【当選者発表】第42回プロが選ぶ100選宿泊券プレゼント

『第42回プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選プレゼント当選者』が決定いたしました。

今回もたくさんのご応募ありがとうございました。
ご応募の締め切り後、厳正なる抽選の結果、各プレゼントのご当選者が決まりました。
ご当選者の皆様には当選旅館・ホテルから近日中に宿泊券をお送りいたします。
どうぞ楽しいご旅行をお楽しみください。

ご当選者のお名前は
コチラから!(弊社の『プレゼントコーナー』ページへリンクしています)

 
☆「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」とは☆
 「プロ(=旅行会社)」の投票により、100選施設に値する優れたホテル・旅館を「もてなし」「料理」「施設」「企画」という4つの区分で5段階で評価。100選はその合計点によるランキングです。

外国人に人気の観光地 ― 経済的な利益と、俗化への危惧

 ゴールデンウイークに、大分県の由布院温泉を訪れた。雄大な由布岳を眺め、温泉街のお洒落なお店をのんびり散策することを楽しみに出掛けた。

 あいにく雨と風が強く、散策を十分に楽しむことができずに残念だったが、たまたま入ったお蕎麦屋さんには大変満足できた。由布院のお蕎麦屋さんは、とても美味しいところが多い。

 温泉も人気の庭園風呂に入って、ゆったりとした時間を過ごすことができた。けれど、この長閑な雰囲気の温泉でたった一つ気になったのは、中国人の男の子が手に持ったタオルをピシャッ、ピシャッと湯船に叩きつけていたことだ。

 当然近くにいた日本人のおじさんが「湯船にタオルを浸けてはいけないよ」と注意をするのだが、男の子はまったく理解していないようすだった。そのうちに、体を洗っていた父親が男の子の横に来た。父親は少年を注意するかと思いきや、石鹸で自分の体をゴシゴシ洗っていたタオルを巻きつけたまま湯船に浸かってしまった。

 京都の伏見稲荷大社を訪れる機会を得た。朱色の鳥居が並ぶ境内は、いわゆる“インスタ映え”するためか、日本人よりも外国人観光客の方が多かった。出店も多く、お好み焼きや、みたらし団子なども世界各地から訪れた旅行者は楽しそうに食べていた。だが、そこでも驚くべき光景を目撃した。

 中南米系の少年が、拝殿の鈴緒を力の限り振り回し、鈴を鳴らし続けていた。外国の少年にとってはまったく関係がないにしても、日本人にとっては神様である。パリのノートルダム大聖堂では、アジア系の女性が少し大きな声で話しただけで、警備員に厳しく注意されていたのを思い出した。

 日本の旅番組には、温泉は付きものである。そして、多くの場合、タレントがバスタオルを巻いて撮影される。これら番組は海外でも広く放送されているため、映像を見た外国人観光客は、当たり前のようにバスタオルを体に巻いて温泉に入る。

 「『バスタオルは湯船の中に巻いて入れません』といくら説明しても、信じてもらえないのです」という、京都の老舗旅館の女将さんの話が、妙にリアルに感じられた。

 由布院温泉で見た中国人の男の子もそうだが、単に「温泉にタオルを浸けてはいけない」という日本のルールを知らないだけなのだ。温泉施設も壁に「入浴時の注意点」などを掲示しているのかもしれないが、十分に伝わっていないというのが現状である。

 客が教えるというのも一つの方法だが、日本人の客にしても外国人に入浴マナーを教えるために、はるばる高いお金を払って温泉旅館に来ているわけではない。来る客、来る客に注意していては、自分がゆっくりと温泉に浸かることができないし、客同士のトラブルに発展する不幸なケースだって考えられる。

 入浴マナーを教えるのは、旅館側の責任だと思う。従来から温泉を愛していた日本人の客を失うことを危惧する。私自身、入浴マナーの悪い温泉にわざわざ行こうとは思わない。

 外国人旅行者が増えることで経済的な利益は大きい。しかし、日本人が古くから大切にしてきた文化を、外国人に理解してもらう努力を惜しんでは、俗化してしまい、やがて荒廃してしまう。それはとても悲しいことだ。

(編集長・増田 剛)

