独OTA日本へ参入、「出張旅行管理で世界一を」(HRS)

ロング氏(左)と三島社長
ロング氏(左)と三島社長

 ドイツに本社があるオンライン旅行会社のホテル・リザベーション・サービス(HRS、トビアス・ラゲーCEO)はこのほど日本市場に参入し、5月14日から事業を開始した。同社は、世界190カ国・地域で事業を展開するホテル予約専門の会社で、日本では法人の出張に特化する。日本法人の社長にはエクスペディア・ホールディングス代表などの経歴を持つ三島健氏が就任。本社は東京都港区。

 5月13日に開いた会見で、HRS経営委員会メンバーでグローバルソリューションズ・ヴァイスプレジデントのジェイソン・ロング氏は「我われのミッションは出張旅行管理で世界1位になること。アジアでの成功なくしてナンバーワンにはなれず、そのためには日本市場においても強い存在になることが必要だ」と日本市場参入の理由を述べた。アジアでは、12年前から参入している中国のほか、香港やシンガポールでも事業を行っている。「日本では長期にわたり事業を展開する予定で、12カ月の間に人員を拡充し、日本のホテルや旅行会社などパートナーと協業しながら日本市場の進化の手伝いをしたい」と語った。他国では個人向けにも宿泊サイトを運営しているが、「日本はオンライン市場が成熟しているので、BtoBに特化する」とした。

 一方、出張分野でも既存会社がすでに台頭しているなか、どのような展開をするかについて、三島社長は独自の販売経路とさまざまな戦略的パートナーとの連携、独立系ホテルまで含めた幅広い宿泊先などを強みとして挙げた。システムを裏からつなぐことができるため、一般企業だけではなく、大手旅行会社やインハウスの旅行会社なども顧客になる。「それぞれの顧客のニーズにあったソリューション(解決策)を使ってもらうことを目指す」。

 また、国内出張や既にグローバル企業へは対応を行っているインバウンドについては「国内の提携施設をしっかり獲得していきたい」とし、「将来的に国内のビジネス利用ができる施設の1万弱のうち、8千軒と提携したい」と語った。なお、旅館の取り扱いについては考えていないという。

時間をかけることの価値

 和歌山県田辺市は、熊野本宮大社の例大祭で行われる湯登(ゆのぼり)神事を題材にした「平成のタイムカプセル」事業を7月から始める。

 県の無形民俗文化財にも指定されている神事は、父親が稚児(3歳を迎える男の子)を肩車し約4キロを練り歩くという、かなり過酷なもの。タイムカプセル事業も神事にならい、同じ道を父と子がたどる。

 厳しさを乗り越え熊野本宮大社を参拝したあと、両親が子への思いをつづり、木箱に封印する。子が成人する17年後に再び熊野を訪れ、持参したタイムカプセル(=木箱)の封印を解くという。

 時間をかけることに価値を見出す事業として興味深い。木箱は参加者に宝物として保管してもらい、未来の訪問者も創出する。設計も上手な企画だ。

【鈴木 克範】

賃貸空室を旅行者へ、特区で旅館業法適用除外(エイブル×とまれる)

左から上山社長、梁瀬社長、三口社長
左から上山社長、梁瀬社長、三口社長

 「エイブル」(梁瀬泰孝社長)と農家民泊のマッチングサイトなどを運営する「とまれる」(三口聡之介社長)は5月22日、旅行者向け宿泊マッチングサイト「TOMARERU~日常を旅しよう!~」について業務提携した。「国家戦略特別区域法」の旅館業法の適用除外を活用し、エイブルの賃貸管理物件の空室を長期旅行者へ貸し出すサービスを行う。今秋からのサービス開始を予定。旅館業法の適用除外について宿泊施設業界から批判の声が上がっている。
【伊集院 悟】

 主要ターゲットは2020年東京オリンピックに向けて増加する訪日外国人旅行者。空き賃貸物件を旅行者に貸し出したい物件所有オーナーが同サイトへ宿情報を登録し、宿泊希望者とやり取りをする。

