2024年7月31日(水)配信
日本旅行業協会(JATA)は7月18日(木)、東京・霞ヶ関の本部で、メディアを対象に記者懇談会を開いた。髙橋広行会長は、旅行業界の完全復活とさらなる成長、発展に向けて、コンプライアンスの取り組みや、旅行業界のあり方、北陸支援などの方策を説明した。小谷野悦光副会長、原優二副会長、酒井淳副会長、蝦名邦晴理事長ら役員が勢ぞろいし、海外旅行の拡大や高付加価値化、協調と共創、休み方改革、人材確保などを重点とし、JATAとして取り組むべき課題と将来像、今後の展開について話した。
髙橋広行会長
□ 「政府と連携して海旅拡大を」
冒頭、髙橋会長は、コンプライアンスについて「2021年以降、旅行業界で、複数の不祥事が発生してしまった。策定した再発防止策を着実に実行することで、旅行業界から不正事案を一掃し、社会的信頼を取り戻すべく、私も先頭に立って真摯に取り組んでいく」と力を込めた。
また、髙橋会長は、旅行業が発展・成長するために重要な5点として、①海外旅行の拡大②高付加価値化③協調と共創④休み方改革⑤人材確保──を挙げた。
「国内・訪日旅行に比べ、回復が鈍い海外旅行は最大の課題。円安や物価高、航空仕入環境などの要因だけではなく、日本人のパスポート所持率が17%となり、先進国でも最低水準であることに危機感を抱いている」と懸念を示した。
「海外留学をする学生が減少しているほか、市場環境と合わなくなったことを理由にこれまで行っていた海外修学旅行を取り止める公立学校など、コロナ禍を経て若い人たちの海外旅行離れが進んでいる」と指摘。
「若者が海外に出なくなることは、国際競争力そのものに関わる問題となる。国を挙げたプロモーションや、成人など一定の年齢に達した際にパスポートを無償提供するような施策も必要では」との考えを示した。
さらに、政府が発表した24年の「骨太の方針」において、「アウトバウンドに力を入れることを明記していただいた。政府と連携しながら海外旅行拡大に向け取り組みを進めていきたい」と話した。
休み方改革については「平日に泊まろう! キャンペーン」や、愛知県など一部の自治体で行われている平日の休み推進の取り組みなどで、旅行総需要の拡大をはかり、オーバーツーリズムの解消につなげる。
能登半島地震への復興支援として、義援金寄付や、北陸4県商談会を、日本観光振興協会と継続して行っていくほか、ボランティア活動や、ツーリズムEXPO2024に北陸応援コーナーを設置、日観振と共同で「行こうよ! 北陸」CPなどに取り組む方針。
7月18日(木)、JATA本部で
□ 国内旅行 代売脱却し価値創出
小谷野悦光副会長
小谷野悦光副会長(日本旅行社長)は、国内旅行について分析した。
国内旅行マーケットは、コロナ禍を経て国内の宿泊需要は日本人、インバウンドともに着実に回復している。宿泊単価が上昇したこともあり、国内旅行消費額もコロナ前を上回っている。
一方で、マーケットの回復状況に比べて、旅行会社の取り扱いは回復していない。店舗展開の縮小・廃止や、OTA(オンライン旅行会社)や運輸機関の直販の加速などが影響し、旅行会社の取り扱いはマーケットの伸びを捕捉できていない。
小谷野副会長は、「『代売』から脱却した『価値ある商品の企画・販売』『地域の皆様とも連携した発着双方の視点での需要創出・価値創出』を目指す必要がある」と指摘した。
23年12月に運用を始めた「観光産業共通プラットフォーム」は、24年1月1日に発生した能登半島地震においても、災害時情報集約機能を活用し、宿泊施設の被害状況を旅行会社各社に情報提供した。
7月10日時点の利用者数は、宿泊施設6129施設、旅行会社96社、自治体・DMO・観光関係団体など19組織。
7月には宿泊施設情報に「バリアフリー」項目を追加した。このほか、旅行会社各社が企画書やホームページで利用できる宿泊施設の「画像」提供機能を新しく設置した。
□ 海外旅行 RTA利用者増目指す
酒井淳副会長
主要43社海外旅行取扱高(観光庁まとめ)は、24年1─5月で4722億2770万円となった。23年比では165・0%である一方で、19年比では60・6%と、未だ6割程度の回復に留まっている。
海外旅行担当の酒井淳副会長(阪急交通社社長)は、「24年度は海外旅行の完全復活元年と位置づけている。2国間交流を推進するほか、ファムツアーや研修ツアーの積極的な実施、商談会などを通じて、デスティネーションを知ることの重要性を再認識していただきたい」と話した。
「今後の海外旅行の回復率に比例して、リアルエージェントの利用者がどれだけ増えるかにかかっている。旅行会社の価値を消費者に伝えていくことも重要だ」と力を込めた。
□ 訪日旅行 急回復に伴う課題解決
百木田康二委員長
訪日旅行推進委員会の百木田康二委員長(東武トップツアーズ社長)は、都道府県別の訪日外国人回復状況(24年1~4月累計延べ宿泊者数)について、23年比平均で66%増、19年比平均で28%増となったと報告した。「回復率には地方でばらつきがあり、オーバーツーリズム対策と一口に言っても一様ではない。平準化のために、地方への誘客が喫緊の課題である」という認識を示した。
JATAが実施した「インバウンド旅行客受入拡大に向けた意識調査」の観光事業者の回答を見ると、訪日旅行の急回復による現在の課題として「人手不足や人材不足」「2次交通の整備不足」「外国語対応スタッフの雇用」「通訳案内士不足」「国際線地方路線の復便の遅れ」「主要都市から地方へのアクセスが不十分」などが挙げられた。
将来の課題については、「2次交通の整備」が10%増と、とくに伸びている。
JATAの地方分散化の取り組みとして、農林水産省や環境省、地方自治体と協力するほか、訪日インバウンド事業者向けのテーマ別セミナーで、地方誘客をテーマとしたセミナーを開催している。「地方分散化は、地方における消費額拡大とオーバーツーリズムの解消につながる。また、地方誘客を促進することで、地方空港における海外直行便の回復が期待される。これは日本人の海外旅行促進にも密接に関わる課題のため、自治体やJATAの海外旅行推進委員会とも協力して進めていく」とした。
さらに、SDGs推進に向け、JATAが運営する「ツアーオペレーター品質認証制度」の認証取得を推奨している。24年のツアーオペレーター品質認証制度認証会社は、計44社。
□協調と共創
JATAビジネスマッチングサイトについて原優二副会長(風の旅行社社長)は、「訪日系の協業募集やDX系のシステム紹介に人気が集まっている。累計PV数も平均セッション時間も好調。いかに数値を落とさず高水準を維持できるか。継続的な新規掲載が必要だ」とした。
今後は申し込み数や、成約案件数増加を目指し、アップデートを実施する考え。
□サステナビリティ
社会貢献委員会の美甘小竹委員長(フィンコーポレーション社長)は、第2回「JATASDGsアワード」の結果から、旅行業界が推進すべきSDGsの事例について解説した。
原優二副会長(左)、美甘小竹委員長(右)
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