No.461 熊本県・蒲島知事に聞く、着々と進む観光復興への道

熊本県・蒲島知事に聞く
着々と進む観光復興への道

 熊本地震で九州観光は大きな打撃を受けた。直接被災した熊本・阿蘇地区と大分の一部に加え、隣接の九州6県も宿泊キャンセルなどの影響を受けた。昨年7月からは「九州ふっこう割」が実施され、観光・宿泊客の回復など震災前に戻りつつある。ただ熊本城や主要ルートの復旧などが残る熊本県の観光の再生に向けた課題は多い。復旧・復興の先頭に立って取り組む熊本県の蒲島郁夫知事に、観光復興への意気込みと将来展望などを聞いた。

【聞き手=九州支局長・有島 誠、構成=松本 彩】

 
 

阿蘇への代替道、観光に最高

 ――まず、震災から1年の想いと、観光・宿泊への影響、交通インフラの復旧状況についてお聞かせ下さい。

 観光業は熊本県にとっては、とても大きな産業ですが、この地震によって大きなダメージを受けました。震災から1カ月で宿泊キャンセルが33万人、観光業の損失額は380億円にまで拡大しました。

 観光業復旧には、2つの動きがありました。1つは観光事業者向けに政府からグループ補助金が出され、復興へ向けて皆がやる気を出す後押しになりました。

 2つ目が熊本の観光業は熊本だけでなく、全九州へ影響を及ぼすことが今回の地震で分かったことです。国の支援を受けて、熊本、大分を中心に九州各県の宿泊施設で割引が受けられる「九州ふっこう割」という制度ができ、観光が盛り返しました。

 この2つが早い時期に打ち出されたことが、九州の観光の復活に結びつきました。政府の対策に大変感謝しています。

 一方で、阿蘇が大きく落ち込み、なかなか回復ができませんでした。阿蘇は熊本だけでなく、九州全体の観光の中心です。国道57号が寸断され、阿蘇大橋が通れなくなったことで、阿蘇に行けないという誤解があったと思います。

 ただ、私が魅力的だと思っていたミルクロードは通行が可能です。阿蘇の外輪山や大観望を抜けて、黒川温泉に向かう道路ですが、私は一番美しい道だと思っています。多少時間がかかっても、十分に楽しめます。

 南阿蘇に向かうグリーンロードも冬期を除いて利用できました。この魅力的な2つの道をもっと発信すべきだったと思います。

 グリーンロードが冬期で通行できない時期に備え、国土交通省がいち早く県道熊本高森線俵山トンネルルートの暫定開通を実現してくれました。このルートも見晴らしがとても良く魅力的な道です。

 国道57号北側復旧ルートと国道325号阿蘇大橋ルートは2020年度開通予定であり、それまでは使えませんが、阿蘇に行ける道はたくさんあるので、安心して熊本に来ていただきたいと思っています。

 旅館、観光事業者も元気に営業しており、観光客を迎える感謝の気持ちがあふれていますので、ぜひお越しいただきたいと思います。…

 

※ 詳細は本紙1670号または5月24日以降日経テレコン21でお読みいただけます。

弁済制度の改正か、利用者保護の観点重視

今夏にとりまとめ 省令や通達を、てるみWG

 観光庁はてるみくらぶの経営破綻を受け4月28日に、弁済制度と企業経営のあり方を議論するワーキンググループを開いた。弁済制度は機能していたとの認識を示した一方、利用者保護の観点を重視し「制度の新設か改正・補完を行う必要性」を明らかにした。夏期までに最終とりまとめの発表を予定。省令や通達などを盛り込む。国や業界団体、企業らがそれぞれ取り組むべき方向を打ち出す見通しだ。
【平綿 裕一】

 「今回の事案は特殊。既に機能している制度を変えれば、企業活動を歪める可能性もある」。4月28日の同WGでは、慎重姿勢の意見も挙がった。これまで53件中41件の8割弱が、制度を利用して100%弁済できていた。

 ただ利用者保護の観点から、弁済額や制度の見直しの声も多い。これらを受け、同庁が提示した弁済制度に対する論点は4つ。1つは弁済業務保証金の水準について。この中に「取引額の規模と分担金」「モラルハザードの防止の観点」の項目がある。今回の事案で問題に上がった、制度の妥当性を議論する。

 現在の弁済業務保証金分担金は、第1種旅行業登録の場合、昨年度の取引額が70億円未満なら1400万円と定められている。仮に弁済保証額の水準を引き上げるならば、分担金が増す可能性が高い。

 「企業の負担が大きくなりすぎれば、実行性がなくなる」。WG後の記者会見で、観光産業課の黒須卓参事官は懸念を示した。弁済制度の実行性担保と、保護の規模感の調節が壁となっている。

