リョケン 1泊2日の事例研究セミナー参加者募集 7月5・6日「暖灯館きくのや」 9月5・6日「金太郎温泉」 

2023年6月4日(日) 配信

暖灯館きくのや(イメージ)

 リョケン主催の「事例研究セミナー2023」を7月と9月に開催する。会場に宿泊し、実際に見て体験して学ぶ2日間のセミナー。現状打破の実践事例を徹底解説する。7月5・6日には滋賀県大津市のおごと温泉「暖灯館きくのや」で、9月5・6日は富山県魚津市の「金太郎温泉」で開催する。

 7月開催は、顧客満足を追求し、ペット同伴客室も高い評価を得て高稼働を続ける「暖灯館きくのや」をはじめ、旅館の取り組み事例をさまざまな切り口で紹介するほか、1日目には会場施設「暖灯館きくのや」の客室、料亭街、貸切風呂などの館内視察も行う。

 7月5日の事例講演では、暖灯館きくのやの池見喜博社長ほかが「客室の高品質化と独自の価値を提供し、顧客満足度の向上を追求」と題して話をする。翌6日には、清流山水花あゆの里も事例講演を行う。

 課題解決に向け、旅館・ホテルの取り組み事例から現状打破する方法を見つけ出す。リョケンが手伝った実例を研究員が解説する。さらに令和5年旅館の経営指針「ゼロベース発想」をもとに、これから行っていくべき商品戦略の方向性を提言する。

 初回は暖灯館きくのやでの開催でペット同伴専用の部屋に宿泊することも可能。セミナー受講料は無料、宿泊費等(1泊2日)は1人2万3千円から。事前申込制。対象は旅館・ホテルの経営者・幹部、社員など。募集定員30人、申込締切日は6月28日。

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金太郎温泉(イメージ)

 9月開催は、段階的な商品整備により高品質化を進めてきた「金太郎温泉」をはじめとする旅館の取り組み事例を紹介。1日目には「金太郎温泉」の館内視察も行う。

 9月5日の事例講演では、金太郎温泉の木下荘司社長が「金太郎温泉『リボーンプロジェクト』2022年6月竣工」と題して話をする。経営革新計画に基づいた段階的な商品整備をいかに実現させたか。個人客化に対応するための商品づくりの歩みを学ぶ。翌6日には、嵐渓荘と萩姫の湯栄楽館も事例講演を行う。

 受講料は無料。宿泊費等(1泊2食)は1人2万8千円から。募集定員30人。

 問い合わせ=リョケン事例研究セミナー事務局(担当=大川・松村) ☎0557(83)2120。

〈観光最前線〉上野東照宮黄金巡り

2023年6月3日(土) 配信

上野東照宮「昇龍守」(毎月17日限定)

 国際・風水協会が主催する「上野東照宮黄金巡り」改運プログラムを体験してきた。

 上野東照宮は1627年創建で東京都台東区上野公園に鎮座する神社。東照宮とは徳川家康公(東照大権現)を神様としてお祀りする神社で、出世、勝利、健康長寿に御利益があると信仰されている。

 会社の近くだが、これまで一度も足を運んだことがなかった。金色殿などの豪華な建造物は戦争や地震にも崩壊を免れた貴重な江戸初期の建築として国の重要文化財に指定されており、国内外から多くの人が参拝に訪れている。

上野東照宮「唐門」【重要文化財】

 今回、風水協会のT氏の粋な計らいで毎月17日にしか限定授与されない「昇龍守」をサプライズで戴くことができた。強運勝利出世の御守なので、これだけで黄金巡りに参加した甲斐があった。素直に嬉しかった。

【古沢 克昌】

KNT-CTHD、4期ぶりの黒字転換 売上高は減額を反映

2023年6月2日(金)配信

会見でKNT-CTホールディングスの米田昭正社長(中央)らが謝罪した

 KNT-CTホールディングス(米田昭正社長、東京都新宿区)が6月1日(木)、2023年3月期(22年4月1日~23年3月31日)の連結決算を発表した。売上高は前年同期比80.2%増の2521億5200万円、当期純利益は、過大請求事案に伴う特別調査費用など9億円を特別損失に計上したこともあり、117億9000万円(前年同期は57億7100万円の損失)。2018年以来4期ぶりの黒字決算となった。

 売上高は、連結子会社である近畿日本ツーリストのコロナ関連受託業務での過大請求事案を受けて、緊急社内点検の結果により算定された過大請求額を基に減額を反映した。過大請求額は、今年5月に公表した最大約16億円から点検や自治体との協議、確認が進み、決算ベースでは約14億7000万円に修正している。

