「表示制度は営業に影響」、“耐震改修”改正案に要望書(全旅連)

(左から)佐藤会長、大木副会長、横山公大青年部長
(左から)佐藤会長、大木副会長、横山公大青年部長

 全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会(佐藤信幸会長)は3月29日、全旅連本部で耐震改修促進法の改正案についての会合を開き、その後会見を行った。佐藤会長は、地方公共団体の補助率が各市町村で異なることや、建築物の地震に対する安全性の認証制度(表示制度)創設による営業への影響などの問題点を指摘し、改正案についての要望を各方面に訴えていく方針を示した。各都道府県組合においては、都道府県自民党連3役、観議連代表者、市町村長への陳情活動を行い、地方公共団体には要望活動を行っていく。

 要望書では、(1)地方公共団体の補助金については、国が示した補助率を拠出する指導されたい(2)「2015(平成27)年度末までに耐震診断の結果を公表する」ことについては、各施設の進捗状況を勘案し、公表までに充分な期間の猶予をされたい(3)耐震性に係る表示制度の創設については、営業に大きく影響を与えるため、一定期間の猶予をされたい(4)旅館・ホテルを宿泊避難所として指定していただき、防災拠点と同率の補助率を拠出されたい(5)延べ床面積5千平方メートル未満の施設においても、国および地方公共団体は、5千平方メートル以上の施設と同率の補助金を拠出されたい――の5項目を求めている。

 佐藤会長は、「東日本大震災時には525万泊の受け入れを行った。南海トラフの巨大地震や首都直下地震の想定被害は、東日本大震災を大きく上回る。旅館やホテルを防災拠点(第2避難所)と考え、助成率を増やしてほしい」と補助率の増加を求めた。また、建築物の地震に対する安全性の認証制度(表示制度)の創設については、「マル適マークのような表示制度ができてしまえば、マークの義務化をしなくとも、お客様にはマークが無いだけで判断され、来てもらえなくなる。診断から工事までは、最低でも半年から1年かかる。診断、改修をしようと思っても、15年度末までという期日は難しい。猶予が必要」と話し、認証制度(表示制度)の見直しと、耐震診断結果の公表の期日延長を訴えた。公表期日に対し、大木正治副会長(会長代理)は「会合では、5年や10年の猶予が必要など、さまざまな意見があがったが、期日を〝いつまで〟とするのが相応しいのか判断できない。何年あればできるというものでもない」と述べた。同協会は、耐震診断の結果公表の期日延長は求めていくが、明確な期日を提示しないとした。

 既報の通り、同改正案は2月27日に自民党各部会後、自民党政策審議会で決定。3月5日、自民党総務会後には与党協議会(公明党との連立政権のため)で了承された。3月8日に閣議決定され、ゴールデンウイークごろには衆・参議院本会議で決定予定だ。

【内川 久季】

No.337 観光産業政策検討会 - 産業の強化へ“提言”を発表

観光産業政策検討会
産業の強化へ“提言”を発表

 観光庁はこのほど、観光産業の抜本的な改革と強化へ向け12年9月から行われてきた「観光産業政策検討会」を取りまとめた「提言」を発表した。先進的な旅行産業への成長や、宿泊業のマネジメント・生産性向上など6つの項目で構成。13年度中に即実施するものと、専門的な場を設け検討を続けるものとに分け、スピード感を持っての実現を強調する。観光立国から10年が経過しても未だに産業として確立されない「観光産業」が変わる布石となれるか。

【伊集院 悟】

 

≪旅行業法の見直しへ、宿泊業の生産性向上へ支援≫

 12年9月から計4回行われた「観光産業政策検討会」は、旅行業、宿泊業のトップや大学教授などの有識者などで構成し、世界で戦える観光産業のブランド確立や観光産業の強化へ向けて課題や具体的な方策を議論してきた。これを踏まえて今回、観光庁が取りまとめた「提言」は6つの項目で構成され、(1)観光サービスの品質の維持・向上を通じた日本の観光産業のブランド確立(2)先進的な旅行産業への成長(3)宿泊産業におけるマネジメント・生産性などの改善・向上(4)旅行の安全の確保(5)IT技術の発展に対するニーズの高まりなど新しい事象への対応(6)観光産業における優秀な人材の確保・育成――を掲げる。

 

