隠れた恋愛スポット?

 学問の神「孔子」を祀った「多久聖廟」で知られる佐賀県多久市。「孔子の里」とも呼ばれるこの町では、ここ最近、愛情や恋愛をキーワードにしたグッズが登場し、にわかに注目を集めている。

 聖廟そばの物産館「朋来庵」では、論語の一文などをハート型にデザインしたTシャツや缶バッジなどが人気だ。また、この9月には「孔子らすく」も登場。高級ホテル食パンを使用したラスクで、パッケージをよく見ると名称の「ら」の横に小さく「ぶ」と書かれている。つまりは「ラブ」なラスクというわけだ。

 ちなみに、多久市のご当地キャラ「多久翁さん」のお尻にはハートマークが描かれており、それに触れると恋愛運がアップするのだとか。

 学問と恋愛の両方を求める方はご一考あれ。

【塩野 俊誉】

「14年下期は計画通り」、メディア関係者と懇親会(KNT―CTホールディングス)

(左から)小山社長、吉川会長、戸川社長、岡本社長、小川社長
(左から)小山社長、吉川会長、戸川社長、岡本社長、小川社長

 KNT―CTホールディングス(戸川和良社長)は9月8日、同グループ役員とメディア関係者向けの懇親会を開き、グループ各社トップが、現在の方針や今後の方向性を語った。戸川社長は2014年度下期について「利益ベースでは計画通りに推移している。今年の業績見通しは目標達成ができそうだが、各社の業績に濃淡がある」と述べた。

 団体旅行事業については、教育旅行・MICE・スポーツ部門を柱に堅調に推移しており、「20年の東京オリンピックの追い風も期待できる」としたが、個人旅行事業は、「大きな課題を抱えている」として、商品改革・店舗改革・人材教育に注力することを強調し、「強い体質になるためには避けて通れぬ道」と語った。クラブツーリズムは売上1600億円を達成した昨年に引き続き好調で、「宇宙旅行の会社を設立するなど先を見据えた経営を始めている」と期待を高めた。

 各社統合のシナジー効果は、それぞれの商品の相互販売・チャーターの共同販売などで、シナジーとしての売上高は今年度上期だけで14億円と好調に推移している。

 吉川勝久会長は、業界全体への提案として「国内旅行と訪日旅行の一体化」と「女性の活躍」の2点をテーマに挙げた。一体化については「安倍首相が掲げる地方創生に旅行業界が連動して何ができるかについて訪日旅行とともに考え、JATAで近々ワーキングを立ち上げる」と述べた。「女性の活躍」については、「『自分にご褒美』の旅行に行く女性が多く、女性が職場で活躍すると旅行の需要が拡大する」と予測し、女性管理職の拡大を訴えた。

 <近畿日本ツーリスト>
 団体旅行について小川亘社長は、「教育旅行のシェアが43%、MICE事業が47%を占めており、スポーツ事業も昨年10月―今年7月まで前年超え」と好調に伸びていることを報告。現在、BtoBに特化した事業を進めており、研修やインセンティブなど「レジャーではない利用客」で、同社の売上の10%を占める。将来的には20%に伸ばし、安定した経営を目指すとした。教育旅行は、少子化のなかで修学旅行外での顧客獲得を狙い、インターハイや春高バレーなどの大型イベントに注目している。

 新規事業としては、女性が活躍する社会作り貢献として、「産前産後ケア推進協会」とタイアップし、「産後ケア&レスパイト事業」を進めている。産後3―8カ月の母親と赤ちゃんを対象に、助産師による心身ケアや子育ての悩み相談、子育てのアドバイスなどを行う。現在、大手企業を中心に好調という。

 <KNT個人旅行>
 岡本邦夫社長は、10月1日から子会社の近畿日本ツーリスト個人旅行との統合について「店舗販売と作成側が物理的に離れているうえに、会社も分かれていると、作成側の意図がお客様に伝わらない」と答えた。製販一体で組織を強化し、余裕ができた部分をインターネット・インバウンド分野に充てていく。今後は「ウェブファースト」で事業を進め、現在15%のメイト・ホリデイのウェブ販売比率を22%まで増やす。

 店舗販売も転換期を迎えているとし、「インターネットに流れたお客様を取り戻すために店舗を専門店化し、納得していただける応対をする」と決意を述べた。店舗の転換については、有楽町とあべのハルカスの専門店には遠方からの来客など好調で、岡本社長は「お店づくりを変えればお客様も変わる」と期待を寄せた。

