バスとサイト分離へ、5カ年の経営計画開始(ウィラーグループ)

村瀬社長
村瀬社長

 高速ツアーバスを中心に移動ネットワークを構築しているWILLER ALLIANCE(村瀬茂高社長)は9月1日、グループ会社4社の再編などを行い、高速バス事業会社と移動ポータルサイト会社に分離した。同時に第2期成長戦略として、5カ年の経営計画を開始。5年後には現在の約3倍となるグループ売上300億円、営業利益30億円を目指す。

 同日、東京都内で開いた説明会で村瀬社長は「5年間の第1次成長期を終え、移動サービスの新しいステージに向け取り組んでいく」と宣言。第2期成長戦略のテーマとして、「高速バス・旅客船のさらなるサービスの進化と新たな市場の創造」「あらゆる交通機関を結ぶことで新たな価値を創造」「国内から海外へサービスを拡大」の3つを掲げた。

 村瀬社長は今後3年間を「中長距離交通機関の変革時代」と位置づけ、その要因として「国交省のバス事業のあり方検討会の中間報告に基づいた省令改正が年内にも行われるかもしれないが、そうすれば高速バス業界の競争も一時的に激化するだろう。国内線LCCの台頭もある」と語った。

 これらを踏まえ、今後に対応すべく今回のグループ再編を実施。これまでのWILER BUS西日本・東海・東日本の3社をWILLER EXPRESS(ウィラー・エクスプレス)、WILLER EXPRESS東海、WILLER EXPRESS東日本に商号変更し、この3社で高速バス事業を担う。一方、移動ポータルサイト事業はWILLER TRAVEL(ウィラー・トラベル)が運営する。

 ウィラー・エクスプレス3社は「日本最高の価値を提供する高速バス会社」をカンパニーミッションに、エンターテインメント性の高いシートの開発や観光地への新規路線などを計画。乗務員研修の強化もはかる。車両数は現在の110両から16年に210両まで増台し、乗員人数は現在の2倍の400万人を目指す。村瀬社長は「コスト削減のため、予約はインターネットのみだったが、今後は窓口販売や飛び乗りサービスの提供も考える」とシニア層などの新規顧客獲得に向け意欲を語った。

 ウィラー・トラベルは、「世界中のあらゆる交通機関を結ぶ移動ポータルサイト」をビジョンに、これまでのグループ内商品を中心にした販売ではなく、さまざまな交通と移動先の宿泊などをつなぐサイトを構築する。事業者側の予約から出発までのオペレーション業務がすべてできる基幹システム「WiLLシステム」を開発し、他社へのレンタルも展開する。さらに、訪日外国人客が安心して日本を移動できる受入体制の構築も目指し、今年12月にジャパンアクセスパスを売り出す。今後は12年6月にWiLL路線バス運行管理基幹システムの発表、移動ポータルサイトのリニューアルオープンなどを予定する。目標数値は16年に流通額が300億円、利用者が560万人。

共同企画、中国で好評、日帰りの体験メニュー

 日本旅行業協会(JATA)の外国人旅行委員会(田辺豊委員長)は、8月24―27日に中国の上海・杭州で、第2回JATA外国人旅行委員会の開催と現地関係者との意見交換会などを実施した。上海では、主要旅行会社にJATA会員共同企画商品の説明会も行い、好評を得たという。商品は、日帰りの体験メニュー中心で、築地市場場外見学など8コース。9月から販売を開始している。 国内・訪日旅行業務部の興津泰則部長は共同企画商品について「昨年から展開をしているが、北海道や沖縄などロング商品でなかなか難しかった。今年は日帰りの体験メニューを企画し、足で歩いて日本の本当の魅力をみてもらえる商品にした」と説明。上海の旅行会社15社からも「個人旅行化に向け魅力ある商品」などの意見があがったという。このほか、説明会ではJATAが観光庁に制作を依頼した日本旅館の利用マナーDVD「これで安心!訪日旅行」も併せて紹介し、旅行者へ旅館利用時のマナーの周知を呼び掛けた。
 一方、中国での震災後の日本の印象について「原発などの実態については、情報もよく収集していて理解をしていただいている。しかし、一般消費者は、福島と沖縄が隣にあるような距離感覚が拭えないという。食に対しても不安の声があった」と現状を紹介。「食への認識はまだ薄いので、国へアピールをお願いしたい」と語った。

