「ロケーションジャパン」編集部が厳選 ロケ地レストランでランチ楽しむキャンペーン開催中

2021年6月22日(火) 配信

雑誌掲載後にグルメ番組の常連になった店も

 ロケ地情報誌「ロケーションジャパン」は8月31日(火)まで、「ロケ地でランチキャンペーン」を展開している。

 ロケ地となったレストランを取材する同誌編集部が厳選した店でランチを楽しんでもらう企画で、過去10回の参加者の満足度は90%を超える人気という。

 11回目の今回は、「リーガロイヤルホテル東京」など7店舗をラインナップ。各店舗でワンドリンクサービスなどさまざまな特典を用意しているほか、参加店舗の食事券などが当たるラリー企画も実施している。各企画へは、参加店舗配布のキャンペーンチラシなどから参加可能だ。

 山田実希編集長は、「ロケ地でランチを楽しむ時は、事前に作品が撮影された席を予約していくのがおすすめです。俳優さんが座った席で食事ができるだけで自慢できますし、お店の人に自然と撮影当時の話が聞けるかも。ぜひ、ワクワクするランチタイムを楽しんでください」とPRする。

□ 参加店舗(一例)

キハチ 青山本店(東京都港区)

キハチ 青山本店の料理(イメージ)

主なロケ地(作品):ドラマ「この恋あたためますか」、ドラマ「オー!マイ・ボス!恋は別冊で」 

店の売り:外苑前のイチョウ並木沿いにある店。緑あふれる通りを眺めながら、テラス席で、四季折々の風景と共に絶品料理を堪能できる。また、目の前の並木道は「HERO」など数々のドラマのロケ地としても有名。

特典:スパークリングワインorオリジナルドリンク(940円相当)

en café(東京都台東区)

本格スイーツもおすすめ

ロケ地(作品):ドラマ「姉ちゃんの恋人」、ドラマ「江戸モアゼル」

店の売り:小上がりの畳席もあるカフェ。オシャレな本格スイーツもおすすめ。

特典:自家製レモネードなどのソフトドリンク一杯(600円相当)をサービス

Cafe, Dining & Bar 104.5(東京都千代田区)

デザートプレートに「花束みたいな恋をした」と文字を入れるなどのおもてなしも

ロケ地(作品):映画「花束みたいな恋をした」

店の売り:こだわりの360度スピーカーでジャズを聴きながら、ゆっくり過ごせる店。店内には映画の主人公2人が使用したものと同じカップや雑誌、ロケ地マップが展示されている。また、デザートプレートに「花束みたいな恋をした」と文字を入れる、撮影時の席を案内してくれるなどのおもてなしも。

特典:恵みのプリンもしくは季節のロールケーキ(500円相当)をサービス

「北海道・北東北の縄文遺跡群」を世界遺産に 青森市がふるさと納税型クラウドファンディング実施 6月30日(水)まで

2021年6月22日(火) 配信

 青森県青森市は、「縄文遺跡群の拠点」として広くPRし、世界遺産登録決定を記念した事業に活用するため、「ふるさと納税型クラウドファンディング」で“「北海道・北東北の縄文遺跡群」を世界遺産に!青森市世界遺産登録応援プロジェクト!”を実施している。募集期間は、2021年6月30日(水)まで。

 市では、世界遺産登録の決定を記念したさまざまな取り組みへの支援を募るため、ふるさと納税制度を活用したクラウドファンディングを6月30日(水)まで実施している。目標金額は100万円で、小牧野遺跡環状列石マスキングテープ(寄付額3千円)や遮光器土偶メガネ(同1万円)、縄文クッキング体験チケット(同5万円)など、金額に応じてお礼の品を用意している。寄付金は、「縄文の学び舎・小牧野館」への縄文遺跡群を紹介するパネル展示コーナーの設置、イコモスによる勧告登録や世界遺産登録決定の際の横断幕の制作などに活用する。

「観光人文学への遡航(12)」 ルソーが明確に区別した自己愛と利己愛

2021年6月22日(火) 配信


 私は今年から観光地におけるガイドのあるべき姿に関して研究を始めている。スーパーガイド、カリスマガイドと呼ばれる人は、その他大勢と何が違うのかを明らかにするために、インタビューを試みている。
 
 かつて旅の主流だった団体旅行では、何かとガイドのお世話になることがあったが、個人旅行全盛の時代になると、わざわざガイドを付けたりはしないことが多いのではないだろうか。
 
