経常益13%増の152億円、過去最高の業績(HIS)

 エイチ・アイ・エス(HIS)が発表した2013年10月期(12年11月―13年10月)通期連結決算によると、売上高は前年同期比11・1%増の4794億7800万円、営業利益は同4・7%増の118億4300万円、経常利益は同12・8%増の152億300万円と過去最高の業績となった。一方、当期純利益はハウステンボスの繰越欠損金が解消したことで税金費用が増加し、同4・6%減の89億300万円となった。

 中核の旅行事業をみると、売上高は同5・9%増の4313億6800万円となったが、主力方面のアジアが外交問題などにより集客減となり、営業利益は同30・2%減の79億5200万円となった。日本発の海外旅行事業は、新たなサービスとして「シニア割」を導入。豪華客船「コスタビクトリア号」を利用したチャータークルーズや、スペインのサグラダファミリアなど人気施設の貸切鑑賞プランを組み入れた商品も売り出した。

 国内旅行事業は、全日本空輸(ANA)の国内線予約システムを導入し、全店舗で予約や販売を可能にするなど販路拡大に力を入れ好調に推移。国内宿泊予約サイト「スマ宿」の契約施設数は約9千軒となった。

 今期(13年11月―14年10月)は、空港発着枠増加にともなう新規就航や路線拡大、外交問題の沈静化やシニア世代の旅行気運高まりなどで、旅行需要は堅調に推移すると予想。クルーズ旅行への挑戦やチャーター便の積極活用などに取り組む。

専用パンフで特別企画、ブランド誕生50周年機に(ジャルパック)

二宮秀生社長
二宮秀生社長

 ジャルパック(二宮秀生社長)は1月20日、東京・帝国ホテルで会見を開き、「ジャルパック」ブランド誕生50周年特別企画と、2014年度上期商品を発表した。50周年企画は、1年間限定の特別企画で「日本一周」「世界一周」などを展開する。また、ブランド50周年を機に同社の取り組みなどを紹介する書籍も出版した。

 二宮社長は冒頭、50年の歩みを紹介。海外渡航が自由化された1964年に国産初の海外パッケージブランド「ジャルパック」が誕生。65年1月から7コースを売り出し、同年4月10日に出発した第1陣はヨーロッパ16日間で67万5千円(大学初任給は約2万1千円)と高価だったが、初年度実績は2192人を数えた。その後、69年に同社の前身となる日本初のホールセラー「旅行開発」が設立した。

 二宮社長はこうした歴史を踏まえながら「50周年を衣替えの好機と捉え、原点に立ち返って現商品の見直しや新しい取り組みを行い、ジャルパックならではの『いい旅、あたらしい旅。』を企画していく」と強調。「旅行会社でなくてはできない仕入れやJALグループだからこそできる要素を盛り込み、いかに付加価値をつけていくかが重要だ」と語った。

 2014年度は、国内・海外で50周年記念商品を用意。そのなかの「特別企画」は専用パンフレットを作り、海外6コース、国内8コースを設定した。期首商品内では新企画として、これまでにない素材を利用したツアーを14年上期パンフレットの巻頭で紹介。また、これまでの商品・サービスもブラッシュアップし、全方面でシニア向けの「朝を愉しむ」サービスなどを展開する。

 14年度の集客目標は海外が前年比1%減の24万3千人、国内が同2%増の196万4千人。海外は前年割れの設定だが、二宮社長は「計画は悲観的にしている。足元は、円安などで13年下期の動きが鈍っているので、14年上期も減少が予想されるが50周年企画でカバーしたい」と述べた。一方、国内は需要が落ち着くとみる関東以外は全方面で前年超えを目指す。なお、国内の13年度見込み人数は192万人。

1965年の第1陣ヨーロッパ旅行
1965年の第1陣ヨーロッパ旅行

社員集め勉強会、乳がん経験者受入れに理解(ホテル秀水園)

男性社員も熱心に聴講
男性社員も熱心に聴講

 鹿児島県指宿温泉のホテル秀水園(湯通堂温社長)は昨年12月15日、社員40人を集めて「ピンクリボンのお宿勉強会」を開いた。同ホテルで翌16日に開かれた「ピンクリボンのお宿シンポジウムin指宿」(ピンクリボンのお宿ネットワーク主催)に合わせて、スタッフのピンクリボンと乳がん経験者受け入れについての理解を深めるため実施したもの。

