No.447 47都道府県観光アンケート、観光予算0.3%減の約1057億円

47都道府県観光アンケート
観光予算0.3%減の約1057億円

 旅行新聞新社は昨年に続き47都道府県へ(1)2016年度観光関連予算(2)16年度一般会計予算総額における観光関連予算の比率(3)16年度の重点政策――に関するアンケートを実施した。補正予算や人件費の扱いなど各都道府県により条件が異なるため一概には比較できないが、1つのデータとして紹介する。なお、この紙面は47都道府県の順位付けをするものではなく、重点観光施策などを紹介するものである。

【編集部】

 
 
 
 2016年度の47都道府県の観光関連予算の合計は1057億1170万円と前年の1060億1249万円から0・28%減少した。47都道府県の観光予算の平均は22億4919万円。一般会計予算における観光関連予算の比率の平均は0・25694%となった。

 観光関連の予算を前年度と比較すると26の自治体で前年より増加。とくに熊本県と大分県では、ふっこう割の交付もあり、60億円以上観光関連予算が増額した。その他の県の予算額は、群馬県が約20億円の増額になっているが、それ以外の県では、3―5億円程度の増額幅の自治体が多い。

 一方で、21の自治体で観光関連予算が前年より減少。昨年の半分程度まで下がった自治体も多くみられた。一般会計予算総額における観光関連予算を前年度と比較すると、25の自治体が前年度より割合を伸ばした。比率が大きかった上位5県は1位が沖縄県で2・201%。前年度と比べ1・002ポイント増加した。2位が大分県1・118%、3位が熊本県0・688%、4位が高知県で0・683%、5位が鳥取県で0・570%と続く。…

 

※ 詳細は本紙1651号または11月25日以降日経テレコン21でお読みいただけます。

「民泊はビジネス」主張、国会議員らに要望書提出(日本旅館協会)

議員らに説明する針谷会長(右)
議員らに説明する針谷会長(右)

日本旅館協会(針谷了会長)は11月10日に、民泊関係の要望書を国会議員らに提出した。「家主不在型民泊はビジネスであり、旅館営業許可の取得が当然」などを主張。同日に東京・永田町で政経懇話会パーティ―を開き、駆けつけた多数の政治家らに要望を繰り返し訴えた。

営業日を宿泊の有無に限らず、予約可能日とすることと、連続した日にすること、届出・登録書類へ記載などを要求。実泊日だけ数えることや、記載がない営業日の把握などは現実的ではないとした。

細田氏も駆けつけた
細田氏も駆けつけた

一方、事業者に関して、届出に住民票の添付と、同一の住所で複数の届出・登録を認めないことなどを求めた。親族らが異なる期間で届出・登録をすれば、事実上日数制限はなくなる。そのほか、違反者に対する罰則・罰金の強化も要求した。

旅館業界は、政府が当初、宿泊施設不足の打開策として挙げた「民泊」は必要ないとする。すでに大都市部のホテル稼働率は減少傾向をみせるなか、「インバウンドの対策としての根拠は無くなった」と主張。

欧州諸国は民泊の規制が強まっている。テロの脅威や、犯罪などから国民を守るためだ。現状は「日本だけが逆行している」と強調した。

同日行われた政経懇話会パーティーに、自民党観光産業振興議員連盟会長の細田博之氏をはじめ多数の政治家らが参加。旅行関係者を前に、「やるならば同等の条件」や「安全安心を守るべき」などの声が聞かれた。

視線 ― 客や旅人は監視の目から離れたい

 洋服屋で服を選んでいると、店員が来て話しかける店がある。大体そういう店は、店内が閑散としている。こちらが探す余裕も与えてもらえず、店に入って10秒もしないうちに、「何をお探しでしょうか?」と近寄ってくる。モゴモゴと口を濁していると、後をついて来て、視線まで追いかけて、「ジャケットですか?」「コートですか?」などと聞いてくる。

