「全国女将サミット2017新潟」開催 ― 共感し、思い出を共有できる場に

 島根県や九州北部など全国各地で豪雨による水害が発生している。被災された方々には心からお見舞い申し上げます。

 大きな被害を受けた地域の1つ、福岡県朝倉市では、原鶴温泉旅館協同組合に加盟する旅館・ホテルが、ライフラインが途絶えた地元被災者に温泉を無料開放している。その動きも迅速だった。地域に不測の事態が生じたときに、地元の旅館・ホテルが頼れる存在として認知されるのはうれしい。逆に、観光業界が厳しい状況になったときに真っ先に助けてくれるのは、地元のお客である。地域で助け合う姿勢には、胸を打たれる。

 7月5日には、新潟県新潟市で「第28回全国女将サミット2017新潟」(野澤邦子運営委員長)が開催された(次号詳細)。新潟県内でも大雨が降り、当日参加できない女将がたくさんいるのではないか、信濃川のウォーターシャトル乗船観光が川の水位上昇で欠航になるのではないか。また、翌日の佐渡島へのエクスカーションも予定通り行えるかという不安もあったが、当日には雨が上がり、無事にすべてのプログラムが実施された。

 女将サミットでは、基調講演が行われたあと、いくつかのテーマに沿った分科会を開くのが常であったが、今回は参加女将が全員、会場のホテル日航新潟を出て、目の前に広がる信濃川クルーズを楽しむという趣向だった。目的地の新潟ふるさと村でにいがた総おどりを観たり、地元の新鮮な食や自慢のお酒など、女将たちはたくさんのお土産を買ったりして、新潟でのひとときを満喫していた。

 大雨の影響は残り、日本を代表する信濃川の河口付近でも、水嵩がいつも以上に増し、濁流で大きな木の枝なども土色の水面に浮かんでいた。

 それでも厚い鉛色の雲が少しずつ薄くなり、夕方近くには夏らしい青空が広がった。女将たちもデッキに出て、身を乗り出して川風を浴びたり、遊びに来たカモメの写真を撮ったり、日々の多忙な業務を離れ、自然豊かな新潟での1日を楽しんでいたのが印象的だった。

 そのような船上のリラックスした女将たちの姿を見ながら、大勢での旅もすごく楽しいのだと、改めて感じた。

 日本でも団体旅行が全盛の時代から、旅のスタイルがどんどん個人化に向かっている。気の合った数人のグループや、家族といった小単位の旅行、さらには夫婦やカップル、そして1人旅も増えている。

 旅の目的が細分化していくなかで、他人との団体行動よりも、自分の好きなように動ける「自由な旅をしたい」という欲求が強くなるのは当然かもしれない。しかし、旅の大きな醍醐味の1つに、感動と思い出の共有がある。1人旅は楽しいが、どうしても独り言が多くなる。「何だよ、これ」と愚痴を言うのも1人。「すごくキレイな景色だな……誰かに見せたいな」と小さく呟くのも1人。尾崎放哉ではないが、「咳をしても一人」といった気分になる。

 全国の女将が集まり、同じ船に乗って短い旅をするというのも、きっといい思い出になるはずだ。地域や、宿の規模は違っても、日々同じ境遇で自分自身と戦っている者同士。お互いを労わり合い、励まし合う姿が今回も見られた。全国の女将が共感し、思い出を共有できる場が今後も続けられるといいなと思った。

(編集長・増田 剛)

研修受講は5年に1度、WGを併設し早期施行へ(通訳案内士検討会)

 観光庁は6月30日に「新たな通訳案内士制度のあり方に関する検討会」を開いた。全国通訳案内士の研修は省令で年1回以上行い、5年に1度は必ず受講させる方向性を固めた。研修は無資格者と地域通訳案内士も受講できるようにする。今後は検討会WG(作業部会)も併設し、政省令などの枠組みを構築し早期施行を目指す。

 新通訳案内士法で全国通訳案内士の研修期間は3―5年とされているが、事務局は5年に1度の期間を提示。観光地域振興部観光資源課長の倉持京治氏は「負担を軽減するため」と説明した。研修は対面での実施を基本とするが、海外にいるガイドなどにはeラーニングを用いることも検討していく。

 新法では5年の研修受講期間を過ぎれば、登録が取り消される。ただそもそもの法改正にはガイドの量的な不足が一因にある。改正後は欠格しても業務は可能で、圧迫する規定は資格者の減少につながる要因になりかねない。同庁は「登録を復活させることもあり得るかもしれない」と制度に幅を持たせる可能性も示唆した。

 登録研修機関の制度設計は既存の旅行業法事例に倣う。登録手続きや、登録事項、業務基準のほか、申請書類なども、旅程管理研修を実施する登録機関の規定に合わせ、省令で定めていく。

