領土問題の影響注視、韓国の福島渡航緩和に期待

 観光庁の井手憲文長官は8月17日の会見で、韓国外交通商部から7月23日に発表された福島県への渡航情報の緩和について言及し、これを契機に震災後、回復が遅れている韓国人訪日観光の早期持ち直しに期待をにじませた。

 今後の韓国人訪日観光の対策として、九州・関西・北海道エリアを中心とした商品販売促進、LCCの共同キャンペーン実施、テーマ性がある旅行情報の発信に尽力していく方針を決めた。

 また、12年7月の訪日外客数に触れ、東南アジアの好調さについて「とくにタイは毎月記録を更新する勢いを見せており、日本は幅広い層で人気のデスティネーションとなっている。引き続き東南アジアはビザの緩和も視野に入れて、集客をはかっていきたい」と語った。

 一方、中国と韓国との領土問題は「観光は平和へのパスポート。外交と関係なく、観光が活発になるように期待している」と話した。同庁が行っているモニタリングによると、会見時点で訪日旅行の目立ったキャンセルはないが、引き続き注視していく。

 さらに、8月2日に発生した高速ツアーバスの事故に関して「7月20日に適用された交替運転者配置基準の1つとして、1人の運転者の乗務時間が10時間を超えないよう義務付けを行っていた。しかし、事故を起こしたバス会社はこれを順守していなかった」と原因を挙げたうえで、今後の措置として、すべての旅行会社に緊急対策の申請を行い、安全確保に向けて再徹底を行っていく方針を固めた。 

SDA賞に入選

ホテル旅館の「安全の手引き」

 国際観光施設協会のホテル都市分科会避難絵図研究グループで開発を推進してきた「ホテル・旅館のための安全の手引き」が2012年度SDA賞に入選した。

 SDA賞は日本サインデザイン協会が毎年主催する日本で最も伝統のある総合的サインデザイン賞。今年はその第46回にあたり、B―2類「システムサイン」部門で19点におよぶ入選作の1つとして選ばれた。

 今回は全国から254点の応募があり、入選作である2次審査対象作品は145点。入選作の多くが個別施設でのサイン計画であるのに対し、「安全の手引き」は広くホテル・旅館への普及を目的とした特異な作品事例として注目を集めた。

 11年6月にはサンプル400部を作成し、全日本シティホテル連盟の協力で広報活動を行った。1次募集では2554室、2次では2945室の採用があり、全国31ホテル、合計5499室分の「安全の手引き」と「避難絵図」が普及した。

 7月末から動画サイトYouTubeで「安全の手引き」の動画版を配信している。パワーポイントを活用したピクトグラムによるアニメーションで、自動音声を付けた120秒ほどの動画。客室のテレビで「安全の手引き」を放送することで、より一層注目してもらうのが狙い。「今後は動画の反響を確かめ、さらに改善を加えていく」(同研究グループ)という。 

地熱対策特別委員会開く

 日本温泉協会(廣川允彦会長)は8月10日、東京都内の八重洲倶楽部で、地熱対策特別委員会を開いた。今回は環境省や関連団体も出席し、意見交換を行った。そのなかで無秩序な地熱発電に改めて反対したうえで、開発側には電力確保と温泉資源保護の2つの公益が共存する必要があることを強調した。

 同協会では再生可能エネルギーとして注目されはじめた地熱発電が、温泉地周辺の自然環境や既存の温泉源、温泉文化に悪影響を及ぼす恐れがあるため、反対の意思を表明してきた。

 冒頭で佐藤好億委員長は「今日まで培われてきた日本の温泉文化が、地熱発電によって脅かされている。とくに温泉の枯渇、成分分析の変更等に影響があるのではないかと危惧されている。皆様の力を借りるなかで、今後のことについて話し合っていきたい」とあいさつした。

 議題には無秩序な地熱発電開発に反対する内容の決議文や、福島県の地熱反対運動の支援などが挙げられ、出席者が意見を出し合った。決議文には全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会をはじめとした関連団体も賛同した。

 日本自然保護協会の辻村千尋保護プロジェクト部常務理事は「地熱に反対しているということは、原子力発電に賛成していると市民は誤解してしまう。それをどう変えていくかが焦点になっている」と述べた。

