花月)▽原太一郎(流辿別邸観山聴月)▽星永重(藤龍舘)▽森田金清(月の栖熱海聚楽ホテル)▽山口敦史(ほほえみの宿滝の湯)▽湯本孝之(あぶらや燈千)▽横山公大(ホテル土佐御苑)

3者で移住・交流促進、長野県×佐久市×JR東日本

原口JR東日本常務、阿部長野県知事、柳田佐久市長(右から)
原口JR東日本常務、阿部長野県知事、柳田佐久市長(右から)

 長野県と佐久市、東日本旅客鉄道(JR東日本)は2月12日、3者連携で長野県佐久市への移住・交流促進に取り組むと発表した。同日、JR東日本本社で開いた共同会見には長野県の阿部守一知事、柳田清二佐久市長、JR東日本の原口宰常務が出席した。

 今回の連携で、佐久市への移住者を対象に、長野新幹線(東京―佐久平)の運賃割引を開始し、新幹線の利用促進と地域振興を狙う。JR東日本によると、移住者を対象にした運賃割引は初めての事例となる。

 具体的にJR東日本は、移住前の不安を解消するため、実際に現地を体験してもらう視察旅行をJR東日本「大人の休日倶楽部」会員に利用しやすい料金で提供する。自治体のコンテンツ(居住環境の現地説明会、農業体験)と新幹線などを組み合わせ、JR東日本の保有する宣伝媒体・販路を活用して移住施策をサポートする。

 また、「大人の休日倶楽部」会員が移住後も気軽に首都圏へ出掛けられるよう、移住先の佐久平―首都圏間を移動する際、運賃割引でサポートするサービスも検討している。割引率や開始時期、利用条件など詳細は未定。今後のスケジュールは3月発行の「大人の休日倶楽部」会員誌4月号で告知を開始し、5月に「お試しツアー」を発売開始する予定だ。

 一方、長野県は東京・有楽町の「長野県移住・交流センター」で、JR東日本「大人の休日倶楽部」会員からの問い合わせや相談に応対するほか、会員向けの移住セミナーを開く。佐久市と連携して、魅力ある移住体験ツアーやスムーズな受け入れを支援する。移住後のサポートとして移り住んだ人や交流推進団体とのネットワークづくりを行い、地域における受け入れ気運の醸成をはかるなど、定住に向けた支援を行う。

 佐久市は、魅力を実感できる体験ツアーを提供し、移住を希望する「大人の休日倶楽部」会員を受け入れる。会員が森林整備を体験できる「大人の休日倶楽部の森林(もり)」なども検討する。空き家バンク「おいでなんし!佐久」を活用して、佐久市内の空き家物件を案内する。

 従来から長野県では「長野県移住・交流推進戦略」に基づき、豊かな自然環境に恵まれた良好な生活環境など、県の強みとポテンシャルを最大限に活用し、移住者や交流人口を増やすことで地域の活力を創出するため、行政と民間の連携による移住・交流施策を展開している。

 また、日照時間が全国トップクラスで晴天日が多い佐久市は「佐久市交流人口創出基本計画」に基づき、定住人口を増やすための総合的な施策に取り組んでいる。

 JR東日本は「グループ経営構想V(ファイブ)」において地域の活性化に貢献するとともに、新たな交流人口を生み出すことを目的に、自治体の進める移住促進プログラムへのサポートに取り組む方針を打ち出している。今後は他県とも同様の案件を複数検討中という。

【古沢 克昌】

「九州オルレ」の第2弾、4コースを追加へ(九観機構)

龍馬ゆかりの地を巡る霧島妙見コース
龍馬ゆかりの地を巡る霧島妙見コース

≪国内にも積極発信、韓国で人気のトレッキング≫

 九州観光推進機構は2月15日、韓国・済州島発祥のトレッキング「九州オルレ」の第2次コースとして、平戸(長崎県平戸市)、天草松島(熊本県上天草市)、高千穂(宮崎県高千穂町)、霧島妙見(鹿児島県霧島市)の4コースを追加した。

