“耐震問題”緊急アンケート ― 現場の声を知ってほしい

 今号の1面特集で、旅館・ホテルの経営者を対象に実施した“耐震問題”の緊急アンケートの調査結果をまとめた。

 改正耐震改修促進法の成立までの動きは「あまりに拙速、性急」という意見が圧倒的に多かった。さらに、法案成立後も、「国・県・市などからの説明がなく不安」という声が観光の現場で大きいことを広く知ってもらいたい。「国は観光を成長産業と本当に思っているのか」という不信の声もあった。このような状況下で、民間の宿泊施設にも一定水準の耐震補強が国から期限付きで義務付けられた。

 調査では、「防災拠点としての役割を果たしていく」ことが、旅館・ホテル側でも概ね「賛成」という結果が出たが、それは「国・地方公共団体が防災拠点水準の補助制度を適用させる」ことが前提条件である。しかしながら、現状では耐震診断の補助制度について「まったく情報がない」「窓口が分からない」といった声がとても多いのが気になる。国土交通省建設局から各都道府県の土木課に、耐震診断・改修の補助金についての説明が行われているが、十分に情報として伝わっていないようだ。これでは大災害が発生した際に、国や地方自治体と、宿泊施設との連携が取れるだろうか。とても不安である。

 旅館・ホテルは観光客を受け入れるだけでなく、災害時には「水・食糧・毛布・大浴場に加え、もてなしのプロであるスタッフ」を常備する心強い存在である。この点を宿泊業界はもっとアピールすべきであるし、地域住民にも、経済や文化を含めて“地域のあらゆる拠点”であることの存在意義を理解してもらう努力も必要だと思う。

 とりわけ大型旅館は、名実ともに地域のリーダーとして、雇用創出とともに、災害時には旅行者や地元住民の安全を守る拠点として、行政と防災協定を積極的に結ぶことも大きな役割の一つである。行政や住民との間に信頼関係を築き、補助制度を引き出す交渉力も、リーダーたる旅館には求められるだろう。

 しかし、その一方で、「すべての施設が(立地的にも)防災拠点に適しているわけではない」との回答が今回のアンケートでもあった。保存と破壊の狭間にある宿もある。宿の個性を顧みない、お上特有の一律的な考えに従い続けることは、とても危険であることも忘れてはならない。

(編集長・増田 剛) 

【8/10】青森の老舗酒蔵でライブと日本酒のコラボイベント

 若者に日本酒の良さを知ってもらおうと、青森県内の酒蔵が積極的にイベントを開いています。

6月には県内各地の酒蔵有志が日本酒とDJ音楽イベントのコラボレーション、「あおもり☆ぽん酒deナイト」を開催。20代・30代を中心に約300人の参加者を集めました。

 八戸の老舗酒蔵「八戸酒造」が8月10日に開くのは「CLUB8000-Saturday☆night fever-」 “蔵×LOVE”と銘打ったライブイベントです。ビートボックス日本チャンピオンやジャズピアニストらをゲストに迎え、酒蔵でライブと日本酒を楽しめる興味深い試みになっています。チケットは前売り3500円、当日4500円で5ドリンクつき。収益の一部は東日本大震災のチャリティーに寄付されます。

 酒蔵で音楽と楽しむ日本酒は、いつもと一味違う美味しさを感じさせてくれそうです。

【日時】8月10日午後5時から午後8時
【場所】八戸酒造株式会社 青森県八戸市湊町本町9
【問い合わせ】八戸酒造株式会社 ☎0178(33)1171。
https://www.facebook.com/events/350002928459056/

山口氏が新会長に、“連携の橋渡し役務める”(日観振)

山口範雄新会長

 日本観光振興協会(西田厚聰会長、644会員)は6月12日、東京都内で2013年度通常総会を開き、西田会長の退任にともなう役員人事で、山口範雄氏(味の素会長)を新会長に選任した。

 山口新会長は「大塚陸毅副会長とともに、経団連で観光委員会の共同委員長を務めている」と自身を紹介し、観光が日本経済にもたらす効果などを強調した。「世界の大きな観光の潮流のなかで、日本はいまだ大きく立ち遅れている。ますます激しくなる競争のなかで、我われは勝ち抜いていかなければならない。こうしたなかで、日本の観光振興のナショナルセンターの役割を担う当協会の会長に選任された重みをひしひしと感じている」とし、「組織と組織、国と地域、地域と産業などの連携が極めて重要な分野で、その橋渡し役を務めていきたい。観光を我が国の成長発展の柱にするべく、与えられた重責を精一杯果たしていく」と意気込みを語った。