 また、理学博士でもある甘露寺泰雄地熱対策特別委員は「自然のものなので、過剰採取を証明するのは難しいが、定期的な源泉の温度と量の調査が大きなカギになる」と提言した。

 今後は地域主義を念頭に置きながら、「無秩序な地熱開発」を回避するための5項目の条件内容をより明確にしていく。

 なお、8月29日に環境省で「自然環境の保全と調和した地熱開発のための検討会議」が開かれ、自然保護団体や温泉事業者など保護サイドのヒアリングが行われた。 

地域・顧客密着型の“おもてなし”経営

9月4日、東京でフォーラム開く

 経済産業省サービス政策課は9月4日の午後2時から、東京都千代田区の東京商工会議所国際会議場で「おもてなし経営推進フォーラム」を開く。「おもてなし経営」を実践しているネッツトヨタ南国取締役相談役の横田英毅氏と、でんかのヤマグチ社長の山口勉氏が登壇し、人と経営研究所所長の大久保寛司氏がファシリテーターを務める。参加予定者数は250人(先着順)。

 現在、サービス事業者を取り巻く環境は、価格競争の激化などによって悪化している。しかし、地域の中小規模のサービス事業者のなかには、徹底した地域・顧客密着型の経営を行うことで高収益を上げている企業が存在している。同省はこうした地域・顧客密着型の企業経営を「おもてなし経営」と定義。(1)従業員の意欲と能力を最大限に引き出し、(2)地域・社会との関わりを大切にしながら、(3)顧客に対して高付加価値・差別化サービスを提供する経営――を地域のサービス事業者が目指すビジネスモデルの1つとして広めていくことを目指す。さらに、「おもてなし経営企業」を応募型で選出し、悩みを抱える中小サービス事業者に対して経営改革のヒントを提供する事業も計画している。

 訪日外国人の顧客として「おもてなし経営」を実践している事例については、クールジャパンの一環として国内外に発信し、日本的サービスの魅力を再発見する契機としたい考え。

 同省は、9月4日の東京でのフォーラムからスタートし、全国各地で「おもてなし経営推進フォーラム」を開く予定だ。

 問い合わせ=経済産業省サービス政策課 電話:03(3580)3922。 

近ツー、クラツー来年1月統合

(左から)岡本邦夫CT社長、吉川勝久KNT社長、戸川和良近畿日本鉄道副社長
(左から)岡本邦夫CT社長、
吉川勝久KNT社長、戸川和良近畿日本鉄道副社長

KNT―CTホールディングスに

 近畿日本ツーリスト(KNT、吉川勝久社長)とクラブツーリズム(CT、岡本邦夫社長)の両社は8月10日、取締役会を開き、来年1月1日に経営統合することを決めた。2004年、KNTからクラブツーリズムが分離・独立して8年、元の鞘に収まるかたちだが、強固な会員組織をベースにメディア型旅行会社に成長したCTと、黒字体質を確保し、総合旅行会社として強力な営業力、販売力を有するKNTが統合することで、旅行業の新たなビジネスモデルの構築とともに、シナジー効果を求めていく。

【増田 剛】

 統合に向けては、クラブツーリズムの普通株式1株に対して、KNTの普通株式8500株を割り当てる。KNTは株式交換により約1億6055万株を公布する。近畿日本鉄道はKNTに対する所有割合が12・0%から58・5%となり、これによってKNTは近畿日本鉄道の関連会社から子会社となる。

 また、KNTは持ち株会社に移行して社名をKNT―CTホールディングスに変更する。代表取締役社長には近畿日本鉄道取締役副社長の戸川和良氏が就任、KNTの吉川社長が同社の代表取締役会長となる。クラブツーリズムの岡本社長は代表取締役に就任。

近ツー、クラツー来年1月統合

 KNT―CTホールディングスの下には、クラブツーリズムと、KNT団体(商号未定)、NKT個人(同)の3社を100%子会社として設立する。クラブツーリズムは岡本氏が引き続き社長を継続するほか、KNT個人の社長も兼務する。KNT団体の社長にはKNT常務の小川亘氏が就任する予定。KNTツーリストは、「KNT個人」の100%子会社になるが、そのほか30数社の子会社は同ホールディングスの直接の子会社になる。

