温泉保護と地熱発電 ― 未知なるゆえに知識を(2/21付)

 福島第一原発事故以来、再生可能エネルギーへの転換が急務となり、「地熱発電」への関心が一気に高まってきた。

 環境省は2月3日から22日まで、「温泉資源の保護に関するガイドライン(地熱発電関係)」(案)のパブリックコメントを募集している。環境省にとっても悩ましいだろう。温泉資源の保護を一方で謳いながら、「地熱発電を推進するため」の掘削許可の判断基準を策定するという、二律背反の課題に挑まなければならないのだ。

 日本温泉協会は、昨年12月26日の中央環境審議会の自然環境部会温泉小委員会で、同ガイドラインの曖昧な箇所や定義を問い質した。また、「地熱エネルギーは、本当にクリーンなエネルギーか?」と問題提起した。「地熱発電は原子力や、太陽光発電に比べ、CO2が高い」という公表値もあるという。さらに、地下深度2―3㌔以上もの深部の高温の熱水、蒸気を利用するため、「熱水」「蒸気」「使用廃湯」には「高濃度の硫化水素やメタン、アンモニアなどのガス成分や、高濃度のヒ素やホウ素、フッ素なども含まれ、そのまま放置放出されれば、大気や土壌、地下水汚染への負荷が懸念される」などさまざまな心配が考えられる。

 何しろ、地下のことは実際掘削してみなければわからないことが多く、地上に暮らす我われ多くの人間にとっては、余りに未知なることばかりなのだ。

 問題なのは、旧財閥などに代表される開発側の大企業の鼻息がとても荒く、一方で温泉によって多くの観光客に愛されてきた個々の温泉事業者は地熱開発について乏しい知識しか持たないということだ。さらに、もっと問題視すべき点は、地熱発電の開発許可を与える都道府県の担当者が、地熱開発による温泉への影響について十分な知識を持つ職員が少なく、関心も高くないという現実である。

 日本温泉協会は、地熱開発の掘削によって温泉が枯渇してしまうなどの悪影響があった際、「賠償責任規定」の設定などを求める必要があると考えている。各自治体は今後、温泉による観光客の増大と、地熱開発との選択を早晩迫られるだろう。国と大規模な開発業者が自治体を説き伏せる構図は、原発と似ている。無知は危険だ。地熱発電にも思いがけぬ危険が潜んでいることを、知っておく必要がある。

(編集長・増田 剛) 

会津の旅行商品造成へ、“女子大生目線で考える”

跡見学園女子大学観光マネジメント学科

 跡見学園女子大学観光マネジメント学科の生徒は1月6―7日、原発事故の風評被害に悩む福島県会津若松市で実地研修を実施。観光復興のため女子大生目線で考える旅行商品の企画を室井照平市長に提案した。

 同大学の生徒たちは昨夏、アカデミックインターンシップの一環で同地を視察。その際、室井市長へ(1)首都圏での会津PRキャンペーンの支援(2)同大学園祭での観光PR・会津産品の販売(3)会津への旅行需要喚起へ女子大生が考える旅行商品の造成を提言。昨年10月の文化祭では、子供の病気を治す厄除けのお守りとして伝わる「赤ベこ」などの会津産品の販売や、のぼりを立て会津の観光パンフを配布するなど会津のPRを行った。また、来場者約400人からアンケートを取り、女性が旅行に求める内容を分析した。

 今回、本格的な旅行商品造成へ向けて、さらなる会津視察を実施。同学科の33人が班ごとに別れ、観光名所の鶴ヶ城や七日町通りを視察した。夜には商品造成会議を開き視察結果を報告。各班それぞれが商品素材を紹介しプランを企画した。翌日は、御宿東鳳で室井市長を表敬訪問。これまでの学習と前日の視察をもとに「造り酒屋でお酒のボトルやラベルを自由に選択できる仕組みや、果樹酒を炭酸で割った商品の開発」「交流を深めるため、地元の人と一緒に日本酒を飲むツアー」「レトロな七日町通りに懐かしの歌謡曲を流す」「現地の商人がガイドをし、リピーター獲得をはかる」など商品アイデアアやプランを提案した。また、文化祭で会津産品を販売した収益約2万円も同市に寄付した。

 同学科では今後、今回の提案をもとに近畿日本ツーリストと商品化へ取り組む。ゴールデンウイーク頃のツアー実施を目指し、ツアー造成後は集客にも携わるという。同大の篠原靖准教授は「旅行会社では、ツアーの企画だけでなく集客も重要な要素。集客までしっかりと責任を持って行いたい」と力を込める。

