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〈旬刊旅行新聞2月11日号コラム〉旅館の朝食会場  笑顔のスタッフが1人でもいれば……

2019年2月9日
編集部:増田 剛

2019年2月9日(土) 配信

旅館の朝食会場は、無人よりも爽やかな笑顔があれば(写真はイメージ)

 

 
旅館の客室係が部屋に入ってくるおもてなしのスタイルを、落ち着かないと感じることがあるだろう。そして、この傾向は、年々強まっているような気がする。このため、ホテルと同じように、客から呼ばれなければ部屋に入らない旅館も増えている。

 
 夕食時に布団を敷きに入らなくて済むように、ベッドを備えている宿も多くなってきた。高齢者や外国人旅行者の増加という時代の流れにマッチしているし、人手不足という旅館業界全般の問題の解消にもつながる面もある。また、夕食や朝食も部屋出しから、厨房に近い食事処で提供するスタイルが主流になってきた。熱いものは、冷めないうちに食べたいという客のニーズにも応えられる。

 
 このように、旅館のおもてなしのあり方や、限られた人的資源の投入の仕方も、時代とともに変化しているのが分かる。

 
 先日、とある観光地の大型旅館に宿泊した。冬の閑散期であったため、客が少なく、のんびりと滞在を楽しむことができた。その旅館は立派な庭園があり、高層階からの眺めも良かった。別館の客室から、朝食会場の本館に移る渡り廊下の途中には、大きなコンベンションホールもあり、広いガラス窓の向こうの庭園には、よく手入れのされた滝が流れていた。無人のコンベンションホール前で1人の青年に出会った。彼は、照明を消した薄暗い廊下を静かに掃除していた。

 
 季節外れで、誰もいないコンベンションホール前で滝の水を枯らさず流し続け、綺麗に掃除をする姿を見て、私は「旅館経営とは、光熱費一つとっても大変なのだな」と感じた。

 広い朝食会場に着くと、私のほか、客は数組だけだった。閑散として、空気はどんよりとしていた。ビュッフェスタイルだったので、トレイにお皿とお箸を載せる。好きな料理をたくさん選び、最後に炊飯器の蓋を開けてごはんを装っていると、スタッフがパーテーションの奥から現れて、味噌汁をお椀に入れてくれた。

 
 料理自体は地元の食材も使われていたし、美味しかった。ごはんのおかわりをしようと、立ち上がったが、またスタッフがいなくなっていたので自分で装った。

 
 炊飯器のすぐそばには、社員食堂などでよく目にする湯呑み茶碗が積み重なっていた。手に取り、お茶を探すと、遠くのテーブルに急須があった。しかし、急須の中は、茶葉だけだった。また別のテーブルに置いてあるポットまで急須を持っていき、お湯を注ぎ、湯呑み茶碗にお茶を入れた。

 
 ふと見ると、さっきのスタッフがまた現れていた。けれど、ただお茶を飲むためにテーブルをウロウロしている私をぼんやりと眺めているだけだった。

 
 文句を言いたいわけではない。余程の不利益が我が身に降りかからない限りは、怒ったり、イライラしたりもしない性質なのだ。だが、一つ思い出したのは、以前に宿泊した旅館の朝の風景だ。

 
 朝食会場にスタッフがたくさんそろっていて、急須を持って会場を歩き回ったり、「ごはんのお代わりはいかがですか」と聞いてくれたり、とにかくにぎやかな朝食の雰囲気だった。笑顔のスタッフがたった1人でもいれば、宿のイメージも明るく、爽やかに変わっていたのかなと思った。

(編集長・増田 剛)

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