カジノ基本法案決定、今秋の臨時国会へ提出

(左から)柿沢議員、岩屋会長代行、古賀会長、池坊議員
(左から)柿沢議員、岩屋会長代行、古賀会長、池坊議員

 カジノの合法化を目指す超党派議連の国際観光産業振興議員連盟(IR議連、古賀一成会長)は8月25日、衆議院第一議員会館で総会を開き、カジノ合法化に向けた基本法案を大筋で確認。今秋の臨時国会に提出する方針で一致した。

 法案の正式名称は「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案」。古賀会長(民主党)は総会後の会見で「まずは基本法の推進法で進めていく。コンセンサスが広がれば、推進本部中心に作業が進んでいくだろう」と説明。「何としても今秋の国会に提出を」と力を込めた。

 同法案は、外国人観光客誘致や地域振興を目的に、カジノ施設、会議場施設、宿泊施設などが一体となった特定複合観光施設の推進をはかるための基本法。内閣総理大臣を本部長とする「特定複合観光施設区域整備推進本部」を内閣内に設置し、2年以内に特定複合観光施設を運営するために必要な法制上の措置を義務づける。IR議連メンバーの柿沢未途議員(みんなの党)は、「政府内で法整備を検討・立案してもらう。内閣内に推進本部を作ることで、政府と国会がバラバラではなく目標を共有して進められる」と法案の意義を説明した。

 特定複合観光施設を設置できる区域は、地方自治体の申請にもとづき、国が指定。運営は民間で行うが、カジノ施設の許可・認可やその他の処分、監視、管理は、内閣府の外局として設置されるカジノ管理委員会で行うことも明記された。

 区域の選定に関しては、まったくの白紙状態とし、岩屋毅会長代行(自民党)は「特定の地域を想定して議論してきたわけではない。あくまで地域に手を挙げてもらい、国が審査する」と強調。IR議連メンバーの池坊保子議員(公明党)は「1人でも多くの外国人に日本に来てもらうのが一番の目的。今までの観光資源にプラスした、観光の総合施設として捉えている」と語り、「経済発展のためにも、日本の魅力の一つとしてのカジノ作りを進めたい」と意気込んだ。

 古賀会長は、シンガポールの事例を紹介し、「カジノにより26%の経済成長を達成した。参考にすべきところはたくさんある」と結んだ。雇用や経済への効果として、「施設の立地場所によって大きく異なる」と前置きしたうえで、関東近辺に施設を作った場合の試算として、5千億円の投資規模で10万人以上の雇用効果をあげた。

No.289 震災から6カ月 - 難局乗り越え 元気な姿勢で

震災から6カ月
難局乗り越え 元気な姿勢で

 3月11日に発生した東日本大震災から6カ月が経過した。未曾有の震災直後から、被災地の旅館ホテルはどのようにして難局を乗り越えてきたのか。福島県・磐梯熱海温泉のホテル華の湯代表取締役社長の菅野豊氏は、福島県旅館ホテル生活衛生同業組合の理事長も務める。被災者の受け入れ、金融問題、原子力損害賠償、風評被害対策……など、さまざまな問題に立ち向かってきた。「元気な姿勢でお客様と接することが一番大事」と語る菅野氏に話を聞いた。

【増田 剛、鈴木 克範】

旅館は地場産業地域で必要な存在に

 3月11日午後2時46分。私は当館で福島県旅館ホテル生活衛生同業組合の会合をしていた。長く大きな揺れを感じたが、幸い旅館は固い岩盤の上にあるため、ガラスが2、3枚割れた程度で済み、大きな被害がなかった。震災から半年近く経つが、旅館経営者として1日も営業を休むことなく続けられたことをうれしく思っている。

ホテル華の湯代表取締役社長
菅野 豊氏

※ 詳細は本紙1433号または9月15日以降日経テレコン21でお読みいただけます。

野田内閣発足 ― 観光は外交政策の柱(9/11付)