「えんむすび号」が好評、パワースポットブーム背景に

20代の若い女性に人気
20代の若い女性に人気

 島根県松江市の玉造温泉を発着点に、出雲大社(出雲市)や八重垣神社(松江市)などを巡る毎年冬季限定の周遊バス「えんむすび号」が、昨今のパワースポットブームを背景に乗客数を伸ばしている。

 同バス運行実行委員会が企画し、松江市交通局が毎年1月初旬から3月下旬まで毎日運行させている。昨年は過去最高となる1890人(前年比51・8%増)の乗客数を記録した。

 今年は1月4日に運行が始まり、22日までに385人が乗車。昨年の同時期を約8%上回るペースで推移している。乗客の大半は20代の若い女性という。

 バスは午前9時に玉造温泉を出発し、出雲大社や八重垣神社(松江城とどちらか選択)、まがたまの里伝承館などを巡る約6時間30分のコース。料金は大人1800円、3歳―小学生900円(2歳以下無料)。バスは出雲大社で、出雲空港の東京・大阪到着便、JR出雲市駅の特急到着便と接続する。

 バス好評の要因には、パワースポットブームのほか、松江観光協会玉造温泉支部が運営するウェブサイト「たまなび」上で、ネット予約ができるようになったことも上げられる。昨年は同支部が発行し、県東部40店舗のコンビニや観光案内所、全国約160の旅行会社などに配布するフリーペーパーにもバス情報を掲載し、PRを強化した。

 バスは乗車日の前日午後7時まで予約を受け付けるため、宿に到着してからの申し込みも多いという。

 同支部の角幸治さんは「バスの存在が周知され、昨年あたりからは出雲空港から合流する東京のお客様が増えている」と話す。

ひがし北海道3つ星街道 本格始動

ガイドライン検討委員会(昨年12月21日)
ガイドライン検討委員会(昨年12月21日)

 ミシュラン・グリーンガイド・ジャポンに、北海道の知床、摩周湖、阿寒湖が三つ星で掲載されたことを機に、道東の観光協会は共同で、着地型旅行商品を企画提案する「ひがし北海道3つ星街道」プロジェクトに取り組んでいる。プロモーションを担当するひがし北海道観光事業開発協議会(=東観協、根津文博会長)は昨年12月、商品のガイドラインを策定し、このほど第1期のオフィシャルメニュー(商品)を発表した。

 ガイドラインは昨年12月21日、札幌市内で学識経験者、航空会社、旅行会社、マスコミ、北海道観光振興機構などを招いた検討委員会で協議し、東観協がまとめた。「情報ではなく目に見える商品」、「既存観光とはここが違うというコンセプトを持つ」、「地域との関わりなどストーリーが背景にある」、「自然だけでなく、人、文化、芸術、食にも関わるもの」などを挙げている。

 昨年末には策定したガイドラインを地域に伝え、各地からの商品提案を募った。これを1月中旬までに精査し、第1期のオフィシャルメニュー9つを発表した。

 「阿寒湖の奇跡 まりも物語 クルーズ&ウォーク」は、出港前の講義や遊覧船乗船、森歩きを通じて、まりもが存在することの貴い物語を伝える。「アイヌシアターイコロ 人形劇とその舞台・森歩き」では、今年開館するアイヌシアターで人形劇を観た後、舞台となった阿寒の森を訪れる。摩周湖エリアでは人気の「摩周湖星紀行」の1組限定プレミアム版、別海町ではご当地バーガーで日本一となった「ジャンボホタテバーガー」を食べながら誕生の秘話を聞き、野付半島フラワーウォークに出かけるコースなどを企画している。

 各地からの提案は順次受け、内容がガイドラインに満たないものもブラッシュアップし、今年中に70ほどのオフィシャルメニューを推奨する。

 航空便の就航休止や機材の小型化など、道東観光はアクセス面で逆風が続く。入込人員を追う戦略から、人泊数や長期滞在といった視点へ軸足を移すことが喫緊の課題だ。「3つ星街道は、地域主体の着地型観光を育て、具体的な商品として提案・販売する地域ムーブメント。取り組みを通じて道東全域の効果的な観光振興に結び付けたい」(東観協)という。