 人工乳房メーカー・池山メディカルジャパンの池山紀之社長を講師に迎え、約1時間にわたって乳がんに関する知識や医療現場の状況などを学んだ。

 あいさつに立った湯通堂社長は「乳がん経験者の女性の方々が、手術の痕を気にして、温泉に入れない、旅に行けないという状況を何とか改善したいと、2012年7月に全国の宿や観光団体、企業が参加してピンクリボンのお宿ネットワークが発足した。私も母や祖母が乳がんという経験から、真っ先にこの会に参画した」とこれまでの経緯を説明。「秀水園は細やかな気遣いで成り立ってきた旅館だ。明日のシンポジウムでは、乳がん経験者も来られる。勉強会で理解を深めて、おもてなしに活かしてほしい」と呼び掛けた。

 池山氏は妹さんの乳がんが「人工乳房を作るきっかけになった」と説明。完成まで3年間かかった苦労を語り、「人工乳房を装着して温泉入浴できる」ことを実証するため、全国の温泉地で展開する「おっぱいリレー」について紹介。「心の傷を埋めるため作っている」と語り、温泉入浴の大事さを訴えた。

 勉強会には女性だけでなく、フロントや調理場の男性社員も参加し、熱心に耳を傾けていた。

池山氏が講演
池山氏が講演

三朝温泉に850円で泊まろう!(山陰・鳥取)

開湯850年記念企画

 鳥取県・三朝温泉旅館協同組合(岩崎元孝組合長)は、同温泉が今年開湯850年を迎えるのに合わせ、宿泊料金を1人850円にする記念企画「三朝温泉に850円で泊まろう!」を3月1―31日の月―金曜日(祝日除く)、計20日間実施する。

三朝温泉に850円で泊まろう!

 組合に加盟する20軒が宿泊対象で、各旅館1日1組限定。1室2人利用で、夕食・朝食は別料金で追加可能。
 組合ホームページの専用申し込みフォームまたは、はがきで応募を受け付ける。2月10日応募締め切りで、当選は同月中旬にはがきで通知する。1回目の抽選結果を踏まえ、空室があればホームページに掲示し、15日以上随時募集を行う。

 キャンペーン参画旅館は三朝ロイヤルホテル、斉木別館、ちくま旅館、三朝館、旅館大橋、桶屋旅館、清流荘、万翆楼、依山楼岩崎、橋津屋、ブランナールみささ、木屋旅館、中屋旅館、いわゆ、明治荘、花屋別館、有楽、三楽荘、みささガーデンホテル、後楽の20軒。

 問い合わせ = 電話:0858(43)0431

新国内CPを展開、「ニッポンを、遊びつくせ!」(JATA)

新年会見でJATAの菊間潤吾会長
新年会見でJATAの菊間潤吾会長

 日本旅行業協会(JATA)は1月8日、2014年初の定例会見を開き、菊間潤吾会長が今年の事業方針を語った。そのなかで菊間会長は、新年度から、新しい国内旅行の需要喚起キャンペーン「ニッポンを、遊びつくせ!」を展開することを発表した。若年層に向けて、日本の魅力を発信する。

 冒頭、菊間会長は「将来の飛躍に向けて基盤整備を行った」と昨年を振り返った。訪日旅行の質を向上させるためのツアーオペレーター品質認証制度「ツアークオリティジャパン」の設置や、14年からJATA旅博を日本観光振興協会の旅フェアと合同の「ツーリズムEXPOジャパン」として開くことが決まったことなどをあげ、「舞台が作れた年」と総括した。ツーリズムEXPOの初回への意気込みは「観光に対する勢いをどこで結集して爆発させるかが大切。その象徴として成功させたい」と述べた。

 今年の各分野の展開については、国内旅行は新CPの概要を説明。これまで5年間、国内の宿泊旅行増加のため、「もう一泊、もう一度」CPを実施してきたが、4月からは若者をターゲットにしたCPに切り替える。菊間会長は「刺激的な名称だが、旅行イコール遊びと捉え直すことで、若者の心理的ハードルを下げ、国内の宿泊旅行の楽しさを伝えていきたい」と語った。CPには、若者に人気のダンスユニット「ワールドオーダー」を起用し、第1弾として石川県を舞台にプロモーションビデオを撮影。4月から、YouTubeやフェイスブックで動画を配信する。CPの詳細は2月に発表する。

 今年の目標は「国内旅行は数字的な設定が難しい」と述べたうえで、「宿泊をどう増やすかを目指したい」とした。

 海外旅行は4月に海外渡航自由化50周年を迎えることから、「50年の間、海外旅行が果たしてきた役割を改めて問い直し、旅行の意義を世間に理解してもらえるような活動をする」と語った。政治的な問題で落ち込む中国・韓国にも触れ、「両国は海外旅行、訪日旅行にとって最大の地域。早く元の成長路線に戻すことが重要だ。我われは、継続的に民間交流の拡大をはかる動きをしていきたい」とし、2月初旬には菊間会長ら約20人の代表団で韓国政府や業界団体、ソウル市長などを表敬訪問することを報告した。

