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〈旬刊旅行新聞7月21日号コラム〉印象深い川――観光地には個性溢れるシンボル的存在

2022年7月21日
編集部:増田 剛

2022年7月21日(木) 配信

 本格的な夏を迎え、休日の昼間は暑さのためダラダラと過ごしがち。だが、日が落ちる午後6時ごろから1時間ちょっと、近所の川沿いの小道を歩いている。心身ともにポンコツ状態であるが、「足腰さえ鍛えていれば何とかなる」という勝手な思い込みを胸に、歩き始めた。

 

 この川沿いの小道は、地元の人たちがランニングや、ウオーキングのコースとして活用している。コロナ禍前までは、地元のことを知る時間が少なく、その意思も希薄だった。しかし、休日に川沿いを歩いていると、中学生や高校生、社会人や高齢者、ペット連れの人など老若男女、あらゆる人たちがこの小さな道を行き交っていたことを知った。

 

 コロナ禍で外出制限されていた期間が長かったため、夕方に多くの人が家を出て、老人たちはベンチに座って談笑し、恋人たちが寄り添う姿は新鮮に映る。イタリアの散歩(パッセジャータ)とは少し意味合いが違うが、テレビやスマートフォンを眺めて過ごすことに疲れ、まちを歩くことの価値が再び見直されているのではないかと感じている。

 

 

 海や湖にも癒されるが、常に流れ続ける川の存在は、私のような一介の生活者の淀んだ心も洗い流してくれる。

 

 20代のころ、東京・三鷹市に住んでいたことがある。実力も、お金も、自信も、何も持ってなく、手持無沙汰だったので、三鷹駅近くのボロアパートと、井の頭公園の間を流れる玉川上水沿いを毎日歩いては、ゴールに設定していた公園のベンチに座り、名前も知らない、愛らしい水鳥たちを眺めていた。

 

 

 川が主役の好きな映画の1つに、ブラッド・ピットが出演し、ロバート・レッドフォード監督の「リバー・ランズ・スルー・イット」がある。

 

 アメリカ北西部モンタナ州の自然豊かなブラックフット川が舞台で、フライ・フィッシングが好きな父と2人の息子が激しくも静かな人生の中で、川との関わり合いが大きなテーマとなる作品だ。人間の人生はたかだか数十年で終えるが、川は悠久の時を変わらぬ姿で存在し続ける。

 

 

 旅先でも川は重要な要素となる。今年5月には長良川沿いをバイクで走った。上高地の梓川の清冽さに心が洗われた。そういえば、いつもバイクを走らせているお気に入りのコースも相模川や道志川沿いの道である。

 

 多くの旅館・ホテルは川沿いに建っている。とりわけ印象に残っているのは、和歌山県・川湯温泉に面する大塔川。仙人風呂でも有名だ。先日も訪れた群馬県・四万温泉の四万川も清潔感あふれ、好きな川だ。

 

 福島県・二岐温泉大丸あすなろ荘の渓流露天風呂に接する小さな川も趣深い。同じ福島県・芦ノ牧温泉の丸峰観光ホテルの客室から眺める川の優雅な曲がり具合も素晴らしい。私は滞在中ずっと眺めていた。芭蕉を魅了した最上川も昨夏、旅行新聞バイク部で走り、その雄大さと美しさに感動を覚えた。

 

 兵庫県・城崎温泉の大谿川や、島根県・三朝温泉の三徳川、岐阜県・下呂温泉の飛騨川、長野県・戸倉上山田温泉の千曲川も温泉地にとって無くてはならない中心的な存在だ。郡上八幡の吉田川、飛騨古川の瀬戸川も古き街のシンボルだ。個性溢れる川が流れる観光地で、ゆっくりと涼みたい夏である。

(編集長・増田 剛)

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