住宅宿泊事業者の届け出全国で31件 自治体は窓口対応多く

2018年3月22日(木) 配信 

3月20日に国土交通省内で、観光庁長官会見が開かれた

 

住宅宿泊事業(民泊)の手続きが3月15日(木)に始まったこと受け、観光庁は3月20日(火)の会見で状況を報告した。住宅宿泊事業者の届け出は全国で31件のみと動きは鈍かった。Airbnb(エアビーアンドビー)などの仲介業の登録申請は8件で、管理業の登録申請は112件となった。いずれも書面の手続きは16日(金)時点、システム上は19日(月)時点の数を合わせた数値。主要な自治体では窓口対応が多いとの報告もあり、田村明比古長官は「(施行日の)ぎりぎりにならないと、本格的に増えてこないのでは」と述べた。

 民泊ポータルサイトのアクセス数は16日時点で、約2万5千回となった。閲覧は事業者の手続き方法や自治体関連ページに集中した。コールセンターには、事業者と管理業について700件ほどの問い合わせがあった。「引き続きポータルサイトなどを通じて周知し、円滑に手続きが進むよう努める」(田村長官)とした。

「女将のこえ208」中島 ルミ子さん、ホテル黒部(富山県宇奈月温泉)

2018年3月21日(水) 配信

中島ルミ子さん ホテル黒部

旅先の我が家

 全客室から望める黒部渓谷。手が届くような目前に構える山は、冬は凛と白く、春夏はさわやかな緑、秋には赤く染まって出迎えてくれる。緑と赤の季節には、対岸を走るトロッコ電車の乗客と手を振り合う楽しみもある。宇奈月温泉の最上流に建つホテル黒部ならではの光景は、老若男女の思い出となることだろう。

 ルミ子さんの前職は地元のフリーアナウンサー。東京の短大を卒業してUターンし、FMで番組を持ったり、テレビリポーター、結婚式の司会などで活躍していた。

 ターニングポイントは2000年。淡路花博で富山県のPRイベントを行うに当たり、司会者に抜擢されたのだ。その時、観光協会のリーダーとして同行したのが、夫で現社長の勝喜さんだった。花博に向かう観光バスの6時間、初対面の2人の会話は途切れることがなかった。そして、7カ月後に結婚。

 16、13、4歳と3人の息子に恵まれた今も、愛情と尊敬は変わらないどころか高まっているという。笑顔のルミ子さんに、個人的にも大いに学ぶところがあったのだった。

 ルミ子さんは、顧客一人ひとりへの声がけを大切にしてきた。宴会なら必ず全員にあいさつして回る。「うちは『旅先の我が家』がモットーですし、それ以前に、素敵なお客様に出会えてたくさん話せるこの仕事が趣味なんです」と、まったく無理を感じさせない。

 とにかく愛する人と働くこの仕事が大好きで、大女将には「素敵な息子さんに育ててくださってありがとうございます」、夫には「あなたのお陰で大好きな仕事をさせてもらえます」と、折に触れて伝えているという。感謝を言葉にするのは幸せの秘訣の1つだろう。

 今年2月1日、ホテル黒部は世代交代し、勝喜さんは代表取締役社長に、ルミ子さんは若女将から女将になった。社内に向けた就任あいさつでルミ子さんは、「みなさんの心と体の健康を守ります」と宣言した。

 2人は数年前から意識と働き方改革を推進中だ。我が家の家族である全スタッフを信じ、経営計画書をもれなく配布。理念や全員の個人目標を共有し、売上高からお皿一枚の値段まで公開している。実際、お皿の割れる枚数が激減するなど、意識が変わってきているという。

 休館日も増やしており、今年1―3月はそれぞれ7日間、繁忙期を前にした4月は4―13日を休む。

 我が家の母親役として、ルミ子さんは結婚当初から描いてきた「リピーターでいっぱいの宿」をこれからも目指していく。

(ジャーナリスト 瀬戸川 礼子)

住所:富山県黒部市宇奈月温泉7▽電話:0765-62-1331▽客室数:43室(220人収容)、一人利用可▽創業:1965(昭和40)年▽料金:1泊2食付15,000円~(税別)▽温泉:弱アルカリ単純泉▽大浴場・露天風呂ともに、山と渓谷を望むことができる。地産地消の料理。日帰り入浴・日帰りプランも。