 <クラブツーリズム>
 小山佳延社長は、訪日外国人向けのツアーに日本人向けツアーを取り入れる混乗ツアーを紹介した。全国に発着ゲートを多く持っておりコースも多様で、「今ある資源を活用してインバウンドを増やしていくバスツアーだ」と強調した。旅行の志向がこれまでの顧客層と違う「自分の趣味を持つ」団塊世代にシフトしてくるので、それに合わせて間口を広げて多様なテーマのツアーを展開することをアピールした。

「おもてなし」とは?、瀬戸川氏と女将が探る

(左から)瀬戸川さん、小林さん、深澤さん
(左から)瀬戸川さん、小林さん、深澤さん

 第16回グルメ&ダイニングスタイルショーが9月3―5日まで、東京ビッグサイトで開かれた。初日の3日には「旅館の食とおもてなし」をテーマに、本紙で「女将のこえ」を連載するジャーナリストの瀬戸川礼子さんと、長野県上林温泉「塵表閣本店」女将の小林美知子さん、神奈川県湯河原温泉の「料亭小宿ふかざわ」女将の深澤里奈子さんの3人によるトークショーが行われた。

 おもてなしについて、小林さんは「口に出して表すものではないし、定義があるものでもない。自分の真心を精一杯務め上げることがおもてなしだと思っている」と語った。また、「おもてなしをするにはこのようなあいさつが必要とか、おじぎの角度などを強要したり、されたりするのは好きではない。日本の良さはさりげなさ。お客様が自然にくみ取ってくれて、それでいて自然にしてくれているのがおもてなしだと思っている」と話した。

 深澤さんは「若いスタッフには『おもてなしは、表も裏もないくらい自然体で人と感じ合うこと』と伝えている。旅館でお客様と接しているときだけでなく、いつでも、誰と接しているときでも、そのままの自分らしさが誠実な状態で出てきたり、表現されることがおもてなしだと思う」と述べた。さらに、「おもてなしは一方通行ではなく、相互通行だと思っている。『宿での滞在を楽しみたい』と思うお客様の気持ちと、日々自らを高めていこうとするスタッフが共鳴し合える関係になったらいいなと思っている」と語った。

 瀬戸川さんは「おもてなしの語源の一つに『持って成す』とあるが、私は真心を持って、より良い人間関係を成すと解釈している」と述べ、「たとえ気づかれなくても、それでもなお『してあげたい』と思う、見返りを求めない心がおもてなしの心。日本はチップがなくても何かをしてあげたいと思う高い精神性を持っている」と話した。

久住高原 レゾネイト、滞在型健康プログラム開発

原田和信レゾネイト社長
原田和信レゾネイト社長

女性・シニア向け商品化、ダイエット・メタボなど改善

 熊本県と大分県にまたがる阿蘇くじゅう国立公園内にある久住高原で、「レゾネイトクラブくじゅう」や「久住高原コテージ」などの宿泊施設とオートビレッジ、乗馬牧場、別荘などを展開するレゾネイト(原田和信社長、大分県竹田市久住町)は、広大な草原と医学的効果の高い炭酸水素塩泉を活用した「心と身体の健康改善滞在型ヘルスツーリズムプログラム」を開発し、具体的な商品化に向け動き出した。

 プログラムは経済産業省の地域資源活用促進法の認定を7月に取得。今後、事業資金900万円のうち3分の2の補助を受け、自社ホームページでのダイレクト販売や企業・団体の健保組合、女性社員などへの新規需要開拓をはかり、5年後に売上高6千万円を目指す。

広大な草原が広がる久住高原
広大な草原が広がる久住高原

 久住高原は阿蘇五岳と久住連山に囲まれた標高700―800メートルにある広大な草原地帯で、湧き出す温泉も、ミネラルや炭酸ガスを多量に含んだ炭酸水素塩泉というすぐれた泉質を持っている。

 ただ問題は「久住高原の持つ地域資源の価値に比べ、評価が低いこと」(原田社長)で、その評価をいかに上げるかが大きな課題だった。

 そこで取り組んだのが乗馬牧場を生かした「乗馬とホテルライフ」の楽しみ。黒沢明監督の「乱」など、映画やドラマで登場する馬の調教で知られる宮本寛氏を招き、初心者から上級者まで、本格的な乗馬が楽しめるようにした。