 さらに、私の肌感覚では、出会えて本当によかったと思える素晴らしいガイドは全体の1割程度で、7割ははっきり言ってつまらない。日本の場合、ボランティアガイドが多いこともその要因となっているように感じる。ボランティアという言葉からは献身的といったニュアンスが発せられているが、実際のボランティアガイドはリタイア後の楽しみや、自分の知識を賞賛してもらいたいといった動機で始めている人が多い。そこに献身の発想は見られない。自分のためにやっているガイドが観光客にとって楽しいはずがない。
 
 ルソーは、「エミール」において、自己愛と利己愛(訳者によっては自尊心と訳しているものもある)を明確に区別した。ルソー以前のフランス語では、これらは区別されていなかったようだ。自己愛とは自分が生存していくための本源的な欲求であり、自己愛を求めるときは他人の存在を想定しない。一方、利己愛とは、自分が他者と比較してより優れた存在、恵まれた存在でありたいと願う欲望をいう。
 
 利己愛は、他者と比較するという性質上、一度他人よりも自分が優れていると思ったとしても、さらに優れた人が出てくるのは自明であり、そうなったら、その人よりも上位になりたいという気持ちがまた生まれてくる。これを永遠に続けていくことになる。
 
 また、利己愛が他者に求めるのは、自分を他の誰よりも愛してもらうことである。ということは、その他者自身よりも自分のことを愛してくれることをも要求することになる。それは基本的には不可能なので、利己愛は決して満たされることはない。ゴールポストがどんどん先に移動していく状態に陥るのである。
 
 ルソーは、和やかな愛情に満ちた情念は自己愛から生まれ、憎しみに満ちた苛立ちやすい情念は利己愛から生まれると述べている。そして、その自己愛こそが他者への愛につながっていくと言う。
 
 だから、ルソーは少年時代のエミールを自然の中で生活させ、都会の不自然な刺激から遠ざけたのである。まず自分の中で、人間として本源的な快、不快の感情を理解し、自我が芽生えたときには、競争心よりも、お世話をしてくれる人からの混じりっけのないピュアな愛情を知ることで、「他者のために尽くす人間へと成長できる」との確固たる教育理念を著したのである。

 

コラムニスト紹介 

島川 崇 氏

神奈川大学国際日本学部・教授 島川 崇 氏

1970年愛媛県松山市生まれ。国際基督教大学卒。日本航空株式会社、財団法人松下政経塾、ロンドンメトロポリタン大学院MBA(Tourism & Hospitality)修了。韓国観光公社ソウル本社日本部客員研究員、株式会社日本総合研究所、東北福祉大学総合マネジメント学部、東洋大学国際観光学部国際観光学科長・教授を経て、神奈川大学国際日本学部教授。日本国際観光学会会長。教員の傍ら、PHP総合研究所リサーチフェロー、藤沢市観光アドバイザー等を歴任。東京工業大学大学院情報理工学研究科博士後期課程満期退学。

九州観光推進機構 唐池氏が新会長に 観光資源の磨き上げへ

2021年6月22日(火) 配信

唐池恒二新会長

 九州観光推進機構(石原進会長)は6月10日、福岡市内で2021年度定時総会と第2回理事会を開いた。石原会長が退任し、新会長としてJR九州代表取締役会長執行役員の唐池恒二氏を選任。石原氏は顧問に就いた。

 総会終了後には、新旧会長が記者会見を行った。石原氏は「会長として11年の間、東日本大震災や熊本震災、集中豪雨災害などあったが、九州新幹線の全線開業、機構の一般社団法人化、ラグビーW杯に合わせた『祭りアイランド九州』の開催など良いこともあった」と振り返り、「九州のインバウンドが100万人弱から、511万人まで伸びた」と胸を張った。

 一方、「新型コロナの影響で、観光消費額が2兆8800億円から20年は1兆1千億円になった」と悔しさを滲ませ、「旅行消費単価を上げ観光を九州の基幹産業にするため、アジアだけでなく、欧米豪からも誘客し、単価を上げることが必要」と強調した。

 唐池会長は①コロナ②観光③機構の方向性――の3点で新会長の考え方を示した。

 コロナでは政府・行政の対策で「交通と観光、飲食関係が移動自粛、集合自粛、インバウンド消失の3重苦となった」と不満を示し「地域と業界全体で声を上げ、正しいコロナ対策を打ち出してほしい」と声を強めた。

