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〈旬刊旅行新聞2月11日号コラム〉冬の小さな旅 大雪、豪雪 春の訪れが待ち遠しい

2018年2月9日
編集部

2018年2月9日(金) 配信

厳しい今年の冬。春が待ち遠しい

 今年の冬は全国各地で大雪や豪雪を降らしている。東京都心でも20㌢を超える積雪を記録するなど、寒い冬となっている。まだまだ冬本番の最中にあるのだが、早くも春の訪れが待ち遠しい気持ちになっている。

 これだけ寒いと、「温泉に入りたい」という気持ちが体の内側からフツフツと湧いてくる。昨年12月の上旬に箱根の温泉に入ってから、数えると2カ月も温泉に入っていない。

 私の体は一定期間温泉に入らないと、そわそわと落ち着きを失ってくる。具体的にどのような症状かというと、これまでに入ってきた素晴らしい温泉を片端から思い出し始める。そして心地よかった記憶を何度も自然反芻しながら、カレンダーを眺め「どこかで温泉旅行に行けないか」と思案する。これは私だけでなく、家族も同様の症状が現れるようだ。「最近温泉行ってないから、そろそろ温泉行きたいね」という会話が自然と交わされることになる。私の症状が家族に伝染したのかもしれない。

 東京に大雪が降ったあと、少し寒さが緩んだ日があった。私は性懲りもなくオートバイのエンジンをかけて、襟巻を首に巻いて、家からも遠くない自然あふれる公園に出掛けた。

 このむやみやたらに広い公園は休日になると、多くの人で溢れるのだが、まだまだ肌寒い季節のためか、園内を歩く人影はまばらだった。木々の下や遊歩道の隅々には、管理人がシャベルでかき集めた雪の塊が散在しており、東京における大雪の名残を感じさせた。

 この公園は子供たちがまだ小さいころ、よく連れてきた。アスレチックや、園内を走る子供用の電車、長い滑り台などの遊具が当時のままの姿を現した。春には広い芝生に座り、お弁当を広げて薄紅色の桜を眺めた記憶が蘇ってきた。間もなく桜の季節がやってくるな、と冬の透明な青い空を眺めた。

 冬の間は、どうしても体を動かす機会が減ってしまう。まして、雪で路面が凍結などすると、外にあまり出ない。暖房の効いた室内にこもることが生活の中心となり、身体が鈍って仕方がない。ずっと、ぬくぬくとした快適な環境にいると、その快適さに嫌気がさしてくるのだから、面倒くさい性格である。思いきって玄関を出て、オートバイに跨りアクセルを開くと、指先がちぎれそうなくらい冷たかったが、襟巻を靡かせながら公園に向かったのだった。

 自然の中を歩きながら、枯れた細い枝を見上げると、すでに梅の芽が出ていた。こんなところにも小さな春の訪れを感じさせた。公園の奥にある牧場には、年初に生まれたばかりの子牛や、子羊たちが濁りのない目でこちらを眺めていた。新しい生命がこの寒さの中でも誕生していたのだ。

 池はまだ鮮やかな色彩のない冬景色だった。久しぶりにローボートにも乗った。枯れ木の並木をかいくぐるように、ボートは静寂な水辺を流れた。行き止まりの地点まで来るとUターンした。帰路はまるで大学のボート部員のように、一生懸命にオールを漕いだ。ボートから降りると体がポカポカしてきたので、牧場のソフトクリームを食べた。すると今度は体が冷えたので、ホットココアを飲んだ。

 冬の小さな旅ではあったが、早く春が来ないか、と待ち遠しい想いが一層強まった旅であった。

(編集長・増田 剛)

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