 九州オルレは韓国済州島で人気のトレッキング「済州オルレ」の九州版として昨年からスタート。武雄(佐賀県武雄市)、奥豊後(大分県竹田市・豊後大野市)、天草維和島(熊本県上天草市)、指宿開聞(鹿児島県指宿市)の4コースが第1弾として開設され、これまでに多くの韓国人が体験に訪れている。

 「オルレ」とは、済州島の方言で「家に帰る細い道」の意味。その名の通り、海岸や山、民家など、その土地のあるがままの姿を楽しむのが醍醐味だ。

 今回追加のなかで平戸コースは全長13キロ。周辺の島々が見渡せる川内峠や、寺院と教会が見える風景、オランダ商館など、異国情緒あふれる景色が楽しめる。

 天草松島コースは、広大な田園風景や天草四郎が宴を開いたと伝えられる千厳山、のどかな漁村などを歩く全長11・5キロのコース。

 高千穂コースは、2千年前に創建されたと伝わる高千穂神社や、巨大な柱状節理で知られる高千穂峡、静寂な森林など、神話の里を満喫する12・3キロのコース。

 霧島妙見コースは、全長11キロ。湯治湯として古くから知られる妙見温泉を起点に、塩浸温泉、犬飼滝、和気神社など、坂本龍馬が妻のお龍と日本初の新婚旅行で訪れた地を巡る。

 九州観光推進機構やそれぞれの地元では、韓国からのインバウンドに加え、今後は国内観光客向けにも、各地域の魅力が伝わる観光素材として、九州オルレを積極的に売り出していく意向だ。

パンフ17万部配布、日本語学習者に訪日PR(観光庁)

 観光庁はこのほど、日本語の学習教材「みんなの日本語」を海外で販売する出版社スリーエーネットワークと連携し、世界19の国・地域の日本語を学習する外国人に向けて、日本の観光地・観光資源を紹介するパンフレット17万部を配布することを発表した。

 日本語学習教材「みんなの日本語」のメインキャラクターであるマイク・ミラーが、伝統文化や祭りなどからクールジャパンまで、日本の多彩な観光魅力を紹介するパンフレットを制作。海外で日本語学習教材を採用している学校や書店に、現地取次業者を通じて配布する。海外で日本語を学習する一般消費者は日本への関心が極めて高く、この層の訪日旅行意欲を喚起していく狙いだ。

 配布先は、中国2万部、台湾・香港2万部、韓国1万部、インドネシア1万部、シンガポール1万部、米国1万部、オーストラリア1万部、スペイン1万部、フランス1万部、ドイツ1万部、ベトナム7千部、イギリス7千部、オランダ7千部、ロシア7千部、カナダ7千部、タイ5千部、インド5千部、マレーシア5千部。

 観光庁では2012年度ビジット・ジャパン事業の一環として、海外進出日本企業と連携し、日本製品やサービスを嗜好する外国人を対象とした訪日旅行促進の取り組みを展開している。

エクスペディアと提携、両社サービスを相互提供(JTB)

 JTBとエアアジアエクスペディア(AAE、本社・シンガポール)はこのほど、包括的な業務提携を行い、エクスペディアが取り扱う約3万都市、約15万軒の海外ホテルとJTBが取り扱う約7千軒の国内旅館の相互提供を開始する。

 今回の提携により、AAEでは秋以降にJTBホームページと、るるぶトラベルが提供する旅館予約ができるようになり、JTBでは夏以降、エクスペディアジャパンが提供するホテル予約システムとデータ連携し、海外ホテルを24時間予約できることになる。

 AAEは、アジア圏のエクスペディアサイトを運営する、世界最大のオンライン旅行会社Expedia.Inc.(本社・米国)とアジア最大級の格安航空会社エアアジア(本社・マレーシア)の合弁会社で、国内旅館の大幅な増加により、海外旅行だけではなく、国内旅行において新規顧客の拡大という利点がある。一方、JTBは海外ホテルの取り扱いの増加によるさらなる売上の拡大を目指すという。 

宿泊旅行34・5%に、10―12月、前年から減少(短期観光動向調査)

 日本観光振興協会はこのほど、短期観光動向調査(2012年12月調査)の結果を発表した。これによると、12年10―12月期の宿泊旅行実績は前年同期比6・1ポイント減の34・5%となった。宿泊旅行実施回数は同0・09回減少の平均0・52回。前年は震災の落ち込みから回復が進んだが、今期はその反動から減少したとみる。