※ 詳細は本紙1499号または4月15日以降日経テレコン21でお読みいただけます。

御菓子御殿の創業者・澤岻カズ子氏 ― 沖縄にお菓子文化生む

 沖縄は日本有数の人気観光地。今月初めに出張で沖縄に向かったが、飛行機の座席が取れないほどの混雑ぶりだった。

 沖縄が観光地として魅力的なのは、美しい自然に加え、そこに住む人々が琉球王国時代からの独特な文化・風習・価値観を持ち続けているからだろう。食文化も風土に根差した独自色が際立ち、旅人には面白い。

 そんな沖縄も太平洋戦争末期の沖縄戦以後、1972年の日本復帰までの間、米軍の施政権下に置かれ、米国文化を色濃く残すことになった。お菓子も、米国からチョコレートやドーナツなどが輸入され、アメリカナイズされていった。日本復帰直後には米国の輸入菓子か、本土で作られた“沖縄風”菓子がほとんどで、昔ながらのサーターアンダギーやちんすこうなどを除けば、沖縄を訪れた観光客は、お土産には米国からの輸入菓子を買って帰るのが常であった。

 日本復帰当時、沖縄県読谷村で小さなお菓子屋が生まれた。現在、沖縄のお土産で一番人気となった御菓子御殿の「紅いもタルト」だが、澤岻カズ子社長が村おこしの一環として紅いもタルトを苦労の末、生み出したのだ。澤岻社長は「沖縄にオリジナルのお菓子を作りたい」との一心で、当時あまり作られていなかった紅いもを集めたり、品質改善などを行い、今や沖縄旅行でのお土産の定番商品にまで成長させた。この辺りの苦労話や誕生秘話は、本紙6月1日号の澤岻カズ子社長のインタビュー記事で紹介する予定だ。

 御菓子御殿では、お土産のお菓子にとって優先順位の高い「日持ち」とは正反対に、無添加・無着色、そして「作り立て」を食べてもらいたいという想いが強い。その日の観光客数を予測し、できるだけ翌日までに販売してしまう。今では1日9万個、多い日には1日15万個を作っても追いつかない日もあるという。製造業の少ない沖縄で500人を超える雇用創出にも貢献している。沖縄観光を活性化するエンジンの一つだ。

 残念なのは類似品が多いこと。途中の苦労をすっ飛ばして他社のヒット商品の類似商品を販売するのは観光業界の悪しき慣習だ。近隣諸国でも類似品が横行しているが、汗をかき、苦労を重ねたオリジナル商品との文化度の違いは歴然である。とくにお菓子の場合、作り手の愛情は必ず消費者に伝わるものなのだ。

(編集長・増田 剛)

15年春DCは福島、日本一のおもてなしを

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 2015年春のデスティーネーションキャンペーン(DC)の開催地が3月15日、福島県に決まった。復興に向けて歩む姿をアピールし、風評払拭と福島県観光への需要を喚起する。

 佐藤雄平福島県知事とJR東日本の里見雅行取締役仙台支社長が福島市内で発表した。4月1日から6月30日までの3カ月間実施する。DCの県全域での開催は01年度以来14年ぶり4回目。05年度には会津地方単独で「あいづDC」を開いた。取り組みを通じて支援に対する感謝の気持ちを伝えるため「日本一のもてなし」を目指す。

 福島県では東日本大震災以降、観光産業の風評を払拭するため、福島県観光復興キャンペーン委員会を設立し、情報発信や誘客事業に取り組んできた。今年度までを「観光復旧期」とし、大河ドラマ「八重の桜」を核とした事業を展開。次年度からDC開催年度への2年間を「飛躍期」と位置づけ、来年のプレDCなどに取り組む。

スマホでカード決済、楽天、旅館にも導入促進

カードリーダーを装着したスマホ
カードリーダーを装着したスマホ

 楽天は、スマートフォン(スマホ)と専用のカードリーダーだけで、いつでもどこでも簡単にクレジットカード決済ができる「楽天スマートペイ」のサービスを昨年12月6日から開始した。従来、現金払いしか対応できていなかった旅館やホテル、土産物店、ペンションなどでも導入店舗が増えている。また、レジ以外でクレジットカード決済をしたい事業者の利用も多い。

 同サービスは、加盟店がアプリを起動し金額を入力後、顧客のクレジットカードをカードリーダーに通す。スマホの画面上でお客からサインをもらい、レシートはメールで送信する仕組みだ。初期費用はカードリーダーの機器代を含め2980円。月額固定費は無料。

