2.36倍の245億円に、受入整備や広域観光強化(観光庁16年度予算)

 政府が昨年12月24日に発表した2016年度の観光庁関連予算は前年度比2・36倍の245億4500万円。訪日受入環境整備事業や広域観光周遊ルート形成促進事業の予算が大幅に増強され、急増する訪日客への対応強化が予算のなかに明確に現れた。

 大きく増加した項目は「訪日外国人旅行者受入環境整備緊急対策事業」の80億円(皆増)と、「広域観光周遊ルート形成促進事業」の16億4千万円(前年度比5・4倍)、「産学連携による旅館・ホテルの経営人材育成事業」の3億2200万円(同12・0倍)。復興庁(東北観光復興対策交付金・復興枠)からは「東北地方へのインバウンド推進による観光復興事業」に32億6500万円(皆増)などが計上された。なお、復興庁の特別会計を除いた一般会計としての観光庁関連予算合計は200億1500万円。

 80億円を計上した「訪日外国人旅行者受入環境整備緊急対策事業」では、宿泊施設不足への対応として、旅館のインバウンド対応支援やICTによる生産性向上などを進める。空港や駅などの移動拠点や交通サービスなど、2次交通のインバウンド対応も支援する。また、地方での消費拡大に向けた環境整備として、免税店や観光案内所の強化、通訳ガイドの活用促進にも注力する。

 前年からの「広域観光周遊ルート形成促進事業」は継続して訪日外国人旅行者に訴求するテーマ・ストーリーを持ったルートの形成を促進。観光地域づくりの専門家チームの派遣や世界への情報発信支援も行う。

 「産学連携による旅館・ホテルの経営人材育成事業」は、次世代の観光産業を担う経営者を対象に、実務研修を交えた高度経営人材育成プログラムを全国10カ所(予定)で開催し、宿泊産業全体の活性化を狙う。

 12月18日に発表された15年度補正予算は56億円で、16年度予算と合計で301億4700万円となった。

バリアフリーの事例紹介、東京で研修会開く(バリアフリー旅行ネットワーク)

平森良典氏
平森良典氏

 バリアフリー旅行ネットワーク(平森良典代表理事)は昨年12月10日、東京都内で「第6回バリアフリー旅行研修会IN東京」を開いた。同研修会は2部構成で行われ、第1部では富士レークホテル代表取締役社長の井出泰済氏による「バリアフリー旅行事業の〝高収益化実現〟について」、同ネットワーク代表理事の平森良典氏による「ユニバーサルツーリズムの市場とその取り組み事例」についてプレゼンテーションが行われた。

 富士レークホテルでは1999年に一部屋を改造し、ユニバーサルデザインルームを整備。2008年には23室にまで拡張した。当時は従業員たちが「ユニバーサルツーリズム」に対してスムーズに取り組んでもらえるか不安を抱いていたが、同ホテルは1983(昭和58)年から、精神障がい者の雇用を行っており、職場内にユニバーサル意識が根付いていたことから、抵抗なく導入することができたという。

 導入から約10年間は同ルームの稼働率は50%未満と伸び悩んでいたが、2011年に「第10回内閣府バリアフリー・ユニバーサルデザイン推進功労者表彰」において優良賞を受賞したことで転機が訪れ、現在の同ルームの稼働率は71%となっている。 

 井出氏は独自の統計から同ルームを利用した宿泊者のリーピーター率は46・4%と一般宿泊者(16・2%)の約2・8倍にのぼると報告。また、同ホテルは、ホームページなどで利用客に向けてバリアフリー情報を詳細に示す「情報の見える化」に取り組んでおり、「ユニバーサルデザインの導入には非常に手間ひまがかかる。何よりも一つひとつにおいて従業員の理解が必要である」と語った。

研修会のようす
研修会のようす

 続いて行われた平森氏によるプレゼンテーションでは、冒頭、誰もが安心して外出・国内外旅行を楽しむためには「三位一体(観光・福祉・医療)」の連携が必要になるとし、顧客の声をどれだけ吸収できるかが課題になると述べた。

 その後、さまざまな障がい者や高齢者が、旅行に行くうえで困っていることに対するサポート事例がいくつか紹介された。平森氏は広島県の安芸グランドホテルでは、バリアフリー情報の〝見える化〟として、写真を用いて館内のバリアフリー情報を提供する「フレンドリーMAP」を作成していることを報告し、「それぞれが抱える困りごとがしっかりと〝見える化〟されているかが重要。モノよりも人の連携が必要になる」と伝えた。