WGでは、慎重姿勢の意見も

 一方で実際に海外に取り残されている人もいる。利用者からすれば対策がないと安心して旅行を楽しめない。黒須氏は「我われが機能していたと思っていた部分に、さらにWGを通じて新たな制度か制度の改正が必要」と利用者保護の観点の重要性を強調した。

 このほか、再発を防止するためには「国、関係団体、企業らがそれぞれでも取り組むべき」との見解が委員らで共有された。省令や通達、呼びかけなど、最終とりまとめに盛り込んでいく。それぞれの立場で取り組むべき対策を講じる構えだ。

 2つ目に論点に挙げられたのは企業経営のあり方。「一番のキーワードは透明性」(黒須氏)。企業の経営状況などを把握した場合、「利用者にどうのように伝えるのかがポイントだ」(同)と指摘した。

 次回は5月中に開かれる予定。計4、5回議論を重ね夏期までにとりまとめ、秋期に対策を実行する見通し。

 なお、4月23日に発足した「てるみくらぶ被害者の会」に対し、同庁は「報道でしか把握していない。連絡を待っている。今後具体的に考えや主張を把握できたら検討していきたい」との発言に留めた。

還付手続きは年内に、3万2千件 問い合わせ(JATA てるみ弁済)

 日本旅行業協会(JATA)は5月11日に定例会見を開き、越智良典理事・事務局長が経営破綻した、てるみくらぶの弁済に関する現状を報告した。JATAへの案内書面請求の問い合わせは、10日時点でてるみくらぶが約3万2千件、金額は約86億円、自由自在は約370件、約5600万円。年内中に還付手続きを行うことを目指す。

 6月中旬に認証申出の案内書面を送付、認証申出の受け付けは6月下旬になる見通し。その後、8―9月に審査を行い、10月に弁護士を交えた事前審査を実施。11月に弁済業務委員会を開き、12月中に還付手続きを行う予定だ。書面の請求は専用Webサイトを設置して対応しており、約3万件はサイトからの問い合わせ。ただ1人で複数の打ち込みをしている場合もあり、正確な件数の把握には至っていない。

 従来は不法請求防止のため、さまざまな書類が必要だが今回は簡素化をはかる。「件数が多く、通常の手続きでは年を越してしまう。一方、ルールもあるので、観光庁の了解を得ながら進めたい」とした。

 JATAは再発防止のため、風の旅行社社長の原優二氏を座長に「弁済制度勉強会」を4月中に2回開催。その後、設置された観光庁のワーキンググループとも連携して中長期的な対策を検討していく。弁済業務保証金制度の見直しは、例えば今回の弁済をすべてまかなうには営業保証金を100倍にしなければ対応できず現実的ではないため、不審な会社の通報制度など複数のものを組み合わせて再発防止に努める。

 他方、トラベル懇話会(福田叙久会長)の協力で、4月8日にてるみくらぶ内定者を対象にした就職面接会を実施。正確な数字は公表されていないが、約50人と推定される内定者のうち、35人が集まった。このなかで5月10日までに28人の入社が決定したという。旅行会社はさまざまな特色を持つ40社が参加。参加学生に対し「旅行業で働きたいという強い気持ちを感じた」「不幸な目に遭ったが前向きな姿勢がみられた」など好感触だったという。

JCLA協議会設立へ、貸切バスら攻めに転じる

周遊バス事業で日本全国を巡る商品も

 全国の貸切バス事業者が連携し、横断的縦断的な協働営業をはかる。南薩観光(菊永正三社長)らがJapan Coast Line Alliance(JCLA)協議会を設立した。今回9社が参画し、今後は15社ほどになる見通し。FIT向けの全国周遊型商品も作り始めている。これまで貸切バス事業者の営業活動は受け身だった。JCLAを呼び水に攻めに転じたい考えだ。

 「旅行ニーズも変化してきた。既存のチャンネルを維持しつつも、一歩先に進む活動も行うべき」。発起人の菊永氏は4月19日の設立会で、設立への想いを語った。さらに「国内外に営業をかけていく。これから貸切バスが生き残るために必要な方針だ」と積極的な姿勢を鮮明にした。

 SIC(周遊バス)事業で、欧米豪のFIT・富裕層などをターゲットに、30日間ほどで日本全国を巡る商品を計画している。

 商品販売は旅行会社向けのBtoBと、FIT向けのBtoCの両輪を回し、「直売の強み」を保持していく狙いだ。代金決済のシステムも構築済み。

JCLAで協働始まる

 団体客はASEAN・欧米諸国を中心に商品の造成・販売を展開。販促パンフレットやWebサイトでのプロモーションも実施していく。このほか、貸切バス相互の協働販売を行う。7月から九州・四国間で商品を展開する見通し。

