「観光ルネサンスの現場から~時代を先駆ける観光地づくり~(207)」資源を生かす地域間研究交流 (広島県呉市)

2022年4月30日(土) 配信

研究成果をどう活かすか(パネルディスカッション風景)

 年度末の3月下旬、広島県呉市で日本遺産をテーマとする学術交流シンポジウムが開催され、参加させていただいた。

 このシンポジウムは、鎮守府日本遺産の4都市(横須賀市・呉市・佐世保市・舞鶴市)の連携交流事業の一環として、昨年の舞鶴市に続き2度目のシンポジウムである。4都市の工業高等専門学校を核に、関連大学の理系の先生方による研究成果の発表と交流の場となっている。建築・土木・機械など、それぞれの専門領域の先生方による、いわば「理系で読み解く日本遺産」を目的とした珍しい試み。従来、日本遺産に係るこうした研究は、考古学や歴史、文化、都市政策など、社会科学・人文科学の先生方による研究が多いなか、誠に異色の試みと言える。

 当日は、4都市6研究機関(チーム)の先生方が、この1年の研究成果を報告したのち、パネルディスカッションを行った。その研究成果の全体をご紹介することはできないが、未解明の産業遺産などの三次元測量技術や計測の難しいエリアでのドローン飛行探査による写真測量と3Dモデルの作成、建物の構造特性に着目した解析的研究など、歴史文化財の保存・活用を目的とした基礎的研究が多数報告された。

 その報告を受けて、「調査と活用の良い関係」と題してパネルディスカッションを行った。一般市民の方々にもわかりやすいように、「研究成果から見えてきたこと」「研究成果をどう活かすか」という2つのサブテーマに沿って、討議を進めた。

 鎮守府4市では、これまでにも各都市のガイドさんたちが互いに他都市を学ぶ交流研修、普段見られない施設などを一斉公開して各都市を巡っていただく「日本遺産ウィーク」事業、優れた企画や事業創造のために、各都市の信用金庫などが連携した支援事業など、他の日本遺産地域では見られない、さまざまな試みを行ってきた。

翌日は北前船で栄えた御手洗の集落を視察

 今回の研究交流は、地域に眠る歴史文化資源の発掘とその意義、保全・活用に向けた手法開発などの点で大きな成果につながる可能性を感じた。また高専・大学といった教育機関として、これらの研究に参画する学生たちはもとより、地域の子供たちの学習機会にもつなげられる。そして何よりも、地域の市民・事業者の方々の地域理解が深まり、地域に対する誇りと新たな事業への取り組み意欲を高めるという意義もあろう。

 今後は、こうした技術系の研究だけでなく、都市・歴史・観光・文化といった社会・人文科学分野の研究者たちとのダイナミックな横連携による研究交流も課題である。

 次年度は、佐世保市でのシンポジウム開催が決まっている。各地域の研究機関の皆さんのさらなる研究成果を期待するとともに、これら成果を生かす新たな仕組みや体制づくりも進めたい。

(日本観光振興協会総合研究所顧問 丁野 朗)

アルピコHD アルピコホテルズ新設 宿泊業に特化、専門性高める

2022年4月30日(土) 配信

「アルピコホテルズ」ロゴマーク

 アルピコホールディングス(曲渕文昭社長、長野県松本市)は、グループの組織再編を4月1日付で実施し、宿泊業に特化した新会社「アルピコホテルズ」を新設した。コロナ禍で事業環境が激変するなか、グループ各社の事業領域を見直し「宿泊・交通・高原リゾート」の各分野での専門性を高めていく考えだ。

