No.452 スーパーホテル、“共鳴と感動”でリピーターに

スーパーホテル
“共鳴と感動”でリピーターに

 高品質のおもてなしサービスを提供することで、お客の強い支持を得て集客している宿の経営者と、工学博士で、サービス産業革新推進機構代表理事の内藤耕氏が、その理由を探っていく人気シリーズ「いい旅館にしよう!Ⅱ」の第9回は、ビジネスホテルチェーンを運営しているスーパーホテルの山本梁介会長が登場。いち早く取り入れた「IT化」に加え、“1円あたりの顧客満足度ナンバーワン”や、科学的に安眠を追求する取り組みなどについて内藤氏と語り合った。

【増田 剛】

 
 

〈「いい旅館にしよう!」プロジェクトⅡシリーズ(9)〉
スーパーホテル

内藤:現在からスーパーホテルの歴史を見ると、一見とても順調に映りますが、挫折を繰り返し、さまざまな試行錯誤があったと聞いています。

山本:色々ありました。実家は繊維商社で、私は3代目でした。父が早く亡くなったので、25歳のときに会社を引き継ぎました。とにかく一生懸命やらなければならないという思いで、経営学の本を読み漁り、習いたての計数管理を中心に据えて経営をやっていました。

 しかし、現場からは「社長の言われることはよく分かるけど、現実にはなかなかそのようにはいきません」と言われ、「自分にはリーダーシップがないのだ」と思い悩む時期もありました。

 「リーダーシップとは、どれだけ責任を取るか」ということも、当時は分かりませんでした。結局、上手くいかずに家業の繊維商社を畳んでしまいました。

内藤:その後、不動産賃貸業に転身されたのですか。

山本:父が“石橋を叩いても渡らない”という堅実な経営をしてくれたおかげで、会社を売った資産が残り、不動産賃貸業を始めました。賃貸業をやるからには、「経営をしっかりと学び直し、独自のものをやりたい」と思いました。仕事の合間に時間を見つけ、天分を生かして上手くいっている経営者や、失敗された方などに話を聞いて回るなかで、成功者たちの共通項として「運」が一番大事だという思いに至りました。また、「ピンチをチャンスにする」感性も持ち合わせていました。感性は第六感なので、苦しいときにも閃きがある。そして、そのような人は爽やかであり、人間力がある。周りからも力をもらえている。「感性を磨かなければならない」というのはすぐに理解できたのですが、「人間力」という部分は、実際どうやって行動に移せばいいのか分からず、考え続けました。

内藤:シングルマンションを全国展開していくきっかけは何だったのですか。

山本:たまたま英字新聞を読んでいたら「ロサンゼルスでは不動産賃貸でファミリー層が50%を割る」という記事に驚きました。

 当時の米国は今の日本のように晩婚化や離婚の増加によって、シングルの家庭が増えていました。また、多くの人が仕事や刺激を求めて都心部に集まってきていました。大阪もいずれそのような社会構造になるのだろうと思い、関西で一番早い時期に木造のワンルームマンションを建てました。…

 

※ 詳細は本紙1660号または2月16日以降日経テレコン21でお読みいただけます。

プレミアムフライデー ― 終わりなき残業よりも遊んで豊かに

 2月24日から「プレミアムフライデー」が始動する。

 官民が連携して、毎月末の金曜日は早期退社を推進する。給料日後のため、買い物や飲食、週末へと続く旅行など豊かな時間を多くの人が過ごすことによって、消費を喚起していく運動だ。経済産業省が提唱し、観光庁も乗り出した。観光産業に追い風になると期待されている。

 旅行会社やホテル・旅館、レジャー施設、飲食店などはいち早く「プレミアムフライデー」に対応した商品を企画し、積極的にPRしている。ニッポンレンタカーは毎月末金曜日の午後5時から月曜日の午前9時まで、最大64時間利用できる割引プランを企画。2万1060円のコースが、約37%の割引で1万3284円と、お得感を打ち出している。

 宿泊施設や旅行商品も、ドリンク無料サービスなど、多種多様な特典を付けている。

 DeNAトラベルは、会社に勤務する25―69歳の男女509人を対象にプレミアムフライデーに関する調査を実施した。これによると、「導入予定」は全体のわずか2・2%。一方、最も多かったのは「導入予定なし」で55・0%。続いて「分からない」が39・5%。「勤め先が導入したらどう思うか」では、「とてもうれしい」が43・6%、「ややうれしい」が23・6%と全体の3分の2が肯定的に捉えている。「導入されると、アフター3は誰と過ごしたいか」(複数回答)では、トップは「パートナー」(50・1%)。次いで「1人」(48・1%)、「友人」(45・6%)――の順となっている。

