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「観光革命」地球規模の構造的変化(194) 教育無償化と「旅育」推進

2017年12月27日(水) 配信

旅を通じて未知なる発見に出会う

 昨年12月に安倍政権の重要政策「人づくり革命」の具体化に向けて教育無償化が閣議決定された。安倍首相は「子供の未来に予算を振り向け、社会保障制度を全世代型に大きく転換してまいります」と述べ、2兆円規模の教育無償化政策パッケージをまとめた。

 2兆円パッケージの内訳は幼児教育・保育の無償化に約8千億円、待機児童対策に約3千億円、大学など高等教育の無償化に約8千億円、介護人材の処遇改善に約1千億円。財源は消費税10%への引き上げに伴う増収分(約1兆7千億円)と企業拠出金(約3千億円)を充当。官邸主導で決められた政策パッケージであり、自民党内からの反発が渦巻いており、政策実現に至るまでの紆余曲折が危惧されている。

 日本の旅行業界は安倍政権の「人づくり革命」や「教育無償化」に呼応して、「旅育」推進をもっと強く打ち出す必要がある。その際にすでに先行している「食育」推進に大いに学ぶべきだ。日本では2005年に「食育基本法」が施行された。子供が豊かな人間性を育み、生きる力を身につけていくためには「食」が重要であり、食に関する知識と食を選択する力を習得し、健全な食生活を実践できる人間を育てることが「食育」の目的だ。教育の根幹である「知育・徳育・体育」の基礎となるべきものとして「食育」が位置づけられている。

 食育も大切であるが、それ以上に「旅育」が重要だ。非日常の時空間を旅することによって、未知の世界・未知の人々・未知の物事に出会う。そのような未知との出会いを通して、子供たちは豊かな人間性を育み、生きる力を身につけていくことができる。

 旅行業界は観光庁に強く働きかけて「旅育推進法」の制定を目指すべきだ。食育基本法は農林水産省が関係各省と連携・協力して法律制定を後押しした。食育基本法の施行によって、食育関連事業への税金投入が可能になり、食育が活発化している。農林水産省は今年度予算約20億円を各種の食育関連事業に投入している。日本の旅行業界の持続可能な発展のためには日本人の国内旅行の活発化が不可欠であり、「旅育」推進はまさに「国家的課題」として政策展開がはかられるべきだ。そのためには国会での「旅育推進法」の制定が不可欠になる。

 

(北海道大学観光学高等研究センター特別招聘教授 石森 秀三)

コラムニスト紹介

石森秀三氏

北海道博物館長 石森 秀三 氏

1945年生まれ。北海道大学観光学高等研究センター特別招聘教授、北海道博物館長、北洋銀行地域産業支援部顧問。観光文明学、文化人類学専攻。政府の観光立国懇談会委員、アイヌ政策推進会議委員などを歴任。編著書に『観光の二〇世紀』『エコツーリズムを学ぶ人のために』『観光創造学へのチャレンジ』など。

 

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