 同サービスは成功報酬型でサイト掲載料や管理画面利用料は無料。成約時に初めて手数料が発生し、物件オーナーと宿泊者からの手数料は合わせて10―15%。取扱高は15年3月末までに2億円を目指す。 

 三口社長によると、鍵の受け渡しや家具の取り扱い、清掃などは各オーナーと宿泊者とのやり取りになるが、「とまれる」がサポートする「おまかせプラン」もあるという。カード決済完了が予約成立になり、未収リスクがなくキャンセル料の収受が可能。宿泊料金はルームチャージとなり、料金や人数の制限などはオーナーの判断になる。

 特区は東京都9区(千代田区、中央区、港区、新宿区、文京区、江東区、品川区、大田区、渋谷区)と、千葉県成田市、神奈川県、京都府、大阪府、兵庫県。旅館業法適用除外には、滞在が7―10日以上であることや、広さ25平方メートル以上、バストイレ・冷暖房完備などが条件になる。対象となる区域のエイブルの管理物件は12万軒に上り、空室率は一般的に9%台後半から10%台前半といわれる。取扱物件はサービススタート時に1千軒、15年3月末時点で2千軒を目指す。

 同日に開いた会見で、とまれるの親会社である百戦錬磨の上山社長は「東京のホテル稼働率は90%近く、外国人の連泊ができない状況。ある総研の調査では東京五輪時に選手村から10キロ圏内では4万泊足りなくなるとの試算もあり、同サービスはピーク時の供給不足を補える」と説明。また「ネットの民泊マッチングサイトは米国などで急速に伸びていて、日本でも大きな市場になるだろう」と米国の「Airbnb」を意識し展望を語った。訪日外国人旅行者のほか、国内旅行者、長期出張などのビジネス需要を想定し、「外国人7割、日本人2、3割ぐらいでは」とみる。

 上山社長は「需要の食い合いになる」と宿泊施設業界から批判の声が出ていることを明かした。「宿泊ビジネスは装置産業なので部屋数が決まっているが、ピーク時に近くの賃貸物件を1棟借りして『とまれる』に登録してもらえば、ホテルなどにもメリットがある」と強調するが、施設の違いやサービスのオペレーションの問題、賃貸物件の1棟借りが現実的に可能かなどを考慮すると、ハードルは高い。

出展数1500小間超えに、前夜祭は東京国立博物館(ツーリズムEXPO)

菊間委員長(中央)、見並副委員長(左)
菊間委員長(中央)、見並副委員長(左)

 日本観光振興協会と日本旅行業協会(JATA)で組織する、ツーリズムEXPOジャパン推進室は5月21日、9月25―28日に東京ビッグサイトで開く「ツーリズムEXPOジャパン2014」の展示会への出展数が1500小間を超える予定だと発表した。このうち、国内地域の出展数は約300小間、海外は150以上の国・地域からの出展を見込む。また、前夜祭は東京・上野の東京国立博物館で実施することが決まった。

 同イベント実行委員会の菊間潤吾委員長(JATA会長)は、「真に観光立国日本を世界に発信できる舞台が整ったと自負している」とし、観光イベントで世界最大といわれるドイツ・ベルリンのITBに次ぐ規模になることを強調した。「世界の観光関係者はアジアで行われることに注目しており、諸外国からの参加者も例年になく多い」と期待が大きいことを紹介。「名実ともにアジア最大の観光イベントとして、アジアへの観光客の2億3千万人をさらに増やす連携も実現していきたい」と述べた。

浮世絵をモチーフにしたポスター
浮世絵をモチーフにしたポスター

 また、ツーリズムEXPOジャパンと併設の「VISIT JAPANトラベルマート」(主催=観光庁)と共同で行う前夜祭「JAPAN NIGHT」の会場を東京国立博物館に決定したことについては「世界では首都を巡る際に必ず国立博物館は観光のメインになるが、日本ではこれまであまりなかった。これを機に素晴らしさを世界の観光関係者に認識してもらえるとうれしい」と語り、縄文時代から江戸時代までの美術品展示などを企画して特別感を創出するという。