 楽天スマートペイ事業の小林重信事業長は「既存のクレジットカード端末が約10万円するのに対し、はるかに安くサービスを始められる。現在、事業者が所有しているスマホやタブレット端末(iPadなど)を使用してもらうので、改めて機器を用意する必要はない」と導入費用の安さを強調した。さらに、1つのカードリーダーをいくつものスマホやタブレット端末で使用することが可能で、各社員のID作成もできる。「何時、誰が」使用したのか把握も容易だ。現在、流通している9割のスマホやタブレット端末に対応し、キャリア・OSともにオープンフリー。新機種が販売される度に対応もしていくという。

 利用開始期間は最短で3営業日。決済手数料は一律4・9%に設定。カード決済の重要なポイントである「入金サイクル(回収期間)」は、楽天銀行を使用した場合、自動で翌日入金。楽天銀行以外の振り込みでも翌営業日の入金だ。小林事業長は「資金繰りを重視する事業者に対し、現金払いと遜色ない入金サイクルを実現している」と語った。

旅館の海外展開探る、加賀屋らが中国で調査事業

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 日本旅館の海外展開の可能性を探るプロジェクトに取り組む石川県和倉温泉の加賀屋を中心とした事業共同体は3月14日、金沢市内のホテルで、中国を対象に実施した調査事業の報告会を開いた。

 同プロジェクトは、経済産業省の「クール・ジャパン戦略推進事業」の採択事業。おもてなしに代表される日本の接客や、精巧な建築技術、素材を生かした日本料理、器や調度品に見られる精緻な工芸品など、日本のサービスや技術力が集約された日本旅館をまるごと海外展開することで、経営ノウハウやプランニング、人材育成、設計建築、日本食や工芸品の輸出など、日本が得意とする産業を海外に売り出すビジネススキームの確立を目指す。

 事業に取り組む「日本旅館海外展開プロジェクト共同体」は、加賀屋のほか、旅館の建築設計などを手掛ける金沢建築企画、金沢市内で料理店やホテルを経営する浅田屋、金箔工芸を製造販売する箔一、調査プランニング会社の計画情報研究所と、いずれも石川県に基盤を置く企業で構成。中国ビジネスのコンサルタントを手掛けるアルプ企画も特別協力する。

 中国を対象に実施した2012年度の調査事業は、日本旅館の海外展開に向けて課題とされる(1)日本旅館のサービスが中国人消費者に受け入れられるか(2)中国で日本旅館のサービスを供給するための人材(接客・建設技術者)を確保できるか(3)日本旅館を運営する現地の経営者や投資家を確保できるか――の3点について検証を行った。

 おもてなしを核とした日本旅館のサービスの可否については、在日中国人に加賀屋などで宿泊してもらいアンケート調査を実施した。スタッフのきめ細やかな接客や、金箔などの工芸品に対する評価は高かった一方、布団で寝ることや、魚主体の料理構成、味付けなどの点で、違和感を覚える声も多く、日本らしさを失わずに中国人が快適に感じるおもてなしの確立が、今後の課題として浮かび上がった。

 また、海外展開に向けた人材確保の調査では、在日中国人に向けた日本旅館スタッフによる人材育成講座、中国本土での現地大学生を対象とした日本旅館の紹介や文化講座を実施。おもてなしなど、日本旅館のサービスに対する理解度は高く、日本旅館への就労意欲も高いことがわかった。

 日本旅館の運営者については今年3月1日、中国・大連市で現地投資家やデベロッパーなどを対象に、体験型プロモーションを実施。宿泊施設経営者や開発事業者、政府関係者など100人を超す参加があり、関心の高さがうかがえた。

加賀屋の鳥本専務
加賀屋の鳥本専務

 報告会で、共同体の代表を務める加賀屋の鳥本政雄専務取締役は「文化が異なる国で、日本旅館のスタイルをただ押しつけるだけでは、ビジネスとして成り立たないことはわかった」と難しさを指摘する一方、既に現地から10数件の引き合いがあり、うち3件は具体的な内容であるとして「実現には、まだまだ課題も多く、決して簡単ではないがビジネスチャンスはある」と可能性の高さに期待を寄せた。

 また「この事業は海外からの訪日客を増やすことが目的ではないが、この取り組みが結果としてインバウンド増加にもつながっていく。今後、チャンスがあれば、ほかの国でもトライしてみたい」とさらなる展開に意欲を示した。

 
 

500会員が東旅協、一般社団化で臨時総会 (ANTA東京支部)

青山能久支部長
青山能久支部長

 全国旅行業協会東京都支部(青山能久支部長、628会員)は3月15日、4月1日に「一般社団法人東京都旅行業協会」を設立するのにともない、臨時総会と設立説明会を開いた。新団体に加盟する意思のある会員は500社を超えるというアンケート結果を発表し、新団体への加盟に改めて理解を求めた。

