すみだ水族館、開業以来初の大規模リニューアル 直径7㍍のクラゲの水盤など2つの新エリアが誕生

2019年12月13日(金) 配信

新クラゲ展示エリア(イメージ)

 すみだ水族館(東京都墨田区)はこのほど、開業以来初めて大規模リニューアルすると発表した。完成は2020年4月下旬を予定。直径7㍍のクラゲの水盤など2つの新エリアが誕生する。

 クラゲの水盤は、クラゲの飼育作業などを観察できる「アクアラボ」と水槽が絵画のように並んでいる「アクアギャラリー」がある場所に新設される。床に水槽の一部を埋め込み、上面からのぞき込んで約500匹のクラゲを直に観察できるようにする。

 水盤の一部には、水面に張り出すガラスの床のデッキを設置し、足元をクラゲが横切り、まるで水面に立っているような浮遊感を感じることができるようにする。

 さらに壁面には3つのドラム型水槽を新設。クラゲの色や模様の違いなどを見比べられるようにする。

 多目的スペース「すみだステージ」には、「アクアラボ」で展示・公開していたクラゲの飼育設備を移設する。新たに調餌のようすも見ることができるようにするほか、飼育スタッフとの会話も楽しめる。また、ステージ下に新設したカウンターではクラゲの成長過程なども観察できる。

さらに、いきもののゴハンの時間などの館内情報が流れる直径約10メートルのリング型サイネージもオープンスペース上部に設置する。

HIS、売上高過去最高に 来年8月に持株会社化

2019年12月13日(金) 配信

澤田会長兼社長

 エイチ・アイ・エス(HIS、澤田秀雄会長兼社長)が12月12日(木)に発表した2019年10月期(18年11月~19年10月)連結業績によると、売上高は前年同期比11・0%増の8085億1千万円で過去最高となった。旅行事業と電力小売り事業が好調に推移した。営業利益は同3・0%減の175億4千万円。ハウステンボスの入場者数減少やホテル事業の開業費用一括計上などが響いた。経常利益は同12・4%減の170億8900万円で、当期純利益は同10・7%増の122億4900万円だった。

 経常利益は為替差損を9億円計上したことなどにより減益だった。当期純利益はユニゾホールディングスの売却による30億円を含む特別利益41億円を計上し、増益した。 

 旅行事業をみると、売上高は同10・9%増の7224億6400万円だった。営業利益は同12・7%増の137億5400万円。10連休だったゴールデンウイーク需要に加えて、海外法人の訪日事業が堅調だった。

 日本発海外旅行はグアムが同34・7%増と大幅な伸びとなった。さらに送客数では初めて、インターネット利用客数が店舗利用客数を上回った。 

 海外法人の旅行事業は売上高が同23%増加した。とくに、北中南米は同94%と大幅に伸長。このうち、昨年買収したジョンビューは同83%増だった。

 訪日旅行(ジャパンホリデートラベル)事業は東アジア市場の競争激化などで収益面に課題が残った。一方、そのほかのエリアでは体制を強化し、とくに欧米からの受客が増加した。売上高は同4・0%減の286億800万円。

 エネルギー事業は電力小売り事業の契約数が増え、調達先の多様化をはかったことなどにより、売上高は同70・7%増の204億6100万円だった。営業利益は、前期の営業損失4億2800万円から一転、9億7400万円となった。

 なお、2019年通期の業績予想は売上高が9千億円(2019年度比11・3%増)で、営業利益は193億円(同10・0%増)、経常利益は195億円(同14・1%増)、当期純利益は110億円(10・2%減)を見込む。 

持株会社化へ 20年8月を予定

 同日には澤田会長が、HISの事業がホテルやエネルギー、商社などと多角化しているため同社を20年8月にホールディングス化すると発表した。

 澤田氏は「メインはもちろん旅行業」とし、「来年は大きく変化する年になる」と意気込んだ。

 ホールディングス化に先立ち、同社は20年6月ごろ、オフィスを虎ノ門に移転する。面積を1・5倍に拡張し、業務拡大と人員増強、職場環境改善に努める。

 なお、澤田氏は記者から旅館再生の興味の有無について問われ、回答。「地方活性化に貢献したい。案件があれば取り組みたい」と旅館再生に興味を示した。

「スポーツ文化ツーリズムアワード2019」受賞団体決定 食料背負い約250㌔を走破する「白山ジオトレイル」など計6件

2019年12月13日(金) 配信

ONSEN・ガストロノミーツーリズムが行うウォーキングイベントのようす

 観光庁はこのほど、スポーツ庁と文化庁の3庁共同で行う「スポーツ文化ツーリズムアワード2019」の受賞団体を発表した。食料を背負い7日間で約250㌔を走破する「白山ジオトレイル」など計6団体が受賞した。

