現美新幹線ラストランを貸切ツアーで堪能 JR上野駅~JR仙台駅間で 阪急交通社

2020年10月5日(月) 配信

今年12月に定期運行を終了する現美新幹線

 阪急交通社(酒井淳社長、大阪府大阪市)はこのほど、今年12月に定期運行を終える「現美新幹線」を旅程に組み入れたツアーを売り出した。同新幹線が通常運行しないJR上野駅~JR仙台駅間と、JR新潟駅~JR上野駅の区間を、2日間2往復に渡って貸切運行を行う。

 現美新幹線は2016年4月に運行を開始し、「移動する現代アートの美術館」をコンセプトに、アーティストが車両をプロデュースした観光列車。JR新潟駅とJR越後湯沢駅を定期運行している。

 同社は「現美新幹線に初めて乗車する人、これまで乗車したことのある人も、新たな区間として希少価値の高い列車の旅を楽しんでもらいたい」と期待を込めた。

 販売しているツアーは以下の通り。

ツアー概要

商品名:〈上野発〉秋保・瀬波2つの名湯・名旅館をめぐる晩秋のおもいで3日間

出発日:11月12日(木)

旅行代金:12万5千円(1室2~4人/大人1人)※Go Toトラベル利用時9万7千円

宿泊ホテル:1泊目 ホテルニュー水戸屋 / 2泊目 大観荘せなみの湯

 

商品名:〈仙台・福島発〉草津温泉と下部温泉でゆったり寛ぐ大人旅3日間

出発日:11月13日(金)、12月9日(水)

旅行代金:11月13日(金)8万5千円 ※Go Toトラベル利用時5万7千円
     12月9日(水)8万円 ※Go Toトラベル利用時5万2千円
    (1室2~3人/1人)

宿泊ホテル:1泊目 ホテル一井 / 2泊目 下部ホテル

 

商品名:〈新潟発〉銀山温泉散策と出羽三山神社・天童・作並温泉2日間

出発日:11月12日(木)、12月8日(火)

旅行代金:5万円(1室4人/1人) ※Go Toトラベル利用時3万6千円

宿泊ホテル:La 楽リゾートホテルグリーングリーン

11月12日 「飲む、食べる、 買う、体験する」ことでつながる体験型フードパークKADODE OOIGAWA(かどでおおいがわ)が開業

2020年10月5日(月) 配信

施設内イメージ
©︎KADODE OOIGAWA・島田市・トコナツ歩兵団2020

 静岡県島田市に11月12日(木)、大井川流域の緑茶・農業・観光を「飲む、食べる、 買う、体験する」ことでつながる体験型フードパークKADODE OOIGAWA(かどでおおいがわ)が開業する。

 施設内には、農産物直売所やカフェ、キッズパーク、レストランなどを配置。大井川流域の緑茶と農産物のレストランでは、タイミングが合えば真横を通るSLを眺めながら食事が楽しめる。

 大井川農業協同組合、島田市、大井川鐵道、中日本高速道路の4者連携事業として進め、交通の結節点である新東名島田金谷IC周辺の新たなランドマークとして、大井川流域の緑茶と農産物、観光の魅力を発見・発信・創造する「緑茶と農産物の体験型フードパーク」を目指す。

 プロデュースは、エンターテインメントの視点から、まちづくりや商業施設の企画などを手がける「トコナツ歩兵団」(渡部祐介団長=マイロックチョコレーツ代表取締役)と、KADODE OOIGAWA。

 同日、敷地内には観光案内所や物産販売所、サイクルピットで構成するTOURIST INFORMATION「おおいなび」、隣接地には大井川鐵道35年ぶりの新駅「門出駅」も開業する。

「ハピテク」、検索機能を刷新 現在地からテイクアウトができる店舗をカンタン検索

2020年10月5日(月)配信

 プレシャスパートナーズ(髙﨑誠司社長、東京都新宿区)が運営する「ハピテク」はこのほど、検索機能の強化を主としたリニューアルを行った。自宅やオフィスなど、現在地の近くからテイクアウトができる店舗をカンタンに検索ができるようになった。