コラムニスト紹介

ジャーナリスト 瀬戸川 礼子 氏
ジャーナリスト・中小企業診断士。多様な業種の取材を通じ、「幸せのコツ」は同じと確信。働きがい、リーダーシップ、感動経営を軸に取材、講演、コンサルを行なう。著書『女将さんのこころ』、『いい会社のよきリーダーが大切にしている7つのこと」等。

 

「ZOOM JAPON(ズーム・ジャポン)(3月号)

2018年3月21日(水) 配信

http://zoomjapon.info
クロード編集長

〈巻頭言〉

 先日までフランスでのもっぱらの話題は、各地を覆った大雪でしたが、今はすっかり寒さも緩み始めました。この頃になると、さっそく気になるのが夏のバカンス。家族連れならなおさら、この時期に行き先を決めて、各種予約手続きを行うことは、決して早すぎることではありません。パリでは毎年この絶妙なタイミングで、国際旅行博が開催されます。本誌は、4日間で13万人の入場者を動員するこのイベントのメディアパートナーとして、フランス人の関心がますます高まっている「北海道」の魅力を3月号全頁で紹介します。

(編集長 クロード・ルブラン)

特集 「北海道特集」

阿寒でアイヌ工芸品店を営む元写真家の男性

 函館朝市や十勝ワインなど北海道グルメを特集してから、早6年。今回は、もっと大きな枠でこの地方を紐解いてみた。■地方紙を読むとその地域が見えてくるという観点から、100年以上の歴史を持つ通称「道新」こと北海道新聞社を訪問。50に及ぶ道内外の支社・支局や、海外駐在所の中心となる札幌本社にて、この地方紙の独自性や、近接するロシアとの領土問題、そして道内の各産業状況について話を聞いた。■夕張市長インタビュー。巨額の赤字を抱えて2007年に自治体として国内初の財政破綻をした夕張市。2013年に市長に就任し、市民とともに奇跡の再建の道を歩む若きリーダーが語ったその覚悟と画策。■アイヌ民族の文化やアイデンティティーを守り続ける人々の思い。■北海道出身の作家・池澤夏樹氏が見た日本の現代史における北海道。■帯広市、世界唯一のばんえい競馬。迫力のレースの歴史や見どころを解説。■十勝の手作りナチュラルチーズ。農場内の放牧牛のミルクから丁寧にこだわりの生産者を取材。■グルメ:ジンギスカン鍋。なぜ北海道郷土料理といわれるのか、そのルーツを探る。■道東の旅:知床半島、摩周湖、釧路湿原など、北海道の大自然を紹介。■今号だけでは、この壮大な北の島の魅力は伝えきれていないが、これをきっかけに読者にはぜひ現地に赴き、各地を巡りながら「未知の日本」に触れてほしい。

〈ZOOM・JAPON 編集部発 最新レポート〉数字で見るフランスの観光産業

やはり一番人気はルーブル美術館

 フランス地方観光局の発表によると、2017年にパリを首府とする地域圏のホテル利用者数は過去最高の3380万人。民泊なども加えれば、合計4800万人になると推測。この数の中には、とくに増加が目立った中国人や日本人観光客のほか、フランス人客も含まれているものの、観光産業が復興の傾向にあることは明らか。国全体でみた昨年の外国人観光客数(未発表)は、8900万人に達しているだろうとも言われています。2020年の訪日外国人旅行者数の目標を4000万人とする日本に対し、観光大国フランスは「治安回復」を要に、2024年パリ・オリンピックに向けて1億人の誘致を目指しています。

フランスの日本専門情報誌「ZOOM JAPON」への問い合わせ=電話:03(3834)2718〈旬刊旅行新聞 編集部〉

 

明和町(群馬県)とJTB関東が協定 移住や観光消費額拡大へタッグ

2018年3月20日(火)

明和町の冨塚基輔町長(左)とJTB関東の木下恵部長

群馬県・明和町(冨塚基輔町長)と、JTB関東(今枝敦社長)は3月20日、地域総合交流協定を結んだ。同町への移住・定住の促進や、交流人口、観光消費額の拡大に向けて、両者が相互協力する。   

