No.267 みうらシティセールス・プロモーション - 営業開発課が市を“売る”

みうらシティセールス・プロモーション
営業開発課が市を“売る”

 神奈川三浦市は、行政では珍しい「営業開発課」を2004年に設置し、三浦市を“売る”ための「みうらシティセールス・プロモーション」を展開してきた。メディアでも多く取り上げられ、09年3月には日本観光協会の「優秀観光地づくり大賞」で金賞の総務大臣賞を受賞。今年11月には「第1回かながわ観光大賞」の「観光による地域活性化部門」で大賞を受賞した。取り組みや成果などを発足から同課に所属し、今は課長として取り仕切る大澤克也氏に聞いた。

【飯塚 小牧】

 ◆営業開発課とは

 神奈川県・三浦半島の最南端に位置する三浦市。漁業が盛んな地域で、マグロの水揚げ日本一を誇ったこともある。加えて肥沃な大地も広がっているため、野菜も多く栽培されている。昔からの主な観光地は、三浦海岸や城ヶ島、油壺など。1960年代の観光入込客数は763万人を数えていた。その後、94年の5万4339人をピークに市の人口は減少(現在は約4万8千人)。マグロの水揚げも交通面の発達から、静岡県の焼津港にシフトされるとともに、観光の多様化から観光客数も減少していた。

大澤 克也 課長

 こうしたなか、2000年に地方分権一括法が施行されると、同市は翌年「第4次三浦市総合計画」を策定。地域経済の衰退と定住意識の低下、一体感の喪失の3つの問題を指摘し、克服するための行政革命を行うことを決めた。計画では、人・企業・モノ・情報を歓迎する「もてなし政策」を大きな柱に据え、それを具現化する施策として「みうらシティセールス・プロモーション」を掲げた。同プロモーションは、対外的には地域コンテンツの開発と営業活動、また市民に対してはコンテンツ開発への協力と来訪者をもてなしてもらうことで、地元の魅力の再認識や誇りを持ってもらうという両面の役割がある。その実践部隊として04年4月、経済振興部に設置されたのが営業開発課(現在6人)だ。

 さらに、06年に吉田英男市長が「株式会社三浦市」のコンセプトを打ち出したことも大きな転機になる。横浜銀行出身の吉田市長は、民間の考えを市制に導入。営業開発課は新規性、独創性、発展性の高い事業を考案する部署として、“株式会社三浦市”の営業に「24時間、365日体制」の感覚で臨んでいる。 

 

※ 詳細は本紙1405号または日経テレコン21でお読みいただけます。

女将サミット 初の九州開催へ

おかみの集い運営委員会(有村政代運営委員長)はこのほど、来年22回目を迎える「全国旅館おかみの集い」(女将サミット)について、九州「福岡」で開催することを決めました。

過去21回、首都圏のほか関西地区で開きましたが、福岡で開くのは初めてです。有村運営委員長は「全国から九州へ来られる参加者が楽しんでもらえるような会を開きたい」と、初の九州開催に意欲を見せています。

同時に開催日は6月28日、基調講演講師には裏千家前家元の千玄室氏を迎えることも決めました。会場ホテルや開催テーマ、分科会(勉強会)内容については、今後の運営委委員会で話し合います。

■第22回 全国旅館おかみの集い 開催概要(速報)

開催日:平成23年6月28日(火)

開催場所:福岡県福岡市内のホテル

基調講演講師:裏千家前家元 千玄室 氏

訪日中国人1.8%減、尖閣事件の影響大

 日本政府観光局(JNTO、間宮忠敏理事長)がまとめた2010年10月の訪日外客数(推計値)は、尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件の影響を受け、中国が前年同月比1・8%減の10万6400人、香港が同23・7%減の3万400人となった。

 全体では、羽田空港の国際線発着枠拡大、訪日旅行の広告・宣伝効果、景気の回復・好転などにより、同11・0%増の72万7600人と、09年11月以降前年同月比は12カ月連続で増加した。ただし、6月の同59・5%増など、大幅な増加を記録していた10年のなかでは増加率が鈍化。10月単月で過去最高だった07年(78万5207人)と比べると、約5万8千人少なかった。

 1月から10月の累計数では前年同期比30・9%増の732万8300人となった。9月までの累計ですでに、1―10月の累計の過去最高を記録する好調ぶり。主要15市場のうちタイ、フランス、ドイツ、インドは10月単月で過去最高を記録。