 旅行会社や宿泊施設、運輸会社、観光施設のそれぞれができる情報の見える化については、「得意分野の取り扱いの見える化(旅行会社)」「宿生活移動導線の見える化(宿泊施設)」「車両の利用する場所の見える化(運輸会社)」「施設移動導線の見える化(観光施設)」を挙げ、すべてにおいてホームページ上に写真とコメントを入れることが、情報の見える化においては重要だと訴えた。

「見える化プロジェクト」、ホテル天坊(伊香保温泉)でセミナー

旅行新聞新社2月17日開催

 旅行新聞新社は2月17日の午後1時から3時45分まで、群馬県・伊香保温泉「ホテル天坊」で、第1回「見える化プロジェクト」旅館経営研究セミナーと、厨房運営の視察見学会を開く。

 同セミナーでは、電解殺菌装置設置によるノロ食中毒防止の衛生管理と、イノベーション機器採用による労働生産性が飛躍的に改善された調理運営が実践されている、ホテル天坊の伊東實社長の講演「厨房運営と旅館経営」に加え、厨房スタッフによる運営概要と導入前後のパネルディスカッション、厨房視察、見える化プロジェクトのスキーム紹介などを予定している。

 また、同日の午前10時30分から正午まで、午後4時から5時30分まで自由参加の旅館経営懇談会も開く。

 参加費は1人5千円(税別)。昼食希望者には、同ホテルで用意する(別途料金)。また、セミナーと合わせて前泊(16日)、後泊(17日)の場合、セミナーとは別に申込みが必要となる。

 食事会場別に宿泊料金は、「料理茶屋湯の花亭」は3人以上1室1人2万円、2人1室1人2万3千円、「ダイニングルームアスティア」は3人以上1室1人1万5千円、2人1室1人1万7千円、「食事処船尾」は3人以上1室1人1万4千円、2人1室1人1万6千円。1人個室はそれぞれプラス8千円となる。なお、宿泊料金には消費税・入湯税150円は含まれていない。

 また、送迎の希望者にはJR渋川駅往復の送迎バスを用意。迎えはJR渋川駅午後零時15分発、送りはJR渋川駅午後4時20分着。

 申込み・問い合わせ=旅行新聞新社 電話:03(3834)2718。

修旅生を観光大使に

 愛媛県松山市は修学旅行で同市を訪れた小・中学生を「観光大使」に任命する事業をスタートさせた。全国初の取り組みという。

 任命期間は20年。生徒一人ひとりに進呈するオリジナル記念証で、道後温泉本館入浴や松山城天守観覧、坂の上の雲ミュージアム観覧などが本人に限り20年間無料となる。

 松山再訪のきっかけにしてもらったり、SNS(ソーシャルネットワークサービス)など中・高校生の高い情報発信力で口コミを広げようというのが狙い。

 昨年11月に第1号として、8年連続で松山を訪れた愛知県の高校2年生約300人を任命した。

 市では2006年度から修学旅行誘致に本腰を入れ、現在では年間約1万人の生徒が松山を訪れている。

【土橋 孝秀】

“日本が続々選出”、16年に訪れるべき観光地

 日本政府観光局(JNTO、松山良一理事長)はこのほど、ロンリープラネットなど海外大手旅行雑誌などによる「2016年に訪れるべき観光地」に日本が続々と選出されていることを発表した。

 選出は国としてのみならず、「北海道」や「九州」といった地方が選ばれるケースもあり、日本各地への関心の高まりが感じられる。

 ナショナルジオグラフィックトラベラーの「2016年に訪れるべき旅行先」では、20の国・都市・地域が選定されるなか、「北海道」が選出され、主にスキーの魅力が紹介された。また、トラベルアンドレジャーの「世界の訪れるべき旅行先―都市部門」では読者投票により、「京都」が2年連続で1位を獲得した。

 JNTOでは日本各地への誘客をはかるため、各地の多様な魅力に焦点をあてたプロモーション事業を実施。ビジット・ジャパン事業の重点市場のうち、欧米豪地域の9市場(米国・カナダ・英国・フランス・ドイツ・イタリア・ロシア・スペイン・豪州)からの訪日客数は15年1―10月の累計で、前年同期比15・8%増の207万9千人と過去最高を記録。米国については、同14・7%増で推移しており、年間の訪日者数で初の100万人突破が期待されることから、同事業が、日本各地の認知度向上や需要喚起に結びついていると言える。

新レストランが誕生、バイキングの常識超える(別府・杉乃井ホテル)

100種類のメニューを提供する「シーダパレス」
100種類のメニューを提供する「シーダパレス」

 大分県別府温泉の杉乃井ホテル(佐々木耕一総支配人)は昨年12月25日、和洋中100種類のメニューを提供するワールドダイニング「シーダパレス」をオープンした。かつての「スギノイパレス」の劇場を全面改装し、子供から大人まで楽しめる演出、設備、料理にこだわったバイキング形式のレストランとして誕生させた。