 これまでホテルブエナビスタ(同松本市)や美ヶ原温泉翔峰(同松本市)、双泉の宿朱白(同諏訪市)、上高地ルミエスタホテル(同松本市)など宿泊施設の運営、蓼科高原(同茅野市)でのリゾート事業は、東洋観光事業(同茅野市)が手掛けてきた。今回の組織再編では、新会社を立ち上げて宿泊事業を独立させ、既に着手しているグループ宿泊施設間での連携、合理化をさらに進める。新会社の本社はホテルブエナビスタに設置する。東洋観光事業は「アルピコリゾート&ライフ」と社名変更し、引き続き蓼科高原の別荘・不動産事業やゴルフ場管理を担う。

 交通事業では、アルピコHDが保有するアルピコタクシー(同松本市)の株式をアルピコ交通に移し、同社の子会社にする。事務部門を共有させて効率化をはかるほか、両社で重複もあった車両の乗合・貸切事業の役割分担を明確にする。

 アルピコHD経営企画部は「各社の専門性を高め、グループの総合力を発揮できる体制への変革をはかる」としている。

「ZOOM JAPON(ズーム・ジャポン)(4月号)」

2022年4月29日(金) 配信

http://zoomjapon.info

特集&主な内容

 本誌4月号の特集は、「鎖国、あるいは閉じこもりの精神」です。Covid-19の影響で、2年近くの間、閉ざされていた日本の国境もようやく開き始めました。日本以外にも国境を閉ざした国はありますが、過去に200年近くも国を閉ざしていた日本、今でも引き継がれているように見えるその精神性を探ってみました。在仏の日系ジャーナリストが昨年末に日本を訪れたリポートをはじめ、社会科の講師で著作も多い伊藤賀一さんのインタビュー、そして日本で入国管理センターを取り上げたドキュメンタリー映画「牛久」のトーマス・アッシュ監督にもお話をうかがいました。グルメページでは、日本で近年人気の韓国や台湾の料理を取り上げました。まだ開かれていない日本も、開かれている日本も、今の日本の現実です。

〈フランスの様子〉4月は春のバカンス

4月6日、民放TF1の夜のニュース、フランス南西部のキャンプ場。「復活祭のバカンス:予約が殺到」

 フランスの4月は、夏のような陽気の日もあれば、成長し始めたワイン用のブドウの木が霜でやられるのを心配する日もある。そして大きな学区ごとに順番に春のバカンスがある月だ。◆パンデミックの波は日本以上の水準で高止まりしている感があるが、日本よりも厳しい制限であったマスクの着用義務もワクチンパスの適用も解除され、「自由な」春を迎えた。◆そして始まった春のバカンスシーズンではあるが、やはり今年も、いつもとは違うバカンスシーズンとなった。ある世論調査によると、フランス人の52%がガソリンの値上げでバカンスの予定を変更したという。この原因のウクライナ情勢自体は日本よりも切実に報道されているが、フランス国民の実生活で切実なのはウクライナ情勢に起因する燃料費や食料品などの値上げによる生活費の逼迫だ。◆ところが、バカンスも人生の一部であるフランス人。どんな状況でもバカンスをやめるという選択肢はないようだ。◆今年の春のバカンスで人気なのは、近場の国内のキャンプ場。天気予報を見ながら直前に予約を入れたり、通常よりも短い滞在もあり、地方のキャンプ場は予約が殺到しているという。

ズーム・ジャポン日本窓口 
樫尾 岳-氏

フランスの日本専門情報誌「ZOOM JAPON」への問い合わせ=電話:03(3834)2718〈旬刊旅行新聞 編集部〉

世界22市場で訪日意向調査、潜在的市場規模は3.3億人(JNTO)

2022年4月28日(木) 配信 

蔵持京治理事

 日本政府観光局(JNTO、清野智理事長)は4月28日(木)に開いた会見で、往来再開を見据え、世界22市場で行った訪日旅行意向に関する調査の結果を発表した。調査によると、訪日旅行の潜在的な市場規模は推計3億3000万人だった。

 同調査は2021年3~6月、東・東南・南アジア、欧米豪、中東諸国などのビジット・ジャパン重点22市場を対象にオンラインでのアンケートを行った。

 東アジア(中国・韓国・香港・台湾)市場では、日本を旅行先として認知している層の割合が高く、東京、大阪、京都以外の地方エリアを訪問したいと回答した割合が7割以上だった。