 間宮理事長は11月24日の会見で「尖閣諸島沖事件の影響で中国の高い伸びが止まったが、過去最高を記録した08年の835万人を超えるのは間違いない。1千万人に近づけるよう最後まで全力を尽くす」と語った。

 方面別にみると、韓国は同47・8%増の19万3900人と、09年11月以降12カ月連続で高い伸びを続けている。ドイツはユーロ安にも関わらず、国内の好景気などを受け5月以降6カ月連続で2ケタの伸びを記録。また、10年の重点地域であるインド、ロシアも前年同月比20%を超える増加を記録している。

「中国への期待変わらない」、JNTO 間宮理事長

 日本政府観光局(JNTO、間宮忠敏理事長)は11月24日、会見を開き、尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件後の中国人訪日旅行の現状や10月の訪日外客数について説明し、中国人観光客への期待が変わらないことなどを話した。

 9月の中国人訪日客数は、前年同月比39・3%増と好調を維持し、尖閣諸島沖事件の影響は国慶節休暇期間中も限定的であったが、10月は同1・8%の減少となった。JNTO中国事務所の調べで、国慶節休暇明け以降、中国各地で観光団体旅行の申し込みが昨年と比べ、減少傾向にあることを明かした。また、9月20日に通達された中国当局から地方旅行会社への訪日旅行の自粛を促す口頭指導については、その後動きはないが、現在、中国の旅行会社では訪日旅行のチラシなどを作り、展示していることを報告した。

 間宮理事長は「尖閣諸島沖事件の影響はあるものの、上海万博での日本ブースの盛況ぶりなど、中国人の日本への関心は依然高い。中国が最も訪日外客の拡大を期待できる市場であることに変わりはない」と今後も中国をインバウンドの柱として期待する考えを話した。また、中国へ過度に依存するリスクについては「中国が再拡大を期待できるが、韓国・台湾・中国・香港の4大市場を柱とする15市場での外客誘致に力を入れている」と中国への過度な依存については否定した。

 なお、10―11月には、今後の訪日旅行ツアーの造成や販売促進のため、中国各地の旅行会社を日本へ招請し、スノーレジャー商談会や訪日旅行スペシャリスト育成研修を実施した。11月18―21日には中国最大の旅行博の日本ブースで訪日旅行のPRを展開。12月1日からは訪日旅行取扱旅行会社招請事業を行うことを報告した。

台湾で観光と農産物PR、やまがた女将の会も参加

吉村知事(左から4人目)と参加した女将たち
吉村知事(左から4人目)と参加した女将たち

 山形県(吉村美栄子知事)は11月18―21日まで、台湾からの観光客誘致と県産農産物の販路拡大をはかるため、吉村知事自らトップセールスを行う観光ミッションを展開した。やまがた女将会(会長・佐藤洋詩恵日本の宿古窯専務)からも10人が参加、山形の魅力を伝えた。

 ミッションは19日に台北市のホテルで旅行会社ら45人を集め、吉村知事が観光説明を行ったほか、交流会では吉村知事と女将らが花笠踊りを披露、会場を大いに盛り上げた。夜には台北市観光電播局の脱宗華局長の招待で、同市で開催されている花博会場を視察。翌20日には山形の物産展が開催されている大葉「高島屋」でラフランスやりんごなどの農産物の販売に参加、最後に北投温泉に12月オープンする「加賀屋北投分館」を視察した。

 今回のミッションは吉村知事と和服姿の女将という女性ならではの目線で誘客し、その姿は現地の新聞でも紹介された。

温度差発電を公開、「環境にやさしい熱海」へ

齊藤市長(右)と武藤教授
齊藤市長(右)と武藤教授

 静岡県熱海市は、地域活性化政策「温泉イノベーション」の一環として取り組んでいる温度差を利用した発電のデモンストレーションを行った。会場は「日航亭大湯」で行われ、発電装置を開発した慶応大学環境情報学部の武藤佳恭(たけふじよしやす)教授が実験を公開した。

  「温泉イノベーション」は今年度の事業で、熱海市の資源を活用するため産官学で9月から本格的な事業展開をしている。齊藤栄熱海市長は「熱海市の観光客数は最盛期の半減。地域を活性化させる新しい発展のモデルとして熱海の資源である温泉を有効活用していく。将来的には公共施設から民間まで広げて、環境にやさしい熱海を目指す」と事業の意気込みを話した。

  発電装置は温泉旅館などで捨てていた温泉の排水などを利用して発電させる。発電効率の高いゼーベック素子を使い、温泉と水道水の温度差を利用する。実験ではLED(発光ダイオード)を点灯させた。温度差100度で10ワット、200度で19ワットが発電可能とされる。温度差があるほど発電力も増す。