 「何をして過ごすか」(複数回答)では、「旅行」(70・9%)が、「買い物」(36・0%)や「外食」(33・6%)の約2倍と、圧倒的に多かった。一方で消費とはあまりつながらない「自宅でゆっくり」も46・4%あるのも見逃せない。

 旅行を選択した人に「どこに行きたいか」(複数回答)では、①台湾(17・3%)②韓国(12・8%)③沖縄(9・8%)④北海道(8・3%)が人気を集めた。

 企業側では、これまで「失恋休暇」などユニークな制度を導入してきたサニーサイドアップ(次原悦子社長、東京都渋谷区)がプレミアムフライデーに賛同している。毎月末金曜日は就業時間を午後3時までとし、それ以降は社内会議や行事を行わない。さらに、初回の2月24日には、非正規雇用社員を含む全スタッフに、支援金として3200円を支給するという徹底ぶりだ。同社のスローガンは “たのしいさわぎをおこしたい”。次原社長は「プライベートが充実すれば、より良い仕事に結びつく」とし、仕事の生産性向上にもプラスに作用すると捉えている。

 このプレミアムフライデーは経産省が、「もっと遊べ、もっと旅行しろ、人生を楽しんで国を豊かにしてくれ」と民間企業に対しても積極的に早期退社を推奨し、旗を振っているところが逆説的に映って面白い。今後、広く浸透し、定着するかは未知数だ。「月末の目が回るような忙しい時期に冗談じゃない!」という声が、多くの企業の現場から聞かれるだろう。しかし、日本人はやはり働き過ぎである。終わりなき残業でダラダラと深夜まで働くより、個々の豊かな時間が全体的に増えて、なおかつ経済が活性化した方がいい。

(編集長・増田 剛)

JTB髙橋社長、“仕掛けと変革の年”、黄金の時間の果実得る

髙橋広行社長

 JTB(髙橋広行社長)は1月19日、東京都内で2017年新春経営講演会を開いた。冒頭、髙橋社長は2016年の観光情勢を振り返り、16年は爆買いに代表される〝モノ消費〟から、体験などを中心とした“コト消費”へと大きく様変わりした背景を踏まえ、「リアルエージェントにしかできない〝ならではの価値〟について今一度考えた年だった」と表現した。

 今年度の国内旅行は、大きなイベントや話題性に欠けるものの、全体的に需要は底堅く推移する見込み。とくに今年は、JRが新たな観光列車を走らせることから「鉄道の旅」に注目が集まると述べた。海外旅行について髙橋社長は、「今年こそは、我われリアルエージェントにとって、本当の意味での海外旅行復活の年にしなければならない」と述べ、海外旅行復活に向け、待ちの姿勢ではなく、自ら積極的に働きがけを行っていく旨を伝えた。

 訪日旅行は、アジア新興国からの旅行者を中心に、目的地としての日本の人気は底堅いことから、今年も堅調に推移するとみられる。しかし、旅行者のニーズや行動パターンが「モノ消費からコト消費」になるなど大きく変化しているため、このような変化に対し、柔軟に対応していく必要があると語った。

 経営戦略として、同社グループでは17年を「仕掛けと変革」の年と位置付け、仕入れや販売を強化していく。仕掛けについては、(1)直近の需要につながる仕掛け(2)将来に向けた種まきの仕掛け――の2点を強化していく。具体的には昨年10月に、日本通運、三越伊勢丹ホールディングスとの共同出資により立ち上げた合弁会社、Fun Japan CommunicationsにおけるWebサイトでの日本の魅力の情報発信などを行い、日本の企業・自治体とアジアの現地消費者を結ぶ、新たなビジネスを展開していく。

 変革について個人事業において、仕入れの面で(1)仕入れの一元化(2)戦略的な仕入れの強化――の2つの改革を行う。商品造成面では、付加価値の高い商品の拡充を行っていく。また、販売面において実店舗に求められる価値を見つめ直し、より一層顧客ニーズに対応していくことで、〝真の製販一体〟の実現をはかると述べた。