 営業利益は114億1000万円(同76億8600万円の損失)、経常利益は120億5800万円(同38億8600万円の損失)だった。

 22年度の旅行業は、新型コロナ対策に万全を期しつつ、修学旅行やその他の団体旅行、国内個人旅行の催行に努め、Web販売の強化と都道府県割、全国旅行支援事業などを活用した旅行商品の販売に注力した。しかし、5月から販売を再開した海外旅行の需要回復の遅れもあり、旅行業収入はコロナ前に大きく及ばない状況で推移した。

 このような状況に対処するため、旅行業以外の事業の拡大に努め、従来の観光施設運営業務、観光振興業務などに加え、全国の自治体や企業などから新型コロナ関連のBPO事業に取り組んだ。

 しかし、このような新規の事業活動が今回、受託業務の不正事案につながったことで、24年3月期は各種事業が減収減益になるものとみている。

 24年3月期連結業績予想では、売上高が同1.6%減の2482億円、営業利益が同69.3%減の35億円、経常利益が同71.0%減の35億円、当期純利益が同74.6%減の30億円を見込む。

過大請求改めて謝罪、「信頼回復」取り組む

 米田社長は同日に開いた会見冒頭、連結子会社の過大請求事案について改めて「ご迷惑、心配をおかけしていることを深くお詫び申し上げる」と謝罪した。今後は「何よりもお客様、そして社会の皆様からの信頼回復を第一に真摯に取り組む」と話し、再発防止に向けて内部統制システムを強化すると明かした。

 具体的には、ホールディングス内に「コンプライアンス改革本部」を設置し、グループ全体の組織風土改革をはかるほか、近畿日本ツーリストなどに「法令倫理管理センター」を立ち上げる。今後、調査委員会から提言される再発防止策を踏まえ、内部統制の再構築をはかると説明した。

 また、近畿日本ツーリストの社内点検の進捗についても報告した。初回に公表した今年5月2日時点では、過大請求の疑義があるのが86自治体、最大約16億円に上るとしていた。その後の点検や自治体との協議、確認により80自治体、14億7000万円となり、決算にはこの数値が織り込まれた。最新状況としては5月30日現在、63自治体まで対象が絞られた。ただし、過大請求額は引き続き精査中とのことを示した。

 なお、過大請求の問題で同じく6月1日、警察は近畿日本ツーリストの大阪市や静岡市の支店に詐欺容疑で捜索が行われた。捜索を受けたことに関して、米田社長は「責任を痛感している。(捜索に対して)全面的に協力する」と述べた。

再生・高付加価値化第2期地域公募、6月30日(金)まで 第1期は53地域採択へ(観光庁)

2023年6月2日(金) 配信

観光庁は6月30日(金)まで、「地域一体となった再生・高付加価値化」第2期地域公募を行う

 観光庁はこのほど、「地域一体となった観光地・観光産業の再生・高付加価値化」の第2期地域公募を始めた。同事業は、宿泊施設や観光施設などの改修や、廃屋撤去、面的DX化などの取り組みを支援する。公募期間は6月30日(金)午後5時まで。特設Webサイトの申請フォームから申し込みが可能。

 また、第1回の地域計画審査結果では、53地域を採択した。

 これらの地域では今後、地域計画に基づいて宿泊施設のリニューアルなどが進められる。

 応募しているほかの地域についても、観光地再生に向けた計画づくりを進行中。計画が完成した地域は、今後有識者審査を行う予定だ。

 主な採択案件では、DMC蔵王温泉ツーリズムコミッティ(山形県山形市)が、国際競争力の高い総合マウンテンリゾートの形成に向けて、ナイトタイム活性化や、街歩き、泊食分離推進などを目的に宿泊施設や観光施設などの改修を行う。

 大分県別府市では、観光客一人ひとりの健康状態やニーズに合わせた新たな温泉体験を提供する「新湯治・ウェルネスツーリズム」の実現を目指している。このため、個別のニーズに合わせた宿泊施設の高付加価値化改修や、温泉街の外観改修を実施する計画だ。

九谷焼作家がプロデュースのホテル「九谷ステイ」が誕生 能美市

2023年6月2日(金) 配信

8人の作家が各部屋プロデュース

 石川県能美市の交流研修センター「ウェルネスハウス SALAI」内にこのほど、九谷焼作家8人が各部屋をプロデュースした九谷ホテル「九谷ステイ」が誕生した。8室はそれぞれ個性あふれる客室に仕上がっている。