 東京都内で行われた協定調印式で、冨塚町長は「群馬県の東南端に位置する明和町は、県内で一番東京に近い町」と紹介。「一部上場企業の工場や、米、梨など美味しい農産物も豊富。JTBさんの力を借り、人口減少から社会増で人口拡大へと転換していきたい」と語った。移住・定住者には、さまざまな奨励金制度を設けていることもアピールした。

 JTB関東の地域交流グローバル事業担当部長の木下恵氏は、明和町について「首都圏へのアクセスを生かした企業誘致により、雇用環境が整っている。高品質なフルーツの産地でもあり、潜在力の高さを実感している」と評価。「JTBの専門分野である“旅の力”を生かしながら、多面的な取り組みで交流人口の増加につなげていきたい」と話した。

 今後、JTBグループのノウハウを結集し、課題を一つずつ解決しながら、観光やイベントによる魅力発信を強化する。また、町内の企業や梨農家などと協力して、「雇用+移住」を念頭に各種ツアーを実施していく。町の特産品のブランド化や、国内外への販路拡大などにより、観光消費額の拡大にも取り組む。

〈観光最前線〉浅間酒造観光センター30周年

2018年3月20日(火) 配信

浅間酒造の純米大吟醸「秘幻禮(れい)」

 群馬県・長野原町の「浅間酒造観光センター」が今年3月1日でオープン30周年、新店舗になって20周年の節目を迎えた。これを記念してキャンペーンや新商品の発売を開始している。

 今回の30周年記念商品で一番注目しているのは、精米20%という浅間酒造最高峰の純米大吟醸「秘幻禮(れい)」だ。限定1千本で価格は720ミリリットル1万円(税込)というから、浅間酒造の中でも別格のプレミアム日本酒であることに間違いない。これは一度呑んでみたい。

 このほか、自分で作りながら食べる「どら焼き食べ放題」(制限時間30分)や平日個室利用で板前が目の前で揚げる「天ぷら食べ放題」、売店商品3千円以上購入でオリジナルトートバッグがもらえるなど企画多数。来年2月28日まで実施する。

【古沢 克昌】

宿の負担を解消へ AIで多言語化支援(talkappiボット)

2018年3月20日(火) 配信

AIを活用し、多言語化を支援する(写真はイメージ)

 多言語コミュニケーションツールを開発するアクティバリューズ(陳適社長、東京都渋谷区)はこのほど、多言語接客アプリなどで蓄積したノウハウを活用した宿泊施設向けAI(人工知能)チャットボット「talkappiボット」の提供を始めた。搭載言語は英語と中国語(繁・簡体字)韓国語、日本語の5言語。観光情報案内など旅行者のタビマエ、タビナカを支援するとともに宿泊施設が抱える多言語対応への課題と負担、人手不足を解消する。

 「talkappiボット」は、ラインやフェイスブック、メッセンジャー、ウィチャットといったSNS(交流サイト)に対応しており、利用者は専用アプリをダウンロードすることなく手軽に使用できる。現在搭載されている主な機能は、自動応対や受付、観光情報案内など。観光案内では、宿泊施設周辺の観光スポットや体験施設などのおすすめ情報の提供ができる。

 館内業務の多言語化にも対応。モーニングコールや部屋の掃除依頼、館内施設の予約などを自動で受け付ける。館内レストランや売店などのサービス案内をいつでも滞在中の宿泊者に送信でき、館内消費も促せる。

 また、宿への問い合わせ内容を自動的に判別し、予約前だと判断した場合は自社予約サイトに誘導する機能も搭載されている。これにより、自社予約比率を向上させることも可能になるほか、今後は予約自体をチャットボットとのやり取りだけで完結できるようにしたい考え。

〈旬刊旅行新聞3月21日号コラム〉料理を作るところを見せる 衛生管理意識高め、“ライブ感”演出

2018年3月20日(火) 配信

料理人が客の目の前で料理し、〝ライブ感”を演出

 家の近くにずっと気になっていた小料理屋があり、ようやく先日、初めて暖簾をくぐった。

 L字型のカウンターの中には広い厨房があり、5、6人が寿司を握ったり、てんぷらを揚げたり、魚を焼いたり、それぞれが担当の持ち場で客からの注文を受けると手際よく調理し、長く待たせることなく料理を提供する。