 9月2日、野田連立内閣が発足した。通常、新たな内閣が発足した場合、各大臣の就任あいさつを深夜まで見ていたが、今回はなぜか興味も湧かず、読書をしていた。野田内閣に期待をしていないわけではない。ただ、毎年新内閣が発足するので、もはや新鮮味がなく恒例の役所の人事異動程度の関心しか抱けなくなってしまったのだ。それでも一昔前の、2―3世議員ばかりが顔を連ねた内閣に比べれば、雲泥の差だ。ジャン=ジャック・ルソーも「社会契約論」の中で「世襲議員による政治は最悪」と指摘している。 野田内閣の最大の使命は「東日本大震災の復興」と「東京電力福島第一原子力発電所の事故対応」。そして、とりわけ「福島の再生なくして日本の再生はない」と語る、その言葉通りだと思う。また、発足直後の2日の初閣議で内閣の9つの基本方針が決定した。一番目に「国民の生活が第一」の政治を実現――をあげているが、その真骨頂を忘れないでほしい。生活者の視点が抜け落ちた政治家の言葉は非常に薄っぺらいので、信用しないことにしている。
 さて、歴史を紐解くと、国内でごたごたが続くと、隣国がその空隙を突いてさまざまな利権に手を伸ばそうとする。日本はこの半年間、東日本大震災と原発事故の対応で手いっぱいだったが、外に目を向けると、尖閣諸島の中国漁船衝突事件、韓国との竹島問題、ロシアとの北方領土問題を抱えたままである。さらに、沖縄の米軍普天間基地移設問題、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉参加の是否決定も迫る。まさに内憂外患。
 鳩山由紀夫元首相、菅直人前首相も外交、防衛については暗かった。野田内閣の玄葉光一郎外相、「私は安全保障の素人」と発言した一川保夫防衛相も経験不足が心配されるが頑張ってほしい。「毎年変わる大臣なら、ヘンにかき乱されるより素人の方が扱いやすい」と官僚に思われては困る。それこそ政治が軍事に優先する文民統制も怪しくなる。そして、言うまでもなく、観光は外交政策の重要な柱の一つ。場当たり的ではない、戦略的な観光政策を望む。
 今回の民主党代表選には5人が立候補したが、幾つかの討論番組は国家観ではなく「親小沢か、反小沢か、脱小沢か」が主な論点だった。これでは日本の政治家の外交力や見識も磨かれない。

(編集長・増田 剛)

農協観光協力みのり会が30周年

農協観光の協力団体「農協観光協力みのり会」(会長理事・岩原繁弘オホーツクバザール社長)は9月14日午後4時30分から、宮崎県宮崎市・宮崎観光ホテルで創立30周年記念式典を開く。農協観光が昨年から取り組んでいる「がんばろう宮崎キャンペーン」の一環として宮崎市で開催する。

会は、河野俊嗣宮崎県知事をはじめ、農協観光の田辺豊社長、農協観光協定旅館ホテル連盟の藤本武夫会長など多くの来賓を招き、参加者は約560人の予定。

問い合わせ=農協観光協力みのり会 本部事務局  TEL 03(5297)0352

国際陶磁器フェスティバル美濃’11(9月16日から10月23日)

国際陶磁器フェスティバル美濃’11
国際陶磁器フェスティバル
美濃’11

 「国際陶磁器フェスティバル美濃’11」が9月16日から10月23日までの38日間、岐阜県多治見市のセラミックパークMINOをメイン会場に開かれる。1986年以来3年ごとに開催され、今年で9回目を迎える。世界最大規模のコンペティションには57カ国2777人が出品。期間中は選ばれた優秀作品約200点が展示される。多治見市や土岐市、瑞浪市などで窯めぐりや作陶体験などさまざまなイベントも計画している。公式ガイドブックも販売している。

 
 
 
 
 
 
 