 研修で使用する教材など基準については、今後作業部会を通じて検討。同庁が告示した基準を満たした教材を提出してもらう方向で進めていく。
 登録研修機関の更新期間は政令で3年とする。「我われでしっかりと監督していく」。同庁は登録研修機関の業務が適正か更新の審査にも注力していく構えだ。

 一方で「通訳案内士情報検索システム」を現在構築している。各都道府県に情報をあげてもらい、オンラインで研修状況を把握できる仕組み。有資格者への研修通知などは各都道府県に一任すると負担が多い。今後同システムを活用する考えも示し「施行までに詳細を詰めていく」とした。

 なお、観光振興部長の加藤庸之氏は同庁の体制強化について報告。「現在は約150人体制だが、7月1日で一気に100人増える。今後は250人体制で、スピード感を持っていく」と述べた。

ガイドと旅行者つなぐ、マッチングサイトを開設(HIS)

トラヴィガイドが案内

 エイチ・アイ・エス(HIS)が訪日外国人旅行者と地域の地元ガイドをつなぐサービスを始める。6月29日にCtoCのマッチングサイト「Travee(トラヴィ)」を開設。地元ガイドの募集を始めた。「通訳案内士法及び旅行業法の一部改正法」成立を受け、施行前に受け皿を作った。深刻化する地方ガイド不足の解決に向け、新たな人の流れを生み出す。

 地元ガイドは「トラヴィガイド」として登録する。旅行者は目的に合うプランをサイト上から選び、ガイドと相互で合意したあとにマッチングが完了。旅行者は地域の文化や地理に明るいガイドに案内してもらえ、ガイドは空いた時間に副収入を得ることができる。

 サイトの特徴は「相手の素性が分かったうえでマッチングを行う独自の仕組み」(同社)。旅行者とガイド共に、プロフィールやレビューが公開され、相互に選択する権利がある。

 レビューが高いガイドに人が集まる傾向が強い。改正後にガイドの質の低下が懸念されるなか、評価が公開されることで「(ガイド)自らクオリティを保つ」(同)としている。

 さらにHIS公認の「トラヴィガイド」を認定する取り組みも進める。このほか面接や講習会などを行い、ガイドの質の担保をはかる。

 一方で今後は地方自治体と連携。地域通訳案内士を増やす取り組みや、地域独自の文化を体験できるプラン造成にも力を入れる。情報発信は39カ国で展開する旅行者向けサイト「hisgo」をはじめ、訪日外国人旅行者向けWebメディアと推進していく。

 これまで有償で行うガイドは、国家資格者のみだったが、改正後は誰でも行える。観光庁によると資格取得者は全国で1万9千人ほどいるが、4分の3が大都市部に偏っている状況だ。訪日外国人旅行者が地方へ流れているなか、地域のガイド創出が急務となる。

東京でめぐる越後の祭り

 東京・新橋の虎ノ門エリアにある複合施設「旅する新虎マーケット」は、7月5日―10月1日までの期間、2017年夏の章「夏疾風の物語 ローカル線でめぐる越後の祭り」を実施している。新潟の祭や食、ワークショップなどを通じて祭文化とものづくりの魅力を国内外に発信する。

 風土を生かした「祭り」をテーマに、越後のローカル線で巡ることができる新潟県の村上市、燕市、三条市、長岡市、十日町市の5市が出展。4棟の常設スタンドでは、各地域が誇るご当地グルメや日本酒などを堪能できるほか、テーマストアで各地域の工芸品や物産品を販売し、テーマカフェではテーマ連動の特別メニューも展開する。

 旅行先として魅力たっぷりの新潟。この機会にまだ知らない魅力にめぐりあえるかもしれない。

【長谷川 貴人】

民泊事業で提携へ、販売はホームアウェイ(楽天ライフルステイ)

握手する木村氏(左)と太田氏

 楽天 LIFULL STAY(楽天ライフルステイ、太田宗克社長)とホームアウェイ(木村奈津子日本支社長)は7月3日、民泊事業での業務提携を発表した。目的は、インバウンドの需要把握と来訪促進。住宅宿泊事業法施行に合わせ、楽天ライフルステイの国内民泊物件を、ホームアウェイのWebサイト上で販売する。地域への誘客を実現することも狙いの1つで、空き家の一棟貸しによる新しいリゾートコンテンツの創出も視野に入れる。

 ホームアウェイは、家主不在型の民泊物件仲介で強みを持ち、全世界で月間4千万人のサイト訪問者数を誇る。提携を通じ、物件選定や商品企画に役立つマーケティングデータを供給することとなる。「現在、国内物件数は1万弱、2020年までには10万件を目指す」と語るホームアウェイの木村奈津子日本支社長。家主不在型で一棟貸しという事業展開は、空き家活用を狙う楽天ライフルステイとの親和性が非常に高い。