 カウンターに座り、春の山菜のてんぷらを注文すると、目の前でタラの芽やフキノトウを揚げてくれた。5秒も経たずに口の中で味わうことができ、てんぷらの醍醐味を堪能した。

 カウンターを挟んで客と向かい合うバーや寿司屋も、注文から調理、提供までの過程を、多少の演出を加えて見せてくれるが、手元から下はなかなか目にすることができない。しかし、この小料理屋のすごいところは、広い厨房の隅々まで、カウンターに座る客に見せているところだ。例えば、料理を盛り付ける食器はどこから出しているのか、別の作業をしたあと料理人が手を洗っているのか、まな板だけでなく、足元まで清潔なのかといったところまで一目瞭然なのである。つまり、料理を提供する側が、客に自分たちの裏側まですべて晒したうえで、美味しい料理を提供しようとする覚悟と、心意気に感心してしまった。

 飲食業界で働く人から、厨房の状況を耳にすることが多い。そして、その多くが衛生観念の欠如に関するものだ。

 例えば、下ごしらえのときに、食材を床に落としてもそのまま使ったり、賞味期限の切れたものを平気で出したりする。でも、それくらいは想像の範囲内だ。

 けれど、身近な人から実際の話として、あるレストランチェーン店では、若い男性アルバイトが夜中にトイレ清掃用のタオルで調理鍋を拭いたりしていた、といった話を聞くと、相当に無頓着な私でも、衛生管理に対して意識の高い店を選びたくなってくる。

 仕事の合間にカフェに入り、熱いコーヒーを飲みながらカウンターに目をやると、清潔そうな白いシャツで、笑顔で客と応接したり、紅茶を作ったり、ケーキをお皿に乗せたり、グラスを洗ったりする姿を目にすると、ついつい引き込まれてしまうことがある。

 酒場でも同じだ。熟練の主人が焼き鳥を焼いている姿や、鮮魚に包丁を入れている手さばきを眺めていると、壁を見つめて呑むよりも酒が美味しく感じるから、不思議だ。

 最近は、料理人が表に出てきて、料理を作る姿を見せる旅館やホテルも増えてきた。

 ビュッフェスタイルでも、それぞれのコーナーに料理人が立ち、客が来るとその場でステーキを焼いたり、てんぷらを揚げたりするシーンを多く目にするようになった。カウンターに湯煎で温めた料理をずらっと並べるだけの料理会場では、どこか味気ない。白いコック帽をかぶった料理人が会場に数人いるだけで〝絵になる〟し、ライブ感を強く感じることができる。

 料理人も、遠い厨房で誰に提供するのか分からない料理を作っているのではなく、客の目の前で「あなたのために私が今、こうして作っているのです」という、お互いが見える1対1の関係性がいい。旅先の宿で料理を挟み、客と料理人が交わす会話によって、旅の味わいも増すのだ。

(編集長・増田 剛)

舞鶴市、ミュージックツーリズムで交流人口拡大狙う

2018年3月20日(火)配信

協同で、新しいツーリズムを創造する

「音楽・エンターテイメント×観光」で、地域を活性化――。舞鶴市(京都府)は3月20日(火)、日本観光振興協会とoriconME コンフィデンス、コンサートプロモーターズ協会の全面協力のもと、全国に先駆け「舞鶴ミュージックコミッション」を5月に設立すると発表。若者をターゲットに新たなにぎわいを創出し、日本遺産や、世界記憶遺産などの地域資源とも連携させ、交流人口のさらなる拡大をはかる。

 「舞鶴ミュージックコミッション」は設立後、赤れんがなどの魅力ある地域資源や遊休資産を活用し、音楽フェスやライブ、合宿、ミュージックビデオの撮影などの誘致を進め、プロモーターやアーティストのサポートを行う。事務局を推進するのは舞鶴市と、市の文化活動を担っている文化事業財団。舞鶴フィルムコミッションが蓄積したノウハウを活用する。

 日観振は、観光業界や旅行団体への情報発信、商品造成の働きかけ、oriconME コンフィデンスは、音楽業界関係者への情報発信、コンサートプロモーターズ協会はコンサートプロモーターへの情報発信をそれぞれ担い、舞鶴市を支援する。

