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観光庁、観光公害「広く発生していない」 日本版観光指標開発へ

2019年7月12日
編集部:平綿 裕一

2019年7月12日(金) 配信

鎌倉・七里ガ浜の写真スポットには外国人旅行者が大挙し、住民と溝が深まっている

 観光庁はこのほどオーバーツーリズム(観光公害)についての現状をとりまとめ、持続可能な観光の推進に向けて方向性を整理した。全国的な傾向としては「広く発生するには至っていない」(同庁)とした。一方で、調査によると、主要な観光地を抱える地方自治体はオーバーツーリズムの課題を認識していることが分かった。今後は京都などでモデル事業を行い、全国に横展開していく。国際基準を参考に日本版の「持続可能な観光指標」も開発する考え。

 同庁はとりまとめのなかでオーバーツーリズムを定義。「観光地やその観光地に暮らす住民の生活の質、及び/或いは訪れる旅行者の体験の質に対して、観光が過度に与えるネガティブな影響」とした。

 近年は世界的な旅行ブームがあり、地域文化・生活を好む旅の傾向が強まっている。観光客と住民生活との距離感が狭まったことが、地域に旅の良し悪し両面の影響を強く及ぼすようになった。

 同庁は「持続可能な観光を実現するために向き合わなければならない重要な課題の1つ」との認識を示した。

 今後は「持続可能な観光指標」の開発・普及をはかっていく。

 観光指標により地域の実態を把握することで、課題の早期発見や防止策を打てるようにする。結果を「見える化」すれば、地域住民の観光政策に対する理解度などを増すことにもつながるとする。

 現状、グローバル・サスティナブル・ツーリズム協議会(GSTC)による国際観光指標が、多くの都市や地域で導入されているという。

 GSTCなどを参考にしつつ、日本全国で活用できる観光指標(日本版STC:Sustainable Tourism Criteria)の検討を始めるとした。とくに北海道の複数自治体の協力を得ながら進める。G20観光大臣会合の開催地である北海道で、世界に取り組みをアピールする狙いだ。

 他方、観光庁らはより具体的な現状把握のため、主要観光地がある計214の地方自治体にアンケート調査を行った。これによると、回答があったすべての自治体で、観光客の増加による課題の発生を認識していた。近年では「マナー・ルール」や「混雑」が、課題として強く意識していることが多いと分かった。

 「マナー・ルール」の課題をみると、「トイレの不適切な利用(25・4%)」、「住宅地や公共の場へのゴミ放棄(20・3%)」が目立った。

 「混雑」は「観光客のマイカーや観光バスなどによる交通渋滞(38・4%)」が多くの自治体で問題視されていた。

 同庁としては、京都などの代表的な観光地で、混雑やマナー違反対策のモデル事業を行い、全国に横展開していく考え。

 一方で、国内でオーバーツーリズムの状況は深刻化していないと、裏付けとなる資料を発表した。

 2018年にUNWTO(国連世界観光機関)が世界15カ国を対象に、観光が地域に及ぼす影響に関する調査を実施。

 日本は15カ国中、「混雑」などの否定的な影響として挙げられた項目に、観光が「影響を与えている」と答えた割合は最も低かった。観光のマネジメントに改善を求める割合は、全体の49%が「はい」と答えたが、日本は24%に留まった。

 同庁は「近年のオーバーツーリズムに関連する課題への関心の高まりを、観光地マネジメントに本格的に取り組む攻めの機会としてもらうことを期待している」と調査を結んだ。

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