 最後に髙橋社長は、15年の新春あいさつで語った、20年の東京オリンピック・パラリンピックまでの、〝変化の激しい時間=黄金の時間〟について「変化に対応できたものだけが、黄金の時間の果実を得ることができる。果実を得るためには、積極的な仕掛けと変革が必要」と改めて言及した。

働き方・休み方改革へ、プレミアムフライデーを(JATA)

プレミアムフライデーについて
語る越智良典氏

 日本旅行業協会は(JATA)2月2日の定例会見で、プレミアムフライデー(PF)などの取り組み状況を報告した。1月末時点でロゴ申請数は1191件。旅行会社はエイチ・アイ・エス(HIS)や日本旅行、近畿日本ツーリストなど25社が申請済みだ。メディアの露出も増え、今後は計画的な広告を打ち出し、さらに機運を高める。労働環境問題が取り上げられるなか、働き方・休み方の改革、消費喚起を目指す。

 PFは経済産業省が国民運動として推進。2月24日から毎月の月末金曜日に実施される。同省主体だったが、観光庁とも連携し旅行に力を入れた。各旅行会社は、この動きに合わせ限定企画や記念企画、割引プランなどを造成している。

 業界外でも動きは活発化している。大和ハウスはPFに対応し偶数月の月末金曜日を有給休暇とし、東京・霞ヶ関では内閣人事局がPFに早期退庁するように協力要請文書を出している。

 越智良典理事・事務局長は「徐々にムードが浸透していくはず。繰り返すことで意識が変わる」と述べた。

 JATAはこのほか「韓国旅行復活緊急フォーラム」について報告。

 同フォーラムは3月3日の開催が決定した。申し込みは2月27日まで。セミナーは新たな商品をテーマに(1)都市深堀り(2)地方素材(3)新素材――を取り上げる。

 昨年の訪韓者数は14年並みの230万人まで回復した。要因の1つに円高基調や燃油サーチャージが無料だったことが挙げられる。ただ17年はすでに円安基調になり、燃油サーチャージも2月から復活したことで動きが鈍化する可能性がある。

 越智理事・事務局長は韓国が大統領選挙を控えていることも踏まえ「市場に対して価格ではなく、価値の要素で訴えなければならない」と強調した。

タダ湯めぐり

 石川県・加賀温泉郷の3温泉(片山津、山代、山中)では2月1日から3月31日まで、19―22歳の若者限定で3温泉の総湯(4カ所)が無料で利用できる「タダ湯めぐり」を実施している。

 新たな加賀温泉郷ファンの開拓を目的に、加賀市が2015年度から夏と冬に期間限定で実施するもの。明治期の総湯を復元した山代温泉の「古総湯」や、柴山潟の眺望が美しい片山津の総湯など、3温泉それぞれに趣の異なるお風呂が楽しめるとあって徐々に人気が広まり、昨年夏(8月1日―9月30日)は延べ約4400人、1日平均72・5人が湯めぐりを満喫した。

 19―22歳という年代は、友達同士で初めて旅行に行く人が多いという。3温泉の宿では、若者限定のお得な宿泊プランも販売中だ。

【塩野 俊誉】

女将サミット 7月5日開催、「うまさぎっしり新潟」でおもてなし

 全国旅館おかみの集い運営委員会(野澤邦子運営委員長)と旅行新聞新社(石井貞徳社長)は、第28回全国女将サミット2017新潟を7月5日、新潟市内のホテル日航新潟で開催する。開催テーマは「うまさぎっしり新潟」でおもてなし。東洋のベネチアとも讃えられた新潟の街を、信濃川ウォーターシャトルで巡る企画など、盛りだくさんのプログラムで参加者を迎える。

 2月2日に新潟市内で開いた運営委員会で決めた=写真。プログラムの柱となる基調講演など、大会の詳細は現在調整中。分科会は信濃川ウォーターシャトルの乗船など、新潟市内を大会会場に見立てた学びの場を企画する。米、酒、肴(さかな)は大会テーマにもあげた県最大の魅力。懇親パーティーでの演出も、活発に意見交換した。

【鈴木 克範】

最大2分の1を負担、着地型商品の造成など(観光庁)

 観光庁は2月20日まで「地域資源を活用した観光地魅力創造事業」の公募を行う。地域の観光資源を生かした着地型旅行商品の造成や、名産品の開発などの滞在型コンテンツ充実のための経費を、最大で総額の2分の1以内で最大3年間負担する。