 同日、東京都内で行われた会見で多々見良三舞鶴市長は、「若い世代をターゲットに据えることで、市が掲げる交流人口の拡大という政策が、より達成しやすくなる。また音楽イベントをきっかけに滞在型観光の形態になり、客単価が向上することも狙いたい」とし、「先駆けてミュージックツーリズムに取り組むことで、全国のモデルになる」と意気込んだ。

 

 

 

 

 

スノーリゾート今夏にアクションプログラム策定へ  中国への訴求を強化 

2018年3月20日(火) 配信 

検討会のようす。検討会は東京都内で行われた

観光庁は3月19日に東京都内で、スノーリゾート地域の活性化に向けた検討会を開き、2018年度以降の取り組み方針を報告した。今夏にはアクションプログラム2018を策定する見通し。17年度のものを踏まえつつ、課題や対応方針を盛り込む。今後は需要が大きい中国へスノーコンテンツの訴求などを強めていく。

 中国に力を入れる理由には、中国でウィンター市場が急拡大している背景がある。2022年北京冬季オリンピック・パラリンピック競技大会の開催決定を受け、中国は冬季スポーツ発展計画を策定。22年までにスキー場を800カ所(15年は568カ所)まで整備し、スキー人口3億人(15年は1250万人)を目指している。

 日本でも前シーズン(16年12月から17年5月)で、外国人利用者のうち中国人が約4分の1を占めるなど、市場はにぎわっている。

 ただ、日本での対応は遅れている。観光庁が同日に発表した外国人スキーインストラクターの調査によると、中国出身は全体の2・3%にとどまる。中国語を話せない欧米出身が多いため、英語での指導が現状となっている。政府は在留資格の要件を緩和するなど、裾野を広げるが、アジア圏の旺盛な需要に追い付いていない課題がある。

 今後は、スキー以外の楽しみが目的の来場者や、バックカントリースキー目的の上級者などと分類し、対応する受入人材の確保を検討していく。急成長が見込まれる中国人市場の取りこぼしをなくしたい考えだ。

 スノーリゾートの検討会は引き続き取り組みを進めていく。5月にアクションプログラムの骨子案を提示し、7月に策定する見通し。来年3月には18年度の成果をとりまとめ、フォローアップを行う予定。

温泉街は変わらぬ賑わい 若者や外国人客に活路 4月から「草津温泉スキー場」に変更(群馬県・草津温泉)

2018年3月20日(火) 配信

草津温泉の湯畑周辺を散策する観光客

 1月23日に発生した草津白根山の本白根山(群馬県・草津町、2171メートル)の噴火発生から約2カ月が経過した。温泉街は火口から約5キロ離れており、被害はなかったが、噴火当初は宿泊のキャンセルが相次いだ。そこで現在の草津温泉街の状況はどうなっているのか、観光客の動向はどう変化しているのかなど、関係者の生の声を聞くことで現地レポートをしてみたい。
【古沢 克昌】

 3月某日に、群馬県・草津温泉を訪問した。平日午前中にも関わらず、草津温泉街の中心である湯畑には大勢の観光客が集まっていた。この時期は高校生や大学生などの卒業旅行が多く、普段以上に湯畑周辺は若い人たちの姿が目立っていた。草津温泉名物の湯もみショーが1日6回行われる観光施設「熱乃湯」も大勢の観光客でにぎわっていた。

草津温泉のランドマーク「湯畑」も平常通り
西の河原公園にも大勢の若者が集まっていた
大入り満員だった熱乃湯の「湯もみと踊り」ショー

 湯畑周辺では3月の毎週土曜日に湯畑キャンドル「夢の灯り」(湯畑広場、光泉寺階段)が実施され、キャンドルイベント開催時には午後8時から湯の華会(草津温泉の女将の会)によるお菓子の振る舞いも行われた。3月3日には天狗山駐車場を観覧場所に「ベルツこども園隣り」から冬花火が打ち上げられ、大盛況だったという。今年は3月31日にも冬花火が打ち上げられる予定だ。