 ハピテクは「いつもお店で食べていた味を、家でも楽しもう」をコンセプトにテイクアウトができる飲食店を探せるWebサービスだ。今回のリニューアルでは現在地からの検索に加え、今テイクアウト営業中の店舗が一目でわかる「テイクアウト営業中」フラグの表示機能を追加。「現在地×現在時間」で、店舗検索が可能となった。

 店舗からのメッセージ掲載も始めた。「マスク着用することが当たり前となり、接客するスタッフの方の笑顔が見られなくなりました。料理の先にある スタッフさんの笑顔を発信し、お店のファンづくりを支援したい」(同社)という。

車内換気性能などバスの安心安全をアピール 東京バス協会ら

2020年10月5日(月) 配信

小池百合子都知事も出席した

 東京バス協会と日本旅行業協会(JATA)関東支部、全国旅行業協会(ANTA)東京支部は10月1日(木)、東京都庁の正面玄関前でバスの安心安全をアピールするデモンストレーションを行った。小池百合子東京知事同席のもと、車内換気性能の実証実験などを実施した。新型コロナウイルスの影響で需要が落ち込んでいる貸切バスの安全性を広く周知し、需要回復につなげたい考え。

 東京バス協会の山口哲生会長は「バスイコール密イコール危険とのイメージがなかなか払拭できず苦慮している」と現状を説明。同日から、GO TOトラベルキャンペーンに東京が追加されることを受け、今回の企画を行ったと説明した。

 デモのほか、東京都民にバスの感染防止対策を広くアピールするため、東京都内で随時ラッピングバスを走らせる。窓を閉めても約5分で車内の空気が入れ替わることなど、対策や標語などを掲示。バスは4両1組、計6組24両で走行する。同日はラッピングバスの出発式も行った。

 立ち会った小池知事は、バス業界が感染対策に取り組んでいることを労い、安全性の周知に協力していく姿勢を見せた。主催者によると、ラッピングバスの出発を見送る際にはバスガイドに笑顔で手を振り返し、応援するようすがうかがえたという。

JTB、学校にNGO派遣 新プロジェクト始まる

2020年10月5日(月) 配信

村尾信尚氏

 JTB(山北栄二郎社長)は9月1日(火)、ジャパン・プラットフォーム(JPF)と連携し、学校とNGOをつなぎ、探求学習をサポートする17 GOALs PROJECTを開始した。JTBが学校からSDGsを教育する講師の派遣依頼を受け、世界の社会課題の解決に取り組むJPFが、加盟する44のNGOから講師を派遣する。生徒には加盟NGOの活動内容と現実味のある学びの場を与える。

 参加費は、JTBが受け取る代金のうち1%を学校がJPFへ寄付し、活動費に充てる。

 9月18日(金)には、プロジェクトの第1弾となる授業が、中央大学付属高校(東京都小金井市)で行われた。講師はJPFの顧問でNEWSZEROの元メインキャスターの村尾信尚氏が務めた。授業は基調講演と座談会を開催し、最後には鼎談を実施した。

 基調講演のテーマは「新しい時代の君たちへ」。初めに村尾氏はニュースキャスターの経験から、「ニュースには、伝える人の主観が込められている。さまざまなテレビや新聞を見てほしい」と呼び掛けた。

基調講演のようす

 Go Toトラベルキャンペーンと今年4月に10万円の特別定額給付金が配られたことにも触れた。村尾氏は「財源には皆さんが払った税金が活用されている。政治に興味を持ち、意見を伝えるべき」と訴えた。

