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【第1回旅行マーケットセミナー】シニアも1人旅増加、ネット予約の早期化顕著(JTB総研)

黒須宏志氏
黒須宏志氏

 JTB総合研究所は9月9日、「第1回旅行マーケットセミナー」を開き、1部では黒須宏志主席研究員が海外旅行を中心とする2013―14年の旅行マーケットを解説した。不振の続く海外旅行市場について、旅行経験値の高いコア層の鈍化や地方発需要の停滞感などを指摘し、構造的な変化としてシニア層においても1人旅の増加が進んでいること、FITオンライン予約の早期化が顕著になってきていることなどを挙げた。

 黒須主席研究員は、マクロ経済と国内旅行需要の関連性において、名目雇用者報酬と国内宿泊観光旅行者数が5―10年のレンジで転換が起きている流れを説明し、この2つがシンクロしていることから、消費税増税などの影響で足元の景況は地方経済を中心に個人消費への懸念が広がっているが、「旅行支出は引き続き堅調」との分析を紹介した。観光性の国内宿泊旅行の旅行単価が、2011年の夏を基準とした場合に20代と60代で消費単価が上昇していることを報告。また、家計消費における旅行単価と旅行者数が反比例のグラフを描くことに触れ、大きな流れとして「価格が低下していくときにしか、旅行マーケットが拡大していかない」との仮説を立て、「旅行コストが上がっていく現状のなかで、マーケットの成長が実現できるのかがポイントになる」と語った。

 低迷する海外旅行では、これまで頻度を上げることで海旅マーケットを支えてきた経験値の高いコアな旅行者層が、13年に大きく減少したことを指摘。逆に海外旅行経験回数が1―5回の経験値の少ない層をみると、男女とも20代が13年に旅行者数を伸ばしており、「13年はコアな旅行者層が減少し、経験値の少ない若年層が伸びた」と解説した。

 昨今注目を集めてきたシニア層については、「1947―49年生まれのコアな団塊世代は高額商品や長期旅行商品を除き、すでにピークを過ぎた」との見解を示し、これがシニア需要停滞の一因ではないかと指摘。また、大都市に比べ地方発の観光需要に停滞感が出ていることを懸念した。

 海外旅行市場の質的な変化を見ていくと、これまで夫婦旅行が多かったシニア層で1人旅が増加中だ。予約時期では13年は3カ月以上前の予約が4割を突破し、とくにFITのオンライン予約で早期化が顕著になっている。これには「休暇」への考え方の変化が影響しており、計画的な休暇取得が広がっていると分析する。

 若年層の旅行回帰の動きについて、出国率の推移で説明。若年女性の出国率をみると、20―24歳の層と、25―29歳の層は96年ごろに迎えた過去最高の出国率に及ばないのに対し、15―19歳の層は徐々に増え、近年過去最高を迎えている。若年男性も同様な傾向を示し、黒須主席研究員は「10代後半の海外へ行く機会は、昔より今の方が増えてきている」と見解を示し、「若年層マーケットはポテンシャルは決して低くないので、もっと取り込みに力を入れ、将来市場と位置付けたマーケティング戦略が必要」とアドバイスした。

牛窪恵氏
牛窪恵氏

“1人旅まだ伸びる”、団塊世代とジュニア妻に期待
≪牛窪恵氏が予測≫

 JTB総合研究所が9月9日に行った「第1回旅行マーケットセミナー」の2部では、マーケティングライターの牛窪恵氏と、WILLER GROUP代表の村瀬茂高氏、JTB総合研究所のコンサルティング事業部長の小里貴宏氏をパネリストに、旅行マーケットの変化について分析した。牛窪氏は「1人旅」に着目し、世代分析による特徴を説明しながら、今後需要が見込まれる「1人旅」層に、「団塊ジュニアの妻」と「団塊世代」を挙げた。

 牛窪氏は「1人旅需要はまだまだ伸びる」とし、「学びや体験などの“言い訳”があるとより行きやすくなる」と説明した。ある調査会社の統計では、20、30代女性の86%が「おひとり様」を経験したことがあり、国内の1人旅は21%、海外の1人旅は14%に上る。

 00年代前半から注目を集め始めた「おひとりさま消費」ブームだが、第1次ブームの中心にいたのは1965―70年生まれで現在44―49歳の真性バブル世代。この世代は留学者数でも女性が男性の2倍に上るなど好奇心が旺盛で、雇用機会均等法の本格化後の就職により「バリキャリ志向」の女性が多いという。オンとオフの切り替え意識が強く、お金も時間にも「メリハリ消費」の志向が強い。第1次ブームでは高級ホテルやレストランに「おひとり様プラン」が登場したほか、エステや美容サロンもおひとり様男女に人気となった。

 第2次ブームを支えたのは、71―76年生まれで現在38―43歳の団塊ジュニア世代。この世代は核家族化により「1人部屋」が与えられ、ゲームやアニメの普及で「1人遊び」も増え、1人で過ごす時間が当たり前となった。ファミレスやファーストフード、コンビニなどが子供のころから身近にある飽食の時代で、「今しかできないもの」への関心が高く、ブランド物よりもレア物・希少価値の高い物への関心が高い。旅行では祭りや現地でのイベントなどに関心が高い。カフェブームや立ち飲み屋などが人気で、国内のぶらり「1人旅」も関心が高かった。

 「1人カラオケ」や「1人焼肉」、「パワスポ1人旅」などが人気となった第3次ブームは、81―86年生まれで現在28―33歳の草食系世代と、その下のさとり世代が中心。コストパフォーマンスを気にするコスパ世代で、安さだけでなく、長く使える物や意味のある物になら少し高くてもお金を払う。物心ついたころから「デジタル」を使いこなし、SNSでの「いつでも誰かとゆるくつながる」サービスに安心感を覚える「ゆるつながり」を好む。また、「すき間消費」が特徴で、何事も要領よく無駄なくこなそうと、スマホを活用し「すき間時間」を上手に活用し消費する。

 牛窪氏は、今後おひとり様消費で需要が見込まれる層に、「団塊ジュニア世代の妻」と「団塊世代」を挙げる。博報堂が11年に行った調査では妻の65%が「プライベートな1人時間がほしい」と回答し、「おひとり妻」願望がうかがえる。牛窪氏によると、「団塊ジュニア世代は1人時間に慣れており、結婚をしていても1人時間を求める」という。

 一方、団塊世代は「まだまだ消費意欲が旺盛で、とくに国内旅行で需要が伸びる」。また、団塊世代は子供と仲が良く、子供夫婦も近所に住み、3世代旅行需要に期待できるという。

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