 建物のエントランスには作家のうちの1人、牟田陽日氏が手掛ける壁画が設置されており、花鳥や山水など色彩豊かな九谷焼の世界が出迎えてくれる。

 牟田氏プロデュースの客室は「眠りの島」と名付けられた洋室で、九谷焼を構成するいくつかの要素から「絵」や「器」などを抽出。眠りに落ちる前のひとりの時間を波に囲まれた孤島の情景に表したものだという。

 架谷庸子氏作は和室の「里やまの弧」。加賀平野に独立丘陵として点在する国指定史跡「能美古墳群」をモチーフに、九谷焼の技法である赤絵細描(あかえさいびょう)でさまざまな小紋を彩る「やま小紋」として展開している。

 また、館内のレストランでは地元の低農薬、有機栽培の穀物などこだわりの食材を使用した健康的なメニューを九谷焼の器で提供する。宿泊者は要予約でディナーを追加することができる。

WAKKA、しまなみ海道航路の時刻・Eチケサイトオープン 多言語で提供

2023年6月2日(金) 配信

サイトのトップページ
 愛媛県今治市と広島県尾道市を結ぶしまなみ海道で着地型商品などを展開するWAKKA(村上あらし社長、愛媛県今治市)は6月1日(木)、同海道の西瀬戸内周辺の定期航路における時刻表や路線図のほか、Eチケットの販売や使用を多言語で提供するスマホ専用サイト「KASHO-KI(カショキ)」をオープンした。
 
 しまなみ海道では、20以上の路線のフェリーや高速船など短距離の船で道中の島にアクセスすることができる。しかし、運航会社が異なるほか、時刻表がインターネットで公開されていないなど利用しにくい状況だった。これを踏まえ、同社は海の旅の魅力を伝えるために、KASHO-KIをオープンした。
 
 「KASHO-KI」は、14世紀ごろ瀬戸内海で活動していた村上海賊の時代に用いられた通行手形「過所旗」をモチーフにし、旅をする人に瀬戸内海を船で縦横無尽楽しんでもらえるようにした。今後、対象エリアの拡大や旅行会社向けの代理購入機能の追加していく。

7月から「京の夏の旅」キャンペーン 新選組と世界遺産テーマ

2023年6月2日(金) 配信

新選組結成160年!

 京都府京都市と京都市観光協会は7月1日(土)から9月30日(土)までの3カ月間、「京の夏の旅」キャンペーンを開催する。48回目となる今回は、「新選組結成160年&世界遺産」をテーマに据える。

 CPでは、通常非公開の文化財を期間限定で特別公開する。一例は、新選組ゆかりの寺、壬生寺本堂・壬生塚での刀剣特別公開。壬生塚内には今夏、副長・土方歳三の胸像も建立される。このほか、池田屋事件の発端となる旧前川邸東の蔵、新選組誕生のきっかけとなった演説の場、新徳寺など。外国人旅行者にもPRするため、英語版のWebサイトを制作し、現地案内看板などにも英語を併記する。

 また、テーマに合わせて効率よく観光地を巡る定期観光バスの特別コースを設定するほか、少人数制・事前予約制の特別体験プランを用意する。

 さらに、京都商工会議所が12月に実施する「京都検定」は今年で20周年を迎えることから、テーマを今CPと同様に設定。特別公開箇所を巡り、事前学習を楽しむことができる。

 今回のCP実施においては、京都観光にかかわるすべての人がお互いを尊重しながら持続可能な京都観光をともに創りあげていく「京都観光行動基準(京都観光モラル)」を広く周知。市民生活と観光の調和を実現し、観光客にとってもより質の高い京都観光を目指す。

第4回「飛騨高山・酒蔵のん兵衛まつり」、6月9日(金)から 深く知るなら「音声ガイド」利用もおすすめ

2023年6月2日(金)配信

飛騨高山御酒飲帳を購入すると、記念杯とエコバッグがもらえる

 岐阜県・飛騨高山の「古い町並み」を散策しながら、酒蔵自慢の地酒の呑み比べが楽しめるイベント、「飛騨高山・酒蔵のん兵衛まつり」が2023年6月9日(金)~7月14日(金)まで行われる。今年で4回目となる催しで、初夏に味わえる地酒との出会いも楽しみだ。