 統合前の経営状況(12年度見通し)は、KNT(連結)は営業収益626億円、クラブツーリズム(単体)は220億円。単純合算で846億円となるが、統合5年後の17年度には900億円に目標を設定した。営業利益はKNTが26億円、クラブツーリズムが31億円で合算すると57億円。17年度には85億円を目指す。

 8月20日に、東京都内のホテルで会見し、近畿日本鉄道の戸川副社長は「近鉄グループで旅行業が中核事業になるなかで、08年にクラブツーリズムを買い戻したときには、KNTとの統合は選択肢の一つにあったが、当時はその環境にはなかった。しかし、KNTも収益改善を達成し、8年間それぞれが歩んだ道が一緒になることで大きなシナジーが期待できる状況になった」と説明。統合によるメリットとしてKNTの吉川社長は(1)KNT新会員組織へのクラブツーリズムのノウハウ活用による個人旅行事業の収益向上(2)クラブツーリズムの新規顧客の拡大施策としてKNTブランド力・店舗の活用――などをあげた。また、ホールディングスによる経営戦略機能の強化では、(1)両社広報支援部隊の業務の標準化、共通化によるコストの圧縮(2)事業や人員の「選択と集中」による事業構造改革などをあげ、「クラブツーリズムはSIT(目的型旅行)に優れ、我われKNTは着地型旅行に積極的に取り組んでおり、双方を結びつける新しい観光地の発掘、物語をつくることが可能。また、KNTが持つ海外の拠点とクラブツーリズムの連携も考えられる。統合シナジーにより、他社グループにない旅行事業の新たなビジネスモデルを構築したい」と強調した。

 クラブツーリズムの岡本社長は「シニア層に特化してきたが、今後さらに高齢化が進めば、〝ネクストシニア〟という新たな層の取り込みが必要。KNTの個人旅行の顧客からクラブツーリズムに移行できる仕組みをつくっていきたい」と語った。

No.319 旅館の分煙対策 - 実施施設は8割以上

旅館の分煙対策
実施施設は8割以上

2002年の健康増進法の施行から、公共の場所での禁煙や分煙が進んできた。同法では、多数の人が利用する施設の管理者に、タバコの受動喫煙を防止するための必要な措置を要求しているが、同時に、「喫煙者と非喫煙者をあくまで対等の対場において進めなければならない」など喫煙者側への配慮も併記しており、両者が快適に過ごせる環境づくりが求められている。宿泊施設でも利用客から分煙を望む声が増えている一方、旅館はホテルのような対策が取りづらい面もある。旅館の分煙への取り組みの現状を探った。

【飯塚 小牧】

両者への配慮で苦悩
実施無しは「できない」実情

本紙が旅館を対象に、分煙対策の実施の有無を尋ねたアンケートによると、34施設中「館内禁煙・分煙を実施している」と答えた施設は29施設と8割以上となった。ほとんどの施設は部分的な禁煙や分煙の実施で、館内を完全禁煙としている施設は4施設という結果だった。

 

※ 詳細は本紙1473号または9月6日以降日経テレコン21でお読みいただけます。

東北旅行雑感 ― 宿の「温かみ」を再考(9/1付)

  この夏、東北に行ってきた。東日本大震災が起こる前、家族で東北旅行に行ったのだが、自然の美しさや、時間のゆるやかさ、田園風景のやさしさ、出会った人たちの温かさなどが忘れられずに、再び東北を訪れた。

 遠刈田温泉、蔵王温泉、鳴子温泉、玉川温泉、後生掛温泉、蒸ノ湯など、東北を代表する幾つかの素晴らしい温泉を堪能し、改めて東北と温泉文化のつながりの深さを知った。

 津波の被災地も辿った。震災から1年半が経とうとするなか、未だ復興どころか、被災した建物がそのままになっているところも多く散見された。日本は内陸部でない限り、どの地域にも津波の危険性はある。津波が押し寄せた場合、「どこに逃げたらいいのか」の答えは、被災地の何もかもがなくなった更地に佇めば分かる。しかし、私たちが訪れた陸前高田市の「奇跡の一本松」の付近には、安全な高台が近くにはなく、高齢者などは逃げることが不可能だったのではないかと思う。全国の市町村の首長、議会の議員、まちづくりや、防災関係の担当者の方々には、ぜひ被災地を訪れ、今後いつ訪れるか分からない津波などの対策を考えるきっかけにしてほしいと思う。