 3月25日には「ゆけむりJAZZ」も予定されており、「熱乃湯」を会場に午後8時から入場無料(先着250人)でジャズの生演奏が楽しめる。

ゆらゆらと湯けむりが立ち上る湯畑ライティングは幻想的だ

 草津温泉旅館協同組合の工藤強一さんは「湯畑の周辺はにぎやかで毎年3―4月は若い人がかなり目立つようになりました。宿泊施設の泊食分離も進み、元々は人手不足対策として素泊まりの宿が発生したのですが、料金体系などいろいろなニーズに対応できるようになり、多様性も出てきました。草津温泉はリピーター客が多く、家族で泊まりに来ていた子供たちが大きくなり温泉へ卒業旅行に行くとなった場合、親たちも泊ったことのある草津温泉なら子供だけの旅行でも安心感があるので親からも許可が出やすいのだと思います」と説明してくれた。

 草津温泉観光協会の富岡忠幸統括部長は「5、6年ほど前に草津温泉に宿泊した若者600人にアンケート調査を実施したところ、一番多かった回答が『温泉が良いから』『草津温泉は有名だから』というものでした。それまでは家族連れや年配の方が目立つ温泉地でしたが、温泉目的で草津へ来てくれる若者が増えたというのが新鮮な驚きでした」と語った。

 今回一番影響が大きかったはずの「草津国際スキー場」にも足を運び、草津観光公社の安斉克仁企画担当課長にも話を聞いてみた。「今シーズンは4月8日までの営業となります。スキー場は噴石被害を受けたロープウェーを廃止し、山頂エリアのゲレンデを閉鎖したため、全長距離が短くなり、山頂エリアの雪質の良さに魅力を感じていた中・上級者の足が遠のく可能性があります。4月から名称を『草津温泉スキー場』に変更します。草津温泉から近いスキー場であることをアピールし、ファミリー層をより強化するとともに、雪の降らない地域から来る外国人などスキー初心者の新たな客層を開拓したいです」と考えを語った。

「草津国際スキー場」は「草津温泉スキー場」に名称変更

 宿泊施設にも話を聞いてみた。今回、噴火によるキャンセルの影響が大きかったであろうと思われる大型の宿泊施設を数軒回ってみた。湯畑前の「ホテル一井」では、手島悟顧客サービス部長が対応してくれた。「当館ではキャンセルが300件ほどありましたがその後新規の予約も入り、おかげさまで3月は連日満館に近い状態です。しかしながらスキー客を中心とした宿泊施設は依然として厳しい状況が続いているので、草津温泉全体ではまだ元の状態に戻ったとはいえません。ホテル1階の改装は当初からの計画通りで4月1日には新しい売店がオープンします。こういう時期に来てくれたお客様は大事にしないといけません。草津温泉でゆっくり癒されてほしいです」と話してくれた。

 草津温泉で一番大きな宿泊施設である「ホテル櫻井」の藤井知義統括部長は「個人客の戻りは早かったが団体客のキャンセルが大きく、これから先の4―6月の営業がかなり厳しい」という。

 予約担当の小田柿正康支配人は「団体客の割合が4割を占める当館では、これから先のトップシーズンの動きがまだあまりよくないです。3月1日にはエントランスロビーと本客殿に『コンフォート和洋室』がリニューアルオープンしました。来年1月からは耐震工事も始まるので、前向きな営業を頑張っていきたいです」と語る。

 草津国際スキー場からも近い「草津ナウリゾートホテル」の小林恵生社長は「毎年2月はスキー、スノーボード、雪遊びのお客様が多いのですが、残念ながらスキー関連客のキャンセルが多かったです。天候理由によるリスクが大きいスキー団体客は3年前からとらないようにシフトしてきました。その代わりに新しい客層として20代前半のカップル客の比率が増えてきました。インバウンドのキャンセルはなく、受注速度は例年と変わりません。好調なのは東南アジア諸国で、今後ますますスキー人口が増え、新しいターゲットとして期待できます。スキー場の課題はソフト面での充実が急務で、例えば現在は当日でないと申し込みができないスキースクールの予約をできるようにするなどが該当します。食事やタクシーの予約も同じです。さまざまな変化対応が加速する時代に突入しました。新しい草津温泉の在り方が求められる時代になったと思います」と展望を語ってくれた。