 実行委員会の見並陽一副委員長(日観振理事長)は国内の出展状況について「北海道から沖縄まで申し込みがあり、300小間が地域の方々の出展だ。これは昨年までの旅フェアと旅博の出展を合わせた数をはるかに超えている」と紹介。「地域にとって、観光による経済活性化の意味では日本人も外国人の観光客も同じ。両方一緒に発信ができるツーリズムEXPOジャパンへ大きな期待と評価をいただいた結果」と分析した。

 同日は浮世絵をモチーフに海外と国内、インバウンドの三位一体を表現したイベントポスターも発表。今後もポスターは浮世絵をモチーフにしていくという。

一般社団法人を設立、バリアフリー旅行ネット

平森良典代表理事
平森良典代表理事

 10年間にわたり、任意団体としてユニバーサルツーリズムの発展に向け活動を行ってきた「バリアフリー旅行ネットワーク」(平森良典代表理事、97会員)はこのほど、一般社団法人を設立した。5月16日、東京都内で設立総会を開き、終了後は関係者を招いて祝杯をあげた。

 あいさつに立った平森代表理事は「我われが目指すのは誰もが安心して旅ができる社会」とし、「観光と福祉、医療の三位一体の連携プラットフォームを線から面にし、面から地域につながり、球体になっていけるような活動を行っていきたい」と一般社団法人設立への意気込みを語った。

 来賓の観光庁観光産業課の堀江直宏課長補佐は「ユニバーサルツーリズムの取り組みは今後ますます重要になってくる。観光庁では昨年、地域の受入体制マニュアルづくりを進め、受け手と送り手の両面から検討してきた。今後はいかにこれを広げていくかが課題だと受け止めている」と観光庁の取り組みを紹介したうえで、バリアフリー旅行ネットワークに対し、「ますます強力に活動を進め、ユニバーサルツーリズムの一層の促進に向けて主翼を担ってほしい」と期待した。

 同ネットワークは旅行会社のほか、運輸事業者や看護師、高齢者や障がい者の外出支援を行っているヘルパーなどさまざまな関係者で構成する。今年度は、会員のユニバーサルツーリズム事業のスキルアップやビジネスメリットの構築、法人のPR活動を事業目標に掲げる。

豊岡市に旅ペン賞、5月16日「旅の日」に150人(日本旅のペンクラブ)

「旅ペン賞」受賞した豊岡市の中貝市長(左)
「旅ペン賞」受賞した豊岡市の中貝市長(左)

 日本旅のペンクラブ(代表会員・中尾隆之氏)は5月16日、東京都文京区の椿山荘で第27回「旅の日」を開き、150人を超える参加者でにぎわった。旅の文化向上に貢献した団体、個人、行政機関などを表彰する2014年度「第34回日本旅のペンクラブ賞」には、「コウノトリとの共生」を掲げる兵庫県・豊岡市が受賞し、中尾代表会員から中貝宗治市長に旅ペン賞を贈呈した。表彰式に先立って、中貝市長は「失われた大切なものを取り戻す」と題して講演。第6回「旅の日」川柳大賞や各賞の表彰式、お楽しみ抽選会も盛大に行われた。

 同クラブは旅を愛する旅行ジャーナリスト・ライター・作家・随筆家・歌人・俳人・写真家などがお互いに交流し、旅文化を考える会として1962年に設立。名誉会長は松尾芭蕉で、芭蕉が「奥の細道」紀行に旅立った元禄2年3月27日(陽歴5月16日)を記念して「旅の日」と制定し、毎年イベントを実施している。

湯沢グランドホテル、おにぎりサービス好評

朝食バイキングで手作りおにぎり
朝食バイキングで手作りおにぎり

 新潟県・越後湯沢温泉の「湯沢グランドホテル」では、朝食バイキング会場で目の前で握って提供する「おにぎりサービス」が、宿泊客に評判をよんでいる。

 手作りおにぎりは、契約農家から直送した南魚沼・塩沢産コシヒカリを使用。大自然の恵みを受けた美味しいお米は絶品。同館で提供される夕食・朝食バイキングや宴会・部屋食など全プランでこのコシヒカリを食べることができる。