 臨時総会は、東京都支部の残余財産を新団体の東京都旅行業協会に引き継ぐことを承認。その後、説明会で新団体の定款や規約などについて報告した。

 青山支部長は「今まで支部は独立した活動をしてきたが、本部の一般社団化で本部と直轄した支部は、法定5業務しかできなくなる。都支部でいうと、地区制度も設けることができない。そこで、各支部がこれまでの業務を行うために、本部の指導のもと、4月から全国に各都道府県旅行業協会を作る」と新体制について説明した。新団体加盟への意向アンケートで約110社が東京都旅行業協会に入会しない見込みだが、体制に大きな影響はでないという。一方、今後本部のみの会員には東京都独自の事業案内が送付されないことなど、注意点も促した。また、入会金と会費の変更も報告。会費は東旅協が定額2万円だが、本部会費が低くなるため、東旅協に入会した場合でも実質、現行の会費から変更はない。東旅協の入会金は1種10万円、2種7万円、3種3万円、地域限定3種2万円。現在の都支部会員に入会金は発生しないが、移行期を過ぎたあとは新規入会扱いになる。

創立60周年祝う、“強く存在感を示す”(埼玉県旅行業協会)

埼旅協60周年を祝い記念撮影
埼旅協60周年を祝い記念撮影

 埼玉県旅行業協会(浅子和世会長)は3月21日、宮城県・秋保温泉のホテルニュー水戸屋で創立60周年記念式典を盛大に開いた。

 浅子会長は「埼旅協は1953(昭和28)年6月に埼玉県旅行あっ旋業協同組合として設立し、66(昭和41)年6月に旅行業界の健全なる発展に向け埼玉県旅行業協会を発足。この60年間に大きく成長し発展してきた」と振り返り、「私たちは10年、20年後を見据え、4月1日から一般社団法人埼玉県旅行業協会として、新たな決意と会員の協調によって、強くて存在感を示す協会を目指していく」と力強くあいさつした。

 地元・埼玉県出身の全国旅行業協会の鈴木明治副会長は「多くの先輩たちが築いてきた埼旅協に誇りを持って仕事をしてほしい。浅子会長のもと、4月からの新しいスタートに期待している」とエールを送った。

2013―14年度版発刊、東京総合案内所名簿

 東京総合案内所連合会はこのほど、2013―14年度案内所名簿を発刊した=写真。同名簿は5年目を迎え、新たに参加した案内所を含め36社、4859施設が掲載され、内容も検索しやすい改訂版になっている。

 同連合会は加盟案内所に配布しているが、希望者には送付する(送料別途)。詳細は、新橋会、レストチェーン、東海予約センター東京、北の国旅館連盟まで。

 【掲載案内所】アーバンネットワーク▽Nの案内所▽ガイドセンター亀井▽カワムラチェーン▽関西予約センター▽掬泉会▽紀行会▽北の国旅館連盟▽九州観光旅館連盟会▽山水会▽山友会▽信濃路会▽新橋会▽スパネット▽全温予約センター▽大京予約センター▽中国四国フロント▽東案(旧・プレッサ)▽東海予約センター東京▽東京リザーブセンター▽東北信予約センター▽殿岡案内所▽新潟交通▽西日本インフォーメーション東京▽白鳥会▽ふくいリザーブセンタ―▽北海道ツーリストセンター▽本州会▽まゆみリザーブセンタ―▽むさしの手配センター▽もみじ会▽森谷案内所▽M.YADOROKU▽予約センター東京企画▽リザーブバスセンター▽レストチェーン

星のや東京、開業へ準備

完成予想図
完成予想図

 星野リゾート(星野佳路社長)は3月15日、「星のや東京」の開業への準備に入ったと発表した。同社のラグジュアリーブランド「星のや」としては、軽井沢、京都、竹富島に次いで4軒目。現在、三菱地所が進めている「丸の内再構築プロジェクト」の一環に位置し、「国際水準の宿泊施設として、日本旅館の哲学と運営手法を取り入れるホスピタリティ事業の手法を世界に発信していく」(同社)としている。

 所在地は東京都千代田区大手町1丁目5番1他(地番)。地下3階、地上18階で、高さは約90メートル。客室数は84室、延べ床面積は約1万2千平方メートル。日本料理レストランやスパ、カンファレンスルーム、ショップなども入る予定。駐車台数は30台。新築の工期は14―16年度を計画している。