 レストランの広さは1364平方メートルで、客席は472席。中央には直径3メートル、高さ4メートル、水量約18トンの大型水槽が設置され、別府湾や豊後水道に生息する約24種類の魚が200匹以上泳ぎ回る。

 ライブキッチンスタイルのレストランは、空間全体が南イタリアの最大都市「ナポリ」のイメージで統一。別府の景観がナポリに似て「東洋のナポリ」とうたわれたことから、街並のイメージとして取り入れた。

 街並の建物は明るく鮮やかな色彩で描かれ、天井は100台もの照明を駆使して昼、夕、夜と色が変化する空を表現。風に吹かれて動く雲や夜空に輝く星を再現して、ナポリの街角で食事をするような開放感を演出する。

イタリアの石釡で本格ピザ
イタリアの石釡で本格ピザ

 キッチンで提供する料理は、本場イタリアから取り寄せた石窯を使い、福岡のナポリピッツァの名店で修業した調理人が焼く本格ピザや中国で初代高級技師に選ばれた料理人が作る本格中華料理などが並ぶ。

 フカヒレラーメンやフォアグラ丼などの高級食材を使った料理に、パエリア、ブイヤベースといった洋食メニューのほか、地元B級グルメのとり天やだんご汁、中津唐揚げも提供する。

 また、9種類の野菜に6種類のドレッシングを用意したサラダコーナーやステーキコーナー、パスタコーナー、キッズコーナーに離乳食コーナーまでそろえ、デザートもさまざまな種類をそろえる。

 和食特別料理コーナーも設け、ブランドの関サバ、関アジ、城下カレイなどを使った造りや寿司など1人前1千円で味わえる。

 バイキング料金は夕食で平日5500円、土・日曜日、祝日は6500円となる。

 佐々木総支配人は「一流の食材で一流の料理人がつくる上質なバイキングを提供し、お客様に新しい感動を与えたい」と意気込みを表した。

静岡県が一般競争入札、伊豆の国市内 温泉宿泊施設を売却

「寿荘」外観
「寿荘」外観

 静岡県は、県が所有する温泉宿泊施設「寿荘(ことぶきそう)」(伊豆の国市長岡字尾之上71番、95番2)の土地(宅地・鉱泉地、地積3536・01平方メートル)と建物を、一般競争入札により売却する。伊豆長岡温泉街に立地していることを考慮し、落札者は、ホテルまたは旅館営業をすることを契約の条件とする。予定価格(最低売却価格)は税別で9500万円。

 入札の受け付けは2月29日午後5時まで。入札は3月15日午後3時30分から東部総合庁舎(沼津市)で行う。なお2月4日には現地説明会が「寿荘」所在地で午後1時から開かれる。

 「寿荘」は、温泉付きの老人休養ホームとして、1960年の開業以来、高齢者を対象に低廉で健全な休養の場を提供してきた。社会ニーズの変化にともない、2014年3月に営業を終了している。建物は2棟で、1997年に全面改築した本館(鉄筋コンクリート3階建・延床面積2653・22平方メートル)と、南館(同2階建・791・96平方メートル)からなる。宿泊定員118人、客室27室。源泉を所有し、トイレ・廊下・階段などがバリアフリー対応となっている。

 詳細は、県管財課ホームページ(http://www.pref.shizuoka.jp/soumu/so-120/kenyuchibaikyakutop.html) からも閲覧できる。

 問い合わせ=静岡県経営管理部管財課 電話:054(221)2122。

“ひなた”プロモ始動、泉谷さんら8人が応援(宮崎県)

河野俊嗣知事(左)と泉谷しげるさん
河野俊嗣知事(左)と泉谷しげるさん

 宮崎県は全国有数の日照時間や快晴日数を誇る同県の“ひなた”をキーワードに物産や観光をプロモーションする「日本のひなた宮崎県」の始動を記念し、昨年12月7日、東京都内で記者発表を開いた。同県出身で俳優の永瀬正敏さんやモデルの蛯原友里さんなど、ゆかりの芸能人8人による応援団「ひなたオールスターズ」も結成され、当日は代表して歌手の泉谷しげるさんが駆けつけ、同県の魅力をアピールした。

 河野俊嗣知事はプロモーションについて、「宮崎には“ひなた”が生み出す美味しい海山の幸、そして“ひなた”のような人々のあたたかさがある」とし、「観光誘客や移住振興も視野に、全国そして世界へ本県の魅力を発信していきたい」と狙いを述べた。