 同アワードは、3庁が手を組み、スポーツや文化、芸術、観光などの地域資源の組み合わせ新たな地域の魅力を発信して、国内外からの観光誘客の活性化をはかるもの。今年で4回目となる。

 表彰式は、第4回スポーツ文化ツーリズムシンポジウム内で行う。日時は2020年1月15日(水)午後1時~午後5時30分(開場:午前11時)、場所は金沢市文化ホール(石川県金沢市高岡町15-1)となる。地方部での同シンポジウム開催は初めて。

 シンポジウムでは、3庁の長官によるトークセッションや、有識者による基調講演、地元大学生参加のワークショップも開催する。

 申し込みは下記から。

第4回スポーツ文化ツーリズム シンポジウム 〜スポーツ文化ツーリズムアワード2019...
http://sporttourism.or.jp/sport-culture-tourism.html
スポーツ庁、文化庁及び観光庁では、スポーツや文化芸術資源の融合により、新たに生まれる地域の魅力を国内外に発信し…

 なお、各受賞団体と取り組みの概要、評価ポイントは下記の通り。

〈スポーツ文化ツーリズム賞 2件〉

日光国立公園マウンテンランニング大会(日光トレイルランニング実行委員会)

概要:

 2015年の台風18号の被害を受けた日光・鬼怒川に元気を取り戻したいと願う地元の若者によって立ち上げられたトレイルランニングの大会となる。

行政からの支援を受けず、国やスポーツ関連団体からの補助金にも頼らない完全自主運営。

 目玉は「世界遺産や国立公園を走れる」ことで、日光の二社一寺を大会会場に、日光の大自然に触れながらトレイルランニングを楽しめる。

評価ポイント:

 日光の世界遺産や国立公園内を抜け、歴史文化と大自然の両方を満喫できる稀有なスポーツイベント▽文化資源と大自然の組み合わせはインバウンドの訴求力も高く、全国モデルになり得る。エコツーリズムとしても期待▽集客力が高く、開催による経済効果も大きく、地域活性化にも貢献

「剣道体験ツアー 【SAMURAI TRIP】」剣道体験ツアーSAMURAI TRIP(運営:パークフォーアス)

概要:

 訪日客を中心に剣道体験ツアーを実施している。剣道体験を中心に、剣道道具製作工房の見学や剣道レストランでの和食体験を用意し、歴史や文化、伝統ある剣道具の魅力を伝えている。

評価ポイント:

 日本の伝統文化である剣道を切り口に、訪日外国人との交流を促進▽道具の製作工房見学や和食体験など、伝統文化も含めたプログラム▽全国展開できる事業性に期待

〈スポーツツーリズム賞 2件〉

魚沼国際雪合戦大会(小出雪まつり実行委員)

概要:

 雪合戦発祥の地を掲げ、地域の活性化を目指してこれまで31回開催している。地元産品や地元の温泉宿泊券など、魚沼ならではの景品を用意。

 会場内では特産品の魚沼産コシヒカリを無料で食べられるコーナーや、名物の「生もつ焼き」や「けんちん汁」を振る舞い、地域一体となってイベントを盛り上げている。

 チームの大砲は、豪雪地域特有の「かんじき」を履き、「山笠」を被って、「こしき」を持つのが特徴という。

評価ポイント:

 雪を地域の文化資源として活用し、温かみのある地域のおもてなしを行っている▽雪を親しむことを入り口に、スキーなどの他スポーツにつながることを期待▽ルールが分かりやすく理屈抜きで楽しめ、インバウンド訴求力が高い

白山ジオトレイル(白山ジオトレイル実行委員会)

概要:

 すべての食料を背負い、7日間で約250㌔の道のりを走破するステージ制アドベンチャーマラソンイベントで、今年で6回目を迎える。健康増進と地域活性化が目的。

 白山比咩神社(しろやまひめじんじゃ)をスタートし、白山七社などの神社仏閣と、白山取手川ジオパークのジオサイトの観光名所を巡る。さらに加賀禅定道など修験道で霊峰白山へ登拝し、白山比咩神社へと戻る。