  武藤教授はJR東日本などで設置された床発電などの開発者としても知られており、「床発電は人がいないとだめだが、人がいなくても身近な所にある温泉を利用して発電を実用化させたい」と述べた。

旅館軒数4万8967軒、ホテルに客室数抜かれる

 厚生労働省がまとめた2009年度の「衛生行政報告」によると、10年3月末現在の宿泊施設軒数(簡易宿泊施設、下宿を含む)は前年度比1・7%減の8万2954軒と減少。なかでも旅館は同3・7%減の4万8967軒と、1年間に1879軒減少しついに5万軒の大台を割り込んだ。一方、ホテルは86軒増加し、9689軒となった。客室数は初めてホテルが旅館を上回った。

 旅館の営業軒数は4万8967軒と、5万軒の大台を割った。近年は毎年1500―2千軒程度減少しており、この1年間も1879軒と2千軒近い旅館が減少した。

 1980年代に8万3226軒でピークを迎えたが、その後減少傾向に歯止めはかからない。

 客室数は79万1907室と、前年度の80万7697室から1万5790室減少。こちらも80万室の大台を割り込み、ついにホテルの客室数79万8070室に抜かれ、初めて逆転した。ホテルの客室数は前年度から1万7565室増加しており、旅館減少、ホテル増加の構図は依然と続いている。

 山小屋やユースホステル、カプセルホテルなどの簡易宿所は2万3429軒と、前年度に比べ379軒増えた。また、下宿は869軒で43軒の減少となった。

 都道府県別にみた旅館軒数は、静岡県が3316軒でトップだった。(2)北海道(2788軒)(3)長野県(2715軒)(4)新潟県(2354軒)(5)三重県(1784軒)――と上位5道県の順位に変動はなかった。以下10位までは、(6)福島県(1646軒)(7)栃木県(1489軒)(8)山梨県(1421軒)(9)兵庫県(1389軒)(10)千葉県(1385軒)となった。

 一方、ホテル軒数が多い都道府県別のトップ10は、(1)東京都(694軒)(2)北海道(668軒)(3)長野県(523軒)(4)兵庫県(410軒)(5)静岡県(365軒)(6)福岡県(362軒)(7)大阪府(357軒)(8)沖縄県(347軒)(9)神奈川県(336軒)(10)愛知県(306軒)――の順となった。

11年春に基本計画改定、各ワーキングチーム検討状況報告

11月22日に開かれた第2回会合
11月22日に開かれた第2回会合

 11月22日、国土交通省で第2回観光立国推進本部が開かれた。同本部は観光立国実現に向けて省庁間の連携を強化し、政府として一体的・総合的に観光政策を推進するために設置。国土交通大臣を本部長とし、全府省の副大臣などをメンバーとする。第2回は本部の下に設置する外客誘致ワーキングチーム、観光連携コンソーシアム、休暇分散化ワーキングチームの検討状況や観光立国基本計画の改定スケジュールを報告。意見交換が行われた。

  池口修次国土交通副大臣は「観光は地域経済を支える産業の背骨として、内需を牽引していく基幹産業。地域活性化や国民の生活の質の向上を実現し、元気な日本を復活させる起爆剤にしていきたい」とあいさつした。

  外客誘致ワーキングチームでは、中国を含めたアジアからの観光客取り込みを重点課題とし、5月、中国人観光客の「査証容易化」について検討を行った。

  なお観光庁では外客誘致について、2013年1500万人、2016年2千万人、2019年2500万人を目標としたロードマップを描く。溝畑宏観光庁長官は09年の入国者数が韓国782万人、シンガポール749万人に対し、日本が697万にとどまっていることを示し「素晴らしい観光資源を持っていながら日本よりも人口の少ない韓国、シンガポールの後塵を拝している。ここから一気に駆け上がりたい」と話した。

  観光連携コンソーシアムではニューツーリズム、医療観光、産業観光など、多様な観光メニューについて、関係省庁の連携による総合的な振興策の検討を行った。溝畑長官は「歴史的文化財や自然環境などと観光の連携については、国が率先してリーダーシップを取るべき分野。その他の観光連携分野については各省局長クラスの幹事会による施策のフォローアップが必要」と語った。

