【精神性の高い旅~巡礼・あなただけの心の旅〈道〉100選】-その49- 偕楽園に隣接した常磐神社&吐玉泉めぐり(茨城県水戸市) 心身ともに清々しく感じる 斉昭公が名付けた優雅な泉
2025年5月10日(土) 配信
日本三名園といえば、石川県金沢市の「兼六園」、岡山県岡山市の「後楽園」、そして今回の精神性の高い旅の舞台である、茨城県水戸市の「偕楽園」です。ともに地方都市にある、大名が造った大名庭園。いずれも規模が大きく、池が配された園内を順に散策して楽しむ「池泉回遊式庭園」です。米国・ニューヨークのセントラルパークに次ぐ、世界第2位の面積を誇っています。
偕楽園といえば、約3000本の梅が植えられた名所であり、毎年2~3月に開催される「水戸の梅まつり」には多くの人たちで賑わいます。私自身は昨年の秋に訪れましたが、暑くもなく寒くもない季節のため、晴天のなか、快適に広大な庭園を巡ることができて、かなり気持ちが晴れやかにスッキリした時間を過ごせました。長時間のんびりといたくなるような、居心地の良さがあります。
優雅な美しさ満点の偕楽園は、水戸藩第9代藩主「徳川斉昭」によって造られ、1842年に完成されました。斉昭公は、1829年に第9代藩主となり、1833年に初めて水戸に国入りしたときに、偕楽園の造営地を探したとされています。藩内でもひときわ美しい常磐の高台に建設することを決定しました。山と湖を望み、景色を一望できるロケーションを気に入られたようです。斉昭公のアイデアをふんだんに、盛り込まれたといわれています。

斉昭公は、藩政改革をはかり、質素倹約や産業振興、人材育成など多方面で手腕を発揮し、政治家としてだけでなく、多彩な才能にも恵まれた人物でした。建造物の設計や作陶、たくさんの著作などから、文化教育分野にも精通していました。
ぜひ、常磐神社と吐玉泉の間に、ひと休みしていただきたいのが、斉昭公が設計した、「好文亭」です。木造2層3階建ての本体と、木造平屋建ての奥御殿からなる建物。昔、こちらで詩歌の会や茶会が行われたそうです。1945年に水戸空襲により焼失されましたが、建物が復元された際に日本を代表する画家によって描かれた襖絵は必見です。
好文亭には「カフェ樂」があり、眼福な庭園を高台から見渡しながら、お茶をいただけるという最高のロケーションです。生クリームと梅のゼリーの入ったケーキが絶品です。
さて長くなりましたが、偕楽園に隣接した常磐神社は、水戸藩歴代藩主のなかで崇敬を集めた光圀公、斉昭公を祀っています。1873年に鎮座した神社で、近代に建てられた新しい神社です。偕楽園内に入る前に、ごあいさつとお参りされると、より斉昭公と心が結ばれるような感覚になるので、おすすめです。常磐神社は学力にご利益があるといわれ、合格祈願や文武両道、勉学の向上を願ってお参りされる方が多いようです。

偕楽園内に入り、足を進めていくと、斉昭公が好文亭での茶会で使用するための水を運ばせるために作られたという大理石の泉、「吐玉泉」と出会えます。吐玉泉とは、「夏でも冷たく、清らかな玉を吐くような泉」という意味です。また、「儒学の理想と教えを湧き出る泉となれ」という思いも込めたとのこと。
夏は冷たいこの水によって、偕楽園を訪れた人は咽喉を潤し、造園以来、枯れたことのない泉によって、いつでも茶会に供することができたといわれています。この泉や周辺はかなり清々しい空気感があり、生き返ることができるようなリフレッシュ感をチャージできるでしょう。また、吐玉泉は、眼病に効くともいわれていて、心身ともに訪れた人たちに何かしらの恵みを与えてくれそうです。
交通アクセスは、JR水戸駅からバスで20分程度。そこからまた、徒歩で5分程度。
■旅人・執筆 石井 亜由美
カラーセラピスト&心の旅研究家。和歌山大学、東洋大学国際観光学部講師を歴任。グリーフセラピー(悲しみのケア)や巡礼、色彩心理学などを研究。