 「明日を支える観光ビジョン」を踏まえ、とくに「文化財の利活用」「国立公園との連携」「景観の保全・活用」「食文化の発信」などを取り入れた先駆的な提案を優先的に支援する。

 国が行う支援対象事業の例は(1)計画策定(2)旅行商品造成(3)マーケティング(4)名産品開発――になる。地域内全体の仕組みづくりを担う。一方、これらに合わせ地域が自主的に実施する事業例は(1)情報発信(多言語Webページ作成など)(2)受入環境整備(無料公衆無線LAN環境の整備など)(3)機能強化(遊休施設の改修など)(4)システム開発(予約システムの開発など)――で、本事業を支える取り組みとなる。

 対象事業者は、単一市町村や観光協会、交通事業者、旅行業者、地域づくりの取り組みを実施する人らで構成された協議会となる。公募終了後は各運輸局などからの意見、有識者委員会での審査を経て対象地域を決定する。

【2016年度自治体アンテナショップ実態調査】多面的に店舗活用、63%が売上1億円以上

 地域活性化センターはこのほど、「2016年度自治体アンテナショップ実態調査報告」をまとめた。1991年度には東京都内で2店舗だったが、16年4月時点で65店舗まで増加している。15年度は4店舗で年間来場者数が100万人を超え、年間売上では全体の約63%にあたる34店舗が1億円を超えた。また4店舗が企業誘致を、11店舗が地域間交流を開設目的に挙げるなど、物産品の販売や、情報発信以外にも多面的に店舗を活用しているようすがうかがえる。
【後藤 文昭】

 2店舗目を出店する自治体も増加

 店舗数をみると、2015年4月以降、奈良県と長崎県、青森県の青森市、田子町、石川県の羽咋市、滋賀県の長浜市が新たに開設。結果、店舗数は54店舗となり、右肩上がりに増加している。調査基準日の16年4月1日以降も富山県と福井県の坂井市が出店し、17年以降には滋賀県と福岡県の久留米広域連携中枢都市圏が出店を予定している。また同一自治体が2店舗目を出店するケースも増えており、17年以降は富山県と奈良県、長崎県が出店した。店舗面積は拡大傾向にある。500平方㍍以上と回答したのは、「いわて銀河プラザ」(岩手県)と「広島ブランドショップTAU」(広島県)、「表参道新潟館ネスパス」(新潟県)、「ふくい南青山291」(福井県)、とっとり・おかやま新橋館(鳥取県・岡山県)「銀座わしたショップ」(沖縄県)、「かごしま遊楽館」(鹿児島県)、「産業観光プラザ『すみだ まち処』」(東京都墨田区)の8店舗。

 年間入場者数100万人以上が4館

 年間入場者数で100万人以上入館したのは「北海道どさんこプラザ」(北海道)と「とちまるショップ」(栃木県)、「表参道新潟館ネスパス」(新潟県)、「銀座わしたショップ」(沖縄県)の4店舗。70万人以上100万人未満が3店舗、50万人以上70万人未満が5店舗と続いた。

 北海道が初の売上10億円以上

 15年度の年間売上では、「北海道どさんこプラザ」は調査開始後初めて10億円を超えた。7億円以上を売り上げた店舗は「いわて銀河プラザ」と「広島ブランドショップTAU」、「銀座わしたショップ」と3店舗あった。今回の結果は、プレミアム商品券やふるさと割の導入などによって、各ショップの売上が好調に推移したため。一方「(2016年度は)商品券などを導入する計画はない」と回答した店舗は23店舗増加し、31店舗あった。取扱商品数は、6千品目の「銀座わしたショップ」が1番多く、3千―4999 品目で「ふくい南青山291」(福井県)が続き、以下2千―2999品目が4店、1千―1999品目が16店舗となる。

 販売やイベント開催など多様な活用はかる

 開設目的では、特産品のPRが53店舗、自治体のPRが49店舗、特産品の販路拡大が47店舗、観光案内・誘客と地域情報発信が46店舗と続く。これに対し運営効果では、特産品の知名度アップが52店舗、自治体の知名度アップが49店舗、特産品の販路拡大と地域情報発信が44店舗となった。事業内容をみると、物産販売が52店舗、イベント開催が46店舗、観光案内が43店舗、飲食施設が35店舗と回答。