  休暇分散化ワーキングチームでは、休暇分散化による効果について関係団体からヒアリング調査を実施。全国展開するサプライチェーンや本支店間の連絡調整、銀行決済への影響といった企業活動における問題点や、通勤先や通学先の所在地により家族・友人の休みが異なる懸念などが指摘された。溝畑長官は「休暇分散化はメリット、デメリットがあるなか、国民の生活に根ざしているので国民的な合意形成が不可欠。国民会議や世論調査、ワーキンググループでの議論を踏まえながら検討していきたい」と語った。

  観光立国基本計画の改定は、観光をめぐる情勢の変化などを踏まえ、おおむね3年を目途に見直しを行うもの。交通政策審議会観光分科会や観光立国推進本部の各ワーキンググループ、業界・自治体からの要望、パブリックコメントなどを踏まえながら改定し、2011年の春ごろの閣議決定を目指す。

  ちなみに10年目標の訪日外客数1千万人、海外旅行者数2千万人、国内における観光消費額30兆円、国内旅行における宿泊数4泊、国際会議開催件数252回に対し、現状は679万人(09年)、1544万5千人(09年)、23・6兆円(08年度)、2・36泊(08年度)、538回(09年)〈従来基準では246回〉。

事業仕分けに「残念」、予算確保に尽力

 観光庁の溝畑宏長官は11月24日に会見を開き、事業仕分けで観光庁の7事業が廃止や予算半減などの厳しい判定結果を受けたことについて、「残念」「納得いかない」などの声をあげ、全力で予算確保に取り組む旨を話した。

 昨年、国の成長戦略の柱として「観光」予算が大幅増となったものの、事業執行半年で大幅削減の判定となったことに対し、「期待していた地方自治体や民間に対して申し訳ない。政務3役と協議しながら、全力で予算確保に努める」と力強く語った。

 中国を除き3分の1へ削減と判定されたビジット・ジャパン事業については、「効果測定の意識は高く、訪日外客が過去最高の数値で伸びているなど、実際に効果も出ている」と自信を見せた。

 予算計上の見送りとなった国際会議の開催・誘致については「納得いかない」とし、「民間や自治体ではリスクが大きく時間もかかるので、国が先導するべきだ」と強調した。予算10億円を計上する韓国やシンガポールを引き合いに出し、「世界と逆の動き。MICEで世界5位となり、シンガポールを抜こうというときに、水をかけるようなものだ」と不満を述べた。

 国内5事業に対しては「指摘のあった効果測定などもう1度見直しが必要だが、効果が出始めているのでしっかりと進めたい」と話した。

 観光立国推進基本計画見直しの検討状況については、「前提条件である社会情勢が変化している」と、現在の5つの目標自体の変更の可能性も示唆し、「目標値の設定など、今の社会情勢に合ったものにし、来年春までに閣議決定したい」と話した。

 また、11月17、18日には中国国際旅游交易会に参加するため中国を訪問し、中国国家旅游局の邵琪偉局長と尖閣諸島沖事件以降初めてとなる会談を開いたことを報告。さらに中国の旅行会社とも懇談した結果、訪中の日本人客が減り、中国側も危機感を持っていることを話した。今後について、「年末年始や2月の春節に向けて大型のPR広告を展開していく」と、落ち込んだ訪日中国人客のV字回復に向けて意気込みを語った。

大賞は松之山温泉支部、旅行新聞新社賞は長野県

青年部長賞の新潟県松之山温泉支部青年部(右)
青年部長賞の新潟県松之山温泉支部青年部(右)

旅行新聞新社賞の長野県青年部(右)
旅行新聞新社賞の長野県青年部(右)

 全旅連青年部全国大会では、青年部らしい若々しく、アイデアと活力がみなぎる事業活動を表彰する青年部褒賞制度の表彰式が行われた。今回は全国の都道府県支部やブロックから過去最高となる69事業がエントリーされた。事業の主体性や、地域を巻き込んだ協調性などを主眼に置いて審査を行った。

  グランプリの「全旅連青年部長賞」は、新潟県松之山温泉支部青年部の「おいしい朝ごはんプロジェクト『里山の朝まんま』農商工連携で里山の原風景を守れ!」が受賞。副賞として50万円が贈られた。「準全旅連青年部長賞」は、山形県かみのやま温泉旅館組合青年部の「かみのやま温泉 ゆかたの似合う町づくり事業」が受賞し副賞20万円を獲得。「全旅連青年部OB賞」は、神奈川県湯河原温泉支部青年部の「日本の情緒~十五夜の宴」が受賞し副賞10万円を得た。

  旅行新聞新社賞には、長野県青年部の「世界に誇る長寿県『長野青年部』プロデュース~第4の味・健康長寿食の開発事業~」が受賞し、副賞として10万円が贈られた。