昼神温泉と“菊芋”、「学ぶ・食す」グリーンツーリズム

栽培歴10年の菊芋生産者から話を聞く
栽培歴10年の菊芋生産者から話を聞く

 長野県の阿智村地域活性化協議会は2月21―22日に、南信州「昼神温泉と高機能食品菊芋を学ぶ・食す」旅のモニターツアーを初めて実施した。阿智村内の観光・農業関連の5団体が昨年9月に発足させた村地域活性化協議会は、村が特産化をはかる機能性食品「菊芋」と観光を結びつけたグリーンツーリズム商品を開発する目的で3カ年計画に取り組んでいる。

 1泊2日のモニターツアーでは、まず最初に座学で地元農家の菊芋生産者と阿智村の菊芋事業担当者から栽培にまつわる話を聞き、その後宿泊する昼神温泉の旅館や村内のアンテナショップ「きくいも茶屋」で菊芋を使った料理を試食して意見を聞くというもの。昨年度の農林水産省の補助事業に選ばれ、体制整備にあてた昨年度は250万円が交付された。

 宿泊先となった昼神温泉郷「日長庵 桂月」では会席料理の中に菊芋を使った田楽や信州牛シチュー、グラタン、菊芋めん、菊芋まんじゅうなどが提供され、参加者から「菊芋という名前から想像していたよりも美味しかった」「食物繊維が豊富で体に良さそう」「和食もいいが洋風メニューとの相性もバツグン」などの意見が聞かれた。

 これまでにも個々の旅館で地元農産物を生かした誘客事業が行われたことはあったが、今回の事業では各団体が連携してマーケティングに力を入れることで誘客促進に繋げるのが狙いという。具体的には菊芋を使用したオリジナルメニューの開発や村内の小売店で加工品を販売するほか、旅行商品として旅館だけでなく農作業体験などと組み合わせた農家民泊の連泊プランなども検討する考えだ。

 村地域活性化協議会の事務局を務める昼神温泉エリアサポートの木下昭彦社長は「ニーズがあるものを作る〝地消地産〟をテーマに、観光と食の連携を深め、観光につなげられる仕組みづくりをしたい。可能な限り続けていきたい」と意気込みを語った。

【古沢 克昌】

「ふくしまから はじめよう。」知事が都内フェアで宣言

応援メッセージも多数寄せられた
応援メッセージも多数寄せられた

 食や体験、ステージイベントなどで福島の今の姿を伝える催し「がんばろうふくしま!大交流フェア」が3月20日、東京国際フォーラムで開かれ、1万5千人の来場者でにぎわった。

 会場には佐藤雄平知事も駆けつけ、福島の復興を早くから支援し、紅白歌合戦にも出場した郡山市出身の俳優西田敏行さんとのトークショーも開いた。終了後は、復興に向けた新しいスローガン「ふくしまから はじめよう。」を宣言し、「ぜひ来県を」と呼びかけた。

 ステージでは、スパリゾートハワイアンズのフラガールがフラ&タヒチアンダンスを披露したほか、ご当地のゆるキャラPRなどを実施した。

 グルメコーナーでは昨年のB―1グランプリ姫路大会で4位入賞を果たした「なみえ焼きそば」をはじめ、会津ソースカツ丼、ふくしま餃子、喜多方ラーメンなどが出展。体験コーナーには県の縁起物「赤べこ」の絵付けで東北の復興支援を応援する活動「赤べこプロジェクト」が参加、来年のNHK大河ドラマ「八重の桜」コーナーも設け、観光の話題を紹介した。

 取り組みは08年に開いた「ふくしまファンの集い」から数えて5回目となる。今回は被災から復興していく福島を伝えるとともに、首都圏に避難している被災者の交流の場として開いた。

復興進むいわき、福島県が視察会実施

 東日本大震災から1年が経過した3月、福島県は首都圏の旅行会社の担当者を対象に、県観光の風評被害を払しょくし、正確な情報を伝えることを目的とした視察研修会を開いた。今回は「中通り・いわき」、「白河・会津」の2コースを企画。3月14日から2泊3日で開かれた中通り・いわきコースに同行した。