 表彰パーティーでは、白山麓の熊や猪などのジビエ料理や郷土料理を振る舞う。

評価ポイント:

 単なるスポーツではなく、文化・自然を含めた精神性の高い取り組み▽白山の信仰文化や伝統芸能を組み合わせたユニークなプログラム構成▽アドベンチャーツーリズムの観点で難易度の高いコースであるが、世界的な大会となる高いポテンシャルがある

〈文化ツーリズム賞 2件〉

忍びの里「伊賀」ならではの本物の忍びの「心技体」を体現できる体験プログラムづくり(「忍びの里 伊賀」創生プロジェクト会議)

概要:

 伊賀の山里を駆け抜ける忍者体験(忍者トレイルランニング事業)と伊賀の山里で暮らす忍者体験(滞在型プログラム事業)による「忍びの正心である”心技体”を鍛える」をテーマとした体験プログラムを展開している。

 体験プログラムでは、農泊や伊賀焼の窯元散策、間伐作業の里山整備と木工教室などの農業体験・文化体験に忍者修行の要素を組み合わせ「伊賀忍道」という伊賀オリジナルの宿泊体験プログラムとして提供している。

評価ポイント:

 日本遺産を中心エリアに、伊賀の伝統歴史を十分に組み込んプログラム▽外国人の関心の高い、世界に通じるコンテンツとして期待▽ヨガや忍道等を実践する「伊賀忍道」など、今後のさらなる展開が見込まれる

「めぐる、たべる、つかる」ONSEN・ガストロノミーツーリズムで地域を元気に!(ONSEN・ガストロノミーツーリズム推進機構)

概要:

 日本が誇る観光資源、温泉とその土地の気候風土が生んだ食材・習慣・伝統・歴史等によって育まれた食を組み合わせた「ONSEN・ガストロノミーツーリズム」。その実践としてウォーキングイベントを全国各地で開催している。

 温泉地に設定されたコース上の自然や歴史・文化、街並みを自分のペースで巡り、ポイント毎にその地域の食事や酒を主に1品ずつ食べ、ゴール後に温泉に浸かることができる。

 「めぐる、たべる、つかる」をテーマに温泉地の魅力向上と地域活性化を目指す取り組みとして、2014年から行っている。

評価ポイント:

 温泉の楽しみ方にウォーキングを掛け合わせ、地域の文化資源の魅力を発信▽今後、常時参加可能なコース設定がなされ、一層の発展が見込まれる▽地域の文化資源を一度に巡る体験として、他地域への横展開に期待

大井川鐵道沿線の地域活性化を JTBらが日帰りツアー実施へ

2019年12月13日(金) 配信

井川ダム

 JTB(髙橋広行社長)と中部電力(勝野哲社長)、大井川鐵道(鈴木肇社長)は2020年2月15、16日の2日間、 大井川鐵道井川線沿線の地域活性化と再生エネルギー事業の理解獲得を目的とした日帰りツアーを行う。中部電力が地域活性化を目的としたツアーに参画するのは、今回が初めて。

 ツアーは3コースある。2月15日(土)に実施する「JR静岡駅発コース」は、通常は公開していない井川ダム(日本初の中空重力式ダム)の内部に入れるほか、秘境駅と言われる奥大井湖上駅などを見学する。

 2月16日(日)は「大井川鐵道アプトいちしろ駅発コース」があり、アプト式機関車や車庫を見学するほか、廃線になった区間内にあるトンネル内での昼食や、いちしろ吊橋などにも立ち寄る。

 その他、井川ダムや秘境駅、アプト式機関車車庫などをめぐる「大井川鐵道千頭駅発コース」(12月13日午前10時半現在、満席)もある。

 ツアーの企画・実施はJTBが行う。申し込みは、WebたびーととJTB新宿第二事業部で受け付ける。

JR静岡駅発コース

出発日:2月15日(土)

主な見学場所:中部電力井川ダム、奥大井湖上駅、尾盛駅など

定員(先着順):30人

旅行代金:大人9,800円、小人8,800円

申込先:

Webたびーと https://www.jtb.co.jp/tabeat/

JTB新宿第二事業部 TEL 03-5909-8119(平日午前10時~午後5時)

奥大井湖上駅

大井川鐵道アプトいちしろ駅発コース

出発日:2月16日(日)