 さまざまな利用者への環境整備進む

 インターネットの活用では、ホームページの導入が51店舗、年々増加するフェイスブックの導入が35店舗と続く。外国語の案内パンフレットを作成しているのは18店舗、無料Wi―Fiの整備は17店舗が行っている。また免税店対応が進み、16年度は15年度より6店舗多い9店舗が対応を始めた。また移住者対応を行うアンテナショップが増えている。実行していることでは、パンフレット・書籍の設置が30店舗、交流会やイベントなどの実施が12店舗、相談員の常駐が5店と続く。

 自治体が単独で運営しているのは2店舗

 運営主体は、民間・NPOなどへの委託が29店舗、地方自治体とその他団体の複数で共同運営をしているのが11店舗と続く。地方自治体単独で運営しているのはわずか2店舗となる。

 同調査は、自治体が主体となって設置した常設の独立アンテナショップ54(都道府県38、市町村16)店舗を対象にした。表は、調査報告より引用。

2次交通不足解消へ、東北の訪日需要の扉開く

仙台空港・松島・平泉線の第1便
松島町の櫻井公一町長

松島や平泉を結ぶ、実証運行スタート

 岩手県平泉町、宮城県東松島市、松島町の1市2町は1月25日、2016年7月に民営化された仙台空港から、日本三景の松島・奥松島と世界文化遺産の平泉を結ぶガイド付き直行バス「仙台空港・松島・平泉線」、「仙台空港・松島/奥松島観光周遊バス」の実証運行を開始した。同バスは1市2町の共同による「仙台空港2次交通運行調査業務事業」として実施され、実際の運行、情報発信、利用者情報調査などは、業務委託を受けている岩手県北自動車(松本順社長)が行う。

【松本 彩】

岩手県北自動車が業務受託

 同バスは、仙台空港から、松島や平泉など自然・文化観光地への誘客をはかり、東北におけるインバウンド需要の新しい扉を開くものと期待されている。同日行われた出発式で、松島町の櫻井公一町長は、「東北の観光は全国的なインバウンド急増の流れから大きく遅れており、東北観光における2次交通不足が課題となっていた」と報告。同事業の開始を受け、今後東日本大震災の影響で遅れていた、東北への訪日外国人観光客の誘客促進が望まれることから、「遠方からはるばるやってこられる訪日外国人観光客の方が、より便利に目的地に到着でき、多くの東北の魅力を知っていただくことで、東北ファンが増えていくと期待している。継続した事業となるよう検討していきたい」とあいさつした。

松本順社長

 運行事業を担う岩手県北自動車の松本順社長は業務委託に関して、「今回このような大役を仰せつかったからには、旅行エージェントの皆様方の力を貸していただき、自治体や、仙台国際空港、エアラインの皆様方のご支援もいただいて、東北の王道ルートの旅をできるだけ沢山の人たちに楽しんでもらえるように全力で取り組んでいく」と意気込みを述べた。

 出発式終了後、午前11時に「仙台空港・松島・平泉線」の第1便が仙台空港を出発。第1便には、多くの外国人観光客も乗車した。「仙台空港・松島・平泉線」と「仙台空港・松島/奥松島観光周遊バス」は、松島海岸までは1日5往復、奥松島・平泉へは1日2往復運行する。5月からは、フリーWi―Fiやバスガイドによる外国語ガイダンスも導入予定。

関係者らによるテープカット

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バスガイドの松尾迪代さん

 岩手県北自動車バスガイドの松尾迪代さんに、同事業への想いを聞いた。

 ――今回、「仙台空港・松島・平泉線」の第1便のガイドを担当することに決まったときの気持ちを教えてください。

 出発式の日にガイドをやらせていただけるということで、とても緊張はしていますが、これからこのバスが、安定して運行できるように、頑張らなければいけないなという気持ちでいっぱいです。お客様に楽しんでいただけるように頑張っていきます。

 ――今回のルートで松尾さんおすすめの観光地は。

 私は海が好きなので、松島を一番おすすめしたいです。今の時期だからこそ、雪景色もあわせてみることができると思うので、一押しです。

山口の絶景と――、 美食を堪能する旅

女性船長の岡村有菜さん(右)

 元乃隅稲成神社、ふく恋盛り――。「山口の絶景と美食を堪能する旅」と題し、山口県は2016年9月1日にプレスツアーを行った。多くの観光資源を有するが、女性がいきいきと働く姿が印象に残った。昨年末に日ロ首脳会談が開催された山口県の魅力に迫る。
【平綿 裕一】

