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旅と学びの協議会、不便さでの学びを 新しい旅の需要創出はかる

2021年3月15日
編集部:木下 裕斗

2021年3月15日(月) 配信

基調講演では旅で新しいことが知れると強調した

 旅と学びの協議会(出口治朗代表理事)は2月16日(火)、オンラインシンポジウム「第4回『ポストコロナの旅と不便益』」を開いた。同協議会はANAホールディングスが2020年6月に設立した。「旅は多様性への理解力や課題解決力など21世紀を生き抜く力を育む」という仮説を科学で明確化することで、旅行を通じた新しい需要創出を狙う。今回は、所要時間が長いことなど旅の不便さによる学びを共有したほか、同協議会の活動内容を紹介し、新メンバーを募集した。

 同協議会は昨年9月に第1期の会員を募集した。企業や教育機関、自治体などから26団体が集まった。観光業界からは日本航空(JAL)や東日本旅客鉄道(JR東日本)、地球の歩き方などが参加する。このほか、ソフトバンクや日本アイ・ビー・エム、品川女学院など観光業以外の会員も所属している。

 基調講演では、駒沢女子大学観光文化学類准教授の鮫島卓氏が「ポストコロナの旅と不便益『旅と学びのツーリズム・リテラシー』」と題した講演を行った。

 冒頭、21世紀を生き抜く力を育成する旅の例として、グアム(アメリカ)のビーチにある旧日本軍の施設トーチカを示した。

 同施設は戦時中に一部が破壊され、大きなコンクリートの塊に見えるが、旅行者自らが調べれば、戦争の激しさを理解できる」と紹介し、「『自ら学ぶ姿勢』が身に着く」と説明した。

 そのうえで、とくに力が身に付く旅として、「不便だからこそ旅行者が得られる効能がある『不便益の旅』」と定義した。

 具体例としては、イギリスで盛んだという徒歩での旅行「フットパス」を紹介した。鮫島氏は、「徒歩は移動時間や疲労など不便なことがほかの移動手段と比べて多いが、ゆっくり移動することで地域文化の理解などが進み、21世紀を生き抜く力を育む」と説明した。

 一方で、まだ明確化していないことが多いとして、「協議会で皆さんと一緒に、不便益による旅で身に付く効能の数を増やしていきたい」と語った。

 その後、事務局の大下眞央氏がテーマ別に4グループに分かれて活動していることを紹介。各グループの代表者が活動内容を紹介した。

 このうち、A1は新たな旅の教育プログラム開発を目的に設定している。地域と連携した中高生向けの教育プログラムの開発や、21世紀を生き抜く力を育める修学旅行を企画する。

 グループ代表のソフトバンク部長の杉原倫子氏は「多くの人の力を結集して、1つでも多くプログラムを完成させたい」と意気込みを語った。

 A2は、地域と連携したうえで、社会人の学び直し「リカレント教育」を実施するほか、旅による人事研修など、働く人をターゲットに旅行プログラムを造成する。

 JOB HUB部長の加藤遼氏は「時代の変化が激しくなるなか、働く人は常に、新しいスキルを身に着ける必要性がある。旅で五感を刺激することで、新しい学びになるようにしたい」と決意を述べた。

 B1は、旅の効能の明確化に特化する。旅は交通手段や宿泊先、旅ナカの時間配分など決断事項が連続することから、意思決定力が増すことや、異文化交流における個人の成長などを数値化する。

 日本アイ・ビー・エムの上甲昌郎氏は「難しい内容だが、楽しみながら、挑戦していきたい」と参加を呼び掛けた。

 C1は、活動実績をメディアやSNS(交流サイト)を通じて、発信する。また、旅による効能をまとめた書籍の発行もはかる。

 TABIPPOの清水直哉氏は「19年における日本人のパスポート所持率は23%。とくに低い若者を中心に、旅の効能をアピールし、海外旅行の需要を喚起したい」と強調した。

 全体総括では事務局の久保哲也氏が「活発的な参加者が多いので、普段の業務で生かせる気づきもある。ぜひ加入してほしい」と呼び掛けた。

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