本格的な乗馬も
本格的な乗馬も

 原田社長は「国内や海外で乗馬を楽しんできた愛好者も、久住の雄大なロケーションとコースに感動する。これで乗馬は売り上げが4割アップした」と胸を張る。

 同社ではこの強みを生かし、温泉や食などを組み合わせたヘルスツーリズムプログラムに着手。今年3月に大分県の助成を受けて、健康モニターツアーを実施した。男女10人が参加し、乗馬やトレッキングなどの運動を行い、温泉保温、美肌入浴を体験。食事は糖質コントロールされた健康ダイエット食が提供された。

 ツアー実施後、参加者全員の「血圧」「血糖値」が適正値となり、体重、体脂肪率、血糖値、血圧、ストレス度も大幅に改善された。

 同社では「プランがダイエットやメタボに効果が発揮されることが実証された」(同)と自信を深め、内容を整備して磨き上げ「滞在型ヘルスツーリズムプログラム」として完成させた。

 プログラムは(1)地元の温泉療法医指導監修による「温泉入浴」(2)日本ダイエット協会監修の「ダイエットメニューと健康低糖スイーツ」の開発(3)健康乗馬ダイエットとアクティビティの開発(4)ホース・森林セラピー――の4つの要素で構成。さまざまなメニューを組み合わせて2泊3日、3泊4日、1週間の3コースを用意する。料金は2泊コースで5万7千円。来年の試験販売を目指す。

 JTBヘルスツーリズム研究所の調査によると、ヘルスツーリズム市場は国内旅行全体の潜在市場規模の4分の1の4兆1300億円といわれる。他の調査では女性のダイエット人口は2435万人、メタボ症候群と予備群は2400万人以上と推計されている。

 原田社長は「メタケイ酸を多く含む温泉は美容効果も高い。温泉をさらに1本掘るとともに、販路開拓では会員企業や健保組合などに働き掛け、海外の富裕層の誘致もはかりたい」と意欲を燃やす。久住・長湯地区の旅館と連携し、地域全体への拡大も模索する。

大小27のセミナー、業界日プログラム決定 (ツーリズムEXPOジャパン)

 日本観光振興協会と日本旅行業協会(JATA)が9月25―28日まで東京ビッグサイト(東京都江東区)で開くツーリズムEXPOジャパンの業界日・26日のプログラムが決定した。JATAの旅博から継承する国際観光フォーラムのほか、各専門分野で役立つ大小さまざまなセミナーを27設置する。

 国際観光フォーラムは、午前10時30分から国連世界観光機関(UNWTO)事務局長のタレブ・リファイ氏が基調講演「旅の力で地域を元気にする」を行う。11時からは基調シンポジウム「オリンピック・パラリンピックを利用した観光振興~2020年以降の日本の姿とは」。モデレーターは首都大学東京教授・観光庁参与の本保芳明氏が務め、パネリストにはリファイ氏と英国政府観光庁会長のクリストファー・ロドリゲス氏、オーストラリア政府観光局本局局長のジョン・オサリバン氏、日本政府観光局(JNTO)理事長の松山良一氏を迎える。

 午後は、各分野に分かれてシンポジウムを行う。午後2時からの「アジア旅行市場分析」の今回のテーマは「成長するアセアン市場」。送り手として急成長し、注目を集めるマレーシアとタイの最新情報と日本の旅行会社のアジア戦略を討議する。並行して行う国内旅行シンポジウムは、「着地型観光による国内旅行需要創造」がテーマ。日本観光振興協会常務理事の丁野朗氏の基調講演のほか、JTB旅行事業本部観光戦略部長の加藤誠氏がモデレーターを務めるパネルディスカッションを行う。

 4時15分からは海外と訪日シンポジウムを開く。海外旅行シンポジウムのテーマは「2000万人を目指すための地方需要活性化の取組み~海外渡航自由化50周年~」。北海道知事の高橋はるみ氏らを招き、地方空港マーケットの可能性や、自治体の戦略をもとに地方需要の掘り起こしと活性化について探る。訪日旅行シンポジウムは、訪日外国人旅行者2千万人を目指すためのオールジャパンの取り組みについて議論する。モデレーターはJNTO統括役の小堀守氏。