風評で栃木も“被災県”、高速無料化など国に要望、栃木県3団体

女将ら30人が溝畑長官らに陳情
女将ら30人が溝畑長官らに陳情

 栃木県観光物産協会(小松正義会長)と栃木県旅館ホテル生活衛生同業組合(堀口眞利理事長)、観光栃木の魅力を創る女将の会(伴玉枝会長)の3団体は1月25日、国土交通省と観光庁に要望書を提出した。震災後の原発事故による風評被害の払拭や県内の高速道路無料化などを盛り込み、各地域の女将ら30人を超える関係者が「風評被害では栃木も被災県」と陳情した。

 観光庁では伴会長が「昨年は全国的に大変だったと思うが、栃木県も県だけでは何ともしがたい状況なので、ぜひ国のお力を貸していただきたい」と溝畑宏長官に要望書を手渡した。これに対し、溝畑長官は「インバウンド復興のため、東北や北関東をメインにしたテコ入れ策も考えている。国内は東北観光博と併せて全体の観光需要を回復させていきたい」と今後の展開を語った。

 要望内容は(1)福島第一原子力発電所事故、風評被害の払拭について(2)栃木県内高速道路無料化について(3)観光需要の喚起について――の3項目。(1)は国内外へ明確な安全メッセージの発信などを要望。(2)は東北地方支援で実施している高速無料化を県内の東北自動車道や北関東自動車道にも導入してほしい旨を記し、(3)では積極的なインバウンド対策を求めた。

 県の観光地の現状は、昨年のゴールデンウイーク以降、徐々に持ち直しつつあり、鬼怒川などでは約8割まで回復している。一方で、福島県に近い地域の那須などはとくにファミリー客が減少し、依然として厳しい状況にあるという。栃木県観光物産協会の菅沼輝男専務理事は「震災は直接の被害も受けたが、風評被害が大きく我われも『被災県』だ。今回の高速無料化は間に合わないが、今後このような施策を取る場合は栃木県も含めてほしい」と訴えた。

旅フェア、11月に開く、名称に「日本」付け新たに

  日本観光振興協会はこのほど、2012年度の旅フェアを11月9―11日、東京都豊島区の池袋サンシャインシティで開くと発表した。昨年は東日本大震災の影響で中止したが、今年は「旅フェア日本2012」と改め、装いを新たに実施する。

 新名称は、知名度の高い「旅フェア」を生かしながら「日本」を付けることで“国内最大級の博覧会”という点を強調。また、日本の観光振興という開催目的を明確に表現したという。

 今回はこれまでと違った地域の魅力や新しい旅のスタイルを提案することで、より多くの来場者に国内旅行を楽しむきっかけを見つけてもらうため、参加型・交流型のイベントを目指す。これまでの展示会を進化させた「旅をテーマとしたアミューズメントパーク」の演出がコンセプト。

 全国各地の観光情報を提供するほか、地域ならではの体験を盛り込んだミニツアーや新しい観光ルートなどを紹介する。よりリアルに旅を体験してもらうため、地域ならではのアトラクションや食の体験を来場者が展示ホールを巡りながら楽しめるように設定し、満足度を拡大する。さらに、メイン会場のサンシャインのほか、山手線内数カ所にサテライト会場を設け、回遊することでスケールの大きいイベント体験を演出する。

 なお、出展の募集要項は3月中に案内予定という。申込みは4月から開始する予定。

津波到着まで5―10分、6強に耐えられる建物を

富士常葉大学の小村隆史准教授
富士常葉大学の小村隆史准教授

 静岡県ホテル旅館生活衛生同業組合女性部会「あけぼの会」(宇田倭玖子会長)は1月25日、湊のやど汀家(静岡県焼津市)で新年研修会を開き、富士常葉大学環境防災学部の小村隆史准教授と匠のこころ吉川屋(福島県・穴原温泉)の畠ひで子女将が講演を行った。

 「あけぼの会」では、震度6弱を記録した2009年の静岡沖地震を経験し、地震発生時に女将がどう対応すべきかをまとめた「女将の地震初動マニュアル」を10年に作成。その際、防災や危機管理を専門とする小村准教授が監修を務めた。

 小村准教授はこの日、「東日本大震災を踏まえた静岡の観光業の防災対策―『女将の地震初動マニュアル』、3・11、そしてこれから―」をテーマに講演。東日本大震災と静岡で起こりうる地震を比較し、①地震で倒壊する建物が少なかったこと②津波到着まで20―30分の猶予があったこと――の2つの大きな違いをあげた。「3・11の地震は地震規模の大きさにしては、建物の倒壊が少なかったが、静岡で同規模の地震が起きた場合は、倒壊がもっと起きる。また、津波が来るまでは5―10分と考えるべき」と強調。基本的には10年に作成した「女将の地震初動マニュアル」の見直しの必要はないとするが「ただ、宿ごとに状況は違う」と声を大きくする。人間の避難時の歩行目安に「5分で300㍍」をあげ、「旅館から300㍍の範囲に津波から逃れられる高台があるかなど、シュミレーションをしておくことが大切」とアドバイスした。

