時代の流れ ― “付かず離れず”を続けるのは至難

  • 2017-4-11

 このコラムを書いている4月5日は、東京でも桜が満開の見ごろを迎えた。毎年、この時分に上野公園の桜を眺めに行くのだが、今年は例年とは景色が違っていた。

 外国人観光客が年々増えてきたとはいえ、今年はすごかった。大勢の外国人がカメラを構えるなかに、「日本人の花見客だって少なからずいる」という感覚である。

 インバウンド拡大に向けて、桜も日本を代表する魅力の1つとして海外に発信してきた効果が、ようやく実を結び、今、開花しているようだった。

 会社の事務所は、この上野公園と秋葉原の中間地点にある。このため、多くの外国人を見かけるのだが、先日、秋葉原に近い自動販売機で缶コーヒーを買った。この辺りはお昼になると、大型の観光バスが停まり、中国や台湾の旅行者が押し寄せる中華料理店がある。

 缶コーヒーとお釣りを手にして立ち去ろうとしたとき、背後から自動音声の声がしたので、足が止まった。無機質な音声が発した言葉は「ありがとうございます」でも、「サンキュー」でもなく、「謝謝」だった。

 3月の終わりに、東京・新宿駅に隣接する高速バスターミナルの「バスタ新宿」から房総半島の南端・館山市を訪れた。ちょうど1年前に開業した「バスタ新宿」には関心があったが、利用したのは初めてだった。

 ここでも外国人の多さが目に付いた。大きなスーツケースを引きずりながら歩く外国人観光客は、バスの出発方面と時刻が書かれた看板、スマートフォンを交互に眺めながら、楽しそうにおしゃべりをしていた。

 海外を旅行するときは、鉄道よりも高速バスでの移動の方がラクに感じることがある。日本でも外国人旅行者を見据え、快適性を追求するバス会社も増えている。岩手県北自動車などを有するみちのりグループは4月下旬から、東北や北関東エリアで移動中もつながるフリーWi―Fiサービスを貸切バス328台に提供していく予定だ。

 バスタ新宿は、東京の主要駅・新宿駅と直結しており、多言語での案内も充実している。待合室の中央にはインフォメーションセンターがあり、案内係も待機している。東京だけでなく、地方に行きたい外国人旅行者には心強く感じられるだろうと思った。

 この春休みに倅が「青春18きっぷ」を利用して、兵庫県の城崎温泉に1人旅をした。「なぜ城崎温泉に?」と聞くと、数年前に家族旅行したときに、「温泉街の雰囲気がすごく気に入ったから」という理由だそうだ。

 高齢の客ばかりが目立つ温泉地が多いなか、若い世代にも魅力的に映る温泉地は日本に幾つあるのだろう、と考えていた。すると、旅先の倅から見知らぬ青年と並んだ写真が送られて来た。「ベトナム系アメリカ人と閉店間際の居酒屋で意気投合して湯めぐりもしてきた」とメッセージ付きだった。

 城崎温泉は、若い外国人も強く魅きつける力があり、当たり前のように世界中の旅人同士が交流する場にもなっているのだ。1面で登場した全旅連青年部の西村総一郎部長は奇しくも城崎温泉出身。まさに、政策の柱となる「変わらないために変わる」という言葉を体現している温泉地である。時代の流れと “付かず離れず”の関係を続けていくのは、何事であれ至難である。

(編集長・増田 剛)

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