 ステージで行う大セミナーは、午前11時30分から「地域自らが来訪者を集める、新しい観光まちづくり~集客の核として機能する日本版DMOとは~」。観光を中心とした地域づくりは、観光マネジメントやマーケティング機能をどのように強化しているかが課題になるなか、日本での可能性を探る。登壇者はDMO推進機構代表理事・NPOグローバルキャンパス理事長の大社充氏ら。

 午後は1時30分から日本添乗サービス協会(TCSA)主催のステージ「ツアーコンダクター・オブ・ザ・イヤー2014表彰式」と学生対象の職業フェアを行う。

 小セミナーの一例は「『障害者差別解消法』とは~旅行会社のバリアフリー対応を考えよう~」。JATAバリアフリー旅行部会長の田中穂積氏が、2016年に施行される「障害者差別解消法」を前に、旅行会社として何ができるか語る。

 このほか、環境省国立公園課課長補佐の長田啓氏による「環境省の挑戦~国立公園、潮風トレイル、佐渡島トキの最新情報を知り、自然環境を活用した旅行商品を作ろう~」など、特色あるセミナーを多数展開する。

「体制整備が必要」、JNTOに業務移管で

観光庁の訪日促進事業

 観光庁の訪日プロモーション事業は、15年度から原則として日本政府観光局(JNTO)が主体となって事業を進めていくことが昨年12月に閣議決定されたが、観光庁の久保成人長官は9月17日に開いた定例会見で、来年度から大部分のビジットジャパン事業とMICE事業の実施主体がJNTOに移管されるうえで、「契約管理や、監査体制などを強化するための整備がJNTO本部に必要であり、海外事務所も契約事務対応や、適切な執行を担保する体制整備が必要」との考えを示した。

 また、「契約マニュアルの整備に加え、マニュアルを身につけるための研修の充実なども観光庁と、JNTOでも検討している」とし、「より効果的に訪日プロモーションが実施できるように、今年4月に外部の専門家も参画して観光庁に設置したマーケティング戦略本部の徹底した活用が不可欠」と述べた。さらに、「(JNTOが)現在進めている多方面の連携強化を今後より具体的に推進していくことも、訪日プロモーション事業の新体制に向けた強化方針になっていくと思う」と語った。

今年3万人見込む、日本人との混乗型が人気

CTの訪日外客向けツアー

 現在、クラブツーリズム(CT)では訪日外国人旅行客向けツアー「YOKOSO Japan Tour(ようこそジャパンツアー)」の利用が増加している。日本人のバスツアーに外国人旅行客も参加する混乗ツアーを今年から本格的に実施しており、昨年1万5千人だった参加者数を今年は3万人を見込む。

 バス旅行で年間250万人を取り扱う同社が全国で展開しているバスツアーに訪日外国人旅行客を取り込むことが狙い。小山佳延社長は「2020年には15万人までに増やしていきたい」と意気込みを語った。

 「YOKOSO Japan Tour(ようこそジャパンツアー)」は、国内で一般に募集しているツアーから訪日外国人向けの商品を選び、年間で500コース以上をインバウンド専用のサイトで案内している。また、メルマガやSNSを使い、100万人以上に情報発信をしている。

 同ツアーの混乗型プランでは、日本人と一緒にツアーを楽しんでもらい、交流を深めることができるので日本人にも人気が高い。海外からの利用者層は、香港・台湾が多く、年齢は30代、男女比は4対6で、家族連れが多い。リピーターも多く、複数のツアーを申し込む利用客もいるという。富士山のほか、フルーツ狩りツアーが人気。リピーターを中心に関西方面も伸びている。

 8月15日には訪日外国人向けに「ようこそジャパンツアー インフォメーションセンター」を西新宿でオープンしており、観光情報の提供・発信をしている。

No.381 橋田壽賀子さん×佐藤幸子委員長 - 旅館は女将で決まる

橋田壽賀子さん×佐藤幸子委員長
旅館は女将で決まる

 9月16日、東京都港区の明治記念館で「全国旅館おかみの集い―第25回全国女将サミット2014東京」が開かれる。今回は25回目の節目の記念大会として、これまでの大会で委員長や役員を経験した女将たちの「プラチナ会」と本会を機に交流が始まった女将・若女将たちの会「つぼみ」が協力して作り上げる。開催を前に、脚本家・橋田壽賀子さんと長年の交友がある今大会の佐藤幸子実行委員長(日本の宿古窯・初代女将)の対談が実現。旅館や女将の在り方について語り合った。