 仮に「ジャケット」などと答えると、店が「売りたい」ものを持ってくる。大抵の場合、持ってくる品物がこっちの欲しいものとかけ離れており、居心地の悪さを感じる。

 先日、擦り減ったクルマのタイヤを変えようとカー用品店に行った。「オンボロ車なので安いタイヤで!」と言っているのに、結構高いタイヤを勧めてきた。他の店に行こうとすると、「安いタイヤがあった」と言い出した。結局、客が欲しいモノよりも、自分たちが売りたい商品を買わせようとする。これがちょっとでも伝わってしまうと、客は店に対して不信感を覚えることになる。

 私はオートバイが好きなので、暇な時にはバイク店に行って、ずらっと並ぶオートバイを眺めている。幸い近所に大型バイク店が3店舗あるので、その日に気が向いた店に行く。1軒はいくらオートバイを眺めても、スタッフは誰ひとり声をかけて来ない。でも客が質問すると、懇切丁寧説明してくれる。もう1軒も放置してくれる。店内にベンチまで置いている。ツーリング中のライダーも利用できる清潔なトイレも設置している。私はこの店でオートバイを買った。もう1軒は、「何かお探しでしょうか。おっしゃっていただければ、すぐにバイクをお出ししますよ」と毎回声をかけてくる。「すみません、オートバイが好きなので、ちょっと見させてもらっています」と答えるのだが、毎回同じやりとりを繰り返す。結局、3番目の店には足が向かなくなってしまった。悪い店ではないのだが、なんとなく居づらさを感じてしまうのだ。色々な小さな備品も、放置してくれる店で結果的にたくさん買っている。

 店の方針として、客が入店した瞬間に、声をかけることが決まっているのかもしれない。けれど、洋服やオートバイなどは、「しばらく眺めていたい」という心理がある。客は自分が選ぶ商品と向き合い、「夢に浸る時間」が必要である。その貴重な“陶酔の時間”に、脇から店員が野暮なセールストークを囁かれても、煩わしさしか感じないものだ。

 客から視線を外し、言葉を加えない時間を与えることは、すごく大事なことなのである。

 旅館も客室係が部屋に入り、宿泊客とさまざまな会話を交わす機会がある。しかし、他人と話すのが煩わしいと感じる客もいれば、たまたま人と話すのが苦痛な時だってある。宿の方針で、客との会話から色々な情報を引き出すように言われることもあるかもしれない。旅人も勝手なものだが、どこかで「放っておいてほしい」との願望もある。人からの監視の目から離れたいために、旅に出たところもあるのだ。

 一流と言われるホテルやレストランのスタッフは、客への視線を感じさせない。まったく見ていないかといえば、そうではない。客がスタッフを求めたときに、ちゃんと視線が合うものなのだ。

(編集長・増田 剛)

ジャルパックが1位、顧客満足旅行部門で2年連続

 ジャルパック(藤田克己社長)はこのほど、2016年度日本版顧客満足度指数(JCSI)第4回調査の旅行部門で、2年連続の顧客満足1位に輝いた。知覚価値と顧客期待でも1位となった。

 JCSI調査は、日本最大級の顧客満足度調査で、年に6回実施している。約400の企業とブランドを対象に行われ、各企業の成長と世界における競争力強化を促すのが目的。

 今回の調査では、旅行のほか百貨店と衣料品店、国際航空、国内長距離交通、教育サービスの6業種で順位が発表された。国際航空ではシンガポール航空が、国内長距離交通ではスターフライヤーが顧客満足1位を獲得した。

 なお、旅行部門の2位以下は、(2)ANAセール(3)日本旅行(4)一休.com(5)近畿日本ツーリスト(6)HIS(7)阪急交通社――の順。

熊本城復旧へ支援、熊本市で贈呈式典行う(日観振、JATA)