【鈴木 克範】

≪誘客事業も強化≫

<最後の海獣が帰還>

 東日本大震災の津波被害を受けたアクアマリンふくしま(いわき市)は、開館11周年記念日となった昨年7月15日、いち早く再開を果たした。全国の動物園や水族館が海獣たちの受け入れに協力し、さらには新たな展示生物を提供したことが、復興を力強く後押しした。

 ゴマフアザラシの「くらら」が避難先の鴨川シーワールドで出産した子供は「きぼう」と名付けられ今、元気な姿で来館者を迎えている。3月21日にはトドの「フク」が避難先から戻り、すべての動物の帰郷が完了した。

 当初からシーラカンスの生態解明に力を入れ、解剖標本や稚魚の水中映像などを公開している。シーラカンスのキャラクター「権兵衛(ごんべえ)」の人気も上々とか。
 

<きづなテーマに再開>

 いわき市のスパリゾートハワイアンズは2月8日、「きづなリゾート」を新コンセプトに約11カ月ぶりに全館で営業を再開した。

 震災前から建設を進めていた120室、500人収容の新ホテル「モノリス・タワー」も同日開業した。

 メイン施設の大型屋内プール「ウォーターパーク」が復旧し、連日子供たちの歓声でにぎわっている。「きずなキャラバン」として、全国公演を続けてきたフラガールたちも本来のステージに戻り、熱のこもったポリネシアンショーを披露している。

大勢の観客を前に華やかな舞台(ハワイアンズ)
大勢の観客を前に華やかな舞台(ハワイアンズ)

 施設を運営する常磐興産は、3年後の2014年に震災前の年間来館者(日帰り145万人、宿泊40万人)に戻す計画を掲げている。

<いわき沿岸の被災地>

 美空ひばりさんがレコーディングした「みだれ髪」のモチーフになった塩屋埼灯台周辺は、いわき市内でも津波被害が大きかった。灯台に向かう道路沿いは、建物の基礎を残すだけの光景が続く。そんななか、みだれ髪の歌碑前にある「山六観光」は昨年末から物販営業を再開した。店舗内には被災当日、売店の使い捨てカメラで撮影したという写真が展示されている。団体客などからの要望で「当時のようすを説明させていただきます」(同店)。今回昼食で訪れた「丸克商店」(小名浜)や「アクアマリンふくしま」なども、写真や映像で被災時のようすを伝えようと取り組んでいる。

発災時の状況を説明(山六観光)
発災時の状況を説明(山六観光)


<春の訪れは間近>

 県下で桜の名所として名高い三春町の「滝桜」。ベニシダレの一本桜で国の天然記念物の指定を受けている。今年の観桜期間は4月6日から5月6日(開花状況により変更)。4月14日から同22日は午後6時から9時までライトアップも行う。

 このひと月に例年30万人が訪れるという人気スポットだ。混雑が予想される週末には駐車場からの無料シャトルバスや、JR三春駅からの臨時バスも運行する。観桜料は1人300円(中学生以下無料)。

 滝桜と合わせて、旅行商品の目玉となるのが福島市内の「花見山」。私有地を花見山公園として開放しているが、今年は樹木養生のため、立ち入り規制が行われている。周辺散策は可能だが注意が必要だ。詳細は花見山コールセンター(電話:024―526―0871)へ。
 

<県の誘客対策>

 福島県は5月27日まで、体験型の宝探しゲーム「リアル宝探しイベントin福島コードF―2」を7温泉地で実施している。昨秋、約2万人を集めた人気企画の第2弾。今回は3万5千人の参加を目指す。宝の地図の暗号を解きながら県内各温泉地に隠された宝箱を探す仕組みだが、「難しい点が奏功し、人気を集めています」(県観光交流課)。新年度事業では磐梯吾妻スカイラインなど観光有料道路3ラインの無料開放、旅行会社と連携した誘客事業なども実施する。