 今回の旅行では、東北の湯治宿に幾つか泊まった。以前、現代の旅行者の視線から外れてしまったボロ宿に泊まることで、「旅館の本質を問いたい」と書いたが、想像以上に新鮮な世界が見えてきた。

 古い木造建築の湯治宿の食堂で、あまり期待もせずに夕食を食べたのであるが、手作りの料理の美味しさに感動すら覚えた。前日まで2連泊した大型旅館の料理の酷さと比べていたのかもしれない。その大型旅館は初日と2日目の夕食メニューを変えていたが、2日目は「ベンチの控え選手」というような代物だった。連泊客の心理としては、むしろ2日目の方に何か新しいメニューがあれば、好印象を受け、再訪したいと思わせるものなのに、少々残念だった。

 建物は古かったが、湯治宿の料理の方が、温かみがあった。宿を訪れた遠方の旅人に、温かい作りたての料理でもてなすという宿の真髄が、守られていた。最先端のスタイルはカッコイイ。だけど、古くから残る宿の「温かみ」を再考するのも大切だ。湯治宿には、若き旅館経営者にも学ぶべきものが多いと思う。

(編集長・増田 剛)

JCSⅠ(日本版顧客満足度指数)帝国ホテルが1位に、ビジネスホテルはドーミーイン

 サービス産業生産性協議会(代表幹事=秋草直之富士通相談役)はこのほど、シティホテルやビジネスホテルなど8業種・業態における「JCSI」(日本版顧客満足度指数)を発表した。これによると、シティホテル部門では帝国ホテルが1位に、ビジネスホテル部門ではドーミーインがトップとなった。

 JCSIは、同協議会が業種・業態横断での比較・分析が可能な顧客満足度指数を開発し、2009年度から発表している。総計10万人以上の利用者からの回答を収集し、幅広い産業をカバーした国内最大級の顧客満足度調査。年間32業種・業態、約400企業・ブランドの調査を年4回に分けて実施している。「顧客の評価を起点とした業種・業態を超えた競争」を促すことで、より高い付加価値や顧客満足を高める経営が日本全体に広がり、日本企業の成長と国際競争力の強化に役立つことが狙い。今回は、コンビニエンスストア、衣料品専門店、シティホテル、ビジネスホテル、飲食、カフェ、携帯電話、宅配便の8業種・業態において90企業・ブランドを調査し満足度を算出した。

 シティホテル部門では、顧客期待、知覚品質でトップとなった帝国ホテルが4年連続1位。2位はザ・リッツカールトン、3位はオークラ、4位はロイヤルパーク、5位はハイアットの順。

 ビジネスホテル部門ではドーミーインが前回1位のリッチモンドと順位を入れ替えトップとなった。3位はスーパーホテル、4位はコンフォートとなった。

 コンビニエンスストア部門の1位はセイコーマート、2位はセブン―イレブン、3位はローソンの順。衣料品専門店部門は1位が西松屋、2位はハニーズ、3位はローリーズファーム、4位はGAPとなった。

 飲料部門の〈ファストフード店(丼・麺・カレーを含む)〉は1位は丸亀製麺、2位は幸楽苑となり、モスバーガー、はなまるうどんが同点で3位。〈レストランチェーン〉の1位はスシロー、2位は木曽路、3位はくら寿司、4位はサイゼリヤ。

 カフェ部門の1位はコメダ珈琲店、2位はカフェ・ベローチェ。携帯電話部門の1位はau、2位はウィルコム。宅配便部門では、1位はヤマト運輸、2位は福山通運。

 なお、11年度の業種・業態横断での顧客満足度上位ランキングでは、1位は劇団四季、2位は東京ディズニーリゾートで、帝国ホテルは7位だった。 

世界で「日本食」人気、伊、仏に次いで3位に

 オンラインホテル予約サイト「ホテルズドットコム」(デイビット ロシェ社長、本社・米国テキサス州)はこのほど、世界約2万7千人を対象に「グローバルフード」についてアンケート調査を実施。旅行先のローカルフードが一番美味しいと思う国では、「日本食」は3位に選ばれた。