 座談会では、選択授業でSDGsを学ぶ生徒が村尾氏に質問した。

生徒は座談会で質問を投げ掛けた

 2年生の女子生徒は基調講演に関連して「中立的なメディアはありますか」と問い掛けた。

 村尾氏は「(存在するか)分からない。私は中立を心掛けたが、難しい。色々なニュースに触れて中立を掴んでほしい」と応えた。

 鼎談には村尾氏とJTBの檜垣克己執行役員が登壇した。司会は同高校の古澤康久教頭が務めた。テーマは「これからの教育に求められること」とした。

鼎談のテーマは「これからの教育に求められること」。(左から)檜垣克己執行役員、村尾信尚氏、古澤康久教頭

 冒頭、古澤教頭はJTBの檜垣執行役員に企業の立場から教育に求めることを聞いた。

 檜垣氏は「生徒には世の中の環境が激変するなか、自分は何ができるかを明らかにし、実行する力が求められる」と意見を述べた。

 村尾氏には教育現場でのメディア活用方法を尋ねた。

 村尾氏は「生徒に世の中の出来事を伝えるときには、『一部の人が意見を述べていると思ってみてほしい』と教えてほしい」と話した。

3団体が地域に貢献 観光庁長官表彰が決定 観光庁

2020年10月5日(月) 配信

観光庁はこのほど、観光庁長官表彰に3団体を選出した

 観光庁は10月2日(金)、第12回観光庁長官表彰の受賞者を発表した。海外メディアにも数多く取り上げられ瀬戸内エリアのブランディングに大きく貢献した「瀬戸内国際芸術祭」の実行委員会など、計3団体を選んだ。

 選出された3団体のうち、「みちのく潮風トレイル」を運営するNPO法人みちのくトレイルクラブは、観光を通じ地域の復興に貢献した。トレイルを訪れる人々と、地域住民との交流を通じた持続可能な地域計画や、観光振興に寄与したことが受賞につながった。

 NPO法人安心院町グリーンツーリズム研究会の宮田静一会長は、会員制農村民泊「安心院方式」を生み出したことがきっかけで、全国に先駆けて「グリーンツーリズム推進宣言」が同町で議決された。グリーンツーリズムの推進に貢献した同氏の取り組みが評価された。

 なお、同委員会と観光庁が検討した結果、地方自治体と連携した地域活性化への貢献を評価し、ももいろクローバーZに特別感謝状を贈った。

 同賞は魅力ある観光地づくりやその魅力の発信など、観光の振興、発展に貢献した個人や団体に対して贈る。

 今回、観光庁での授賞式は行わず、地方運輸局から受賞者に賞状などを贈呈する。

ロケツーリズム協議会加盟4市町が団結 映画「今はちょっと、ついてないだけ」 製作決定

2020年10月5日(月)配信

 映画「今はちょっと、ついていないだけ」の制作発表が2020年9月24日(木)、東京都内で開かれたロケツーリズム協議会(藤崎慎一会長)の会合で行われた。

 ロケツーリズム協議会に加盟する千葉県茂原市、長野県千曲市、愛知県幸田町、長崎県島原市が一致団結し撮影に協力、1つの作品を作りあげるという、全国的にもめずらしい取り組みだ。同協議会も全面協力する。

 「雲を紡ぐ」で直木賞にノミネートされた小説家・伊吹有喜さんの同名著書(光文社文庫刊)が原作。自然写真家として脚光を浴びるもバブル経済崩壊ですべてを失った主人公が、上京して住み始めたシェアハウスで、同じような境遇の人たちと「人生の敗者復活戦」に挑む物語だ。監督・脚本は「パーフェクトワールド 君といる奇跡」(2018年公開)などを手掛けた柴山健次氏が担当。Zipangが制作し、2021年秋以降の公開を予定している。

ロケツーリズム協議会 withコロナ時代の地域活性事例を報告 映像制作者と自治体が率直に意見交換

2020年10月5日(月)配信

西伊豆町の星野町長(左)が取り組みを報告

 ロケツーリズム協議会(藤崎慎一会長)は2020年9月24日(木)、リーガロイヤルホテル東京(東京都新宿区)で今年度3回目のセミナーを開き、自治体や映像制作者ら70人が参加した。

 withコロナの時代、「今こそ経済の復興!観光の回復!」を掲げ、映画やドラマのロケ地となった実績を観光資源として活用し、地域の活性化へつなげることを目指している。第1部の事例発表では、自粛期間中に取り組みを進めた地域が、どのような成果を挙げつつあるのかを発表。第2部のグループワーキングでは、ロケ誘致に係るノウハウを学んだほか、自治体・映像製作者双方が率直に意見交換し、新たなマッチングの可能性を探った。