宝探しゲームを解説(飯坂温泉・旧堀切邸)
宝探しゲームを解説(飯坂温泉・旧堀切邸)

 原発事故への不安に対しては、正確かつ最新の放射線情報を県ホームページのトップ画面から提供している。客観的な事実を伝え、最後は個人の判断に委ねるのが現状だ。そんななか、明るい話題もある。震災後1年を機に、台湾から福島県への渡航自粛勧告が解除された(東京電力福島第一原発の半径30㌔圏内は除く)。「見て、感じて、知って」もらうことが、風評被害克服への最大の支援になる。今後も正確な情報発信や誘客事業に力を入れていく。

全通1周年を祝う、「みずほ」「さくら」は増発

新大阪駅でセレモニー開く
新大阪駅でセレモニー開く

 山陽・九州新幹線の全線開通1周年および「みずほ」「さくら」の増発を記念したセレモニーが3月17日、新大阪駅で開かれ、JR西日本や熊本、宮崎、鹿児島3県の関係者らが集まるなか、増発の一番列車となる「みずほ605号」(午前8時59分発鹿児島中央駅行)の出発を祝うテープカットなどが盛大に行われた。

 JR西日本の川上優常務執行役員・近畿統括本部大阪支社長は「震災直後の厳しいスタートだったが、予想を上回る客が九州方面へと足を運んでいただいた。今回のダイヤ改正で、みずほとさくらは8往復増発し、1日23往復とさらに便利になった。南九州の魅力をぜひ堪能してほしい」とあいさつした。

 また、南九州3県を代表し、鹿児島県大阪事務所の伊喜功所長が「南九州3県は食、温泉、伝統芸能など多種多様な魅力がある。ぜひひとつの観光地と捉え訪れてほしい。増発により、南九州の観光振興と、関西との交流促進が今後、ますます発展することを期待したい」と述べた。

 当日は、新大阪駅在来線コンコースで、南九州3県による観光PRイベントも実施され、3県のキャンペーンレディーや、「くまモン」「さくらじまん」「みやざき犬」といったゆるキャラたちが、それぞれ各県の魅力をアピールした。

 なお、JR西日本が発表した同社管内発の個人型旅行商品実績(11年4―12年1月)は、熊本方面が前年比約5倍、鹿児島方面が約15倍の伸びという。

「観光地域づくりプラットフォーム推進機構」発足シンポ

清水愼一会長
清水愼一会長

<新しい観光地域づくりの推進母体に>

 日本観光振興協会が事務局を務める「観光地域づくりプラットフォーム推進機構」(会長=清水愼一立教大学観光学部特任教授)がこのほど設立し、3月2日に東京都内で発足記念シンポジウムを開いた。「観光地域づくりプラットフォームによる地域イノベーション~観光地域づくりの組織と人を考える~」をテーマに基調講演やパネルディスカッションを実施。全国から観光関係者約150人が参加し、登壇者の話に耳を傾けた。

 冒頭のあいさつで清水会長は「環境が様変わりし、従前のような観光振興では立ち行かなくなった。いかに地域が豊かになり、来訪者も満足するかを思考していったところ、辿りついたのが観光地域づくりプラットフォームだ。ポイントは縦割りをどう乗り超えるかと地域と来訪者をつなげ、いかに満足してもらうかというマネジメント。はっきりした解答はまだないが、日本の観光を革新しようとする人たちの組織なので、それをネットワークしさらに高め合っていくのが機構の狙いだ」と語った。

 観光地域づくりプラットフォームや機構の詳細については大社充代表理事(グローバルキャンパス理事長)が「観光関連事業者だけが取り組む観光振興から、地域住民も含め、農商工との連携や6次産業化で交流人口を拡大することで地域を元気にしようというまちづくりを含めたものに変わってきた。主体がマーケットサイドから地域になり、地域は商品を作って売り、来訪者をもてなしていくという機能を内部に設置しなければならなくなった」と説明。この新しい観光地域づくりの推進母体が観光地域づくりプラットフォームで、機構は各地の組織が情報交換を行い、課題解決に役立つ研修や研究を行っていくという。