主な見学場所:アプト式機関車、アプト式機関車車庫、ミステリートンネル、いちしろ吊橋

定員(先着順):30人

旅行代金:5千円(大人、子供同額)

申込先:

Webたびーと https://www.jtb.co.jp/tabeat/

JTB新宿第二事業部 TEL 03-5909-8119(平日午前10時~午後5時)

アプト式機関車、機関車車庫

 

 

 

 

利用者5万人を達成、訪日客向けバスツアー(名鉄観光バス)

2019年12月13日(金)配信 

記念撮影をする5万人目の家族と石川信吾社長(右から3番目)

 名鉄観光バス(石川信吾社長、愛知県名古屋市)は2019年10月31日(木)、訪日外国人旅行客向けバスツアーの利用者が5万人を超えたと発表した。同日、記念式典を同市の名鉄バスセンターで行った。

 5万人目となった利用者は、タイ国籍のスワンスコー・ルートラックさんら家族7人。岐阜県の飛騨高山と白川郷をめぐる日帰りツアーに参加した。記念式典では石川社長から記念品として、高山市のご当地キャラクターのひだっちと、さるぼぼのぬいぐるみを贈呈した。中部運輸局や旅行会社など約30人が参列し、盛大に見送りを行った。

 同社のバスツアー「ドラゴンズパック」の訪日外国人旅行客向けツアーは、17年1月に開始。中部地方を中心に、冬期は雪景色や冬グルメを堪能できるツアーを売り出している。

〈旬刊旅行新聞12月11・21日合併号コラム〉2019年の観光業界を振り返る 分散化、多様化の必要性が明確に

2019年12月13日(金) 配信 
2019年の観光業界を振り返る

 早いもので、今年の最終号となった。小欄では、2019年の観光業界を振り返ってみたいと思う。

  19年は長く親しんだ「平成」が終わり、5月1日に新たな元号「令和」が始まった節目の年だった。10月22日には世界各国から元首らが参列し、皇居で天皇陛下の即位礼正殿の儀が行われた。日本古来の伝統文化を、世界中に発信できた貴重な機会だったと思う。儀式を待つ間、降り続く雨が静寂を際立たせた。やがて雨が上がり、虹が架かった光景は美しく輝いた。
 
 
 5月のゴールデンウイークは10連休となった。国内の旅館やホテル、レジャー施設などは連日、超多忙を極めた。観光業界も働き方改革が進むなかで、「客はいるが、スタッフがいない」状況が顕在化した。やはり、休日を分散化しなければ、旅行者も、受入側もストレスが大きくなることを改めて示した10連休だった。
 
 働き方改革法案の成立により、4月1日から年5日の有給休暇の取得が義務付けられた。とある有名ホテルの厨房スタッフは、「今年から5日間の休暇が取れるようになった。こんなことはこれまで考えられなかった」という声もあり、休暇の分散化に向かっては一歩前進したと思っている。
 
 
 国際情勢も大きく動いた。7月の韓国向け輸出管理の運用見直し後、日韓関係は悪化の一途を辿っている。10月の訪日韓国人数は前年同月比65・5%減の19万7300人と激減した。両国を結ぶ航空路線の廃止や縮小が続き、韓国人旅行者が多く訪れていた九州や関西などでは、影響が深刻化している地域もある。
 
 しかし、特定の国や地域からの観光客に依存している状況は、リスクが大きすぎる。とくに近隣アジアを見渡すと、政治的な動きや国家間の関係によっては、今後も観光動向に大きな影響を与えることが予想できる。その意味でも、観光客の誘致も分散化、多様化していかなければならないことが明確になった。
 
 その意味では、9月20日~11月2日まで開催したラグビーワールドカップ2019は、観光業界にもたくさんのプレゼントを残してくれた大会だった。アジアに集中していた訪日外国人旅行者を、欧米豪や南アフリカなどにも広げるきっかけを作った。また、試合やキャンプ地が日本各地に広がったために、訪日客の目的の分散化、多様化につながった。
 
 
 今年は自然災害も多発した。台風15号、19号によって甚大な被害が広域にわたった。未だに鉄道や道路が復旧していない地域もある。施設が破損し、営業ができない宿泊施設もある。仮設住宅で年を越す被災者も多いだろう。
 
 10月25~26日には、北海道・倶知安町でG20観光大臣会議が開かれた。招待国を含め31の国・地域の観光担当大臣が出席し、SDGs(持続可能な開発目標)実現に貢献していく認識も共有した。オーバーツーリズム(観光公害)にも対応していく「北海道倶知安宣言」も採択された。持続可能な観光(サステイナブルツーリズム)についても、これまで以上に考えさせられる年だった。
 