 おにぎりの具材は、梅・昆布・鮭の3種類。なかでも鮭の具材は、鮭フレークではなく、料理長が自ら選んだ鮭の切り身を使用して、焼いたばかりのものを使っているため、「よその手作りおにぎりとは比べものにならないぐらい美味しさのレベルがまったく違う」と絶賛されている。

 同館の村山桂子女将は「こだわりのコシヒカリと焼き鮭を使った手作りおにぎりは、お客様からも大変美味しいと大好評です。皆様も美味しいおにぎりを食べにぜひご来館ください」とコメントした。

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 なお、村山女将は自らの半生を語った「女将の『心』はフォルティッシモ」と「女将は『心の華』でありたい」の2冊を上梓しており「よろしければ、ぜひご一読ください」(村山女将)と併せてPRしている。

 問い合わせ=電話:025(784)2351。

トラベルライティング、認知度向上目指し表彰(立教大学舛谷研究室)

舛谷鋭教授
舛谷鋭教授

 立教大学観光学部の舛谷研究室(舛谷鋭教授、交流文化学科)は、「トラベルライティング」の認知度向上を目指して表彰事業を行っている。

 トラベルライティングとは旅の体験を文章で表現するトラベルライターが執筆する旅エッセイ。舛谷教授は、「海外の書店に行くと、ガイドブックの隣にトラベルライティングのコーナーがあるくらい一般的であり、言葉としても英語では大きな存在。しかし、日本語ではまず聞かない単語で、この状況では日本で書いても評価されない」とトラベルライティングの重要性を訴えている。

 4月21日に同大学で開いた「トラベルライティングアワード」の表彰式では、ANA機内誌「翼の王国」2012年5月号で掲載された「ポルトガル・ナザレ 7枚のスカートと1001のバカリャウ物語」(文・吉田直子さん)が選ばれた。同アワードは、トラベルライティングの認知度の向上を目的に舛谷研究室の学生を中心に運営されており、作品の選定から表彰まで学生の手で行う。

 舛谷教授は「この表彰事業を通じてトラベルライティングの認知度が向上し、トラベルライターの活躍の場が広がることを願っている」と期待を述べた。同アワードは毎年開催しており、現在は航空機内誌を中心に選定しているが今後は雑誌や新聞など対象を広げていく予定。

「RYOKAN」を世界へ、パリのOECD会議でPR(全旅連青年部)

安倍首相、グリアOECD事務総長らと全旅連青年部のメンバー
安倍首相、グリアOECD事務総長らと全旅連青年部のメンバー

 全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会青年部(山口敦史部長)は、観光庁や、OECD(経済協力開発機構)日本代表部、日本政府観光局(JNTO)、エクサアールなどと連携して、5月5―7日までフランス・パリで開かれたOECDフォーラム・閣僚理事会の会場内で、同加盟国の閣僚や政府関係者、有識者、国際メディアに対して着物姿で日本の「RYOKAN」をアピールした。

 山口部長をはじめ、インバウンド戦略委員会の倉沢晴之介副委員長らが、会場内に特別に設置された訪日観光PRスタンドで、着物姿になって「RYOKAN」冊子400部以上を配布しながら、日本の旅館の持つ魅力を説明した。

 同スタンドには、アンヘル・グリアOECD事務総長や安倍晋三首相をはじめ、各国首脳も立ち寄り、高い関心を集めた。

【決定】第25回女将サミット 9/16 明治記念館で

『全国旅館おかみの集い』ページを更新いたしました。

 今年で25回目の節目を迎える全国旅館おかみの集い(全国女将サミット2014東京、佐藤幸子実行委員長)の開催日・会場が下の通り決まりました。

開催日:9月16日(火)
会 場:明治記念館(東京都港区)

詳細は決定次第コチラからお知らせします。
(弊社の『全国旅館おかみの集い』ページへリンクしています)

 
☆「全国旅館おかみの集い」とは☆
 全国の旅館・ホテルの女将が一堂に集まり、互いに悩みや課題を話し合い、各界著名人による講演、分科会を通じて学び、併せて女将のネットワークづくりのための懇親を深める場です。(通称:女将サミット)