清水愼一会長
清水愼一会長

 具体的なプラットフォームの取り組み事例として、小値賀観光まちづくり公社専務の高砂樹史氏が「小さな島の未来への挑戦」と題して、長崎県小値賀町での取り組みを語った。高砂氏は少子高齢化が進む島で「観光は手段。次世代に島をつなぐためのもの」と断言。そのための組織づくりとして、2006年にそれまでの観光協会と自然学校、民泊の組織の3つを統合し、NPO法人として「おぢかアイランドツーリズム協会」を設立。半年間話し合い、地域で議論を重ねた結果だったが、これが大きな転機になったという。併せて、株式会社「小値賀観光まちづくり公社」も設立し、第3種の旅行業登録を取得。協会で体験メニューを担当し、会社は顧客からの問い合わせや要望に応じた手配など、両者の役割を分担しながら動いていることが成功の秘訣だと語った。

 一方、大々的な改革を行ううえで、最も難しいのは島の人たちにコンセンサスを求めることだとし、「全員一致は無理。いつも49対51で進めてきた。実績を出していけば反対の人が賛成に変わっていく」と信念を貫き、結果を出すことが重要だと話した。

 最後はコンセプトを覆さないことの重要性も強調し、「『おぢからしさ』を大切にすることと、経済に貢献して若者が暮らせる島にすること。この2つを念頭に一人ひとりが判断している。例えば250人が限度の修学旅行は、257人の場合でも勇気を持って断る。これを守っていくことが大切だ」と語った。

新団体設立延期に、日観連と国観連

<4月改め、10月設立目指す>

 日本観光旅館連盟(近兼孝休会長)はこのほど、国際観光旅館連盟(佐藤義正会長)との合併・新団体設立に関して、当初予定の4月の新団体設立を延期し、10月の設立を目指すことを、日観連の広報誌「やど日本MAGAZINE」のなかで発表した。3月27日時点で国観連側は新団体設立のスケジュールに関しては発表をしていない。

 日観連の発表によると、両団体の消滅、新団体設立のスケジュール延期に関して、昨年秋からの国観連側の内部調整に約半年間を要したことを理由に挙げ、当初予定の4月1日の新法人設立には物理的に困難になり、設立目標を10月1日に延期したという。

 今後のスケジュールは4月に新法人の定款作成、5月に両団体での新設合併契約の締結、6月に両団体の総会で新設合併契約の承認、9月30日に両団体の消滅、10月1日に新法人の成立、内閣府への合併の届け出提出を目指す。

 本部会費については、2012年度の本部会費は両団体とも現行の本部会費のままで、重複会員は従来通り両団体の本部会費を納め、新法人設立以降分の日観連本部会費分については、年度末に月割りで精算をする。13年度は11年度総会決議のとおり旧団体の本部会費を納め、14年度からは統一本部会費となる。

応募数は約11万通、4年目も「もう一泊」継続へ

興津部長(左)、吉川委員長
興津部長(左)、吉川委員長

 日本旅行業協会(JATA)の国内旅行委員会は3月21日、「『もう一泊、もう一度』国内宿泊キャンペーン2011」の抽選会を実施した。全コースの応募総数は、前年度比35・7%増の10万9983通と大幅に増加した。キャンペーン開始当初に計画した3カ年は11年度で終了だが、認知度も上がっているため、4年目の12年度も継続する。

 自ら抽選を行った国内旅行委員会の吉川勝久委員長は「震災後の非常に厳しいなかにも関わらず着実な伸びを示した。広告なども自粛し、ホームページのアクセス数は前年を下回ったが、応募数は大きく前年を上回り、20万人泊を超えている。国内旅行自体はまだまだ伸ばしていかなければならないが、このような実績を出した効果は大きい」と評価した。

 4年目も継続することに関しては、宿泊をともなう国内旅行の重要性やキャンペーンの浸透などをあげ、「2年目から各社の旅ホ連と提携し、各施設からの期待も大きい。やり方次第でまだ伸びる可能性がある」と語った。今後は「これまでの経験を生かして内容を進化させる。若年層向けにフェイスブックの利用なども計画中だ」とし、「状況に応じて変形するかもしれないが、次年度に限らず続けていきたい」と意気込みを語った。