 また、旧日本観光協会と旧日本ツーリズム産業団体連合会(TIJ)の合体から公益社団法人化などを進め、初代・日本観光振興協会の会長を務めた西田会長は「会員の皆さんには今一度、観光はグローバル競争であるとの意識を強く持ち、各地域の魅力を見出して独自の観光イノベーションを起こし、競争力のある観光地域づくりを進めてほしい」と想いを託した。

 2013年度は新体制のもと、政策提言・広報啓蒙活動の強化と魅力ある観光地域づくり、広域連携の推進を大きな柱に、異業種を含めた連携の強化や人材育成などに努めていく。

政策検討委継続へ、総会で中間答申を発表(JATA)

菊間潤吾会長

 日本旅行業協会(JATA、菊間潤吾会長、1117会員)は6月19日、東京都千代田区の経団連会館で2013年度通常総会を開いた。昨年、菊間会長が会長就任後に設置した「JATA政策検討特別委員会」の中間答申を発表し、委員会は今年度も継続することとした。

 菊間会長は今春、観光庁の観光産業政策検討会が発表した提言に触れ、「世界最高、最先端の観光産業を目指すにあたり、旅行業界がその中心となって役割を果たしていかなければならない。旅行会社がいかに価値を創造することができるかが重要で、観光を基軸にした地域活性化への貢献や旅を通じた人間教育、健康の増進など社会的な要請にも応えていく必要がある」と語った。

 今年度の事業は「環境は著しい勢いで変化し、協会としてすべきことは実に多様化している」とし、JATA政策検討特別委員会で策定したアクションプランなどを軸に進めていく方針を示した。今年度の事業計画のなかで、国内旅行は「新・国内宿泊旅行拡大推進行動計画」の推進や、宿泊旅行拡大のムーブメントづくり「もう一泊、もう一度」キャンペーンの継続、地域活性化につながる着地型観光促進などを中心に展開する。

 また、JATA政策検討特別委員会の田川博己委員長は「業界内外の厳しい環境変化に即したJATA事業の展開をはかるために、13年度以降の事業計画策定に向けて課題の現状認識や検証を行った」と委員会の主旨を語り、中間答申の概要を発表した。同委員会を設置した1カ月後、観光庁に観光産業政策検討会が設置され、そのメンバーにもなった田川委員長は「初めて産業論として観光の問題を論じる大きな検討会だった。我われの特別委員会と同じ方向を向いていたことから、委員会の議論を検討会で伝え、一方で検討会の議論を委員会にフィードバックした」と述べ、提言にも議論内容が反映されたことを評価した。

 なお、中間答申には、宿泊旅行拡大による着地型旅行の普及と地域振興の推進や航空関係諸問題の燃油特別付加運賃、旅行業法制度の検討と提言など、9項目のアクションプランを記載した。

来年のDC参画を、リボン宿ネットの取り組みも(新潟女将の会)

 新潟女将の会(会長・小山千寿子鷹の巣館女将)は6月4日、上越市の鵜の浜温泉「ロイヤルホテル小林」で通常総会を開き、ピンクリボンのお宿ネットワーク(略称・リボン宿ネット)や来年のDCに向けた県の取り組みなどへの参画の事業計画案を承認するとともに、2回目を迎えた館内をチューリップで飾る「チューリップコンテスト」に参画した6軒への表彰式を行った。

 席上、あいさつに立った小山会長は日ごろの会への協力を感謝するとともに「来年はDC、そしてその後には北陸新幹線の開業も控えている。女将会が先頭に立って実施しているスイーツ巡りをより充実させるとともに、県と一体になって北陸新幹線開業に向けた関西圏への誘客も行っていく」と述べた。

 総会終了後には奥様セミナーとして新潟県健康対策課の帆苅久美主査とリボン宿ネットの有島誠事務局長が講演を行った。このなかで帆苅主査は新潟県における乳がんの現状について報告するとともに「乳がんは自身の触診によって発見できる。毎日入浴の際に触診するとともに、必ず検診も定期的に受けてほしい」と話した。

 また、有島事務局長は乳がん患者が術後に気軽に旅行に行けないというアンケート結果を報告、「患者の家族も含めると多くの人が二の足を踏んでいる。こうした方々への旅行喚起を促すために会を発足した」と説明するとともに「ハードの整備も必要だが、それ以上にソフト面での対応が重要。バスタオルを多めに貸し出すとか、大浴場が空いている時間の告知などできることから行っていってほしい」と結んだ。

富士山、世界遺産に決定

世界遺産になった富士山(やまなし観光推進機構提供)

 文化庁は6月22日、カンボジアのプノンペンで開かれた第37回ユネスコ世界遺産委員会で、「富士山」の世界文化遺産一覧表への記載が決定されたと発表した。当初、ユネスコの諮問機関が除外すべきとしていた静岡県・三保松原を含むかたちで、記載名称は「Fujisan,sacred place and source of artistic inspiration(富士山―信仰の対象と芸術の源泉)」となった。