 泉谷さんは青森県出身だが、2010年から毎年、県内で口蹄疫復興イベントを開くなど、同県と深い関わりを持つ。当日は知事とともに特産の宮崎牛や宮崎ブランドポークなどを試食し、「何度も宮崎に行っているが、食べ物が本当に美味しい」とPR。「農家の方の科学者のような知力と判断力、口蹄疫にも負けないプライドの高さなど、魅力的な人も多い」と語った。

 プロモーションは「あなたを、ひなたへ。」をキャッチフレーズに展開。同7日には専用の「ひなたポータルサイト」がオープンし、歌手の「GReeeeN(グリーン)」が書き下ろしたテーマソングとともに、県民やひなたオールスターズが県内外にフリスビーをつなぐショートムービーなどを閲覧できる。同県の魅力を紹介する冊子の配布やポスターの掲示、全国放送局でのテレビパブリシティ、県外でのプロモーションイベントなども予定する。

地方の魅力を浅草で、「まるごとにっぽん」開業

小笠原功社長
小笠原功社長

 東京・浅草で地方の魅力が体験できる商業施設「まるごとにっぽん」が、昨年12月17日にオープンした。全4フロア50店舗のうち、約8割が東京初進出。地方のモノ・コト・ヒトの魅力を発信し、実際に地方へ足を運ぶきっかけになることを目指す。

 施設のテーマは「風土巡礼」。全フロアを巡ると日本の暮らしが分かる構成で、「見て」「食べて」「持ち帰って」旅気分を味わえる。12月14日に開いた報道関係者向けの内覧会で小笠原功社長は「運営理念は地方創生の拠点になること」と語り、「日本の各地域と触れ合って、最終的にはその地域へ行ってほしい。そうしたつなぎ役になっていきたい」と述べた。

 1階の「にっぽん食市場 楽市」はセレクトグルメフロアで、全国から22店舗が出店。直営店舗の食品館「蔵」は、約1500種類以上の地方のドリンクや調味料などが並び、日本酒など酒類は約300銘柄そろえる。2階の「暮らしの道具街 和来」は、地域発の生活用品・雑貨の店舗が軒をつらねる。

 また、3階の「たいけん広場 浅草にっぽん区」は“旅の窓口”がテーマのフロアで、市町村が特産品の販売、PRを行える「【Event space】おすすめふるさと」は17市町村が出展している。このほか、郷土料理の作り方などが学べる料理教室や日本初のふるさと納税窓口、移住・定住相談窓口などを設置する。

 4階の「ふるさと食堂街 縁道」は厳選した地域の食が楽しめるレストランフロア。

【Event space】おすすめふるさと
【Event space】おすすめふるさと

台鉄と友好協定結ぶ、海外の鉄道事業者とは初(東武鉄道)

記念出発式(中央が今度支社長)
記念出発式(中央が今度支社長)

 東武鉄道(根津嘉澄社長、東京都墨田区)と台湾鉄路管理局(周永暉局長、台湾台北市)は昨年12月18日、友好鉄道協定を締結した。台湾で締結式を行ったほか、同日は、記念エンブレムを掲出した列車の記念出発式を両鉄道で実施した。東武鉄道が海外の鉄道事業者と友好協定を結ぶのは初めて。

 東武スカイツリーライン浅草駅で行われた出発式で、営業部スカイツリーラインの今度祥一営業支社長は「東武グループはこれまでも、東京スカイツリーが台北のランドマークの101と友好関係を締結するとともに、東武ワールドスクエアに101の展示物を新設するなど、台湾との観光友好関係を築いてきた。台湾からのお客様だけではなく、東武沿線から多くの方に台湾を訪れていただく機会になればと考えている」とあいさつ。また、台湾鉄路管理局の周局長は「今回の友好鉄道協定締結を機になお一層の交流を深めたい」とメッセージを寄せた。

 協定締結を記念し、両者共通デザイン台紙の記念乗車券の発売と相互乗車券交流サービスの2つの乗車券交流を実施。記念乗車券台紙とエンブレムには、東武鉄道の「日光詣スペーシア」と台鉄の「普悠馬」の2つの特急をデザインした。

 相互乗車券交流サービスは、日本の乗客が東武の指定企画乗車券の乗車袋を台鉄・台北の瑞芳駅に持っていくと「平渓線1日フリー乗車券」がもらえ、台湾からの乗客には台鉄・自強号乗車券提示で「浅草・東京スカイツリー(R)観光記念往復きっぷ」のプレゼントか「台鉄専用日光往復きっぷ」の割引販売を行う。期間は2016年12月18日までの1年間。