 一方コンプライアンスも徹底し、セーフティマークの取得も努める。安全安心のため適正運賃を守る。経営基盤を整えることで、営業への力を生み出すことにも注力していく。

 なお、国土交通省自動車局と定期的に意見交換の場も作る。地方の貸切バス事業者の実情や現状を伝えたい考えだ。

津南町有志の食の連携PR

 日本有数の豪雪地帯として知られる新潟県津南町で、地元の農家や旅館、飲食店などの有志により組織された「つなベジ会」が立ち上がった。農業と観光、飲食関係者らが連携して旬の食材を提供するとともに、収穫体験などのイベントを展開し、食を通じた魅力発信に力を入れていく。

 初企画の「つなん雪下にんじんフェア」は、今年4月まで開催した。第2弾の「つなんアスパラガスフェア」は、5月27日―6月18日に開かれる。アスパラガスを使ったメニューを、町内の宿泊施設や飲食店で提供。雪解け水をたっぷり含んで芽吹いた津南産アスパラガスは、甘く柔らかく、希少性も高いという。

 津南町はこれまでも、震災復興の思いを込めた「スカイランタン」の打ち上げを有志で実現。地域密着の連携に注目だ。

【長谷川 貴人】

エアビー急拡大、民泊事業利益1.7倍に

 エアビーアンドビーはこのほど、2016年度の日本における民泊事業の利益が4061億円に上ると発表した。15年度の2363億円と比べ1・7倍になる。経済効果の推計は同1・8倍の9200億円に達する見込みだ。一方訪日外国人宿泊者数は同2・7倍の370万人。民泊仲介大手のサービス利用が急拡大している。

 標準的なホストの年間収入額は100万4830円。貸出回数は年間89回で、1人当たりの平均宿泊日数は3・4泊となった。外国人利用者国・地域は1位が韓国、2位は中国で、3位は米国だった。

 同社を利用して滞在した上位3都市は東京、大阪、京都の順。いわゆるゴールデンルートが占めた。宿泊利用率が高い都道府県は1位が大阪府。以下東京都、福岡県、奈良県、広島県と続いた。

 上位は大都市が目立つ。ただ「宿泊先は47都道府県すべてにある」(同社日本法人公共政策担当部長の山本美香氏)という。今後は観光の拡大や地域活性化を促進して「経済の発展に貢献していく」(同)とコメントしている。

 これら活動レポートはエアビー内部データと、17年1月に実施したホスト・ゲスト調査の結果を元に作成したもの。

「集中と分散」分社化へ、新社長に丸山隆司氏(KNT―CT)

戸川和良現社長(左)と丸山隆司新社長

 KNT―CTホールディングスは4月27日、グループの再編と社長交代を発表した。新社長には丸山隆司顧問が就任し、戸川和良社長は相談役に退く。人事は6月20日に正式決定される。丸山新社長は「東京オリンピック・パラリンピックが開催される3年後までに成果を示す」と意気込みを語った。同社は新体制のもと、「集中と分散」を基本方針にグループを再編し、分社化による地域や専門分野に応じた営業体制を確立。地方創生や地方誘客へ動きを加速させる。
【後藤 文昭】

 集中に基づく再編では、近畿日本ツーリストと近畿日本ツーリスト個人旅行の事業統括部門をKNT―CTホールディングスに集約。情報を1カ所にまとめ、グループの横断的な事業戦略の策定機能と事業推進機能、グループ全体の基盤の強化をはかる。

 一方分散に基づく再編では、近畿日本ツーリスト首都圏と同関東、同中部、同関西を新たに設立。旅行形態の区別なく、すべての旅行と関連需要を取り込み、地域発型の旅行事業を深化する。多くの自治体が推進する地方誘客への取り組みも勧奨し、「地域誘客センター」を各社に設置、着型需要の獲得もはかる。

 既に同北海道や九州などが地域に根差した営業活動を行っており、業績を上げていることから分社化に舵を切った。今後はオンライン旅行会社(OTA)では販売が難しい地域商品を販売し、「地域旅行会社」としての企業価値も高めていく。

 大手企業が集中する東京地区には、近畿日本ツーリストECCを設立。MICEを中心に、企業・団体旅行などの法人需要に対応する。

 増加するインバウンド需要へは、KNT―CT訪日旅行を設立し、対応する。グループ各社に分散していた関連部門をまとめ、経営資源を集中投下。同グループの収益の柱に据え、組織強化をはかる。