 また、国内・訪日旅行業務部の興津泰則部長は「11年度は店舗のカウンターで紹介したのが成果につながったとみている。次年度からは若年層の促進に向け、インターネットでの誘客にも力点を置き、両面で進めていく」と述べた。

 なお、各コースの応募数は4泊すると応募できる「もう一泊、もう一度コース」が同41・6%増の2万4676通、1泊から応募できる「春夏秋冬コース」が18・9%増の7万5492通など。

No.306 入湯手形25周年を超えて - 次代の“黒川温泉”を模索

入湯手形25周年を超えて
次代の“黒川温泉”を模索

 熊本県阿蘇郡の黒川温泉は小規模旅館が立ち並ぶ風情ある温泉地。今や温泉地ランキングで常に上位に名を連ねるが、約30年前までは老人会を主要顧客にひっそりと営業していた。その黒川を一躍有名にしたのが各旅館の露天風呂を巡ることができる「入湯手形」システムと統一された景観。取り組みは全国の小規模温泉地の模範となり、視察も数多く受け入れる。そのなかで、黒川温泉観光旅館協同組合は昨年の入湯手形25周年や世代交代などを契機に次代の“黒川温泉”を模索している。

【聞き手=関西支社長・有島 誠、構成=飯塚 小牧】

≪魅力の磨き上げが課題―穴井≫

 ――黒川温泉の現状や課題を教えて下さい。

●穴井: 2010年度の入湯手形は9万2640枚で宿泊者数は28万7596人、入込客数の推定は86万2788人です。……

≪個々の旅館が個性競う―後藤≫

●後藤: 黒川は何でも全体で取り組み、リーダーが学んだものを忠実に実行してきました。80年代当時は宿泊客減少や景観など全体が共有する問題意識があり、新しい取り組みを始めました。……

≪温泉を伝える取組必要―下城≫

 ――現在、理事の半数は世代交代されているようですが、若手の皆さんはどうお考えですか。

●下城:青年部では6年前から「支援」「継承」「チャレンジ」を使命に掲げ、新たな取り組みを始めています。……

≪地域連携をさらに強化―北里≫

●北里:青年部はこれまでの10年間、「入湯手形を超えるものを作らなければいけない」という想いで活動をしてきました。……

≪HP使用し各種提案を―武田≫

●武田: 各事業者が何を思っているのか把握していないのが問題です。当初は地元の人間だけだったのが、商店も外の人が営業するようになり、交流も徐々に薄れてしまいました。……

 

※ 詳細は本紙1457号または日経テレコン21でお読みいただけます。

中途半端な改革 ― 時代に追い抜かれる(4/1付)

 今年の春の訪れは遅かった。3月末なのに、桜はほとんど咲いていない。冬がとても長く感じていた。そして昨年の東日本大震災以降、ずっと得体のしれない息苦しさを感じている。

 3・11の後も、日本列島は不気味に揺れ続いている。仕事中に突如として大きな地震が来たり、眠る直前にも布団の中で微かな揺れを感じる。これがきっとどこかで心のストレスになっているのだろう。ついこの前、夜一人で仕事をしていると、大きな揺れが長く続いた。そのときは、どうなってもいいやと、揺れに身を任せていた。少し疲れていたのかもしれない。被災地の方々は、寒さのなか、収まる気配のない揺れに相当なストレスを溜めているはずだ。

 だが、どんな精神状況にあろうと、長い冬が遠ざかり、明るい日差しと薄紅色の桜が町を彩り始めると、気分的に軽やかになってくる。生命力に満ち溢れた「春」という季節は、私のような取るに足らぬ者にも活力を与えてくれる。