 観光では、「国立公園誕生の1934年に、九州では雲仙と霧島、阿蘇の3カ所が指定された」と紹介。宮崎と別府、雲仙など九州観光のメッカ時代をはじめ、湯布院と飫肥(宮崎県)、長崎さるく(長崎市)の歩く観光のヒット、19年の「祭りアイランド九州」の成功なども取り上げ、「観光資源の磨き上げ」を強調。九州観光を評価するリピーター数を「来年度の事業計画に入れたい」と明らかにし、「強い意志で観光を盛り上げたい」と決意を述べた。

 なお、総会では①ニューノーマルへの対応②来訪者の回復・増加③旅行消費単価の向上――を事業の戦略方針とした。

吉村会長が再任 全旅大阪が定時総会開く

2021年6月22日(火) 配信

あいさつする吉村実会長

 全旅協大阪府旅行業協会(吉村実会長)は6月1日、ホテル日航大阪(大阪府大阪市)で2021年度定時総会を開いた。議事では、すべての議案を承認可決し、任期満了に伴う役員改選では、吉村会長の再任を決めた。

 吉村会長は、昨年度の状況について「コロナ禍にあって、当協会としても、日本旅行業協会(JATA)と大阪バス協会との3団体連名で、観光バスや貸切タクシーを利用したツアーに対する助成を大阪府知事に要望するなど、この1年間、各方面にさまざまな陳情や請願を行ってきた」と報告。そのうえで「叶ったものもあれば、実現していないものもあるが、『少しでも会員のためになれば』と取り組んできた。まだまだ厳しい状況は続くが、今後も役員一丸となり、会員に理解いただける事業を進めていきたい」と述べた。

 新年度事業としては、会員活動の活性化や、地元自治体との連携強化に積極的に取り組むほか、感染症対策については、昨年に引き続き本部の対応に協力し、更新登録についての条件緩和や緊急融資の迅速な実施、国内旅行需要喚起のための施策の実施といった各種要望に沿って、近畿運輸局や大阪府庁、関係諸団体と連携を密にして対応していくことが決まった。

 引き続き行われたオーサカ・ゼンリョの第15回定時株主総会では、岡本浩史社長が昨年度の状況について「前期は、㈱全旅からの配当が大幅に減少するなど、危機的状況だったが、業務受託収入や営業外収益などで、なんとか乗り切ることができた。今後も、株主に喜んでいただけるよう取り組んでいきたい」と報告した。

 同日には、ハートンホテル心斎橋別館(大阪府大阪市)で宿泊・観光施設や案内所などで構成するオーサカ・ゼンリョ協力会の通常総会も行われ、すべての議案が承認可決された。任期満了に伴う役員改選では、金子博美会長(琵琶湖グランドホテル代表)の再任が決まった。

 全旅協大阪府旅行業協会の新役員は次の各氏。

 【会長】吉村実(歓喜旅行サービス)【副会長】岡本浩史(日本トラベルサービス)【専務理事】笹井健次郎(ビーウェーブ)【理事】藤方義勝(ジャパンライフトラベル)▽小林富久(ニューワールドツーリスト)▽堀内宏昭(トーヨートラベル)▽中山雅博(いすゞ旅行)▽安田由紀(新日本旅行)【監事】松下忠(ステイドリームツアーズ)▽加藤紀美子(ジェイ・エイチ・アールツアーズ)

全旅連、多田会長が続投 3期目に 「声を出せる団体」次世代につなげる

2021年6月21日(月) 配信

3期目の続投を決めた多田計介会長

 全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会(多田計介会長、1万5288会員)は6月15日(火)、東京都内で2021年度通常総会を開いた。任期満了に伴う役員改選では、2期4年を務めた多田会長の留任を決めた。

 3期目となる多田体制では、①政策②ポストコロナ調査研究③経営基盤調査研究④人材不足対策・職場環境改善対策⑤厚生・バリアフリー化促進――の5つの委員会を中心に活動を展開していく。災害対策室や情報デジタル推進室も設け、迅速な対応へ連携を強化する。

 続投を決めた多田会長は、「民泊や人材不足、外国人労働の問題、そして新型コロナウイルス感染症への対応など、その都度大きな課題が現れたが、会員の力を結集して乗り越えてきた」と2期4年を振り返った。