経験談を語る畠ひで子女将
経験談を語る畠ひで子女将

 また、建物の耐震性について「構造物の耐震性の問題は避けては通れない」と指摘し、「6強の地震で施設被害がない状態」を一つの目安に提案。「近い将来、じゃらんネットや楽天トラベルなどに『耐震性』という項目順位ができるくらい、人々の関心は高まってきている。25年、30年後の代替わりを考え、耐震補強ではなく、建て替えも選択肢の一つとして考えてみては」と提案した。

 匠のこころ吉川屋の畠女将は「被災地からのメッセージ―Never give up―」と題し、震災時の状況とその後の対応、今後の課題など実際に被災した経験を語り、あけぼの会の女将達にアドバイスした。匠のこころ吉川屋では、防災対策の避難訓練を年6回実施。「あまり地震の無い地域なので、地震発生時は本当にびっくりしたけれど、日頃の訓練のおかげで心構えができていたのか、従業員皆が各自てきぱきとやるべきことをやり、すみやかにお客様の避難誘導ができた」と日頃の訓練の重要性について説いた。

 また、女将として「あわてずにどっしりと構えること」を心がけ、「本当は足がガタガタ震えていたけれど、お客様一人ひとりに笑顔で『大丈夫ですよ。皆様は何があっても私たちが守ります』と声をかけてまわった」と話す。女将と従業員の心ある対応に、震災後、当日泊まっていたお客から感謝の手紙がたくさん届いた。「どんな状況でもベストを尽くす。お客様からのお礼の手紙を読んだときには、涙が止まらなかった」と振り返り、目を潤ませた。

静岡県内の女将40人ほどが集まった
静岡県内の女将40人ほどが集まった

 「大震災を経験し、あると便利なものは何か?」という質問には「ラジオ」と「電池」をあげる。「電気が止まり、テレビもインターネットもダメで情報源が断たれてしまった。たまたまラジオを1つ持っていたので、みんなで聞いたのだが、もっとラジオを用意しておけばよかった」と実感を込める。あけぼの会の女将たちからは「実際にあれだけの震災を経験した旅館の体験談はとても貴重でありがたい」との声があがった。

 地震が多い静岡の女将は他県よりも防災意識が高く、全国で初めて「女将の地震初動マニュアル」を作りあげた。あけぼの会では今後も皆で一丸となり防災対策に取り組んでいくという。

【伊集院 悟】

愛媛の美味しい食材、表参道で3月3日まで

中村時広知事(左)と友近さん
中村時広知事(左)と友近さん

 愛媛県は、首都圏に住む若い世代に同県の農林水産物の認知向上をはかるため、3月3日まで東京の表参道エリアで「えひめカフェ」プロジェクトを展開する。2月2日のオープニングイベントには、愛媛県出身のお笑い芸人の友近さんと中村時広愛媛県知事が、冬の風物詩である「こたつ」に入って愛媛産のみかんを食べながらのトークショーを行った。

 中村県知事は「愛媛県は山の幸、海の幸と美味しい食材が豊富だが、PRが下手で特徴が東京まで届いていなかった。今回、表参道に来る若い人達に愛媛産の農産物の魅力を伝えたい」と力を込めた。友近さんは愛媛のオリジナル品種みかん「甘平」を食べながら「身がふっくらとしていてジューシーで甘い」とPR。さらに、宇和島で養殖された鯛「愛鯛」を試食し、「天然ものよりも身が柔らかく若い人に人気がある」とアピールした。

 同プロジェクトは「Eat Enjoy HOME」をテーマに情報感度の高い人が集まる表参道エリアのカフェやヘアサロン計24店舗で、愛媛県の農林水産物を使ったオリジナルフードやドリンクを提供。展開店舗の情報をまとめたマップや愛媛の柑橘と美容に関する情報紹介したフリーペーパーも配布する。旗艦店の「dining cafe HOME」では、テラスのテーブルを「こたつ」風にアレンジした新しいスタイル「こたつカフェ」を提案し、愛媛食材を使ったオリジナルメニューも展開する。