 最後に、私自身も今年を振り返ると、まだまだ旅が足りない年だった。「20年は旅を深く味わう」ことを目標に、新年を迎えたい。
 
(編集長・増田 剛)

JATA、2019年最後の定例会見 「トライした部分が得点につながった1年」 

2019年12月12日(木) 配信

JATAの越智良典理事・事務局長

 日本旅行業協会(JATA)は12月12日(木)、今年最後の定例会見を開いた。越智良典理事・事務局長は、「(19年のJATAのスローガン『チャレンジ&トライ』にちなみ)想定以上に、トライした部分が得点につながったという充実感があった」と1年を振り返った。

 トライが得点をあげた部分は、東京以外で初めて開催した「ツーリズムEXPOジャパン大阪・関西」が想定の13万人を超える15万人が訪れて大成功を収めたことや、「第1回日中観光代表者フォーラム」(会場=山梨県北杜市)などの開催を挙げた。

 一方で、「社会の変化に伴い、デジタル化や(旅行業界の)商売の仕方が変わってきているが、対応しきれていない部分がある」とした。そのうえで、「制度や技術的な環境作り大事だが、腰を据えてできなかった」と今後の課題にも言及した。

 来年1月には、日本とベトナムの相互交流の促進を目的とした大型レセプションをベトナム・ダナンで開催。日本側からは約1千人の交流団が、ベトナム側からは観光や経済の大臣など要人約100人の参加を予定している。

 今後、日本とベトナムの関係について越智氏は、「観光業界の人手不足を補う、(外国人技能実習生の)人材活用がテーマになる。優秀な人材も多く、日本のあらゆるところで働いてほしい」と期待を込めた。

 一方で、外国人技能実習生の現制度の不備などから「(出身国で)借金をして日本に来て、自殺してしまう人もいる」と現状にも触れた。

 日本と中国との関係も良好で、「(日中観光代表者フォーラムにおいて)『日中新時代』と言葉が作られるくらい良い関係」(越智氏)と語った。これを受け、今後は修学旅行などの「青少年交流を1つの柱に据える」ことも明かした。

 

 

triplaチャットボット、訪日外客向け観光情報サービスに搭載

2019年12月12日(木)配信

「triplaチャットボット」からの飲食店予約イメージ

 旅行業界向けIT・AIサービスを展開するtripla(トリプラ、東京都中央区)は2019年12月11日(水)、開発・提供する多言語AIサービス「triplaチャットボット」を、訪日外国人向け観光情報サービス「LIVE JAPAN PERFECT GUIDE」に提供した。計5言語で対応できるAIチャット機能によって、訪日外国人の国内飲食店のオンライン予約をサポートする。

 「LIVE JAPAN」は、観光や宿泊施設、飲食店、交通案内などの訪日外国人が必要とするさまざまな情報を多言語でワンストップに提供している。「triplaチャットボット」が、「LIVE JAPAN」内の「食べる」カテゴリーに掲載された飲食店の店舗詳細ページと紹介記事に搭載。AIとのチャットを通じて、24時間どこからでも日本の飲食店のオンライン予約が可能となった。

 ただし、一部店舗は利用者からチャットでリクエストをされたあと、トリプラのオペレーターが予約を代行する「オペレーター予約」となる。対応言語の5言語は、日本語・英語・韓国語・中国繁体字・中国簡体字。

 トリプラは「triplaチャットボット」の提供を通じて、「LIVE JAPAN」ユーザーの飲食店予約の利便性と、店舗の予約成約率の向上サポートをはかっていく。

日本オートキャンプ協会、創立50周年記念講演会開く 10月発表の福島宣言を東京で説明

2019年12月12日(木) 配信

明瀬会長

 日本オートキャンプ協会(明瀬裕一社長)は12月10日(火)、東京都内で創立50周年記念講演会を開いた。明瀬会長は冒頭、1969年に運輸省(当時)から社団法人として認可されてからの半世紀の歴史を辿りながら、「広く国民的レジャーとして定着した」と振り返った。今年10月には、福島県・天栄村で開いた第89回FICCオートキャンプ世界大会の会場で、創立50周年を記念して、今後の活動の指針とする「福島宣言」を発表した。