 事例発表では「緊急事態宣言下にあってもオンラインでロケ情報を制作者と共有」(愛知県幸田町)や「ロケ誘致をきっかけに市民が街に愛着を持つようになった」(神奈川県綾瀬市)など、会員の近況を紹介。静岡県西伊豆町からは星野淨晋町長が会場に駆けつけ、人命を最優先するなか、いち早く約3億円の財源を充て宿泊・飲食業者らに休業要請を行った経緯や、緊急事態宣言解除後は一転、ロケ誘致をはじめ観光面で攻めに転じたことを報告した。同町では9月、映画「たぶん」(20年晩秋公開予定)のロケハンツアーも行われた。制作者側からは「ロケハン中、各施設での撮影可否や貸切について即答してもらい、大変助かった」など、高い評価も得ている。

 分科会のうち「地域とのマッチング」をテーマとした部屋では、自治体・制作者双方が参加し、それぞれの立場や意思決定の仕組みについて理解を深めた。制作者側からは、誘致に係る費用補助について、映画と情報番組での考えの違いが伝えられたほか、「ロケハンに同行いただく地元の人が、その地の魅力を分かっていないこともある」などの声も挙がった。  

 今回の会合は、オンライン参加も募り、全国各地から約40人が参加した。藤崎会長は、「協議会は映像制作者と地域のマッチングの場。リアルに対面して生まれる事例も多くある中、11月のセミナーは、より大勢に足を運んでもらいたい」と呼びかける。

リーガロイヤルホテル東京でロケ地ツアーも

ドラマの1シーンを再現

 同日、会場となったリーガロイヤルホテル東京で、ロケ地ツアーも開かれた。ドラマ「半沢直樹」で、堺雅人さんと及川光博さん出演シーンの撮影が行われた「セラーバー」では、実際の撮影風景を再現して「なりきり写真」を撮影するなど、参参加者からも好評だった。一般向けには、クラブツーリズムが、ランチ付きでリーガロイヤルホテル東京のロケ地見学ツアーも企画している。

 「セラーバー」はコロナ禍で現在休業中だが、それを逆手にとり「撮影時間が制約されない空間」(同ホテル繩手典子販売促進チーフ)としてPR。撮影の問い合わせも絶えないという。

「もてなし上手」~ホスピタリティによる創客~(117)お客様と呼んで3流 名前を呼んで2流 一流とは? ○○さんで関係深める

2020年10月5日(月) 配信

 

 当社内で、お客様を「客」と言う企業が少なくない、という話が出ました。これでは、「おもてなしの想い」は育たないと感じました。クライアント企業には「社内でも『お客様』と当たり前に言えるようにしましょう」と話をしています。

 1月にある企業を訪問したとき、新年度ポスターのスローガンを見て驚きました。そこには「お客様を、お客様と当たり前のように呼べる会社になろう!」とあったのです。その年には、「新しいおもてなしの目標」を企業スタッフたちと話し合いました。すると、翌年には「お客様と呼ぶことを卒業して、○○さんとお名前で呼べる会社になろう!」とスローガンが変わっていたのです。以来、その企業の「おもてなし力」は、地域のお客様から高い評価もらえるようになったのです。

 年2回のセミナーで、「お客様を、お客様と呼べて3流。〇〇様とお名前を呼べて2流。では、一流の企業に必要な呼び方とは。答えは〇〇さんです」とお話しすると、参加した高級レストラン経営者から、「お客様を〇〇さんとは、私どもでは呼べません」と、ご意見が出ました。場の雰囲気や客層もあり、さん付けでは失礼なこともあります。しかし、私は「おもてなし力を高めて、〇〇さんと呼んでも失礼にならない関係性を築くことが大切です」と、あえて申し上げたのです。

 ホテル・リッツ・カールトン東京で、私を「西川さん」と呼ぶスタッフがいます。初めのころは、「西川様」でしたが、何泊目かにスタッフへ「私はいつになったら、リッツ・カールトン東京の本当のお客様になれるのかなぁ」と問い掛けました。

 「『様』と呼ばれると隔たりを感じる。親近感をもって、『さん』と呼んでもらえればうれしいね」と話したのです。すると、そのスタッフは親しみを込めて「西川さん」と呼ぶようになり、リッツ・カールトン東京が我が家のように感じることができるようになったのです。

 お客様をどのようにお呼びするかは、おもてなし力を高めて行く目標にもなります。常に「様」と呼ばれ、それが当たり前の人には、「〇〇様」が心地よいかもしれません。しかし、「様」と呼ぶことで高級店である印象を保つことはできません。お客様との関係性を深めて行くことが、おもてなしでリピーターを創造することにつながるのです。

