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規制緩和 ― “素人”はボランティアに徹すべき

2016年6月21日
編集部

 現在、「2020年の東京オリンピックに向けて訪日外国人観光客の増加に備えて……」という切り口から、ホテルの客室不足などを理由に「民泊」サービスなど、さまざまな規制緩和が行われているが、現状の訪日外国人の増加と、東京五輪はそこまで大きくリンクしているわけではない。むしろ、円安やビザの緩和などによって海外から訪れやすくなったことの方が大きい。もちろん、2020年のオリンピック開催期間前後は、一時的に大幅にインバウンドが拡大するだろうが、すべての目標や計画を、「2020年」に焦点を定めるのは、あまりに危険な気がする。

 確かに、「オリンピック」は多くの人を熱狂させる“夢のある”一大イベントである。しかし、だからといって「東京五輪に向けた取り組み」ならば、なんとなく素通りが許される空気に、少し違和感を覚える。

 さて、民泊もそうだが、米国の配車サービス最大手ウーバー・テクノロジーズは、トヨタ自動車との提携に加え、フィアット・クライスラー・オートモービルズとの提携交渉を進めているとの報道があった。

 6月10日の朝日新聞の記事では、今後、ライドシェアが進めば自動車業界はクルマが売れなくなるため、「運転手にトヨタのクルマをリース形式で貸す」など、市場動向を先回りした動きが活発化している。また、米国の小売り最大手のウォルマート・ストアーズは、ウーバーの運転手に、食料品や日用品を運んでもらう配送面での提携を行うという。規制緩和されても、強者は先手を打ち、独占化を進める構図が一層際立っている。

 「シェアリング・エコノミー」(共有型経済)の考え方が、世界的な流れとして間もなく日本にも本格導入され、浸透していくだろう。「他人に料理を作ってあげたい人」と「食べたい人」をマッチングする「キッチハイク」というサービスも現れた。「自慢の料理でお金が稼げる」という謳い文句だ。

 宿泊業や運送業、そして料理業界までも、素人であっても利益を得て、商売ができるという仕組みになる。通訳案内士の規制緩和も決まり、観光業界はこれまでに経験したことのない、未知の社会構造へと進んでいくことになる。

 そうなれば、これまでさまざまな規制を受けてきた“プロ”は当然、納得するわけがない。

 シェアリング・エコノミーの社会が本格化しても、旅館やホテル、タクシー、レストランの業態は存在し続ける。では、素人が提供する有償のマッチングサービスと、既存のプロのサービスとの二者択一の際、何を選択の基準とするだろうか。

 例えば、素人だが高い評価を受けて料理を提供する人は、もはや“素人のスターシェフ”である。おかしな感じだが、そうなる。また、規制緩和される通訳案内士の資格を持っているガイドよりも、一生懸命努力している素人のガイドの方が「レベルが高い」ケースも、なかには出てくるかもしれない。

 プロと素人の差は、なにか。仕事に対する責任と覚悟だ。素人のアイドルもいるが、私は素人が醸し出す“ユルさ”にお金を出す気になれない。「素人はお金を取るべきではない」と本心では思っている。「ボランティアに徹しろ」である。プロの凛々しい「覚悟」にお金を払いたい。その意味でも法整備が必要だ。

(編集長・増田 剛)

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