 福島宣言の柱は4つ。1つ目は「観光としてのオートキャンプの推進」、2つ目は「オートキャンプを通した国際交流」、3つ目は「地域振興に寄与するオートキャンプ」、4つ目は「オートキャンプにおけるSDGs(持続可能な開発目標)」――と定めた。

 「観光としてのオートキャンプの推進」では、オートキャンプを日常生活の圏外に出て、未知の人や自然、文化に触れる「観光の本質を体現した」レジャー活動であると再確認をする。そのうえで、さらなるオートキャンプツーリングの環境整備に努めていく。

 「オートキャンプを通した国際交流」では、FICCオートキャンプ世界大会は世界中のキャンパーが国家と言語、民族の違いを超えて集まり、開催地の自然や文化に触れるとともに、互いの親睦を深める「平和の祭典」と定義。今後も、「国際交流の促進」に努めていく。

 「地域振興に寄与するオートキャンプ」では、福島県が原発事故以降、世界各国の人々が福島の現状を自分で体験したことは風評被害を払拭する一助になったとした。そのうえで、同大会結果を踏まえ、一層のオートキャンプを通した地域の振興をはかる。

 「オートキャンプにおけるSDGs(持続可能な開発目標)」では、同大会は開催地の自然・文化・観光資源を最大限活用することを通して、地域振興と世界平和に貢献したとしたうえで、オートキャンプにおける「持続可能性の追求」に努める。

 講演会では、観光庁観光地域振興部の村田茂樹部長が「観光を取り巻く現状と体験型観光への期待」と題して講演を行った。村田部長は日本の訪日客数や消費額などの現状を説明。

村田部長

 「観光庁は地域固有の自然を生かした、体験型観光の充実に向けた地域の取り組みを後押している。第89回FICCオートキャンプ世界大会では東北観光復興対策交付金を支給した」と、地方における体験型観光の発展に貢献する準備があることを話した。

山口・長門湯本温泉の再開発の今 大谷山荘で通算164回旅館大学セミナー開く

2019年12月12日(木) 配信

セミナーは12月11―12日、長門湯本温泉・大谷山荘(山口県)で開かれた。通算164回目

 リョケン(佐野洋一社長、静岡県熱海市)は2019年12月11―12日に山口県・長門湯本温泉の「大谷山荘」で、通算164回の旅館大学セミナーを開いた。宿泊施設の幹部ら約100人が参加した。同温泉地の再開発の現場視察や、宿の高品質化へのこだわりを説明。20年3月に再開発を終える長門湯本温泉で、現在進行形で進む街づくりの取り組みなどを語った。

 初代・大谷辰之助が旅館業を創業したのは1881(明治14)年。1960年には現在の位置に大谷山荘を新築した。現在は全館で125室、うち別邸音信(おとずれ)18室、収容人員は500人。従業員数は252人で、このうちパートタイマーは119人となっている。

大谷山荘の外観

 大谷山荘は決して好立地ではない。山口宇部空港からも、新山口駅からも車で1時間ほどかかる。しかし、11月の客室稼働率は9割を超えた。平均宿泊単価は2万3千円ほどで、総消費単価は約3万円。さらに売店の売上単価は3500円という。

 佐野社長は開講に先立ち、「大谷山荘は西日本で大変強い存在感を放っている高質旅館といっていい。大変失礼だが、このような立地で、これだけの高品質なサービス、高価格、また高い業績を上げている。売店の売上単価は驚異的な数字。多くを学べるはずだ」とあいさつした。

 長門湯本温泉は開湯約600年の歴史を持つ。ただ、1984(昭和54)年に宿泊客数39万人でピークを迎え、その後2012年は18万人と半減した。時代と共に団体から個人旅行へとシフトした国内市場の変化に追い付けなかった。

 14年には、広大な敷地を有していた150年ほど続いた老舗旅館が廃業した。温泉街の中心部に空き家などの遊休地が広がるなど、悪循環に陥っていた。

20年3月の工事完了へ急ピッチで作業が進められている。手前が音信川。右手に建設中の公衆浴場

 この状況を打開しようと、跡地に星野リゾートを誘致(星野リゾート 界 長門が20年3月12日開業)し、官民一体となって新たな街づくりを計画して、現在、地域ぐるみで作業が進められている。