 また、グループのウェブ戦略やインターネット販売強化のため、近畿日本ツーリストWEBも設立する。

 なお名称はすべて仮称で、分社化は2段階に分けて行われる。同中部と関西、KNT―CT訪日旅行は6月1日に設立し、10月1日から事業を開始。その他の各社は18年4月1日から事業を開始する。

 丸山 隆司氏(まるやま・たかし)1972年3月早稲田大学政治経済学部卒業。同4月近畿日本鉄道(現近鉄グループホールディングス)入社。2004年5月志摩スペイン村社長、06年3月近鉄レジャーサービス社長、11年きんえい社長などを歴任。17年KNT―CTホールディングス顧問就任。

増加するインバウンド、多言語化へAIを活用(KNT―CT)

田中貴業務課長(左)と、安岡宗秀室長

 KNT―CTホールディングスとグループ会社の近畿日本ツーリストは3月から、インターネットサービスの企画、運営を行うtripla(トリプラ)と共同で「triplaチャットボットサービス」を展開。チャットでの問い合わせに対し、AI(人工知能)とオペレーターを組み合わせ対応する。インバウンドの地方化・個人旅行化・観光業者の小規模化に対応し、多言語化することは喫緊の課題。未来創造室の安岡宗秀室長と訪日旅行部の田中貴業務課長に話を伺った。
【後藤 文昭】

 ――多言語対応に着目されましたが。

 訪日外国人旅行者数が年々増加するなか、個人旅行化が進み、地方に多くの人が流れています。また、民泊サービスやカプセルホテルなど旅行事業者が変化、小規模化してきています。このような変化に対し、多言語対応が急務ですが、「言葉の壁」が大きく立ちはだかっています。

 ――「言葉の壁」とは。

 多言語での問い合わせに対応できる人材の不足や、コストの問題ですね。例えばコールセンターに依頼した場合、質問に的確に回答ができますが、導入コストが負担になっています。 

 ――この問題へ、どうアプローチしますか。

 以前から、ホテルや旅館向けに音声翻訳サービスを立ち上げるべく、課題抽出を行っていました。そのなかで、音声への対応だけではなくメール対応に対しても、さまざまな課題、改善点があることが分かってきました。

 ――課題とは。

 まず、質問内容の類型化があります。もう1つは、言語数が多く、対応するスタッフを十分に用意できないことです。

 そこで、AIを組み合わせたサービスを考えました。

 ――AIを組み合わせる理由は。

 人件費の節約と生産性の向上です。AIを使えば、類型化された質問に自動で返答することができます。また、常に学習を行うので、日々の会話内容を蓄積し、徐々に自動で回答できる回数を増やすこともできます。

 あらゆるサービスが機械化できるようになったとしても、「おもてなし」だけは無理です。同社のサービスを活用すれば、今まで問い合わせ対応をしていた人材を接客に回せ、施設のサービスの向上にもつなげられます。

 ――サービスの最大の売りは。

 「安心」です。AIは予期せぬ質問に対して的を外した回答をしてしまうことがあります。学習を重ねていけば、語彙が増え、より精度が高まりますが、時間がかかります。そこでオペレーターを併用し、回答率を100%にしています。

 ――どのような流れで展開されますか。

 導入される施設には、「アクセス」や「入浴時間」など、よくある質問への答えを記入したヒアリングシートを提出していただきます。その後、訪日外国人からの質問に対し、このシートから回答を行います。

 ――あらかじめ想定できない質問へは。

 チャットオペレーターが判断できる場合は直接、判断できないものは施設側に確認して回答します。

 ――1月にはアプリも配信していますが。

 BtoC向けに「YOKOSO Japan App」を、トリプラと共同でリリースしました。「triplaチャットボットサービス」を活用した訪日外国人向け観光アプリです。

 自社が展開している「YOKOSO japan Tour & Hotel」の各種日本体験プログラムやアクティビティの販売、飲食店の案内、予約などができます。

 ――今後の展開は。

 自治体や温泉組合のような、地域を束ねている団体にも導入してもらいたいです。宿泊施設側もインバウンドを受け入れることが大切なのは、分かっています。一方で受け入れ慣れていないのと、ホームページの多言語化などに対する投資が必要になるので、実行するのが少し難しい状況です。自治体などが資金面などで支援し、一括導入できれば、地域の固有名詞も蓄積でき、旅先としての質の向上にもつながると期待しています。

 ――ありがとうございました。