贈呈式のようす
贈呈式のようす

 日本観光振興協会(山口範雄会長)と日本旅行業協会(JATA、田川博己会長)は11月10日、レゴ(R)ブロック「熊本城」と「熊本地震熊本城災害復旧支援金」を熊本市に贈呈した。式典は、熊本城の桜の馬場城彩苑で行われた。両会長は、9月に行われたツーリズムEXPOジャパン2016来場者の寄付によるレゴ(R)ブロックと支援金を大西一史熊本市市長に贈った。

 支援金は、JATA会員各社と個人、観光関連団体、JATA記者クラブによるもの。

 被災した熊本城の復旧を目的に集められた。支援金の総額は、約460万円。

バス座席の座り心地比べ

 千葉県・幕張メッセで11月9日に開かれた、バス事業者を対象にした体験型バスイベント「第2回バステクin首都圏」に、バスの最新技術を体験するため足を運んだ。

 会場には最新のバス車両をはじめ、ドライブレコーダーや座席シート、バスに関するさまざまな機器・用品が展示されていた。とくに、ずらっと並ばれた多彩のバス車両が迫力満点。思わず、各車両シートの座り心地比べに励み、その違いを体感した。観光バス旅行の場合、大半はバスの中で過ごすことになる。移動となると連続1時間はざらだ。今後は観光とともに、自分好みのシート探しという楽しみが生まれてしまった。

 同イベントの主催は、バス情報専門誌「バスラマ」を発行する「ぽると出版」。次回は、大阪で来年5月に開催する予定だ。

【長谷川 貴人】

東北観光の復活目指す、「JATAの道」ツアー実施

除幕式のようす
除幕式のようす

 日本旅行業協会(JATA)は10月28―29日に、「第3回みちのく潮風トレイルJATAの道」ツアーを岩手県で実施した。戸川和良副会長を団長に、約60人が参加した。同プロジェクトは、東北復興に向け、地域の自然や生活の再生を手助けするための取り組み。環境省が整備するトレイルコースを旅行商品の造成に活かし、地域への誘客増加を狙う。一行は今回、碁石海岸のある大船度市中南部ルートと釜石市ルートを中心に視察。地域との交流も活発で、観光業関係者らとの懇親会も盛況だった。
【謝 谷楓】

 ■「みちのく潮風トレイル」と「JATAの道プロジェクト」
 同トレイルコースは、環境省が整備管理する三陸復興国立公園の一部で、青森県八戸市と福島県相馬市をつなぐ。リアス式海岸特有の景観から、森の散策や観光スポット巡りまで、歩きながら東北の自然や文化に触れることができる。
 現在も整備が行われており、岡本光之環境省自然環境局国立公園課課長は、「地元の方々と一緒になって同コースの選定を行ってきた。環境省は、国立公園が地域の発展に役立つよう、今後もJATAの皆様と協力していきたい」と語る。
 復興支援に尽力するJATAは、2014年から「JATAの道プロジェクト」を開始した。3回目となる今回は、岩手県の大船渡市と釜石市を中心に視察した。同プロジェクトでは、地震と津波によって破壊された東北の自然景観と生活文化の再生をはたし、観光業の復活を目指す。視察を通じ、トレイルコースを活用した商品造成や販売といった成果を期待している。
 地域との交流も積極的に行われ、一行は地元ワイナリーが運営するりんご園や、復興庁主催のビジネスコンテストで大賞を受賞した甘露煮の生産現場を訪れた。
 大船渡市では、キャッセン大船渡(田村滿代代表)の臂(ひじ)徹取締役が、同市での新しいタウンマネジメントについて講演した。

説明する語り部と、震災遺構の旧タピック45(陸前高田市)
説明する語り部と、震災遺構の旧タピック45(陸前高田市)

 ■“あの日”を振り返る
 1日目、陸前高田市にある東日本大震災追悼施設を訪れた一行は、犠牲者の死を悼み、黙祷を捧げた。戸川副会長と黒川惠社会貢献委員会副委員長による献花も行われた。
 旧タピック45(道の駅高田松原)では、語り部の釘子明氏から震災当時のようすについて説明を受けた。3月11日、15㍍を上回る津波に飲みこまれた同施設は現在、被害の甚大さと恐ろしさを後世に伝えるために、震災遺構として当日のようすを今に残す。奇跡の一本松と、復興まちづくり情報館にも近く、周辺には一般観光客の姿も。