 「丈次さん」と呼んで下さるクライアント企業やお店がたくさんあります。

 呼び慣れていない方にとっては、照れくさい呼び方かもしれませんが、私にとっては最幸にうれしい響きで、特別な企業であり、お店になっていったのです。

 
 

コラムニスト紹介

西川丈次氏

西川丈次(にしかわ・じょうじ)=8年間の旅行会社での勤務後、船井総合研究所に入社。観光ビジネスチームのリーダー・チーフ観光コンサルタントとして活躍。ホスピタリティをテーマとした講演、執筆、ブログ、メルマガは好評で多くのファンを持つ。20年間の観光コンサルタント業で養われた専門性と異業種の成功事例を融合させ、観光業界の新しい在り方とネットワークづくりを追求し、株式会社観光ビジネスコンサルタンツを起業。同社、代表取締役社長。

 

「街のデッサン(234)」「hope to トラベル」で旅人と観光地を幸せに 旅への憧れと喜びが観光事業の起点

2020年10月4日(日) 配信

鎌倉小町通りにも若者のにぎわいが

 若い時分から髪を長くしていたので、調髪は妻の懇意にしているヘアサロンにお世話になっている。サロンの美容師の先生は旅好きで、たっての願いは80歳を超えた高齢の実母をパリ観光に連れていくことだった。それは母親が長年憧れていたことで、先年、先生のご亭主(車イス担当)も巻き込んで、3人でのパリ滞在を敢行した。3人ともパリは初めてで、妻が見所や地下鉄の乗り方などをアドバイスして、宿はアパルトマンホテルに泊まる旅を成功裏に完遂させた。

 母親は長年の想いが叶い、ご亭主は義母を押して石畳の街路や地下鉄を乗り継ぎ懸命に観光地巡りを頑張り、パリの人々は彼の姿に感銘して大いにサポートしてくれたらしい。ご亭主の株は上がり、誇り高い気分で帰国された。

 そんな経緯もあってか、私が調髪に行くたびに話は旅のことになる。コロナ渦中の旅の話になり、「Go toトラベルキャンペーン」が始まった時期には、「昔から八甲田山の麓にある鄙びた温泉宿に行きたかったから、キャンペーンを利用していこうかしら」とカットしながら語っていた。私は「Go toキャンペーン」の評判にいまいちの感を持っていたが、心の中に秘めている旅への期待や、想いを喚起させる役割を持つのではと思った。彼女にとって残念だったのは、東京が外されて鄙びた宿の夢が実現できなかったことだ。

 このキャンペーンの問題点は、コロナ蔓延で疲弊する観光地や、観光関連の中小企業の事業者を経済的に支える思惑も無論大切であるが、肝心のお客様であるトラベラー(旅人)の旅への深い愛着や願望を支える仕組みに至らなかった点にあると思う。要するに観光経済を救う経済感覚はあっても、旅の持つ人間価値への思いやりが不在なのである。それはいわば「観光思想」の欠如でもあろう。

 80歳を超えた高齢の母親にも若いころからの旅への情熱があった。美容師の先生もカットの手を止めたときに、「鄙びた温泉」が頭を過る。ご亭主には、旅が家族の紐帯をさらに強くするという、確信にも近い「旅の思想」があるのだ。

 それらの想いを顕在化させ、実現をサポートしていく優しい思想が、結果的に観光地にお客を集め、喜ばれ、お金を落してもらう観光地経済の復興につながる。それはGo toという命令的な口調ではなく、私には「hope toトラベル(幸せな旅をしたい)」という旅人(顧客)の心根と、観光地で受け入れる人々の慈愛が共創して創り上げる観光産業こそ、未来的に思えるのである。

コラムニスト紹介

望月 照彦 氏

エッセイスト 望月 照彦 氏

若き時代、童話創作とコピーライターで糊口を凌ぎ、ベンチャー企業を複数起業した。その数奇な経験を評価され、先達・中村秀一郎先生に多摩大学教授に推薦される。現在、鎌倉極楽寺に、人類の未来を俯瞰する『構想博物館』を創設し運営する。人間と社会を見据える旅を重ね『旅と構想』など複数著す。