 一方、訪日旅行は「1千万人達成は官主導の感が強いと思う」と述べ、「今後2千万人に向けては旅行会社の出番だと思っている」と意気込んだ。そのため、現在33社を認証しているツアオペ品質認証制度は、早期に100社の認証を目指し、海外への制度の発信にも努めていく。

No.360 東鳴子温泉 勘七湯 - 「困った人を受入れる」宿の使命

東鳴子温泉 勘七湯
「困った人を受入れる」宿の使命

〈「21世紀の宿を考える」シリーズ(3)〉 勘七湯

 旅館経営者へのインタビューシリーズ「21世紀の宿を考える」の第3弾は、宮城県・東鳴子温泉の「勘七湯」7代目館主・高橋聖也氏が登場。「湯治の原点は日常にある」と語る高橋氏は、「本物の温泉と、居心地の良い空気を提供し続けること」が湯治文化を継承することと考える。また、「温泉そのもの」に対して敬意を持ってほしいと、強く願う。「困った人がいれば受け入れるのが旅館の社会的な責任であり、使命である」という信念に基づいて、宿を経営している。

【増田 剛】

湯治の原点は日常にある

≪京都の俵屋旅館で1年間修業、「一つのものを極める姿勢」学ぶ≫

 勘七湯の創業は1784(天明4)年です。東鳴子温泉で最も歴史の古い宿の一つで、私は7代目になります。古くから湯治療養を目的に多くの人々がこの地を訪れ、私も幼少のころから毎日、湯治客と接してきました。現在の客室数は40室で、旅館部が20室と、自炊の湯治客と食事付きのお客様もいるのですが、湯治部が20室。湯治客のピークは1―2月です。

 

※ 詳細は本紙1532号または1月27日以降日経テレコン21でお読みいただけます。

学生に人気の旅行業界 ― 旅人は事情を抱える生身の人間

 朝日学情ナビが2015年3月卒業・修了予定の全国の大学3年生・大学院1年生に聞いた(有効回答8291人)就職人気企業ランキングをこのほど発表した。上位は(1)JTBグループ(2)オリエンタルランド(3)全日本空輸(ANA)(4)資生堂(5)伊藤忠商事(6)三菱東京UFJ銀行(7)日本航空(JAL)(8)東日本旅客鉄道(JR東日本)(9)エイチ・アイ・エス(HIS)(10)三井住友銀行――となった。

 公務員の人気が高いなど、近年の就活状況は安定志向が強いと言われるなか、サービス業の旅行会社がトップ10に2社も入っている。また、観光産業と関わりの大きいオリエンタルランド、ANA、JAL、JR東日本も顔をそろえ、一見すると、観光関連企業の人気ランキングの様相だ。100位の中には、24位に近畿日本ツーリスト、56位に日本旅行、94位に阪急交通社もランクインされている。宿泊施設では唯一、99位に帝国ホテルが入った。

 安定志向というよりも、「やりがい」を優先させてか、はたまた親しみやすさからなのか、サービス業の人気が高いことを表している。観光産業、とりわけ旅行会社は根強い人気を持っている。私が学生だった20数年前も旅行会社の人気は高かった。しかし、そのころと今は大きく状況が異なる。

 大手旅行会社では「旅行経験がほとんどない学生が多く志望してくる」という話をよく耳にする。これはちょっと驚きだ。数十年前だったら、旅行会社に就職したいと考える学生は、「バカ」が付くほどの旅好きであったはずだ。HISの平林朗社長は高校卒業後、海外を放浪。その後HISにはアルバイトからスタートし、40歳という若さで社長に就任する異色の経歴の持ち主だが、創業者の澤田秀雄氏も若き日は海外放浪者であり、HISには「若き無謀な挑戦」というDNAが受け継がれているようだ。

 旅行会社には多かれ少なかれ、このような血が流れているという印象が強いのだが、今は時代が変わったということか。大学の観光学部の学生もあまり旅行をしないと聞く。

 「老人会の幹事をしていたときには、旅行会社や旅館から贈答品やダイレクトメールが送られてきたのですが、役職を終え、その後妻も亡くなり1人になったとき、かつてお世話になっていた旅館に泊まりに行ったのですが、対応が冷たくて……」。ご高齢のお客が東鳴子温泉「勘七湯」のご主人・高橋聖也さんに寂しそうに語ったというエピソードが印象的だった。

 宿から手厚くもてなされることもなく、「家に1人でいるよりも孤独な思いをした」という老人の気持ちを想像すると、切ない。団体客を取り仕切る幹事と、年老いた一人ぼっちの個人では、社会的な地位は違う。でも、まったく同じ人物である。 