 ■碁石海岸を歩く
 トレイルコースを巡る出発式は1日目に、碁石海岸インフォメーションセンターで行われた。団長の戸川副会長は、「これから歩くコースをぜひ、商品造成に活かしてほしい」と薦めた。
 大船度市中南部ルートでは、2チームで碁石海岸周辺を散策。椿の里大船渡ガイドの会所属の菊池英夫氏によるユニークな語り口とともに、一行は、えびす浜や碁石岬からの景色を堪能した。海岸付近では遊歩道が整備され、所要時間は40分ほど。キャンプ場もあり、岬にある碁石埼灯台では、桜や椿など四季の花を楽しめるという。

 ■釜石市に案内板を贈呈
 三陸鉄道・南リアス線を走る「震災学習列車」への乗車から始まった2日目。盛駅から唐丹駅まで、窓外には、美しいリアス海岸と復興に勤しむまちが広がる。車内では、内舘昭二南リアス線運行部担当部長が、震災当日や復旧状況について解説した。同企画は、被災した地域を窓外に、震災時と現在のようすを知ってもらおうと、同社が沿線住民らと協力し実施するもの。
 続く目的地、釜石鉄の歴史館では、「みちのく潮風トレイル 釜石市案内板除幕式」が行われた。案内板は、JATAから釜石市へ贈られ、観光客の利便性を高めるのも目的の1つ。観光客は、わかりやすいルート地図を確認し、おすすめコースを知ることができる。
 式典には、野田武則釜石市市長も出席し、感謝の念を表明した。
 ラグビーワールドカップ会場建設地を視察した後、根岸海岸を望む宿、宝来館へ。岩崎昭子女将は「県外から来る皆様との交流が地域の産業につながる」と語り、同コースを活かした旅行商品の発売に強い期待を示した。

釜石大観音と釜石港を望む
釜石大観音と釜石港を望む
講演する臂徹氏
講演する臂徹氏

 ■今後の街づくり
 1日目の夜、大船渡市で新しい街づくりに取り組むキャッセン大船渡の臂氏が講演を行った。
 来年4月に、市や商工会議所とともに、テナント型商業施設を中心市街地にオープンする。臂氏は、「洋食屋なのにラーメンが美味しいお店があるという声が聞こえてくるような、昼と夜で雰囲気が変化する、多様性に冨んだ街づくりを目指したい」と、さまざまな人が交わる港という、同市の特徴を活かすアイデアを披露した。
 懇親会には、戸田公明大船渡市市長から、りんご園を経営するスリーピークス及川武宏代表や「三陸甘露煮」で有名なバンザイファクトリー高橋和良代表ら、地元の名士が参加。地域食材を活かした料理が並び、りんご園の果実を使った炭酸酒、シードルも食事にマッチすると好評だった。

九州観光復興へ財政支援を、熊本城など早期復旧も、7県と観光・経済界が要望

ガイドの案内で被災した熊本城を見学する観光客も増えている
ガイドの案内で被災した熊本城を見学する観光客も増えている

 九州7県と九州観光推進機構、九州経済連合会などの経済団体は11月8日、「九州ふっこう割」終了後の反動減などの対策に関わる国の支援を求め、内閣官房、観光庁など関係省庁を訪問して「熊本地震を受けた九州観光復興のための要望書」を提出した。

 九州では4月に発生した熊本地震で、当初宿泊キャンセルが70万件を超えるなど、観光産業が大きな打撃を受けた。7月からは国の交付金180億円を活用した割引付旅行プラン助成制度「九州ふっこう割」事業をスタートさせ、宿泊者数は徐々に回復してきている。