【司会=旅行新聞新社社長・石井 貞徳、構成=飯塚 小牧】

 
 
 
 
 ――橋田先生が手掛けたドラマには女将を題材にした「おんなは度胸」(NHK朝の連続ドラマ・1992年)がありますが、女将を取り上げたきっかけを教えて下さい。

■橋田:旅館を題材に書いてみたいと思ったのです。旅館は人で決まります。それぞれ個性ある人がいて、どう1つの旅館を作るのかということに興味がありました。さまざまな家族関係がありながら、それでも一つの信念を持ってやっていく姿を描きたかったのです。佐藤さんには色々教えていただきました。佐藤さんを見て、「女将さんて、ああいう気の遣い方をするんだ」と、ドラマの参考にもさせていただきました。

■佐藤:旅館の女将を表に出していただいたので、本当にありがたいと思いました。

■橋田:旅館は人と接するおもてなしの仕事で、女将の人柄で決まります。旅館に泊まったときに、女将が気に入ればまた行きますが、気に入らなければ行かないですよね。いい女将がいる旅館は続きます。また、人柄だけではなく、時代をどう上手く生きるかも重要です。

 ――宿は女将ですか。

■橋田:そうですね、“人”ですね。女将がきちんとしていれば、いい従業員がくるし、いい板前がきます。女将がダメなら、すべてがダメになってしまいます。旦那ではなく、女将なのです。働いている人を束ねるのは女将ですから。女将の性格で人が違ってくる、人が違うと経営も違ってくる、ということだと思いますね。旅行から帰って話題になるのは、「お部屋に付いてくれた子はいい子だったわね」ということで、それを教育するのは女将です。ですから、人望がないとダメです。「この女将の為なら死んでもいい」と思ってくれるぐらいの従業員がいないと。今は、なかなかそういう人はいないのかもしれないですが。…

 

※ 詳細は本紙1557号または9月17日以降日経テレコン21でお読みいただけます。

国産畳が急減 ― 天然い草の畳表か 人工の化学表か?

 「畳ワールドin東京」という珍しいイベントが東京・池袋で開かれたので、メモ帳を持って取材に行ってみた。今まで知らなかったが、春の4月29日と秋の9月24日は、年2回の「畳の日」であるとのことだ。春は、畳の原材料である「い草」が田園を緑一面に染めて育つ春の記念日として、秋は冬の衣替えを前に、大掃除を推奨する日として設定されている。

 国内における畳表の年間需要枚数は、1993年には4500万枚あったものが、20年後の2012年には1490万枚と、3分の1まで減少している。この状況に危機感を抱く全国畳産業振興会が「国産畳をおもいっきり満喫してもらおう」と東京でイベントを開いた。

 畳表の材料となる「い草」の栽培も大きく変動している。1955年には岡山県が54・4%でシェア1位を誇った。2位は熊本県の12・5%だったが、2013年には熊本県が全国の96・5%を占め、2位は福岡県の1・4%、3位は沖縄県の1・1%。国内では熊本県が、い草の栽培の圧倒的多数を占めている。畳表の国内生産量の減少とともに、自給率も下がっている。1996年には自給率が70%だったが、近年は輸入の割合が増え国内の自給率は20%強で推移している。

 “い草博士”の異名を持つ北九州市立大学の森田洋教授は、い草の良さとして「色」「足元」「香り」の3つをあげた。い草の黄緑色は視覚的にも安心感を与え、畳の上では靴を脱ぐことにより体感温度を下げる。さらに、森林の香りであるフィトンチッドが多く含まれることも、リラックス効果を増幅させるという。

 このほかにも、畳にはフローリングなどに比べて「吸音性」や「弾力性」が高いことから、柔らかい空間を作ることができる。「吸湿性」や「放湿性」にも優れており、夏は涼しく、冬は暖かい。「抗菌性」も高いと言われる。また、福岡県の学習塾で畳の教室を作ったところ、従来の教室に比べて子供たちの「集中力の持続」に高い効果が表れたことも紹介した。