 楽天ライフルステイの太田社長は、「物件のリノベーションや運用代行などは我われが担うことになる。新会社では、楽天トラベル(髙野芳行事業長)で培ってきた営業ノウハウを横展開していきたい」と述べ、民泊の仲介業でも、各地域に民泊コンサルタント人材を配備するなどして、民泊に関わる事業を統括できる仕組みをつくる構え。楽天市場や楽天トラベルに匹敵する規模まで、民泊仲介業をグループ内で育てていく。

 ホームアウェイの木村日本支社長は、「同じ旅行者であっても、どこに、だれと訪れるのかによって求める宿泊のサービスは違う」と、宿泊形態の多様化が、インバウンドの増加に結びつくと語った。

 なお現在、楽天ライフルステイは、親会社の1つLIFULL(ライフル、井上高志社長)が進める「LIFULL HOME’S空き家バンク」事業と連携し、各自治体が運営する空き家情報を集約している最中。データベースとして2017年夏に、サービスを開始する予定。

経費の3分の1補助、宿泊施設の外客対応支援(観光庁)

 観光庁はこのほど「宿泊施設インバウンド対応支援事業」の公募を始めた。今回は4回目でWi―Fi整備などに対する経費を3分の1(上限100万円)補助する。2015年度から始めて累計328の計画が認定されている。宿泊施設の受入環境を整備して、訪日客の訪問・滞在時の利便性向上をはかる。申請は7月31日まで。

 申請時には宿泊事業者が5者以上で組成する協議会などの設立が必要。協議会は現状分析を踏まえた取り組みや、訪客宿泊者数などの目標を計画する「訪日外国人宿泊受入体制拡充計画」を策定し申請を行う。最終的に国土交通省大臣が認定し、補助金の交付を決定する。

 補助対象事業は(1)Wi―Fi整備(2)トイレの洋式化(3)自社サイトの多言語化(4)クレジットカード決済端末整備(5)ムスリム受入マニュアルの作成――など。今回は客室部分の整備は対象外で、館内共有部分のみとなる。

 認定・公表は8月を目途に実施予定。

 詳細は観光庁ホームページか、同事業の事務局(電話:03―5253―8329)まで。

指宿白水館が創業70周年、祝賀会に450人出席


下竹原啓高社長があいさつ

 鹿児島県・指宿温泉の指宿白水館(下竹原啓高社長)の創業70周年謝恩祝賀会が6月18日、観光関係者など約450人を招いて、同館で盛大に開かれた。

 同館は、戦後間もない1947(昭和22)年に、故下竹原弘志名誉会長が鹿児島市内に12室の旅館「白水館」を創業したのち、1960(昭和35)年に指宿温泉へと進出した。

 ハワイアンホテル白水館として営業するなか、1989(平成元)年に本物志向の高級和風旅館を目指して名称を「指宿白水館」に変更。旅館の大幅なリニューアルを行い、現在に至っている。

 祝賀会で下竹原社長は、創業者の気概と創業時代の苦労などを紹介。ハワイアンホテルから本格的な和風旅館への転換では「旅館経営は、あらゆる日本文化の素材を駆使する芸術活動、という父の経営理念が庭園や和風建築、館内の壁画、調度品まで浸透している」と話し、創業者の想いを伝えた。

 また「父は20年前の国観連会長時代から少子化・高齢化の問題とインバウンド時代の到来を予測していた」と述べ、指宿白水館の今後の方向性については「花の棟の耐震補強工事を来年の大河ドラマ放送以降の19年初めに延期する」と発表。

 高単価のスイートルームやコシノ・ジュンコさんによるデザイナーズルームの改装計画などを説明した。

 さらに、南側敷地の露付のビラ・コテージ建設やAIを使った電気カート試験走行、セスナ機による鹿児島空港―指宿間のアクセス計画なども明らかにした。

 祝賀会では料理の達人として、神奈川県・鎌倉市で中国料理店を経営するりん・くんび氏が「食と職をおいしく食べる法」をテーマに講演した。

 ロビー階では創業者・下竹原弘志・サツ夫妻の胸像除幕式も行われた。

創業者夫妻の胸像

“300会員を目標に”、ノウハウ結集し協力を(日本観光施設協会)

西山健司会長

 日本観光施設協会(西山健司会長、191会員)は6月29日、東京都内で2017年度定時総会を開いた。会員拡大を喫緊の課題とし、300会員を目標に据えた。

 西山会長は「一般社団法人になって今年で4年を迎えた」と述べ、「日本の旅行スタイルも団体旅行から個人化へと移行している過渡期。今後、市場の変化にどのように対応していくかが問われる。約200会員のノウハウを結集し、協力することが大事」と強調した。