沖縄県系が集う、第5回世界のウチナーンチュ大会

 世界各地に移住した沖縄県系人が5年に1度母県に集う「第5回世界のウチナーンチュ大会」が10月12―16日、沖縄セルラースタジアム那覇エリアと沖縄コンベンションセンターエリアで開かれる。日本有数の移民県である沖縄では、多くの県民が海外へ雄飛し、南北米をはじめ、世界各地に約40万人の県系人が存在。世界のウチナーンチュ大会は、沖縄県の人的財産である海外県系人の世界的なネットワークを形成しようと1990年にスタートした。第1回に2379人、第2回に3922人、第3回に4325人、第4回には世界21カ国・3地域から4937人のウチナーンチュ(沖縄人)が集まった。 今回は、15―16日に「世界エイサー大会2011」を開催。沖縄の伝統芸能であるエイサーの新たなスタイルを創作し、島・命・愛する人を想う「うむい(祈り)」と、飛躍する心で演舞し感動を与える「ちむどん(感動)」、新しい自分や仲間との出会いが生まれる「しんかぬちゃー(交流・仲間)」をテーマに、世界に誇る新しい21世紀型のエイサーを目指す。15日は午後0時―午後8時、16日は午前11時―午後8時。会場は奥武山運動公園(沖縄県那覇市)。入場料無料。
 詳しくはURL=http://www.wuf5th.com/

医療観光事業を開始、共同で事業会社設立

 長崎県佐世保市のリゾート施設・ハウステンボス(澤田秀雄社長)は8月10日、ガンなどの難病の治療・予防などに対するソアラ療法の提供や情報支援、普及など行うソアラメディカル(白石章二社長、本社・東京都港区赤坂)と共同で医療観光事業(滞在型ウェルネス事業)に乗り出すと発表した。 国内外で健康への関心が高まるなか、予防医療のアプローチによる体質改善・痩身のプログラムと、県北部の一次産品や観光資源を結びつけた滞在型ウェルネス事業を展開。8月中に事業会社・TBソアラメディカル(白石章二社長、設立時資本金6千万円)をハウステンボス内に設立する。
 ウェルネスプログラムでは、体温を1、2度上昇させて自律神経のバランスを整え、免疫力などを高める技術・ソアラ療法や東洋医学に基づく生活習慣とヨガの呼吸法、地元有機野菜使用の完全菜食の食事管理、ホテルでの滞在や本格的スパメニュー、寺での座禅や瞑想など盛り込む。
 また、佐世保観光コンベンション協会と連携の周辺観光資源アクティビティ、地元医療機関でのメディカルチェックも組み込む。
 料金は3泊4日で25万円、6泊7日で45万円程度を予定。9月上旬から予約を受け付け、11月中旬に開始する。客層は国内外の30―50代のハイインカム層と、60代以上の資産家層を想定。年間利用客500人、年間売上高1億5千万円を目指す。

熊本・宮崎・鹿児島DC、くいだおれ太郎がPR隊長

南九州で“くいだおれ”
南九州で“くいだおれ”

 熊本・宮崎・鹿児島の南九州3県がJR6社と連携し今年10月から実施するデスティネーションキャンペーン(DC)のPR隊長に「くいだおれ太郎」が就任し8月4日、大阪市内のホテルで就任式が行われた。

 DCの実行委員長を務める熊本県の佐伯和典観光経済交流局長は「九州新幹線全通から5カ月。熊本県内でも関西弁を聞く機会が増えてきたが、浮かれてばかりはいられない。南九州には新幹線沿線以外の地域にも魅力はたくさんある。2次、3次アクセスを駆使して、開業効果を全域に広げていきたい」とあいさつした。

 就任式では、くいだおれ太郎が「大阪名物くいだおれ」元女将の柿木道子さんと一緒に登場。佐伯委員長からPR隊長のタスキを贈られると、早速「南九州で“くいだおれ”ですねん」とアピールした。

 会場では、3県のご当地グルメの試食会も行われ、指宿温泉の温泉タマゴや地元食材を使った「いぶすき温たまらん丼」や黒豚豚汁(鹿児島県)、高千穂牛ステーキ丼や魚のすり身を麺状にした「日南魚うどん」(宮崎県)、熊本県産のトマトや牛肉、米を使った「阿蘇ハヤシライス」やだご汁(熊本県)などが振る舞われた。

 鹿児島県の武盛武士観光交流局次長は「食は歴史、文化とも切り離せないもの。すべてを含めたうえで、それぞれの土地の食を味わってほしい」とアピールした。

 熊本・宮崎・鹿児島DCは「のんびり過ごす極情の旅」をテーマに10月1日から12月31日まで実施。10月8日から10日までは、熊本城一帯で、3県の郷土料理や郷土芸能が集うオープニングイベントが開かれる。