 飛騨・高山観光コンベンション協会の主催。「飛騨高山御酒飲帳」(1冊3000円)を購入すると、古い町並みエリアにある参加酒蔵6軒で、2種類の地酒の試飲が楽しめる。特典として、記念杯とキャンパス地の特製エコバッグがついてくる。試飲で訪れた各酒蔵のスタンプ6種を集めると、「酒蔵達成記念」の記念品がもらえる。
 
 散策には「飛騨高山音声ガイド」もおすすめ。酒蔵はもちろん、町の歴史や文化を深く知ることができる。手持ちのスマートフォンや中橋観光案内所で借りられる専用端末(預り金1000円、端末返却時返金)で利用できる。

 参加酒蔵は平田酒造場、原田酒造場、老田酒造店、二木酒造、平瀬酒造店、舩坂酒造店の6カ所。飛騨高山御酒飲帳は、参加酒蔵のほか、高山濃飛バスセンター、中橋観光案内所で購入できる。

7月15、16日に「魚沼アートフェスFLOU」開催へ 温泉街をまるごと舞台に

2023年6月2日(金) 配信

魚沼アートフェスFLOU
 新潟県魚沼市の大湯温泉で7月15日(土)、16日(日)の2日間、アートフェス「FLOU」が開かれる。廃旅館や廃店舗、古民家、山、川、森など温泉街をまるごと舞台にし、さまざまなアーティストが展示やパフォーマンスを行う。主催はFLOU実行委員会(坂本淳実行委員長)。
 
 FLOUは、30年以上にわたり大湯地域で開かれていた「うおぬま夏の雪まつり」が一昨年で終了したことから、観光誘致が期待できる新たなイベント事業として2022年から開始した。コンセプトは、一見寂れてしまった温泉街の風景を逆手に取り、アート・エンターテイメントを掛け合わせることで、ここでしか見ることのできない風景に生まれ変わらせること。開催初回の昨年は2500人以上を動員し、好評だっという。
 
 今回の新たな試みとして、地元魚沼市の小学校と隣市にある長岡造形大学学生とのコラボレーション作品を展示予定。さらに地域同士が深く関わることを目指す。そのほか、学生主導によるワークショップも開催予定だ。 
 
 同イベントの魅力は“ごった煮エンターテインメント”。フードトラックの食事から伝統芸能、昼間のSUP、アート展示、ダンス、夜の怪談、ライトアップなど多彩なコンテンツを盛り込む。前売チケットは大人1500円、当日2000円。なお、大湯温泉エリア宿泊者はチケット不要。

幻の豚「イノブタ」を村外消費へ 群馬県・上野村 の黒澤八郎村長に聞く

2023年6月2日(金) 配信

上野村の黒澤八郎村長

 群馬県・上野村(黒澤八郎村長)は人口1000人余りの小さな村だ。上野村の特産品「猪豚」を県内の四万温泉にある旅館やレストランでの提供を始め、「群馬のイノブタ」として知名度アップとブランド化を目指す。また、環境省が選定する「脱炭素先行地域」にも選定され、「環境配慮型の『脱炭素の村』」として、時代の最先端を進む。コロナ前に、「“適疎”の村」という新たな価値観を提示した上野村がさらに進化している。黒澤村長に詳しく聞いた。

 

 

 上野村の重点事業に、雄のイノシシと雌のブタを一代交配で掛け合わせる「猪豚事業」がある。

猪豚ウリ坊

 

 このイノブタの生産量と消費量を上げていこうと、「年間200頭幻の豚『猪豚』を活用した猪豚ツーリズム事業」が観光庁の2022年度「地域独自の観光資源を活用した地域の稼げる看板商品の創出」補助事業に採択され、上野村産業情報センターが主体となって新商品の開発や、近隣エリアとの連携による流通・販路の開拓にも取り組んでいる。

 

 上野村では1968年から、イノブタの生産がスタートした。最盛期は農家を中心に年間400~450頭ほどの生産があったが、次第に高齢化が進み後継者がいなくなり、現在は村営の「いのぶたセンター」のみで維持している。

 

 黒澤村長は「近年、イノブタは、主に観光客向けにほぼ村内で消費されていましたが、コロナ禍となり上野村の観光需要が大きく落ち込みました。これを回復させるために、観光庁の補助事業を活用して、自己負担を小さく、さまざまな企画で上野村のイノブタの魅力を伝えていこうと考えました」と語る。観光産業も11~2月までは閑散期となるため、「イノブタ」というグルメの目玉を創り出すことで、冬期の集客を高めるのも狙いの1つだった。

 