 機構がまとめた九州ふっこう割第1期実績(速報値)では、事業目標の150万人泊に対して達成率97・8%の146万8千人泊と目標達成が目前に迫っている。

 ただ、東京、大阪など大都市圏からの観光客の戻りは今一つで、10月8日に発生した阿蘇中岳噴火や熊本地震の余震発生などが復興にブレーキをかけるなど、九州全体の観光産業への影響が懸念されている。

 また、ふっこう割事業が終了する1月以降の宿泊予約も昨年に比べて低く、修学旅行も地震後に方面変更され、九州での実施が見送られていることも、懸念材料の一つとなっている。

 インフラでは阿蘇へ向かう国道57号線や周辺道路、豊肥本線などの鉄道復旧にも時間がかかり、熊本城や阿蘇神社など観光施設再建にも長期間要することが、観光復興へ向け支障となっている。

 要望書では国道、鉄道など公共交通インフラの早期復旧、熊本城、阿蘇神社など文化財の早期復旧、ふっこう割の反動減解消対策などに向けた財政支援を求めている。

 また、地震発生から1カ年に向けた九州観光復興応援感謝旅行キャンペーンや九州各地でのおもてなしイベントの実施。今回のふっこう割対象外だった観光施設やドライブイン、土産店、飲食店、鉄道、貸切バス事業者などへの直接効果事業への財政支援要望も盛り込んでいる。 さらに、海外向けプロモーション連携の強化や、修学旅行の次年度以降の方面変更対策事業に対する財政支援も要望した。

乗船客600万人突破、“松江観光のエースに”(堀川遊覧船)

記念式典のようす
記念式典のようす

 島根県松江市の松江城のお堀を船でめぐる堀川遊覧船の乗船客数が11月1日、600万人を突破した。1997年7月の就航から19年余りで大台に到達した。

 600万人目は神戸市の小針真人さん。妻と一緒に日本一周の旅をしている途中で、松江に訪れたという。同日行われた記念式典で、松浦正敬市長から花束や遊覧船の年間パスポートが贈呈され、600万人達成記念のラッピングが施された特別船に乗り込み、お堀を一周した。

 松浦市長は「毎年30万人以上の皆様にご乗船いただく松江観光のエースになっている。来年7月には就航20周年の節目を迎え、島根県そして山陰を代表する観光施設として、国内外のお客様をお迎えできるようさまざまな取り組みを行っていきたい」と述べた。

VRが変える未来の観光スタイル、「見せられる」から「見る」観光へ

VR化で復元された高松城
VR化で復元された高松城

 今、さまざまな場所でVR(バーチャルリアリティ=仮想現実)の活用が進んでいる。観光分野でも、多くの自治体がVRを用いたプロモーションやコンテンツ制作に取り組むなど、注目度が高い。実際成田空港では、訪日外国人向けのおもてなしにVRを使い、10日で約350人の利用があったという。そこでVR観光について取り組んでいる2社に、現状や課題、展望などを取材した。はたして、VRは未来の観光スタイルにどこまでの革新をもたらすのだろうか。
【後藤 文昭】

斎木信昌氏
斎木信昌氏

 印刷会社である凸版印刷は、文化事業推進を20年前から行っており、文化財保護のためのデジタルアーカイブ化を進めている。また最近新たな動きとして、観光面での自治体の課題解決にも取り組んでいる。9月21日には、「ストリートミュージアム」をリリース。観光誘致のためのスマートフォンアプリで、現地でVRポイントに近づくと、プッシュ通知される。また周辺の史跡情報を表示することで地域回遊を促すことができるだけではなく、GPSで実際の地図と連動した古地図表示もできる。今回は、同サービスの開発に携わった情報コミュニケーション事業本部、トッパンアイデアセンター先端表現技術開発本部ビジネス開発部の斎木信昌係長に聞いた。

 ――スタートしたきっかけは。

 今多くの自治体が、観光資源の掘り起しが上手く行っていないことに悩んでいます。観光強者といわれる京都などには、寺社仏閣などの歴史的建造物が多くあり、そこに人が集まりますし、再訪率も高い。しかしそれに比べると、観光資源があっても城跡などでは「インパクトが弱い」というのが多くの自治体の悩みです。そこで、それを補えるものをということを相談され、当社から文化財のVR化を提案したのがこの取り組みの始まりです。