 結果を受けて、文化庁の近藤誠一長官は「古くからさまざまな信仰の対象で、傑出した芸術の源泉として日本人の心の中に特別の位置を占めてきた富士山の価値をユネスコが認めてくれたということは、すなわち日本人のこれまでの生き方が、世界に肯定的に受け入れられたことにほかならない」と喜びを述べた。

 また、静岡県の川勝平太知事は「世界遺産として認められた富士山を、人類共通の財産として、誇りと責任を持って後世に継承していく」とコメント。山梨県の横内正明知事も喜びを述べる一方で、「いくつかの課題が提示されている。課題を確実に解決し、次の世代へ富士山の価値を継承するため、思いを新たにして、国や静岡県、関係市町村、地元関係者と緊密な連携をはかりながら、全力で取り組んでいく」と決意を表明した。

功労者12人を表彰、13年度観光振興事業功労者(日観振)

 日本観光振興協会は6月12日に開いた今年度通常総会で、「2013年度観光振興事業功労者」の表彰式を開き、功労者12人を表彰した。

 功労者は次の各氏。

 【北海道支部】渡邊幸治(えんがる町観光協会顧問)「太陽の丘えんがる公園」のコスモス園の整備に尽力し、道内でも有数の観光資源に育てた【東北支部】寺田春一(五所川原市観光協会会長)「五所川原立佞武多」の80年振りの復活に尽力したほか、青森DCなどで観光リーダーとして誘客に努めた【関東支部】新井勝行(久喜市観光協会副会長)220年の伝統と歴史ある「久喜提橙祭り」の維持発展などに尽力した▽髙橋正(新潟県観光協会会長)新潟県中越大震災復興基金理事として観光関連産業の復興と再生に尽力▽赤尾十五郎(東伊豆観光協会相談役)稲取温泉の環境整備や「大川温泉竹ケ沢公園ホテル鑑賞の夕べ」の開催など東伊豆温泉郷の一体感の醸成に努めた【中部支部】渋谷利雄(羽咋市文化財保護審議会委員、石川県スペシャルガイド)能登半島の歳時記、原風景の撮影指導など、写真を通じて地域の観光振興の発展に貢献した【関西支部】矢田正則(菰野町観光協会会長)湯ノ山温泉の湯巡り「わくわく温泉チケット」の開発や地元食材のマコモを使ったメニュー開発などで地域の観光振興に貢献した▽正木明(福知山観光協会元会長)福知山にふさわしい土産品を推奨する推奨土産品制度の創設やスイーツマップなどの発行で観光振興に貢献した【中国支部】門脇惠美子(日本庭園由志園取締役)園内に1年中牡丹を鑑賞できる館などを作り、島根県ならではの日本庭園を完成させた【四国支部】川田梓(日本旅館協会高知県支部高知駅宿泊案内所会長)永年にわたり高知駅構内旅館案内所の健全な運営に尽力した【九州支部】佐久間進(北九州市観光協会顧問)「百万にこにこホスピタリティ運動」を立ち上げるなど地域の観光振興の発展に貢献した▽和田晧(日南市観光協会副会長)芸術文化の継承と観光客誘致を目的とする「シャンシャン馬道中唄全国大会」実行委員長などの要職を歴任し、地域の観光振興の発展に貢献した

韓国・タイ・LCCを分析、LCCは20代女性が多い(観光庁)

滞在中の情報源 スマホが急増

 観光庁はこのほど、13年1―3月期の訪日外国人消費者動向調査(既報済み)のなかで、(1)今期増えた客層と旅行支出の特徴(2)LCC利用観光客の分析――の詳細について発表した。これによると、観光・レジャー目的の訪日が前年同期の1・6倍に増えた韓国は女性客が回復し、同じく1・6倍に増えたタイは、訪日リピーターが増えたことが分かった。また、滞在中の情報源はスマホが急増。LCCを利用した訪日観光客は20代女性が多く、訪問地は就航地周辺に集中している。

 同期間の訪日外客数を国籍・地域別にみると、韓国が前年同期比37%増、台湾が同34%増、タイが同50%増、香港が同29%増、オーストラリアが同28%増と高い伸びを示している。なかでも、韓国とタイは観光・レジャー目的の訪日客が1・6倍と大きく増加した。

 同期間の韓国の訪日観光客層をみると、「女性客」の割合は前年の46%から53%に増え、「パッケージツアーを利用した個人旅行」の割合も13%から22%に増加している。一方、「自分ひとり」での訪日観光や、「個別手配の個人旅行」の割合は前年同期に比べて減少。滞在日数では前年同期に「3日間以内」の割合が増加したが、今期も「3日間以内」が3割を占めた。日本滞在中に役立った情報源では、スマートフォンの割合が11年11%、12年24%、13年38%と年々増加している。