 一方、カビやダニなどを防ぐ畳表のメンテナンスには、清掃と換気が一番効果的であり、森田教授は「畳の張替え時期は3―5年程度」と話す。

 最近は、天然のい草で編んだものではない、ビニールや合成樹脂など新素材で加工した「化学表」を使用するものも旅館などで多く見られるようになった。色褪せや汚れ、耐久性も強く、清掃も楽であるといったメリットがあるようだ。施設にとっては、機能性を優先させた化学表を選ぶか、それとも天然のい草の畳表を選ぶか。それぞれに一長一短があり、施設の経営哲学に関わる問題である。

 今はさまざまなところで「本物志向」が強くなっているのも事実だ。「高級旅館に泊まったのに、畳が偽物でガッカリした」という声を耳にすることもある。化学表には、どうしても「つくりもの」感が強く支配してしまう。それを嫌い、客室には天然の素材をできるだけ多く使用し、素肌と触れ合う心地よさと素材の持つ温かみで、リラックスできる空間づくりを最優先する宿の経営者もいる。

 森林に囲まれた客室の窓を開けて、吹き抜ける風の匂いを感じながら深呼吸したときに、新しい天然い草の畳の香りが混じり合ったら、少し得した気分になる。

(編集長・増田 剛)

観光関係84%増の180億円、国交省全体で観光に力を(15年度予算概算要求)

 観光庁は8月28日、2015年度予算の概算要求を発表し、観光庁関係では、14年度予算(98億1100万円)に対し、84%増の180億700万円を要求した。全体の予算は10%カット、新しい日本のための優先課題推進枠は30%増までという制約のなか、国土交通省全体では、上限額の前年度予算比17%増を要求。観光庁だけで考えると本来17%増までだが、「省全体の優先枠をまわしてもらったかたちで、省として観光に力を入れている」という。また、「復興枠」には、前年度予算と同額の5億4800万円を盛り込み、総計では同79%増の185億5500万円の要求となった。

 15年度は、「訪日2千万人時代に向けたインバウンド政策の推進」に、同91%増の162億1300万円、「観光地域づくり支援」に同84%増の9億5800万円、「観光産業振興」に同9%増の6600万円、「観光統計の整備」に7%増の4億6千万円、その他(経常事務費等)に同3%増の3億1千万円の要求となった。

 大幅増となった「訪日2千万人時代に向けたインバウンド政策の推進」のうち、優先課題推進枠は117億7600万円。訪日旅行促進事業(ビジット・ジャパン事業)と、国際会議(MICE)の誘致・開催の促進、日本政府観光局(JNTO)運営交付金は合わせて同74%増の146億9300万円。15年度からVJ事業とMICE関連は一部を除いてJNTOが事業の実施主体となることから、訪日旅行促進事業と、国際会議(MICE)の誘致・開催の促進事業は単独では減額となっているが、その分をJNTOの運営費交付金で要求している。ビザ要件緩和を契機とした集中的なプロモーションや、航空路線・クルーズ船寄港拡大と連動したプロモーションなどを行っていく。中国はこれまでの北京・上海・広東に加え、沿岸部や内陸部へのプロモーションを強化していく。

 そのほか、新規事業で広域観光周遊ルート形成促進事業に14億円、ICTを活用した訪日外国人観光動態調査に1億円を要求した。訪日の宿泊は現在65%がゴールデンルートに集中しており、広域観光周遊ルート形成促進事業では、一つひとつの観光地では売っていくのが難しい地域でも、テーマ・ストーリー性を持った一連の魅力ある観光地を、交通アクセスも含めてネットワーク化し、周遊ルートとして発信していく。

 観光地域づくり分野では、優先課題推進枠で新規事業「地域資源を活用した観光地魅力創造事業」に5億円を要求。各省の地域づくり事業と連携し、地域の魅力を磨き上げていく。

 観光産業振興分野では、新規事業で「旅館の経営改善・情報発信促進事業」に3千万円を要求した。前近代的な経営からの改善を促すため、大学と連携し、旅館経営の専門家や行政など産学官のワーキンググループで「旅館経営モデルカリキュラム案」を作成。ケース教材も作成し、社会人コースのような講座を作り、普及していく。また、認知度向上のため、外国人への情報発信に力を入れていく。

 なお、復興枠は前年度予算と同様に「東北地域観光復興対策事業」に1億7500万円、「福島県における観光関連復興支援事業」に3億7400万円を要求した。