 一方、海外旅行先として日本の認知率が低いカナダ、英国、ドイツでは、地方エリア訪問希望の割合が低かった。

 欧米豪、インド、中東市場では、米国を除き、中距離海外旅行実施者の約7割以上が訪日未経験で、日本を旅行先として認知している層の割合と地方エリアの訪問希望率が比例して低かった。

 この結果を受けてJNTOは、「無認知の割合が高い市場では日本自体や日本の観光地を知ってもらい、リピーターが見込める市場では地方エリアをPRするなど、PR内容や方法を使い分けてプロモーションを行っていく」(蔵持京治理事)考えを示した。

持続的な訪日旅行 パンフレット制作

 JNTOは会見同日、サステナブル・ツーリズムの観点から訪日旅行の魅力を伝えるデジタル・パンフレットを公開した。コンセプトは「自然と自然に根ざした文化」とし、50件のサステナブル・トラベルの観光コンテンツを英語で紹介する。

 同パンフレットは、「訪問地ならではの本物の体験を志向し、旅行先にポジティブな影響をもたらしたい旅行者」をターゲットとし、持続可能な観光の旅行先としての日本の認知度向上と、興味関心を高める狙い。

 デジタル・パンフレットはSDGsの観点からデジタル(PDFデータ)のみでの配布とし、JNTOのホームページで公開している。このほか、ニュースレターで海外メディアへ配信し、リアル商談会でも紹介する予定だ。

「EXPLORE DEEPER -Sustainable Travel Experiences in JAPAN-」

JTB、大黒屋と業務提携 中古ブランド品買取で旅行に

2022年4月28日(木)配信

不要なブランド品をJTBトラベルポイントに変換する

 JTB(山北栄二郎社長)はこのほど、大黒屋(小川浩平社長)と業務提携し、顧客の中古ブランド品を旅の思い出に変える「たんす資産かたづけ旅」サービスの概念実証を始めた。大黒屋が引き取った中古ブランド品の査定額相当分に10%を上乗せした数値を、「JTBトラベルポイント」として付与。顧客の家庭に眠る資産で新たな旅行需要の創出につなげる。

 実施期間は4月20日(水)~5月8日(日)。対象者は、JTBステージ会員に該当し、JTBトラベルメンバー登録が完了している東京、神奈川、埼玉、千葉、栃木、群馬、茨城、山梨の在住者とする。

 買い取り方法は3種類。大黒屋から専従者が出向く「訪問買取」や、買取キットに品物を梱包して送る「宅配買取」、首都圏17店舗での「店舗買取」を実施する。

JTB、地域活性化の協定 島根県隠岐のDMOなどと結ぶ

2022年4月28日(木)配信

ローソク島(隠岐の島町)

 JTB(山北栄二郎社長)はこのほど、島根県隠岐郡の地域連携DMOである隠岐ジオパーク推進機構(池田高世偉代表理事)と、構成町村の海士町、西ノ島町、知夫村、隠岐の島町と地域活性化に向けた包括連携協定を結んだ。

 今回の協定により、隠岐諸島の魅力の発掘・発信を通じて、地域の交流人口・関係人口拡大による域内経済の活性化をはかる。イノベーションの共創を通じて、地域の地方創生につながる取り組みを進めていく。具体的には、ジオパークを活用した観光の振興や他産業への波及、人材育成、地域資源の保護と活用の好循環の創出を目指す。

 連携することで、地域の観光計画に資する観光コンテンツの磨き上げを通じたコンテンツの開発や、地域のガイド育成など地域のコンセプトと合わせた受入環境を整備する。このほか、来訪者向けのワンストップサービスの構築のほか、地方創生に資する取り組みに力を入れていく方針だ。