 ――自治体にとって、VRを活用するメリットは。

 コストですね。失われた文化財である史跡の観光資源化としては、「絵を起こす」、「模型を作る」、「復元する」のどれかを選んで公開します。そのなかで1番分かり易いのは「復元」ですが、費用が高い。最近名古屋城天守閣を木造で復元する計画が発表されましたが、その総事業費には、約470億―500億円かかるそうです。一方VR化する費用は、数千万円でできます。もう一つは、時間の短さです。城の復元をするとなると、時代考証の時間も考えるとかなりの年月を必要とします。その点VRなら1年以内にできます。2020年に向けてリードタイムを短く資源化できます。

 ――富岡製糸場では、お土産としてVRスコープを販売していますが。

 自治体との話し合いのなかで、「収入源として新しいものは無いのか。土産として何か作れないか」という話が出たときに、当社の印刷会社としての得意部分を活かし、さらに新しい価値観を持ち帰ってほしいと思い、「VRスコープを土産として売ってみましょう」と提案しました。また、土産にすることで、持ち帰った人が周りの人に広める、口コミ効果も狙えます。

 ――現状での課題は。

 高品質のCGをつくれても、それを届ける手段が無いことです。シアターであれば、当社の設備環境で高品質なものが見せられます。しかし、一般の方々が持っているデバイスでは、通信環境の影響で粗い画像しか見せることができません。受け手側の通信環境の整備が必要です。

 もう一つは、VRブームがピークを迎えていますが、その定義が曖昧だということです。今はスコープを使うものをVRと言っていますが、本来はCG空間がそこにあるだけでバーチャルリアリティ(VR)です。そこを混同せずに、どうVRを楽しんでいけばいいのか、どう定着させるのかが、今年のポイントになります。

 ――自治体の浸透度は。

 情報に対する感度の高い自治体と、低い自治体の差が大きいことです。「文化財をVR化する技術があって、それが観光資源になりやすい」ということへの認知度が低いと、感じています。今後どう自治体にアピールしていくかが課題です。

 ――観光業にVRが与える影響は。

 「見せられる観光」から、「見る観光」に変えていけると思っています。「案内書きやガラスケースの中のものを見る」ことが今までの観光スタイルでした。それを、自分が知りたいものを知ることが簡単にできる「能動的な観光スタイル」に変えることができます。

 ――能動的な観光スタイルになると、そこから何が生まれますか。

 一つひとつの土地に対する思い入れが深まり、リピート率も向上するのではないかと思います。「なんとなく行って、弾丸で周ってきて、写真を見ないと思い出せない」というのが、今までの観光だったと思います。今後は、一つひとつの歴史、物語を伝えることによって、次は別の側面で魅せたら面白いのではないかと、多面的に見せられる観光資源、観光地づくりができます。

 ――安全面に関してはいかがですか。

 まずは、自治体と協力して危険の無いエリアづくりをしていかなければならないです。将来的には、観光に最適なまちづくりが目指せないかと考えています。当社のアプリでは、利用者の個人情報は残りませんが、行動ログだけは見られます。例えば、人が滞留する場所が分かれば、大きな広場を整備できます。こういったフィードバックはその点に十分活かせます。

「技術×旅」=新たな可能性

波多野貞之氏
波多野貞之氏

 近畿日本ツーリスト未来創造室は、東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年以降の会社の未来をどのように作っていくのかを考え、また新規事業を立案する組織。新規事業開発の中で「最先端技術×旅」を「スマートツーリズム」と名づけ取り組んでおり、トレンドであるウェアラブル端末メガネ型「スマートグラス」を活用した観光を推進している。これは、訪れる土地の史跡や物語などのCG映像での復元、平和・震災学習での活用を含め、現実風景に映像を重ねて見ることで仮想現実を体験する。未来創造室の波多野貞之課長に聞いた。