 同調査は、一般消費者の旅行意向や実績を四半期ごとに調べ、地域や観光関連業界、企業などに基礎資料としてフィードバックすることを目的に2011年9月から調査を開始。今回の調査で過去1年分の調査が蓄積されたことから、今後は定期的に公表するという。なお、調査は一般消費者4千人を対象にインターネットで四半期ごとに実施している。

 10―12月の実績のうち、年代別の宿泊旅行実績はとくに50代が10・6ポイント減と大幅に減少した。

 地域別は中部、関西、九州、海外への旅行が他地域に比べ低下。国内では震災後は西日本へのシフトがみられたため、今期はその反動減で西日本方面が減少したと考える。その他は概ね前年並み。目的地と地域間流動をみると、東北への旅行は、前年は同じブロックからの割合が最も高かったが、今期は関東からの割合が最も高く、域外からの観光流入に明るい兆しがみられた。

 旅行の同伴者は家族が29・3%と昨年から1・3ポイント減。カップル・夫婦も微減だが、そのなかの「子育て後夫婦」カテゴリーは1・9ポイント増加した。また、1人旅は女性が減少したが、男性は1・6ポイント増加した。

 旅行意向に対する実施率をみると、10―12月期の事前意向は44・3%だったのに対し、実績は34・5%で、実施率は77・9%となった。属性別は、学生の実施率が124・0%と高かったが、50代の実施率は69・3%と低かった。地域別は四国が最も高く、100%を超えたのは四国のみだった。

 一方、1―3月の宿泊旅行意向は前年同期比4・5ポイント減の41・9%と前期実績の減少傾向は今期の意向にも継続している。宿泊旅行予定回数も前年同期が平均0・64回だったのに対し、今期は0・56回と12・5%減少した。

 地域別は中部、関西、海外などへの旅行意欲が低下し、震災以降の西日本や海外にシフトした旅行動向の反動と考える。東北についても復興支援を意識した旅行意欲がやや一段落した模様。

 地域間流動は前期実績と同様に東北への旅行が同じブロックからの意向が減り、関東からの意向が強まっている。

 同伴者は、家族と知人・友人が減り、カップル・夫婦と1人旅が増加した。1人旅は前期実績から引き続き男性が増加し、女性は減少した。 

加賀屋・小田女将が語る、クレーム対応や社員教育(国際観光施設協会インテリア部会)

加賀屋・小田真弓女将
加賀屋・小田真弓女将

 国際観光施設協会のインテリア部会(寺本昌志部会長)は2月13日、東京都内で新情報発信グループ第9回研究会「和倉温泉・加賀屋女将 小田真弓さんに聞く」を開いた。小田真弓女将に会員の中川誠一氏が聞き手となり質問を投げかけた。旅行新聞新社が主催する「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」で33年連続1位に輝いたおもてなしの極意や、クレーム、社員教育、建築設計やインテリアデザイン、今後の旅館像などについて約2時間語った。
【増田 剛】

 加賀屋が「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」で初めて総合1位になったのは1981年。以後33年間連続トップに輝いている。初めて日本一の宿となった当時、能登渚亭を建てるに当たり、現会長の小田禎彦氏は「宝石のような宿をつくりたい」という強い思いで全国60以上のホテル・旅館を見て回ったという。「『日本一の宿』となったことで社員のやる気が盛り上がった」と小田女将は当時を振り返った。

 その後、宿は大型化し、現在では加賀屋本店だけでも客室係は150人を抱える。「今は12―20室の小規模の宿が人気を集めている。新婚旅行でも大型旅館は敬遠される時代になった」と語る一方で、「ご到着からお帰りまで“上げ膳据え膳”のスタイルを一貫して変えず、従業員を減らさなかったことが、高齢化社会で部屋食の要望が強くなってきている時代にも対応できることがよかった」と語った。最近若い男性の客室係を採用したことで女性客にも好評を得ていることも紹介した。「大型旅館は大型旅館なりのやり方を考えていかなければならない。加賀屋では『いかに小さく見せるか』を常に考えている」と話した。