大型駐車場を整備している現場。12月11日
星野リゾート 界長門の外観。3月12日開業する。長門湯本温泉再開発の目玉でもある

 地域特有の「音信川」を生かし、そぞろ歩きができる温泉街、そして夜もライトアップやイベントなどができるよう、協議会などを設立してさまざまな社会実験繰り返してきた。

中央手前にあるのが「川床」

 社会実験の結果、川には観光客だけでなく住民も使える「川床(かわどこ)」を設置。川岸から川面にせり出すように伸び、川を間近で楽しめるようにした。温泉街の一部道路では車両の通行はできないようにし、歩行者が川沿いをゆったりと歩けるようスペースも広げていく。

(右端が)大谷和弘副社長。副社長自ら再開発現場の視察で説明を行った

 同館の大谷和弘副社長は講演で「古民家のリノベーションもして、街並みは活気づく。長門湯本にある地域資源を最大限に生かしたかった。(社会実験を通じ)これまであまり来ていなかった若年層も訪れるようになってきた」と期待を込める。

 さらに今後は観光地経営にも乗り出す考えだ。大谷副社長は「湯元エリアマネジメント会社」を立ち上げようと動いている。同社は入湯税を現行の150円から300円に引き上げ、引き上げ分からエリアマーケティングや景観インフラ維持にかかる費用を支出していく方針だ。

 大谷副社長は「議会の承認が下りれば、20年4月から動き出せる。持続的な観光まちづくりを進めていきたい」と述べた。

「大谷山荘の高付加価値戦略」

大谷社長が大谷山荘の遍歴などを講演

 大谷峰一社長は「大谷山荘の高付加価値戦略」と題し、講演を行った。大谷山荘が1960(昭和35)年に新築してから2020年で60周年を迎える。

 大谷社長はこれまでの高質化へのこだわりとして、①山草花のおもてなし②環境設計③5つのレストラン④パブリック施設⑤客室の多様性――の5点を挙げた。

 山草花のおもてなしについては、大谷社長は「山野草でお客を迎えする。山野草はポツンと咲いていて、一見弱々しくみえるが、きらりと光るものがある。このようなさりげないサービスを目標としている」と話した。

ギャラリー「おとずれ文庫」

 同館では増改築を繰り返してきた。平成に入ってから8回ほど設備投資を行った。それぞれ時代に合わせる過程で、客室は28タイプに、レストランは別邸音信を含め、5つ運営するに至った。個人旅行化に伴う需要の多様化に対応できる環境を整えた。

 パブリック施設も天体ドームや地元童謡詩人の金子みすずの詩集もあるギャラリー「おとずれ文庫」なども設え、充実化はかっている。貸し出される本は、館内で自由に読める。

館内見学のようす

 顧客からの評価は高い。各OTAの口コミをみると、じゃらんで、大谷山荘が4・8点、別邸音信が4・9点、楽天トラベルは大谷山荘が4・83点、別邸音信が4・83点となっている。「品質は目に見えない。しかし、(評価が低ければ)間違いなくなんらかの傾向が出ていることになる。これに対応する必要がある」(大谷社長)。

 大谷社長は「旅館は4万軒弱あり、ホテルは外資からも多く出てきている。我われ業界は、旅館文化を守れるのだろうか。旅館づくりは、街づくりにつながっていく。今の旅館文化を維持しつつ、昨今のニーズに応えるのは難しいが、進めていくことが大事」とした。

2日目、佐野社長らが講演 「世界ブランド発想~文化と価値と共生と~」

2日目のセミナーのようす

 佐野社長が2020年の経営指針として講演。訪日外国人は年間3000万人も訪れるようになった。「観光の国際化が進むなか、本質的価値が重要」だとした。佐野社長は「持続的な価値ととらえてもらっていい。世界に通用する価値づくりを考えていくべき。それは国内客にも響くはずだ」と強調した。

 「『世界からの視点で自館をみる』『世界に向けた視点で自館のあり方を考える』ということをしてほしい。ただ、あくまで日本人の感性に拠って立つことで、アイデンティティーにつながり、持続可能な価値を生む」と呼びかけた。

 このほか、リョケンの幹部らがテーマ講演を実施。長島晃本部長は「来年からはOTAからメタサーチも包括したグーグルトラベルが頭角を現すのではないか。送客手数料の増加は避けらない」と指摘。そのうえで、「SNSで直販獲得を目指すため、旅のインフルエンサーなどの活用は重要になってくる」と説明した。

 なお、来年の旅館大学セミナーは白玉の湯泉慶・華鳳(新潟・月岡温泉)で、7月14~15日に開く。