 ――スタートしたきっかけは。

 エプソン様からスマートグラスの話を聞き、個人が室内で活用している機器を、屋外で行う団体の観光に活用できないか検討を始めました。会議では、「東京の観光」がキーワードに挙がりました。今後技術の進歩も見込め、市場も拡大していくと言われているウエアブル端末に東京の観光や、インバウンド、地方創生などを掛け合わせて何かしたいということで、スタートしました。

 ――VRを活用するメリットは。

 観光において、過去や未来が可視化された体験は驚きや発見があるばかりでなく、より深く、わかりやすく知ることができると思います。仮想現実の体験がその場をよりリアルに体感させてくれるのは大きなメリットですね。イヤフォンガイドの解説は多言語対応可能なので、急増する訪日外国人の方にも正確にわかりやすく内容を伝えることもできます。

 ――旅行会社が行うメリットは。

 旅行会社の機能の一つに「現場に行ってもらう」ということがあります。私たちが体験型の新しいサービスを提供することで、顧客満足度が向上し、地域活性や自社の企業価値向上につながるのではないかと思います。

 ――現状での課題は。

 初期費用の高さが1番の課題ですね。機材を、ツアーが催行できる分用意するだけでも大きなお金が必要になります。コンテンツの製作費も、利用者がお金を払って満足できるレベルだと、少し大きなお金が必要になってしまいます。ただこの分野はまだ始まったばかりなので、今後技術が向上すれば、初期費用を抑えることができ、気軽に利用できるようになると期待しています。

 映像コンテンツの利用時の制約などもそうです。国が推進している地方創生への貢献や、ユニバーサルツーリズムを考えた旅行体験のために、地方自治体や企業が所有している映像素材は積極的に提供してもらいたいと思います。

VR化された江戸城
VR化された江戸城

 ――スタートから今まで、どのようなツアーを組まれましたか。

 2015年2―3月に「江戸城天守閣&日本橋ツアー」を行い、その後福岡城、弘前城、富岡製糸場にてガイドツアーを展開してきました。また島根県にある出雲たたら村ではロケツーリズムも行いました。

 ――今行っている復元による地域振興以外ではどのような活用がはかれますか。

 震災学習とロケ地観光です。

 東日本大震災から5年が経ち、現地では復興の格差と遺構を残すかどうか判断する時期に来ているようです。それは記憶の継承と観光の振興を考えなければならないことでもあり、新たな震災ツーリズムが必要になってきています。東北の方に話を聞いていると、津波の悲惨さや大変さを知ってほしいのではなく、そこには人々の暮しがあり、長い歴史の中で地震と津波を体験した町の歴史を学んでほしい、知ってほしいと思っています。そのための手段としてVRを活用した震災学習プログラムにより、過去と現在の歴史をわかりやすく伝えていければと思います。

 ロケ地観光は以前から取り組んでいたことですが、スマートグラスを使ってロケ地で撮影シーンを実際に見ることができるのは新しいアプローチであり、ロケツーリズムに貢献する取り組みだと思います。地域においては、観光施設をつくらなくてもロケが行われれば観光地としてPRすることができるので、地方自治体は積極的に取り組んでいくのではないかと考えています。

 ――観光業にVRが与える影響には何が考えられますか。

 旅行の本質は例えば「人とまち」など「何かと何かを結ぶこと」だと思います。「旅と技術」を結ぶことで、新しいサービスが生まれることを提示すると思います。「スマートツーリズム」という考え方のなかでVRに限らず「技術×旅」観光を考えると、新しいアプローチがどんどん生まれてくるのではないかと期待しています。もう一つは、旅の叶わない人も旅の仮想体験ができるようになるのではないということです。それが実現すれば、ユニバーサルツーリズムにつながると思っています。

 ――安全面に関してはいかがですか。

 そこも、しっかり考えなければならないです。今の機器では、装着中は危ないので歩けません。技術が進歩して安全面が向上すれば、歩くことも可能になるかもしれないですね。