 さらに、陳情活動などを積極的に行ってきたことに触れ、「このレガシーを次世代にもつなげていかなくてはならない」と述べ、全旅連青年部長も旅館政治連盟のメンバーとして、親会と一体となって政治活動を推進していく方針を示した。

 多田会長は「全旅連が声のない団体ではなく、大きなうねりを作れる『声を出せる団体』に変貌していく」と3期目の決意を述べた。

 総会には、青年部の直前部長の鈴木治彦氏と、星永重25代青年部長も活動報告を行った。

ワクチン接種55% 9月Go To再開を

 鈴木直前部長は「コロナワクチン接種が日本国民の55%に達することが予想される9月中旬には、潮目が変わるのではないか」と述べ、「3連休前の9月17日(金)を目途に、接種を終えた人を条件に、全国一律でGo Toトラベルキャンペーン再開への準備を進めていきたい」と提案した。

  青年部では、全国の部員と情報を共有しながら、各都道府県知事や国会議員にも「『55(ゴーゴー)Go Toトラベル』をスタートさせましょう」と声を上げていく計画だ。「日本国民に日本中を旅していただけるように、そして我われが率先して地域経済の活性化を取り戻せるように、Go Toの再開を1日でも早く手繰り寄せたい」(鈴木氏)と述べた。

鈴木治彦直前部長(右)と星永重青年部長

 星青年部長は「コロナ禍で先の見えない状況が続き、宿泊業界の若い世代はとても危機感を覚えている」と若い世代を代表して、現状の打開策の必要性を強調した。そのうえで、「接種率55%は日本の人口の6738万人強に当たる。青年部、そして親会も含めて『宿泊業界からしっかりと経済を回していく』ことを、今から国会議員や、政府にも伝えながら頑張っていきたい」と、総会に出席している各都道府県理事長にも協力を求めた。

 21年度の主な事業計画として、調査・研究事業では、宿泊業におけるウィズコロナ・アフターコロナへの対応をはじめ、旅館業法5条改正や、風営法等の旅館業に関わる各種法規制の見直し、生産性向上、労働・雇用問題などを深堀していく。

6月15日に東京都内で2021年度通常総会が開かれた

 組織強化では簡易宿所営業許可施設の組合加入を促していく。なお、今年度の会費は昨年度に引き続き、2年連続で5割削減することを決めた。

 今年6月に予定していた全国大会は、コロナ禍の影響で秋に延期していたが、10月25日(月)に福島県いわき市の「いわきアリオス」で開催する。

 また、来年度の全国大会は、100回目の記念大会となる。22年6月15日に東京都千代田区のホテルニューオータニでの開催を予定している。

〈観光最前線〉「雨もまぁいいか」

2021年6月21日(月) 配信

旅先での雨宿り(広島県竹原市)

 映画やドラマのワンシーンから楽曲、さらには広告コピーまで、「雨」の情景が印象的な作品は、誰にも1つくらい思い浮かぶものがあるだろう。

 第3者として眺めるには、五感に深く染み入る世界だが、こと自分に関して、さらに旅行ともなると、雨は手のひらを返したように「やっかいな」代物へとかわってしまう。だから旅先や商品展示会などで、露の美しさに気づかせてくれる句や、雨音を奏でるインテリアなどに出会うと、ちょっと嬉しくなる。

 降ったら半額などの「雨でよかったね」ではなく、「雨もまぁいいか」と思えるひととき。そこに思いを馳せると、想像と工夫次第でまだまだ「こんなの初めて」という空間が生まれてくるのでは。そんな演出をいつも探しています。

【鈴木 克範】

【特集No.584】観光の新概念「メタ観光」 位置情報で見る新たな旅へ

2021年6月21日(月) 配信 

 デジタルとリアルを融合させ、位置情報を用いてマップ上に観光地の持つ多様な魅力を可視化させる「メタ観光」。2021年1月に設立を発表したメタ観光推進機構は、近年生まれたこの概念を推進する活動を行っている。多様化が進む現代で、「旅行者が考える観光の価値」を尊重するメタ観光は一体どのようなモノなのか。メタ観光を活用した観光振興や、これからの日本の観光について、同機構代表理事である牧野友衛氏に話を聞いた。
【馬場 遥】

 

メタ観光推進機構 代表理事 牧野友衛氏に聞く
隠れた魅力を見つけ“可視化”

 