 最近の傾向としては、「イタリアやフランスなどヨーロッパの方々が旅館やおもてなし、日本文化に対して興味・関心が高まっているのか、視察などが増えている」という。また、加賀屋を改装する際には、「本店はシンプルな純和風数寄屋造りのなかに、ベッドや、とくに水回りはホテルなど洋風の良いところを取り入れていきたい」と語った。

 クレームについては、怒られて学ぶことも多く、素直に謝ることでリピーターとなる宿泊客も多いという。さらに、「最も来てほしい客・最も来てほしくない客は?」という答えづらい質問に、小田女将は「クレームによって客室係を良い方向に指導していただけるお客様はウェルカムですが、(あまりに執拗なクレームなど)社員が怯え、委縮してしまうような、悪影響を与えるお客様は『来てほしくないお客様』になるのかもしれない」と語った。

 最近の宿泊客の傾向としては、「母と息子」のお客も増えていると紹介した。

 社員教育については、「お客様の満足度と、従業員が『加賀屋に入って良かった』と感じられることが同じくらいの度合いで大切」と語り、「一人ずつ根気強く、声をかけながらマンツーマンで育てている。『笑顔で気働き』をモットーに、自然に笑顔が出る会社を心掛けている」と語った。

第1回旅館甲子園開く、グランプリは観山聴月(宮城県・青根温泉)

初代グランプリに輝いた観山聴月
初代グランプリに輝いた観山聴月

 第1回旅館甲子園が2月20日、東京ビッグサイトで開かれ、グランプリには宮城県青根温泉の「流辿別邸 観山聴月」が選ばれた。全国から選び抜かれた5軒の旅館経営者とスタッフが集結し、若手経営者の志や経営に対するビジョン、現場スタッフの輝き、地域活性への取り組みをプレゼンテーション方式で発表。個性豊かなパフォーマンスと「おもてなしの心」に共感した来場者約700人は、最も心に響いた宿に1枚のコインを投じた。
【内川 久季】

 旅館甲子園は「それぞれの旅館には日本一が何かひとつは必ずある」をコンセプトに掲げ、旅館が守り続けてきた日本の「おもてなしの心」や日本文化を若い世代や海外に広く伝え、業界や地域の活性化を目的として生まれた大会だ。

ファイナリストの5軒
ファイナリストの5軒

 全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会青年部(横山公大部長、約1600会員)に所属している施設のなかから、出場希望施設を募り、審査を通過した22施設のうちファイナリストの5軒を決定。決勝審査は、プレゼンテーション方式で、各旅館15分間与えられ、(1)越後湯澤HATAGO井仙(新潟県)(2)鬼怒川温泉ホテル(栃木県)(3)竹と茶香の宿 旅館樋口(島根県)(4)和歌の浦温泉 萬波MANPA RESORT(和歌山県)(5)流辿別邸 観山聴月(宮城県)――の順で発表された。

 舞台上では、経営者とスタッフが一丸となって旅館の問題点に立ち向かう姿や、スタッフの仕事に対するこだわりとプライドなどをアピールし、各旅館の「おもてなしの心」を披露。登壇した経営者やスタッフ、地域の人々は、時に緊張した姿を見せながらも、イキイキと目を輝かせながら旅館の魅力を語った。

 行政や旅館関係者、コンサルタント業など専門家による審査と、来場者によるコイン投入の投票の結果、グランプリには宮城県の青根温泉「流辿別邸 観山聴月」が選ばれた。同館オリジナルの造語である「思手成し(おもてなし)」をモットーに、「思いを込めた手で事を成す」というサービスを舞台上で再現。同館で行われている誕生日演出を寸劇で表現し、会場を沸かせた。

 発起人である横山青年部長は、「ピーク時には8万6千件を超えていた旅館だが、今は4万5千軒に減少し低迷している。しかし、今日の大会で、改めて旅館の魅力に気づいてもらえたのではないか。〝宿は人なり〟の精神を今一度、呼び戻せたと思う」と語り、本大会を締めくくった。

 優勝した「流辿別邸 観山聴月」には、副賞として、じゃらん本誌での特集記事や楽天トラベルのトップページ広告枠の進呈などが贈られた。