 今年度は、組織の確立と財政基盤の確保のために会員拡大を第一の課題に据える。また、「旅の駅」ブランドの向上に向けては、店舗ごとに研修教育の実施や、お客様サービスの向上、バリアフリー設備・AEDの設置などの取り組みを進めていく。

 さらに、「観光バス業界とは車の両輪」(西山会長)とし、料金改定や、安心・安全の問題など、さまざまな角度から検討を続ける予定だ。

外務省が安全対策示す、海旅添乗員に初セミナー

セミナーのようす

 外務省と日本旅行業協会(JATA)、日本添乗サービス協会(TCSA)は6月22日、外務省内で海外旅行添乗員を対象に「海外安全対策セミナー」を開き、144人が参加した。近年、世界各地でテロが多発するなど、海外旅行の安全に対する意識が高まっている。とくに、現場で旅行者を引率する添乗員は、緊急事態発生時の迅速な行動や関係機関との連携など重要な役割が求められることから、今回初めてセミナーを実施。外務省領事局が基本的な対応を示した。

 冒頭、JATAの權田昌一海外旅行推進部長は、昨年から日本人出国者数の増加傾向は続いている一方、大手旅行会社の海外旅行取扱高は比例して伸びていないことを報告。顧客がOTA(オンライン旅行会社)に流れている懸念を示した。そのなかで、「旅行会社が提供する旅として、添乗員の力で安心安全の旅を提供し、OTAとの差別化をはかっていきたい」と強調。「お客様の安全を担い、旅の楽しさを伝えるために学んでほしい」と呼び掛けた。

 TCSAの三橋滋子会長は「昨今、世界各地で予測し得ない事件や事故が起きている。日ごろ海外でお客様の安心安全に心を砕いている添乗員や関係者が、外務省から直接話を聞く機会はとても貴重なこと」とセミナー開催に感謝した。

 外務省の能化正樹領事局長は「海外旅行での安全対策の重要性がこれまでになく高まっている。旅行のプロである皆さんは、旅行者から安全対策の面でもプロでいてほしいという期待を受けている。我われにとっても頼りになるパートナーだ」と述べ、安全対策への理解を求めた。

 能化領事局長は近年、テロリストが一般人や観光客を含めたソフトターゲットを狙い始めており、日本人も対象になっていると警告。添乗の際にテロに遭遇してしまう可能性も示唆した。そのうえで、基本対応として(1)「たびレジ」への登録(2)海外安全ホームページからの情報収集(3)「海外安全 虎の巻」の利用――の3ステップを紹介。たびレジは外務省が発信する海外旅行者に向けたメールサービスで、必要事項の登録で現地の安全情報や緊急速報が送られてくる。「添乗の際には団体の人数を登録し、できれば参加者個人にも登録を薦めてほしい」とした。海外安全ホームページからはスポット情報のほか、海外でのトラブル対応を具体的に記した虎の巻も閲覧することができるため、積極的な活用を促した。

財源確保が最重要、中核となる人材不足課題(DMO調査)

 日本観光振興協会はこのほど、日本版DMO候補法人に現状を聞くアンケートを実施した。これによると、DMOの取り組みを進めるうえで、「安定的な組織運営のための財源確保」が最も重要だということが分かった。また、戦略の策定や活動を牽引する組織の中核となる人材の不足も大きな課題となっている。

 調査は3月までに候補法人123団体のうち、79%に当たる97団体から回答を収集。回答を参考に、昨年4月に同協会に設置したDMO推進室がどのような支援を行うか検討するのが目的。

 DMO候補法人の登録前に関係組織に事業説明を行ったかについては、55%が市町村や観光協会に周知や事前説明を行ったのに対し、主要観光事業者や観光関係機関への実施は28%にとどまった。また、人材確保やマーケティング戦略策定のためのデータ収集は8割の団体が事前に実施していなかった。

 財源確保のために検討しているものは、「収益事業」という回答が多数だった。そのなかでは、着地型商品や特産品、地域限定グッズの販売、コンサルティング広告収入などが挙げられた。

 人材については、どのようなノウハウを持った人材が不足しているかを質問。全体で59%の団体が「データ収集」の専門スキルを持った人材が不足していると答えた。次いで「人材育成」「財務・経営分析」が多く挙げられた。また、人材育成への取り組みは、研修・セミナー開催と参加支援、講演会の開催などが多かった。一方、日観振には、講師の紹介・派遣や教材の開発・提供、研修などの共同開催・支援などを期待している。

 これらを踏まえ、日観振は今年度、DMO職員らを対象に、DMO入門・初級研修やマーケティング専門人材育成研修、中核人材育成研修の開催などを行っていく。