冬期一時金は0.955カ月、ホテル・レジャーは年1.679カ月

渦古隆観光・航空貨物委員長(右)と見世順治副事務局長
渦古隆観光・航空貨物委員長(右)と見世順治副事務局長

 サービス・ツーリズム産業労働組合連合会の観光・航空貨物委員会(渦古隆委員長)は2月1日に会見を開き、1月27日の第11回中央委員会で確認した2011年秋闘のまとめや、12年春季生活闘争方針などを報告した。ホテル・レジャー業の冬期一時金の単純平均は前年を0・241カ月下回る0・955カ月、観光・航空貨物業は前年を0・062カ月下回る1・357カ月となった。

 渦古委員長は冒頭、11年秋闘を取り巻く環境について「震災の影響からは予想よりも早く回復傾向に向かっているが、先行きの不透明感から慎重な姿勢を崩さず決算状況を最後まで見極める企業も多かった」と述べた。

 ホテル・レジャー業では、冬期一時金は夏期一時金支給月数とあわせて前年支給月数の確保に注力。12月15日までに合意した46組合の冬期一時金の単純平均は前年より0・241カ月下回る0・955カ月。年間の一時金単純平均は1・679カ月となり、夏期一時金への震災の影響もあり、前年を0・667カ月下回る結果となった。企業業績は回復傾向にあるが、長引く不況や震災、円高の影響で、本格的な回復には至らない企業が多かったことを反映する結果となった。

 観光・航空貨物業は、雇用の確保を前提に一時金交渉に注力した結果、15日までに合意した19組合の冬期一時金の単純平均は1・298カ月と前年より0・051カ月のプラス。ただし、2011年春季生活闘争で合意済みを含む50組合の平均では1・357カ月となり、前年を0・062カ月下回った。年間の一時金単純平均は、前年を0・111カ月上回る2・811カ月と、少し回復した。

 一方、12年春季生活闘争で連合が掲げる要求は(1)正規労働者の賃金水準の維持と「指標」を活用した賃金改善、年収維持と「指標」を活用した一時金の確保(2)雇用確保を前提とした契約社員やパートタイマーなどの待遇改善(3)産業全体の賃金底上げを目指した最低保障賃金の協定化(4)年間総実労働時間の短縮によるワーク・ライフ・バランスの実現(5)両立支援・男女平等社会の実現(6)60歳以降の雇用確保の取り組み(7)雇用の安定的な確保に向けた取り組み(8)連合が掲げる政策制度要求の実現にむけた取り組みと共闘連絡会議への参加――の8項目を柱に取り組んでいく。

米沢市も賠償対象へ、佐藤会長「確かな一歩」

 福島第一原子力発電所の事故による風評被害で国内観光客が減り損害を受けたとして山形県旅館ホテル生活衛生同業組合(佐藤信幸会長)が東京電力に対し賠償を求めていた問題で、佐藤会長は1月30日、東電側の「米沢市を賠償対象とする」という方針を受け入れる旨を本紙に明かした。これにより、原発の観光業風評被害の賠償対象は昨年8月の原子力損害賠償紛争審査会の中間指針で限定された福島・茨城・栃木・群馬の4県から、千葉の16市町村、山形県の米沢市へと拡大する。

 山形県旅館ホテル生活衛生同業組合は昨年8月の中間指針発表後、山形県も賠償対象とするよう数回に渡り要望。11月8日の「第1回風評被害相談会」から1月25日まで計6回、東電側との協議の場を持ってきた。東電側は、放射能線量の高い地域ではなく、農産物の出荷制限がなかったことから、山形県を国内観光業の風評被害賠償対象地域に認めない方針を貫いていた。

 しかし、1月25日の「第6回風評被害相談会」では、米沢市は福島県と隣接し「会津・米沢地域観光圏」を形成するなど観光資源が一体となっていることから、東電側が米沢市を賠償対象に加える方針を提示。県全域の賠償を求める同旅館組合として「一部地域では納得できない」と拒否する声と、「確かな一歩」と評価する声の両方があがったという。

 同旅館組合の佐藤会長は1月30日、本紙に対し、米沢市への賠償対象拡大を「受け入れる」方針を話した。佐藤会長は「放射線量が低く、農作物の出荷制限のない地域での風評被害の認定は初めてなので、一歩前進した」と評価。ただし、「県全域での賠償を求める」方針は変わらず、「今後の確かな一歩」とすると力を込めた。