 タイの訪日観光客層をみると、前年同期に比べ、訪日リピーターや「職場の同僚」との観光旅行、「個別手配の個人旅行」の割合が増加。滞在期間は「4―6日間」が11年の38%から12年に65%と大きく増加し、今期も引き続き65%を占めている。日本滞在中に役立った情報源ではパソコンの割合が減少し、スマートフォンの割合が増加した。

 LCCでは、複数社が日本との間を運航している韓国と台湾を分析。LCC利用客とその他航空会社利用客の航空運賃は韓国・台湾ともにLCC利用客の方が1万円程度低い。LCC利用客の来訪目的は「観光・レジャー」が7割以上だ。

 韓国の観光客をみると、LCC利用観光客は「女性20代」の割合が多く、男女とも「40歳以上」の割合が少ない。訪日回数は「1回目」の割合が4割近くと多い。LCC利用観光客はその他航空会社利用の観光客に比べ団体ツアーの割合が少なく、初来訪の観光客でも個人旅行の割合が7割を超える。訪問地は、LCCが就航する大阪府や福岡県への訪問率が高い。旅行満足度は「大変満足」「満足」で8割を占め、LCCとその他の航空会社との間に大差はない。

 個別手配観光客の1人当たり旅行中支出額は、LCC利用客で平均5・8万円、その他航空会社利用の観光客で平均8・2万円と、2万5千円近くの差が出た。費目別にみると宿泊費や飲食代、買物代などすべての費目でLCC利用観光客の方が低い。とくに買物代で差が大きく、その他航空会社利用観光客に比べ、1・0万円低い。

 台湾は、LCC利用観光客は30代以下の女性の割合が多く、全体の5割を超える。LCC利用観光客は団体ツアーの割合が1割未満と非常に低い。初来訪でもLCC利用観光客の96%が個人旅行。訪問地は、東京都、京都府、大阪府とその周辺都道府県に集中。個別手配観光客の1人当たり旅行中支出額は、LCC利用客で平均9・3万円、その他航空会社利用の観光客で平均11・6万円。費目別にみると宿泊費や飲食代、交通費ではLCC利用客とその他航空会社利用客で大きな差はないが、買物代で1・7万円の差が出ている。

山本考伸氏が新社長、楽天が年内に吸収合併(楽天トラベル)

山本考伸社長

 楽天トラベルの代表取締役社長に6月27日付で、山本考伸氏が新任した。岡武公士氏は顧問に就任。

 楽天は、楽天トラベルとのシナジーをより発揮するため、年内を目途に完全子会社である楽天トラベルを吸収合併することを検討している。

 山本 考伸氏(やまもと・たかのぶ)。1975年愛媛県生まれ。99年京都大学大学院工学研究科情報工学専攻修士課程修了。同年エヌ・ティ・ティ・ドコモ関西(現エヌ・ティ・ティ・ドコモ)入社、ユビキタスサービス部門担当プロダクトマネージャー。05年スタンフォード大学経営学大学院経営学修士(MBA)修了。06年オーバーチュア(現ヤフーYahooリスティング)入社、パートナープロフェッショナルサービス担当アソシエイトディレクター。同年エクスペディア入社、08年トリップアドバイザー(現TripAdvisorInc.)異動、日本地域担当プロダクトマーケティングディレクター。12年日本、韓国およびアジアパシフィックマーケットデベロプメント担当、バイスプレジデント兼ジェネラルマネージャー。13年3月楽天入社、楽天トラベル常務執行役員、4月楽天執行役員、6月楽天トラベル社長に就任。

耐震診断の支援要望、温泉所在都市協議会

 「温泉所在都市協議会」(会長=浜田博別府市長)はこのほど、改正耐震改修促進法が5月22日に成立したことを受けて、国に対して、旅館・ホテルの建築物の耐震化を迅速かつ円滑に推進するために、予算の確保や金融支援の充実など、必要な財政支援の強化を要望した。耐震診断結果の公表時期の弾力化などの配慮も求めている。

 今国会で改正耐震改修促進法が成立したため、対象となる旅館・ホテルは、2015年末までに建築物の耐震診断を受け、所管行政庁に結果を報告することが義務づけられた。耐震診断には多額の費用を要するため、国と地方公共団体からの補助制度もあるが、地域ごとに対応に温度差があるのも事実。このため、32道府県・82都市が加盟する温泉所在地都市協議会は、国と、地方公共団体に耐震診断に対する財政支援の向上と、財源確保を求めている。

 6月18日には、全国温泉振興議員連盟会長代理の二階俊博衆議院議員や、国土交通省の梶山弘志副大臣らに要望書を提出した。また、温泉所在都市に対する税財源措置および施策に関する要望も行った。【14面に詳細】