 ■青海島(おおみじま)クルーズ、女性船長が案内 

 2017年に会社設立から50年を迎える青海島汽船に女性船長がいる。岡村有菜さんは14年に入社。「海が好きなので、海に携わる仕事がしたかった」と話した。翌年に同社初となる船長になった。今では操船技術を教える立場となっている。

 岡村さんの案内でクルーズへ。青海島は周囲約40キロ。北長門海岸国定公園の中心部にあり、別名「海上のアルプス」と呼ばれる。

 断崖絶壁や洞穴、洞門、石柱、奇石など多くある景勝地。これらのなかには黒い有色鉱物を含むものがある。岩肌にヘビやタコのような模様を描きだし、見どころの1つとなっている。

 遊覧船は青海島を西周りに、北側の半分で折り返す「観音洞」コース、約50分を運航。

 青海島の西側にある花津浦はそれ自体も立派な海に屹立する洞門だが、通り過ぎる際に観音様がお祈りをしているように見える奇石がある。さらに進むと島の西北端に黄金洞がある。洞内岸壁は金箔色に輝く。有色鉱物の作用や日光の反射などによるものとされている。洞窟が2つ寄り添うように見えることから、別名夫婦洞とも。夫婦円満のご利益があるそうだ。

元乃隅稲荷神社の絶景

 ■米CNN日本の最も美しい場所31選の神社

 元乃隅稲荷神社(もとのすみいなりじんじゃ)は60年以上の歴史を持ち、米CNNが「日本の最も美しい場所31選」に選出した神社。赤い鳥居123基が、曲流するように青い海へ伸び、その脇に緑の草木が鬱蒼と茂る。この赤・青・緑が非常に映える。

 元乃隅稲荷神社近くには国指定の天然記念物「龍宮の潮吹」と呼ばれる場所がある。海からの波が打ち寄せられ、間欠泉のように勢いよく海水が吹き上がる。波が荒い冬の時期は高さが30㍍に上ることもあるという。景観だけでも十分に楽しめるが、観光客を楽しませるのはほかにもある。

 高さ5㍍の鳥居に位置する賽銭箱だ。記者らも試していたが、なかなか骨が折れる。昨年11月には大鳥居が新設されて賽銭箱も移設。さらに1㍍高さを伸ばし、現在の賽銭箱は高さ6㍍の位置にある。

カルスト台地で育つ秋芳梨

 ■最高樹齢110年を超す秋芳長寿梨

 梨は本来は40年ほどで実らなくなるといわれる。1904(明治37)年に植栽された山口県・秋芳町の20世紀梨は、現在も実を付ける。樹齢80年以上の梨の木は120本以上。創業130年の老舗果物専門店・新宿高野から80年を超えた古木の梨を「長寿梨」と認定を受け、販売している。

 有名なのは長寿だけではない。2001年に農林水産大臣賞名誉賞を受賞している。日本最大級のカルスト大地で有名な秋吉台。ミネラルを多く含み、豊富な有機物を有する肥沃な土壌だ。この恵まれた環境で育つ秋芳梨は、適度な甘さと酸味、歯触りのいい食感を持つ。長寿も味も品質も評価されている。秋芳梨生産販売共同組合、代表理事組合長の永嶺克博氏は「先代たちからの高い品質の梨を作る想い(規制)を大事にしている」と語った。

「ふく恋盛り」源平荘・繁岡あかねさんが説明

 ■ふく恋盛りを堪能

 山口県・下関はフグを「福」にちなんで「フク」と呼ぶ。フグの取扱量は日本一で、農林水産省から「下関ふく」が地理的表示(GI)登録を受けた。GI保護制度は、地域に長年培われてきた特性などで、高い品質を獲得した産品に対し、その名称(地理的表示)を保護するもの。

 今回のプレスツアーで宿泊した源平荘は、「ふく恋盛り」を提供している。始まったのは14年12月から。すでに多くの反響があり、結婚式場で提供した実績もある。

 下関でも高級とされる「トラフグ」を使用し、ハート型に刺身を盛り付けた一品。盛り付ける皿は、27㌢もある特注のピンク色の萩焼大皿だ。源平荘の繁岡あかねさんはこのふく恋盛り実行委員を務める。「鮮明な薄ピンク色は、イメージに合うよう何度も試作を繰り返しました」「フグは年配者のイメージが強いので、若い人へのアピールで可愛くしました」と語った。フグを味覚だけでなく、視覚からも楽しめる工夫が施されている。