 「メタ観光」とは、GPS(衛星測位システム)やGIS(地理情報システム)によって入手した位置情報を活用し、その場所にある歴史的・文化的文脈に加え、複数のメタレベル情報をICT(情報通信技術)により付与することで、多層的な観光的価値や魅力を一体的に運用する観光のこと。
 これまで観光にはさまざまな形態が存在し、コンテンツツーリズムやダークツーリズム、グリーンツーリズム、ヘリテージツーリズム──など、それぞれに独自の呼称が存在していた。メタ観光では、これらの観光概念を「レイヤー(層)」として捉えている。観光形態であるこれらレイヤーよりも一段上位──つまり、「メタ」(超越した、高次のなどの意味)にある観光概念がメタ観光である。
 牧野氏は甘味処「竹むら」を例に説明した。

 

メタ観光の例 甘味処「竹むら」

 

 東京都・神田にある「竹むら」は、揚げ饅頭が有名な和菓子店である。そして、池波正太郎の作品「散歩の時に何か食べたくなって」にも登場した店であり、2000年には東京都が選定した歴史的建造物として認められた。そのほかにも、仮面ライダー「響鬼」のロケ地や、アニメ「ラブライブ」に登場した建物のモデルとしても知られている。
 このように、竹むらには多様な観光要素が存在していることが分かる。たった1カ所の観光スポットにも、訪れる理由が複数存在している。
 つまり、竹むらは池波正太郎を好むファン層(およそ50代)や、仮面ライダー「響鬼」のファン層(およそ30代)、ラブライブのファン層(20~30代)を惹きつける魅力を内包している。
 それにもかかわらず、旅行ガイドブックだけではなくオンラインの地図にも、観光地が持っているすべての観光要素の情報が載っておらず、限られた情報しか得られない。同機構はこの問題点に切り込んだ。
 牧野氏は、「既存の観光スポットにあるさまざまなカテゴリを『メタ情報』として可視化することで、今まであった観光スポットの価値がさらに向上し、需要を網羅することができる」と力を込める。
 メタ観光とは、人を惹きつける魅力(カテゴリ)をレイヤーとして分け、縦串として位置情報を通すことでメタ的観点から旅行者に観光スポットを紹介する考え方である。
 牧野氏は「この考え方を元に、もう一度皆さんに地域の観光のあり方を考え直してもらいたい」のが一番の狙いだと話した。……

【全文は、本紙1835号または6月25日(金)以降、日経テレコン21でお読みいただけます】

〈旬刊旅行新聞6月21日号コラム〉「何故それはそこにあるのか」――本物は根源的な問いに回答できる

2021年6月21日(月) 配信

 
 人は美しいデザインを欲し、お金を払う。家具やクルマ、文具、服、食器などもそうだろう。その製品を「美しい」と感じる理由に、装飾と機能の両面の美がある。

 
 花瓶や壺などの装飾品ではなく、繰り返し使う道具(製品)であれば、たとえデザインが優れていても、使い勝手が悪ければ意味がない。機能を最優先に追求した究極型は美に至る。

 
 有名建築家が設計した美しい家屋や、ホテルは称賛される。だが、実際に使ってみて、オペレーション上の負担が大きかったり、宿泊客が滞在中に不便ばかりを感じたりしては、その評価は決して高くはならない。その意味で、一切の装飾が削られ、機能の本質を体現した実務的な製品に、感動を覚え、いつまでも愛情を注ぎたくなる。

 

 
 さて、ある時、旅行先でレンタカーを借りた。奇抜なデザインが売りの、かつて人気を博した小型車が待ち構えており、ワクワクして車内に乗り込んだ。

 
 しかし、何ということだろう。ダッシュボートの高さと、ドライバーズシートに座った位置がどうも合わない。視認性も居住性も悪い。

 
 また、レンタカーの契約書や保険などの書類が入ったクリアファイルをドアのサイドポケットに入れると、底が浅いために、柳のように、こちら側に折れ曲がって使い物にならない。

 
 さらに、センターコンソールのドリンクホルダーにペットボトルを置き、道路に出て軽くブレーキを踏むと、ホルダーの底が浅いため、ペットボトルが飛び出してフットブレーキの近くに転がり、ヒヤリとした。

 
 国内の主要メーカーの人気車種で「このレベル」だということに、愕然とした。「それらしいモノ」を何となく取り付けただけで、ドライバー(利用者)のことを考えていない思想の薄っぺらさに、寂しさを感じた。