 旅行会社の営業マンや大型旅館などの場合、1人客よりも、30人の団体客の方がありがたいに違いない。けれど、社会的な立場や地位によって、手のひら返しの対応をしてしまっては、やはり寂しい。旅人はそれぞれの事情を抱える生身の人間である。そしてさまざまな思いを胸にしまって旅をしている。

 旅行会社や宿泊施設に就職を志望する学生には、見知らぬ土地で旅人が感じる孤独な思いや、地域や宿で“人の温かみ”に接した経験がすごく大事な気がする。

(編集長・増田 剛)

危機管理に提言、旅行会社の役割と行動示す(JATA)

 日本旅行業協会(JATA)はこのほど、危機管理の提言として「観光危機管理における組織的マネジメントのあり方」を策定し、2013年12月27日、観光庁に提出した。提言では、危機発生時の初期対応と復興支援の両面で旅行会社の役割が大きいことを指摘。これまでの実績をもとに、具体的な行動指針「旅行安全マネジメント」を提起した。

 12年4月の高速バス事故や中国・万里の長城での日本人遭難など旅行中の重大事故が多発したことから、13年4月、観光庁に出された「観光産業政策検討会提言」のなかで、旅の安全確保に組織的な安全マネジメントの取り組みの必要性が盛り込まれた。これを受け、JATAは13年6月以降、海外旅行推進委員会の安心安全部会を母体に、国内旅行推進委員会、訪日旅行推進委員会のメンバーを加えた横断的な「拡大安心安全部会」を設置し、検討を重ねてきた。今回の提言はそれらを最終的にまとめたもの。

 旅行安全マネジメントの対象は企画旅行契約。大きく、経営トップかトップが指名する役員が安全管理責任者として、現場まで「安心安全」の意識のもとに動く組織づくりと、PDCAサイクルに沿った具体的取り組みの推進で構成する。具体的な取り組みのガイドラインは(1)ツアーオペレーターとの契約に関する基本事項(2)ツアーオペレーター業務に関わる安全マネジメント調査票(3)国内・訪日旅行における安全基準項目(4)「旅行安全マネジメント」の自主点検チェック表――などを提案する。

 一方で、日本の大手旅行会社は世界基準でみても高い安全マネジメントを既に有しており、これはあくまでも最低基準としての位置付け。また、JATA会員だけではなく、全国旅行業協会(ANTA)会員を含めた業界全体への普及が重要と考える。

 1月8日の会見で菊間潤吾会長は「日本の旅行会社は海外旅行の分野で事故時の初期対応などきめ細やかな対応をしてきたが、国内旅行、訪日旅行に範囲を拡大して、旅行会社の実情に即したより一層の安心安全を担保していくためのグランドデザインづくりを行った。会社の規模を問わないガイドライン」と語った。観光庁からも「素晴らしい取り組み」と評価されたことを報告。今後は会員への周知徹底をはかっていく。

埼玉県観光モニターツアー

 1月某日、埼玉県観光モニターツアーに参加してきた。今回の見学コースは、春日部市の首都圏外郭放水路→上尾市の恵比寿亭で昼食→北本市のグリコピア・イースト→地場物産館「桜国屋」といずれも初めて行く施設ばかり。

 首都圏外郭放水路は埼玉県東部の浸水被害を軽減するため、流域河川の洪水を地下に取り込み、地底50メートルを貫く総延長6・3キロのトンネルを通して江戸川に流す世界最大級の地下放水路だ。巨大な柱が59本も林立する調圧水槽の内側は、まるで地下神殿に迷い込んでしまったような異空間を体験することできた。

 今回の見学施設はどれも観光素材として潜在価値が高く、これを生かさない手はない。点だけでは弱いが点を線で結ぶことができれば、日帰り観光の目的地として化ける要素は大きい。

【古沢 克昌】

外国人入国者1125万人、13年23%増で大台突破(法務省)

 法務省が発表した2013年の外国人入国者数速報値(再入国者数を含む)は、前年比22・7%増の1125万4841人と、初めて大台の1千万人を突破した。

 就労や留学などで日本に中長期在留している外国人の出入国(再入国)を除く新規入国者数も同26・5%増の955万4419人と過去最高を記録。円高是正による訪日旅行の割安感やASEAN諸国に対するビザ発給要件の緩和が後押しした。

 国・地域別の新規入国者数をみると、韓国が同21・2%増の230万5980人とトップ。次いで台湾が同51・5%増の216万5282人、中国が同6・4%減の98万3270人、米国が同11・6%増の74万2812人、香港が同57・2%増の71万8826人、タイが同77・2%増の44万3740人、オーストラリアが同18・7%増の22万6505人、シンガポールが同33・7%増の18万5352人、英国が同9・8%増の17万877人、マレーシアが同38・1%増の16万6467人と続いた。

 また、日本人出国者数は同5・5%減の1747万2627人だった。