 1位はイタリア(32%)、2位はフランス(24%)、3位は日本(18%)がランクされた。イタリアンやフレンチなど伝統的な料理が長く旅行者に好まれているなかで、海外でも提供される機会が増えた日本食が人気を集めた結果となった。「日本食」が好きと回答した人に、何が好きかと聞くと、寿司、天ぷら、ラーメン、蕎麦の人気が高かった。

 4位は中国(13%)、5位はスペイン(11%)、6位は米国(10%)、7位はメキシコ(8%)、8位はタイ(8%)、9位は台湾(5%)、10位はインド(5%)の順。

 また、日本人(1057人)に「誰かに3つ日本食を薦めるなら何?」(複数回答)の質問では、寿司(74%)が1位。次いで(2)天ぷら(57%)(3)ラーメン(33%)(4)蕎麦(31%)(5)お好み焼き(27%)(6)しゃぶしゃぶ(24%)(7)カレー(14%)――などが上位を占めた。 

「モノ」から「経験」消費へ、シニア層が堅調な伸び

黒須宏志主任研究員
黒須宏志主任研究員

 日本交通公社が7月24日に東京都中央区のベルサール八重洲で開いた第17回海外旅行動向シンポジウムで、日本交通公社主任研究員の黒須宏志氏がマーケットの最新動向と将来のシナリオについて解説した。

 好調な海外旅行者数の推移を受け、リーマンショック後から震災前までと震災後から12年4月までに分け、性別・年代別の出国率や寄与度を紹介し、どの年代も高い伸び率を示していることを紹介した。なかでも20代女性の出国率の高さをあげ、黒須氏は「韓国のウォン安の影響が大きい」と語り、「人口減少で頭数が減るのは当たり前。それよりも意識がどう変化しているのかを見ていくことが大切」と語った。

 航空需給ではアウトバウンドが震災後の6月にプラスに戻ったことを紹介し、「アウトバウンドの息切れが起きなければ、インバウンドも伸びるだろう」と話した。

 90年代以降のレジャー消費動向は、レジャー全体での消費額は変わっていないが、選択的投資型余暇の傾向が強まっていることを紹介。「同じ金額だがよりお得感がある」「同じ財サービスが前より割安な価格で手に入る」など消費にデフレメリットの実感を求める傾向や、生活の質に対する関心が高まり、サイクリングやクッキング、ウォーキングなどの日常的な活動のレジャー選好、使えるお金は限られるので参加するレジャーを絞り込み、より好きなことに時間とお金をかける傾向などをあげた。

 震災後の価値観変化では、モノ消費(浪費)から経験消費(蓄積)への移行、他人や社会に役立つお金と時間の使い方をしたいとの思いや、自分に対する投資、自分の時間を大切にする傾向を紹介した。

 また、インサイト・JTBレポート・abRoadの動向を紹介し、(1)休暇・観光需要、ビジネス需要はともに好調(2)FITシフトはあるがフルパッケージも横ばい(3)オンラインシフトが進み、旅行会社利用率は少しずつ減少(4)間際化は海旅ではさほど顕著ではない(5)泊数、単価にプラスの傾向⑥地方マーケットに勢いあり――などと話した。

 黒須氏は今後のシナリオも予測し、航空座席の需給状況は、空港容量に余裕があり、マーケットの成長余力とロードファクターの上昇余地、座席供給量の伸びしろがあり、LCCによる新規需要創出へ期待できるとみている。

 短期的視点としては、(1)11年に震災で旅行を見送った人達が戻ってくるシニア層の旅行頻度上昇、(2)ビジネス需要の上乗せについて話し、「震災からの反動要素は12年前半でほぼ出つくし、7、8月の動向が今後の成長力の試金石となる」と語った。

 また、中期的視点としては、(1)円高で高まった旅行モチベーションの継続(2)団塊世代が65歳を過ぎる14年までのシニア層の堅調な伸び(3)海外赴任の増加によるVFR需要の底上げ効果を紹介し、ポイントの1つに「若年層をどこまで伸ばせるか」をあげた。