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「トラベルスクエア」2020ボランティアショック

2018年9月25日(火)配信 

東京五輪へ急ピッチで建設中の新国立競技場

 まるまる2年先の話だけれど、もう間に合わないかもしれない、などと半分脅し口調だけれど、やっぱり手は打っておかなければいけない。2020東京オリンピックがらみの話だが、開催時に起きるであろうボランティアラッシュによる、サービス業への影響だ。

 オリンピック組織委員会は、9月からボランティアスタッフの募集を開始し、合計11万人集めたいとしている。それもできれば学生主体で、という。参加しやすいのはシニア層だが、今回の募集要項にシニアの文字は入っていない。一説には熱中症が怖く、シニア層にあまり来てほしくないのが本音とか。ともあれ、このボランティア参加熱が高まれば、飲食やホテル産業がバイト不足に陥るのは、今から予想できることだ。

 無償ボランティアとはいえ、国家的イベントに参加しているという高揚感、仕事の国際性などの魅力を考えると、雪崩のように若者が向かう事態もありえる。

 東京を中心に開催スポット周辺に、お客は余るほどいても、バイト不足でお店が回らないことになるだろう。というか、すでに、今の今、すでにそういう状況になっているだろう。地方リゾートなど、予約は入るのに、手が足りないから、客室販売に制限をかけたり、別館とかある場合はまるごと閉鎖とかの処置をとっているところもある。

 現在の人員確保も喫緊の課題だろうが、それの数倍になる人手不足が20年の夏に起きることを覚悟すべきだ。

 だから、今の業務体系を見直し、顧客満足を失わないで、営業体制をスムースに行えるローコストオペレーション(LCO)の仕組みを考えないといけない。ここは、やはり勤労モラルの高い正社員ベースで大半のオペレーションをこなせるということを念頭にしないといけない。LCOというと、すぐ正社員のバイトへの置き換えとばかり考える悪しき習慣とも、この際、おさらばする。正社員で素晴らしいおもてなしができて、トータルで人件費の合理化ができる。そういうことを必死に考えるべきだろう。

 それにしても五輪委の提示したボランティアの条件ってすごいなあ、と思う。①事前研修(費用など自前)義務②連続5日間含む10日以上で1日8時間以上。ちなみに、ボランティアは労働ではなので、労基法の適用外。すごいシフトも出現しそうな予感③滞在時の宿泊料、交通費自己負担(交通費はさすがに不評で1日上限1千円で支給になったとか)。だいたい宿泊施設確保できるのだろうか? これも疑問。そういう悪条件を「国家イベント」の美名で押し通そうとする。

 そのあおりをサービス産業界もくらう。この矛盾も皆さんに真剣に考えてほしいところだ。

(跡見学園女子大学観光コミュニティ学部教授 松坂 健)

 

コラムニスト紹介

松坂健氏

跡見学園女子大学観光コミュニティ学部教授 松坂 健 氏
1949年東京・浅草生まれ。1971年、74年にそれぞれ慶應義塾大学の法学部・文学部を卒業。柴田書店入社、月刊食堂副編集長を経て、84年から93年まで月刊ホテル旅館編集長。01年~03年長崎国際大学、03年~15年西武文理大学教授。16年から跡見学園女子大学教授、現職。著書に『ホスピタリティ進化論』など。ミステリ評論も継続中。

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