人気の「いのぶたロース重」(道の駅上野レストラン)
上野村産業情報センターの瀧澤延匡専務理事

 「家族で上野村に訪れていただきたい」との思いから、子供とお出掛け情報サイト「いこーよ」と連携してプロモーションを展開した。加えて、農協(JA)と組んでイノブタの角煮や、春巻き、モツ煮など新しい商品企画づくりにも着手した。

 

 幻の豚「イノブタ」を思う存分堪能するモニターツアーやさまざまイベントも実施した。上野村産業情報センターの瀧澤延匡専務理事は、「子供たちからも『イノブタ美味しい』との声をいただき、大変好評でした」と話す。

 

 同じ群馬県内の四万温泉にある温泉旅館や飲食店でもイノブタを使用した料理を提供している。これは、四万温泉出身で、群馬県のアンテナショップ「ぐんまちゃん家」所長などを歴任した宮﨑信雄氏と、黒澤村長との長年のつながりが大きい。

 

 「群馬県には上州牛という素晴らしいブランド牛がありますが、上野村のイノブタは、一代交配で年間約200頭しか生産量がない希少性や、肉質の評価も高いため、ブランド価値は高いと思う。宿泊施設やレストランでの肉料理の主役の1つになり得ると自負しています」と黒澤村長は話す。

 

 そのうえで、「上野村のイノブタ」を、「群馬のイノブタ」としてアピールしていく方針を決断。まずはイノブタという存在をより広く知ってもらうことが大事との考えが根底にある。

 

 イノブタの生産は少しずつ増えているという。「軽井沢エリアへの提供も始まり、九州など遠方の個人経営のレストランなどからも問い合わせが多く来ています」。引き合いも増え、実績が徐々に上がっている状況だ。

 

 「今は現場の人たちが頑張って生産量を徐々に上げていっています。村内消費を賄いながら、並行して村外への営業戦略をかけて、消費と生産のバランスを上手く取りながらイノブタ産業を大きく育てていきたい」と黒澤村長は意気込む。

 

「脱炭素先行地域」に

 

 上野村は、環境省が選定する「脱炭素先行地域」に単独で申請。昨年選定され、「実行の脱炭素ドミノ」のモデル地域となった。

 

 工場など産業系を除いた民生部門を再生エネルギーですべて賄うことが求められ、上野村には国から5~6年間で38億円規模の補助金が得られる。

 

 このため、各家庭で太陽光パネルや蓄電池、省エネ家電や家の断熱改修、新型EV(電気自動車)の購入、ペレットストーブ、薪ストーブの導入にも、村が独自に配分し手厚い支援を行う。

 

 具体的に、太陽光パネルの導入については、村が購入したパネルを、村民は設置費の一部と2割程度の負担のみで導入できる。蓄電池は負担無しで貸し付けるため、実質電気代なしとなる。ペレットストーブの導入も村が負担。林業が盛んな上野村には燃料となる木質ペレット製造工場もある。

上野村で製造する木質ペレット

 

 電気自動車を購入すればガソリン代もかからなくなる。EV購入に際して国が85万円補助し、村も同額上乗せして、計170万円を補助する計画だ。

 

 黒澤村長は「全村民に何らかの恩恵を与えられる『脱炭素の村』にしていきたい。時流に合った、環境配慮型の暮らしぶりが実現でき、広がっていくことで、村の価値は上がっていくのではないでしょうか」と話す。

 

 「『脱炭素の村』というのは、これからの時代、大きなアピールポイントとなると思っています。この理念と取り組みに賛同していただける方々が、住み良い上野村に移住してくれる流れになっていくことが目標です」。

 

 電力を自前で調達できるというのは大きい。防災上のレジリエンス(困難な状況にもかかわらず、しなやかに適応して生き延びる力)を高める効果もある。蓄電池が各家庭に普及することで停電対策にもなる。

 

 「万が一のときに自前の電力を供給することができ、安心も担保されます。これが大都市ではなく、山間地の小さな村で実行されていることに意味があるのだと思います」と黒澤村長は力を込める。

 

 今年4月には、サントリーグループと協定を結び、ペットボトルからペットボトルを再生する「水平リサイクル」の取り組みも加速させる。

 

 「持続可能な、循環型の村を目指すという考え方を、できるところからやっていきたい。子供たちの環境教育も始めており、いかに村民に理解していただけるかを考えています。SDGsを分かりやすく、村の事情に置き換えた『上野村版SDGs』も並行して進めています」と黒澤村長は語る。