 

 
 もしも、私がデザイン責任者であれば、必ずシートに座り、視界が優れているか、またペットボトルや紙コップを置いたときに転がったり、こぼれてしまわないかを確かめる。サイドポケットを作ったのならば、A4判サイズの書類がきっちりと収まるか、実際に試してみる。一つひとつを細かに実体験し、「使い勝手」や「運転しやすさ」を突き詰めていく。クルマが好きな人間なら、当たり前のことだ。

 
 デザイン重視の高級スポーツカーなら「実用性を犠牲にする」視点もあるだろうが、「小型大衆車」という工業デザインであれば、実用性と機能性が最も重要ポイントではないか。

 
 洒落たホテルの洗面台やトイレも最近多く目にするが、使い勝手が一番であるべきだ。

 

 
 嗜好性が多少関わる「装飾美」とは違い、「機能美」は普遍性が重要だ。精密機械などの製品は何千、何万回と同じ動作や操作を繰り返す。その過程で、膨大な実体験に基づく知恵の蓄積が研磨剤となり、奇抜さやムダを省いていく。やがて、あるべき姿(本質)としての「美」が造形される。優れた製品は配置や大きさ、角度など、利用者からのあらゆる問いに、すべて回答できる。「何故それがそこにあるのか」――。この根源的な問いに明確な説明ができないモノは、本物ではない。

 
 ムダのない機能美をたたえるデザインに、あえて説明が不要なチャーミングな装飾(遊び)を小花のように備えた製品が最高だ。

 

 (編集長・増田 剛)

「提言!これからの日本観光」 観光統計の“緊急事態”

2021年6月20日(日) 配信

 毎年、前年度の統計が出そろって発表されるころになると“観光統計”について、いくつか気になる点がある。観光庁が設置された約10年前、観光事業に携わるものとして「永年の懸案が実現した」と大きい期待を寄せていたことを思い出す。

 同庁発足時の重点施策のひとつに“観光統計”の「整備」があった。省庁の重点施策に統計の整備が掲げられることは珍しい。また、新しい役所の発足にあたり統計整備が掲げられたことは当時、“観光統計”の整備が遅れていたことを意味する。それだけに、関係者は統計の完成に大きな期待を持ち、自らも努力してきた。

 同庁は発足直後に、観光客数の「集計基準」を策定している。各都道府県に同基準を通知して数値をまとめることとした。「同基準」はこれまで、複数回改定し、現在に至っている。これで日本の総観光客数も判明するはずだった。

 しかし、この基準による集計に「応じない」、または調査しても「集計中」などとし、毎年の公表時に自県の状況を発表しない府県が数カ所に及ぶ。このほか、観光統計のなかには「自治体によって集計方法が異なるので比較できない」と注記されているものも存在する。

 このため、同統計は現在でも、完成されておらず、国内総観光客数も把握できていない。外国人の観光目標数値は入管統計などから推計している。このうち、外国人入国者数は明示されるが、邦人観光客は示されていない状況が続いている。

 筆者は各地域が全国統一の「基準」である同統計の集計方法で、調査することが必要だと思う。なぜ、各府県は「同基準」による統計を取らないのか。また、数値の同時期公表を拒否するのであろうか。

 もし、国の「共通基準」が採用できないなら、その理由と「共通基準」での集計を公表したうえで、自地域が正確と考える別手法による数値を併記するなどして、統計を完成させるべきではないか。

 コロナ禍で国内観光が未曾有の打撃を受けている現在こそ、地域別入込客数統計で地域別の影響度を把握するべきである。今後、客数の変移から地域別の復元状況も明らかにしなければならない。

 なぜなら、前者における数値の把握・分析結果が、それぞれの地域がコロナ禍後、観光復元への施策を策定するうえで、貴重な指針になると思う。

 さらに後者からは今後、観光需要を回復するためのフォローアップの情報が得られると考えるからである。

 また、災害時に地域別入込客数の推計や、国内観光客数の推移が定量的に把握できないことは、観光の復元や新しい観光客受入態勢を整備するための貴重な指針が得られないことを意味している。極言するならば現在の統計末整備は観光統計にとって“緊急事態”と考えざるを得ないと思う。

 一刻も早く関係統計の完備を願うこと切なるものがある。

須田 寛

 

日本商工会議所 観光専門委員会 委員

 
須田 寬 氏