 さて、地震の揺れについては、我われの力ではどうにもならない。このため、十分な備えをして置く事しかできないが、人間による政治の揺れの方が、どうにも収まらない。

 前政権党から、現政権党に交代したとき、多くの一般市民は、コンクリートのような長い冬が終わり、新鮮な「春」が訪れたと、かつてない大きな期待に満ち溢れた時期があったのではないだろうか。しかし、その時期はあまりに短かった。現政権党は、前政権党に揺さぶられ、次第に前政権党の政策に近づいてきている。これでは、夢も希望もない。冬に逆戻りしているようなもの。改革を求めた国民は今、路頭に迷っている。

 フランス革命でも、第一身分(聖職者)を批判して、第二身分(貴族)が第三身分(市民や農民)と妥協的な社会の枠組みを模索しようとしたが、もっと大きな改革を望む市民によって、歯車が動き出し、第二身分の貴族は、時代の流れに追い抜かれてしまった。国家は滅多に揺らがない。だが、一旦動き始めると、中途半端な改革は、さらなる大きなうねりに埋没し、時代に取り残されてしまう。行き過ぎによる揺り戻しを何度か繰り返しながら、しかるべき新たな秩序が生まれる。現政権は、このままでは時代(国民の意志・民意)に追い抜かれるだろう。

(編集長・増田 剛) 

麗水世界博をPR、海洋をテーマに106カ国参加

韓国観光公社の李参社長
韓国観光公社の李参社長

 韓国観光公社(李参社長)と2012年麗水世界博覧会組織委員会(姜東錫委員長)は3月13日、帝国ホテル東京(千代田区内幸町)に旅行会社や報道関係者を招いた「麗水世界博覧会交流の夕べ」を開き、韓国の麗水で5月12日から始まる2012麗水世界博覧会をPRした。

麗水博組織委員会の姜東錫委員長
麗水博組織委員会の
姜東錫委員長

 来日した韓国観光公社の李社長は「海洋をテーマに、世界中の人が海の意味と大切さを再認識し、海と共存する知恵が詰まった博覧会になる」と説明し、「日本と韓国は経済・文化的に緊密な協力関係を築いているが、多くの日本人に博覧会に来てもらい、両国の友好がより一層深まることを期待している」と語った。

 同じく来日した姜委員長は「韓国を訪れる日本人の80%はソウルに行く。多様な文化遺産や自然景観、地方のゆったりとした良さや心など、韓国にはソウル以外にも魅力がたくさんあるのにもったいない。今回の博覧会で南海岸の美しさと多彩な食文化などをゆっくりと満喫する健康観光、スロー観光、グリーン観光を楽しんでほしい」と呼びかけた。

 全国旅行業協会(ANTA)の二階俊博会長は「麗水での開催は同じアジアの隣国の仲間としてうれしい。愛知万博では中韓にお世話になり、上海万博は日韓の協力で成功した。今回は日中が協力する番」と送客に注力することを語った。

ANTAの二階俊博会長
ANTAの二階俊博会長

 日本旅行業協会(JATA)の金井耿会長は「2月の視察旅行に参加し、今は具体的な商品作りに取り組んでいるところ。韓国の南海岸は今まで日本人にあまりイメージがなかったので、どうPRしていくかなど、具体的な一つひとつの課題を解決し進めていきたい」と力を込めた。

 2012麗水世界博覧会は、12年5月12日―8月12日の93日間、韓国の全羅南道麗水で開かれる。「生きている海、息づく海岸」をテーマに、世界の最先端海洋技術の紹介や環境問題、海洋生態系保護などの問題解決に向けた取り組みを世界に発信。世界106カ国と10国際機関が参加し、韓国内だけで800万人の来場者を見込む。

 目玉となる会場舞台BIG―Oでは連日さまざまなプログラムが予定され、会場全体で1日約40回、93日間で約8千回の公演を予定。毎日1つの国を指定し、主催式典や文化催しなどを行うナショナルデーが設定され、日本は6月2日となる。参加国のなかで最大規模を誇る日本館では「森、里、海、つながり紡ぐ私たちの未来」をテーマに震災による被害から復興する日本の姿を紹介する。

JATAの金井耿会長
JATAの金井耿会長