令和トラベル、グアムツアー販売 ハワイ商品の人気受け

2022年4月28日(木) 配信

ツアーのイメージ。約80種のツアーを用意した同社は一例として6万9800円の商品を挙げた

 令和トラべル(篠塚孝哉社長、東京都渋谷区)はこのほど、同社の海外旅行予約アプリ「NEWT(ニュート)」でグアムツアーを売り出した。

 同社は、4月20日に売り出したハワイツアーが1500人を超える人にアクセスされ、最安値の7万9800円の商品が、35秒で販売終了したことから、「今年の大型連休に向けて海外旅行の需要の高まりが期待できる」と判断した。日本から片道約3時間半でアクセスでき、ハワイと同様に日本人に人気の高いビーチリゾートであるため、同ツアーを造成した。

 4月28日現在、約80種のツアーを用意。具体的には、3泊4日間航空会社とホテルおまかせで往復送迎などが付いたプランは、2人1室利用で大人1人6万9800円からとなる。 

 ワクチンを3回接種した人は同日現在、陰性証明書の提示でグアム入国時と日本帰国時に隔離を免除される。グアムは日本や韓国などアジア圏からの旅行者も増え、以前の雰囲気を取り戻しつつあるという。

亀山温泉ホテル、1日2組限定の貸切露天風呂オープン 風に当たり湖を見下ろすロケーション

2022年4月28日(木) 配信

2槽を設けた兎亀の湯。「『ととのう』時間を過ごせる」という。

 千葉県奥房総の亀山湖畔に位置する亀山温泉ホテル(鴇田英将代表)はこのほど、1日2組限定の絶景貸切露天風呂「兎亀(とき)の湯」をオープンした。

 同風呂は笹川渓谷からの涼しい風に当たりながら、亀山湖を見下ろすことができるロケーションに設置。また、41度の四角浴槽(亀)と27度の冷泉掛け流し丸浴槽(兎)で構成される。亀山温泉ホテルは「温冷交代浴で『ととのう』時間を過ごせる」とアピールする。

 炭酸イオンの含まれたお湯は、皮膚の表面を軟化させたり石鹸のように汚れを落とすほか、メタケイ酸が1リットル当たり84.6mg含み、肌の新陳代謝を促進して保湿効果も期待できるという。利用可能な時間は最大11時間とした。

 同ホテルは自然に囲まれた湯宿で周辺レジャー施設への観光拠点をはじめ、温泉での休養や養生、湯治、静養目的などで利用されている。鹿野山自然学校と連携し、ネイチャーガイドツアーや湖畔ヨガなどのアクティビティを用意した新ブランド、亀山温泉リトリートも営業している。

ホテルの外観。周辺レジャー施設への観光拠点をはじめ、温泉での休養などで利用されてきた

 アクセスは JR久留里線上総亀山駅から徒歩12分、圏央道木更津東インターチェンジから車で約30分となる。

旅客輸送の安全対策講じる 検討委員会を設置(国交省)

2022年4月28日(木) 配信

国交省は4月28日、知床遊覧船事故対策検討委員会を設置した

 国交省は4月28日(木)、北海道・知床半島沖で発生した遊覧船の海難事故を受け、小型船舶を使用する旅客輸送における安全対策を検討するため、「知床遊覧船事故対策検討委員会」を設置する。

 岸田文雄首相は同26日(火)、「法的規制のあり方も含め、安全対策について検証・検討を行う検討会を立ち上げ、徹底的な安全対策を講じる」よう国交省に対して指示をした。

 これを受けて国交省では、海事法制や船用工学、船員養成などの有識者から構成される検討委員会を設置。事業参入の際の安全確保に関するチェックの強化や、安全管理規程の実効性の確保、監査・行政処分のあり方、設備要件の強化──などの事項に関する安全対策を検討する。

 5月9日(月)の週に第1回委員会を開く。以後、数回開催を重ねて、中間とりまとめは今夏を予定。